命改変プログラム

ファーストなサイコロ

元老院の船の中



 カッ――と顔に当たる光。その眩しさで僕はなんとか顔を上げる。ホント、もうなんとか……だよ。体を見ると、服は破れて防具は傷つき、至る所からプスプスと煙が上がってる。
 顔を上げた視線の先には老人モブリの姿がいっぱい見える。幻覚とかじゃなく確かにそう見えるのです。多分この視線の先にちゃんと居るんだろうけど、今の僕はこの船に備え付けられてる、尋問魔法のその中に閉じこめられてる。
 だから僕と老人モブリの間には魔法の壁がある。それに映し出されてる老人モブリは、万華鏡に映ってるみたいに、周りすべてからその長い帽子を僕に向かって晒してる。


「どうだ? そろそろ喋った方が身のためだぞ。どうして貴様が送られてきた? あのムカつく女が言ってた貴様の価値とはなんだ?
 さあ喋るんだ!! 隠すことに意味などないぞ」


 周りに映るモブリが一斉に口を動かして、同じ事を喋ってる。もうどこ見てもこの老人・老人・老人――だからイヤになるな。
 そもそもなんで僕は喋らないんだっけ? 既に情報は得てるし、別に喋らない理由も無いような……もしも喋る事で、コイツ等がクリエを諦めてくれれば、それはそれは御の字の様な気がしなくもない。
 なんで……なんで……


「さあゴミ! 貴様はリア・レーゼでもゴミなんだろう? ここでもゴミ扱いされたくなかったら、その価値を示して見せろ。貴様次第ではマシな待遇を考えてやらんことも無い」


 ああ、わかった。コイツがマジでムカつくからだな。この態度……言いたくないって心からそんな思いが沸き上がってるくる。
 てか、マシな待遇ってなんだよ。そもそもこれは罰とかだと思ってたけど……コイツ僕が色々とサン・ジェルクをかき乱した犯人だって分かってるのか?
 それともコイツは市勢の事になんか興味ないのかな? 元老院同士で情報交換位はしてると思うけど……取り合えずやっぱり言いたくないから、舌を出して小馬鹿にしてみる。
「んべっ」
「こんのゴミがああああああああああああ!!!」


 その瞬間、この空間に紫色の雷撃が巻き起こる。雷撃は僕の体を突き抜けて、服を焦がし苦痛を与える。


「ぐああああああああああああああ!!」


 ドサッ――と再び倒れ込む。尋問じゃなく、これじゃあ拷問だ。いや、わかってたけどね。


「全く、まさにゴミだな。品性の欠片も無い奴だ」


 僕にはお前にも品性があるように見えないんだけど。品性ある奴が怒鳴ったりするなよ。僕は体を持ち上げようとするけど、いかんせん力が入らなく成ってきたぞ。
 既に二十分位、拒み続けてるから、そろそろ体がやばいかも知れない。HPも減ってるしな。その影響が体に出始めてる。
 それに痛いだけあって精神にもくる。本当の拷問受けてるみたいだもんな。


「どうした? あの女が指定した時間はそうないぞ。貴様には寝てる時間さえ無い。さっさと起きろ!!」


 老人モブリがそういうと、再び紫の雷撃がこの空間を覆う。僕の悲鳴が自分の頭の中で鳴ってた。
 黒こげになった気分を味わってると、淡い光が僕を包む。そしてある程度HPが回復される。殺す気はない……ただ喋らなきゃずっとこの苦しみが続くってだけ……死ぬより辛いことなんかいっぱいあるってか?


「さあ、吐け。貴様は死ぬことすら許されてはない。貴様の全ては我が手の内だ。貴様がやってる事は契約違反なんだよ」
「はっ……何が契約だ。人の頭上で勝手に決めたんな物に従う義理なんか無いな。そもそも僕は個人でお前達元老院が嫌いなんだ。
 気付いてるか? 僕がサン・ジェルクからクリエを連れ出した奴だって事? それに箱庭の一件だって僕だ。その時、元老院の違う奴にあったんだけど?」


 てか確かぶっ飛ばした様な? そこら辺どういう認識なんだろうこいつらは。


「ああ、勿論それは知ってる。だがそもそも箱庭など、もう必要なく廃棄する予定のものだった。そして貴様が出会ったそいつは元老院の中でも若造よ。
 貴様の最大の罪は、やはりクリエを連れてリア・レーゼなどに逃げたことだ。よりにもよって星羅の地などにな!」


 いきり立ってる老人モブリ。てか、やっぱりあの箱庭の装置の所でぶっ飛ばしたのは若造か。元老院言う割にはヨボヨボじゃなかったから、こんな奴もいるんだって思ったんだ。
 元老院同士は繋がってるけど、そこまで深くって訳じゃないのかな? いや、ただ単に若造だから仕方ない位に思ってるのか? 


「だが、解せない事がある。貴様らどこに隠れてた?」


 ギクッてなる事を老人モブリが聞いてきやがった。ちっ、やっぱり言うべきじゃなかったな。教皇の所――とはいえないもんな。迷惑をかける事になる。取り合えずこう返しておこう。


「ふん、サン・ジェルクは広いんだぞ。上手く立ち回ればこうやって逃げ仰せるんだよ。それにあの街特殊で複雑だしな」


 まあそれはリア・レーゼも言えるんだけど。モブリって普通の場所に住めないのかって思うよね。水の上だったり、木にへばりついたりね。まあそれがゲームらしいと言えばらしいけど……


「それもそうだが、だが運が良いだけだった……それだけだな。だが貴様のその運もここまで。よく考えろ、ここでは奇跡は起きたりはしない。お前は儂にその価値を説いて媚びを売るしかないんだ」


 誰が媚びなんか売るかよ。それにそれだけが選択肢じゃない。一時間……まあ後四十分位、黙りを決め込めば僕はこの船から解放される。


「言っておこう。儂は貴様の価値が証明されるまで返す気はない。というか、証明出来れば返す訳がない。我らの道具になるのだからな」


 ぬあ!? って確かにわざわざコイツ等が僕に価値を見いだせば返す訳ないじゃないか。そこら辺も適当に言ってやがったなローレのやつ。その位アイツがわかって無かったなんて思えない。
 つまりなんとかして自分で帰って着なさいよ――と言うことか。


「だが、貴様にその価値がなくても交渉材料位には使ってやるという選択肢もある。まあその価値さえも決めるのは貴様ではなく儂だがな」


 つい数十分までローレに言いように扱われてた癖に、随分余裕があるな。まあだけど、これ以上体力を削られるのもやばいのかもしれない。
 僕にはやるべき事がある。そのためにもそろそろ動いた方が良い。僕が自分の価値を明かせば、その間は他の元老院とかと色々と相談とかするのかもしれないし、そうなればここから抜け出す隙が少し位出来る――――かな?
 魔法で囲われてるからな……これを自分一人で抜けるのは相当難しい。武器もないしな。だけどこのままどっちにも良いように使われるのもイヤだし、何とかしないといけない。


「ローレは僕の事ゴミだって言ってたぞ」


 何か良い考えが浮かばないから、自虐ネタで時間稼ぎ。


「ゴミだから交渉材料にはなり得ないと? それは違うな。貴様は既に儂等元老院の情報を持ってる。それを持つだけでもうゴミといって投げ捨てる事も出来まい。
 あの女は全てを手にしたいのだろうからな。だから解せない事もあるが……」


 何かを疑ってる感じの老人モブリ。秘密を得た僕をローレは取り返したい……そう老人モブリは思ってるわけね。だけど本当に、ローレはそれをそこまで必要としてるのかな? って僕は思う。
 アイツの事だから、何か他にアテがありそうな気はする。僕の得た情報は所詮、手に入れられたらそれに越した事はない……程度だろ。
 でないと、こんな曖昧な条件出すわけない。アイツは欲しい物は手に入れなきゃ気が済まない奴だぞ。そんな奴だからこそ、今の状況にしたことが、あんまり元老院へ興味なさげな印象というか……


「まあ確かにアイツは強欲だ。だけどまたアイツを脅す気なら覚悟しといた方が良い。また泣かされるぞ」
「誰が泣かされるか!! 失礼な事を言うな!」


 僕のからかいの言葉に全力で反応する老人モブリ。それほどローレにやられてたのは悔しかったんだろう。


「まだそんな減らず口が叩けるとはな!!」 


 その言葉の瞬間、更にもう一度このエリア内に紫の雷撃が煌めいた。僕を走り抜ける雷撃は血液を沸騰させてるのかと思うほどの激痛だ。目から湯気みたいなの出てる気がする。雷撃で目の水分飛ばされたかも……だけど同時に涙も出てるし、きっと大丈夫。
 HPはとうとう半分を切ったか……僕は地面に倒れ伏したまま、引いていく激痛の中で冷静に現状を見据える。自分でも驚くけど、流石に何回も死に掛けてるせいか、痛みのやり過ごし方をわかってきたかも知れない。
 てか、コイツは僕を絶対に殺さない。それもわかってるから、まだここまでの余裕があると思う。痛いのは辛いけど、幸いこの魔法で構築された空間のおかげなのか、激痛の引きは早いんだ。回復もある程度はされるしね。
 きっと長く拷問相手を痛めつける為なんだろうけど、正直僕にとってはありがたい仕様だ。痛みが早く引けば、それだけ頭を動かせる。
 まあ僕の平均並みの頭で絞り出せる事なんか限られてるんだけど、それでもこの状況をどうにかして切り抜けないといけないんだ。
 言っとくけど、このサン・ジェルクに与えられた一時間って時間は、それは同時に僕へのタイムリミットの時間だ。ここで事を起こすのはここに居る間にしか出来ないんだからな。まあ老人モブリは僕の価値がわかれば返しはしないとか言った。もしかしたらサン・ジェルクとかにこっそり送り返されるとかされたら、孤立無援も良いところだな。それは不味いんだ。
 ようは、僕が確実にこの空域でこの船に居れるのが、この一時間……というかあと四十分位だと言うこと。それまでに僕はこの艦隊で聖獣共を刺激しないといけない。


(……だけどな)


 それがかなり難しい。僕は基本、セラ・シルフィングがなくちゃ何も出来ないもん。今まであの武器にどれだけ頼ってたのか、改めて思い知らされるな。
 まあスキル事態はこの身に宿ってる訳だけど……流石にイクシードみたいな特殊なスキルは、その発動条件に対応する武器が必要なのだ。
 まあ当たり前だよな。超強力なスキルを、バンバン出せるのなら、武器なんて必要ないもん。雷撃程度ならこの身から出せるけど……果たしてただの雷撃だけで、この尋問空間を打ち破れるのか疑問だ。
 やってみなきゃわからない訳だけど……リスクが高い。もしも失敗したら、更に拘束がきつくなったりいろんな事に用心されてしまう。そうなったらここで僕が事を起こすなんて絶望的だ。無理に等しくなる。
 時と場合を見計らって、どうにか一度実験をしたいな。僕のただの雷撃で破れるのか……それとも無理なのか……


「ようやく大人しくなったか。少し時間をやろう。その無い脳味噌を駆使して、自分に一番得だと思う選択肢をひねり出せ」


 そう言って、万華鏡みたいにそこかしこに映ってた老人モブリの姿が消える。すると途端に明るさが消えたみたいになったこの場所。なんか天辺からビー玉位の光が射し込んでるのはわかるけど……どう言うこと? うっすらと暗闇の向こうに小さな影があるよう見えるのは多分、僧兵かな? 一応の監視役みたいな物だろう。
 これを見る限り、どうやら部屋全体が尋問魔法で覆われて僕を捕らえてるって訳じゃないのかも知れないな。僕が居る特定の位置がそう言う魔法で覆われてる……とでも言うのか? 
 まあどのみち問題なのは大きさじゃなく、壊せるかどうかだ。丁度長い帽子の姿は見えないし……この空間事態暗いのなら、外からは見えないかも知れないな。
 僕は重く感じる体を起こして、その手を見つめる。そして意識を集中すると、指からバチバチと青い雷撃が出て来た。
 よかったよかった。スキル自体を封じる事はされてないみたいだな。でもそれはある意味、この空間の強度に自信があるから――とも取れる。武器無しで発動できるスキルの威力なんてたかが知れてると、それじゃあ壊せないと自負してるのかもな。


「だけど……やってみないとだよな」


 僕はそう言って、拳を握った。そしてフラフラなりながらも一歩分、前に手を付いて四つん這い状態で拳をその薄黒い壁にぶつける。どうやら武器無しじゃ放つって事が出来ないっぽいんだ。
 だから僕は痛めつけられた体を引きずって拳を壁に打ち当てたんだ。雷を纏った拳は壁に当たった瞬間に、大きくスパークしてくれた。だけどそれだけ……意外と柔らかかった壁は拳の勢いで少し伸びただけに止まった。


「むむ……これは案外強敵だな」


 まさか強固な作りじゃなく、柔軟な作りで来てるとは……柔よく剛を制すって奴だな。堅いだけより、柔らかさもあった方が強いよってね。その方が受け止めるだけじゃなく、受け流したり出来るもんな。
 だけどこれは厄介だぞ。力技で行くにも、そもそもの力も足りなくて、しかも相手はそれを受け流す柔軟差という余裕をあわせ持ってる。


「これは力ではいけないかも知れない……」


 くっ……早々に唯一の道が閉じてしまった。いったいどうすれば? 僕は唯一の光の射し込み口である天辺をみる。実はあそこから出られたりとか? しないかな……しないよな?
 だけど何もしない訳にも行かないから僕は動くよ。今度はちゃんと下半身も起こして立ち上がる。そして腕をその光へと伸ばしてみた。


「んっ……………………うん?」


 僕はつま先立ちしてまで高さを稼ぐ。しかも伸ばした右腕もブンブン動かすよ。だけど案外天辺は高かった。全然届かない。こうなればジャンプでもして……と思った時、カクンと膝が折れて無様に地面に倒れる僕。
 誰もいない場所でよかった……誰かにみられてたら赤面物だよ。だけど実際、赤面してる場合でもないな。まさかいきなり膝から力が抜けるとは……これはかなり疲れてるんじゃないのか?
 見た目の傷は癒えて、HPもその都度回復しても、痛みやダメージはどこかに刻まれ続けてるのかも知れない。この左腕だってつい数時間前までは、吹き飛んでたしな。
 僕たちはこの世界でも傷つきながらも走って、飛んで……ずっと実際に体を動かしてここまで来てる。HPなんてのはゲームとしての体力を示すだけの物。勿論重要だけど、それが疲労と直結はしてないんだよな。
 確かにこのHP表示が赤くなったら、更に体は重くなるし痛みも疲れも増える。体の動きだって明らかに鈍くなる。そして通常状態なら、体には何の違和感もない……訳だけど、それもまたシステム補正なのかも知れない。
 実は疲労は通常状態でもたまってる。だけど、戦闘とかしてると、どうしてもダメージは受けるし、その衝撃が大きい。だから戦闘終わりで回復すると妙にスッキリとして「よっしゃ、もう一戦!!」てな気持ちになるのかも。
 そして本当にフラフラするまでやっちゃうとか……そう言う問題もあったような気がするな。それにこれはゲームだし……気持ちよく、格好良く勝てる用に作ってあるのは当然だともおもう。
 それに最近のゲームはちゃんと注意書きしてあるよね。【長時間の続けてのプレイはお控えください】って。少しずつ貴方の精神は確実にすり減ってるのでご注意をってことね。


 だけど……LROは止めるタイミングが難しいと思う。特にこんなクエスト? ミッション? みたいなのをやってると、終われないよ。だって状況は次々に動いては迫ってくるんだもん。それにこれはリアルタイムで時間は常に進んでる。それこそ、前に全てが止まっての強制排出があったような感じじゃないと、こういう事をやってる間はリアルには戻れないよな。
 だからこそ、こうやって無茶する奴が出てくるんだ。……僕だけど。


(よくよく考えたら、サン・ジェルクから脱出と来てここまで、常に戦闘三昧じゃないか。そりゃあ疲労も貯まるっての)


 しかも常に不利な状態での戦闘……精神面もやられるよね。まあ実際、有利な状況での戦闘なんて早々ないけどさ。こうやって直にRPGやってて思うのは、セーブ使う勇者とかメッチャ卑怯だよねって事だね。
 実際どんな最強装備とかよりもセーブ機能がチート過ぎるよ。あんなのされたら、ラスボスはほんと勇者に倒されるだけの存在なんだなって思う。
 LROに一度入ったら、他のゲームなんてやれない……って良く聞いてたけど、それってこの革新的な技術もそうだけど……他のゲームがアホらしくなるからかもね。
「状況は常に動いてるんだよ!!!」って言いたくなる。寧ろそんな機能が欲しいと僕は切実に思うってのもある。まあゲーム性が違う物を叩いてもしょうがないけどね。今までのには今までのゲームの良さはちゃんとあるし……LROにはLROでしか体験し得ない世界がある。ただそれだけ……もっと覚悟を持ってここには来た方がよかったのかも知れない。
 既に何度もその後悔はしてるけど……


(まあ……色々と考えたけど、何もこの状況を覆す要素に至ってないな)


 ゲーム性とかどうでもいい!! マジでこのままじゃダメだ! 既に三十分は切ってると思う。実際「疲労貯まりまくってるし、これ以上は無理!」とは出来ないんだよ。
 本当に諦める時は、それはきっと絶望とかに身を委ねた時なんだろう。もう何も出来ないって、自分自身に言い聞かせる事しか出来なくなったとき。
 でもやっぱりそんな自分はイヤだから、僕は崩れた膝に渇を入れて立ち上がる。せめて体が完全に動かなく成るまでは足掻いてやる。
 まだたった一発の雷撃パンチを叩き込んだだけだ。何発も同じ所に叩き込めば少しは変わるかも知れない。この円錐型の空間をぶっ壊すには、もう一点集中攻撃で、可能な限りのパンチの連続! これしかない! そもそも僕の一発は重くはない。僕は手数で押し切るタイプだ。


「いっくぞおおおお!」


 僕は気合いを入れ直して、拳を握る。そしてその拳に青い雷が纏った時、外から声をかけられた。


「おい、大人しくしてろ。貴様がここを自力で脱出するなど、不可能な事なのだからな。大人しく言うことを聞いていれば、そこまで悪いようにはされないだろう」


 そこまでって事はある程度は覚悟しておけって事かよ。てか、僕はサッと握ってた拳を背中へ隠す。


「危ない危ない……」
「声に出てるぞ」


 ぬあ!? しまった。心で呟いてた筈なのに、何故か口に出力してしまってた。くっ……僕が脱出しようとしてた事がバレてしまったじゃないか。ちっ、こうなったら別の道を探ってみよう。


「大人しくなんか出来るかよ。僕はお前達と違って、誰かの道具に身をやつすなんてまっぴらごめんなんだよ。それにあの老人共に良いように使われるなんて……自殺したほうがマシだな」
「なら、リア・レーゼの奴になら良いのか?」
「それはそれでイヤだな。それに別に僕はリア・レーゼ側って訳でもないし……」


 ローレの奴はやっぱり完全には信用できない。みんなが居て、クリエもそっちにいるから、言うこと今は聞くけど、ローレがクリエを利用しようとする様に成れば、リア・レーゼにも居られなく成るよな。


「信頼できるものが何もないとは哀れだな」


 なんか僧兵に鼻で笑われた。信頼ね……こいつ等は元老院なんかを信頼してるの? それこそ哀れだと思うけど。


「貴様に何がわかる? 余所者の貴様にはわからんよ。我らモブリが受けてきた中傷や迫害はな。元老院は古くからこのノーヴィスと言う国に一本の太い柱を築いてきた誇るべき組織なんだ。
 元老院様方がこの国を支えてる」
「それは今の奴らもそうだと言えるのか?」


 コイツの言ってる事もなんとなく分かる。きっと昔は立派な組織でその威光を今はすり減らしてるんだろ? 今の奴らは私利私欲とかに溺れてると思います。すると僕の言葉を受けた僧兵は、少し俯き加減でこう言った。


「どんなに汚く、悪く見えようとも、それはこの国の為。この国に住まうモブリの為。そう信じて尽力するのが聖院に仕える我ら僧兵の役目だ」


 必死にそう絞り出した彼。素晴らしい忠誠心。だけどどうやら、悪くは見えてるらしい。そう言う欺瞞に付け入るしかない……よな? 


(あれ? 僕って悪役っぽい?)

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