命改変プログラム

ファーストなサイコロ

頭が回る



 たった一つの冴えた選択。結局それはローレの思惑通りになったと言える。ローレは僕の価値を奴らに教えることを引っ張りに引っ張って、逆にクリエを人質として利用した。
 サン・ジェルク側にある武力は、真っ直ぐリア・レーゼへと向ける事は出来なくて、こいつ等の手元にあるのは、信じきれない僕という物言わぬ取引材料だけ。
 まあリア・レーゼ側の僧兵さん達も居るんだけど、彼らは何も知らない。ただの付き添いみたいなものだったからね。体裁をとるための……みたいな。
 曇天の空の間でローレは更にこう言ったよ。


「まっ、幾らでも疑いなさい。だけどいつまでも決めかねていては全てを失うわよ。アンタ達も……そして私もね。だから少し良い提案をしてあげましょう。
 アンタ達の目的を教えなさい。そしたらそこのゴミの魔法解いてあげる」


 なるほど、お得意の条件の嵩ね掛けだな。どんどん相手が不利に成っていくアレね。僕もやられたよ。これで奴らが条件をのんでも、僕が喋らなきゃローレは損はしないってね。
 言い訳は「魔法は解いたじゃない。それ以外は知らないわね」くらいだろ。魔法を解くなんて朝飯前な事と、元老院の目的なんて機密を秤に掛けるんだから、相手側には不利しかないよな。
 まあだけどこれはグッジョブだ。僕達の目的遂行の一歩だな。さあどうする? 元老院の老人モブリはものスゴく狼狽えてるぞ。


「それは……」


 冷や汗がスゴい事に成ってる老人モブリ。すると何をやけくそに成ったのか、それともそれだけは言いたくないのか、強引な手段を取ってきた。
 奴は魔法で僕の体を浮かせて、船の外の方へ持っていく。おいおい、なんで僕だけこんな目に!!


「くっ……くははははは! こいつがどうなっても良いのか? 残念だったな。こちらにだって人質はこうして居るじゃないか!! さあ、とっととクリューエルを渡せ! このゴミを投げ捨てるぞ!!
 そしてその次は、あの僧兵どもを順次突き落としてやろう。これは神を冒涜する貴様への罰だ!!」


 ついに狂い出してきた老人モブリ。年を追うと強引な手段しか思いつかなくなるのか? やけくそにも程がある。神って言えば何でも許されると勘違いしてるんじゃねーぞ。
 それが一番神様への冒涜だと気付いてるのか? 身勝手な責任を押しつけられちゃ、神様が可哀想だろ。そんなに権力に貪りつきたいなら、女神じゃなく邪神でも信仰してれば良いのに……それなら文句なんか言わない。
 だけど悪い奴ら程、その身を神聖な物で堅めようとするんだよね。質が悪い。


「さあ! どうする!? 答えろ!!」


 今にも声が掠れそうな程に叫ぶ老人モブリ。きっと明日には声がガラガラに成ってる事だろう。まあ僕は明日の心配をしてる場合でもないんだけど……でもなんだか言うこと既に分かってるって感じなんだよね。
 僕に対しては……だけど。どうせ――


「やりたきゃやりなさいよ」


 ――って言うと思った!! まさに予想通り的な言葉が空に響いてガックリだ。いや、まあここで飲む訳にはいかないわけだけど……それにどうせ落とせないって分かってもいる。


「貴様……儂は本気だぞ!!」
「だから好きにすれば良いじゃない。言ったでしょ? 私にとってはゴミだって。ああ勿論そこのスオウだけね。だけど残念、この状況はリア・レーゼのトップとして判断せざる得ない。
 だからもしもスオウが殺されるなら、そこの僧兵達も致し方ないのかも知れないわ。だってリア・レーゼの為だもの。約束しましょう。貴方達の犠牲は無駄にしないと」


 おい、なに尊い犠牲を演出しようとしてるんだ。僧兵の人達完全に運悪すぎるだろ。巻き添えだよ。どうにかしよう……としてはダメか。考えを改め直さないといけない。
 ローレの奴だから、悪い冗談が冗談に聞こえないのは質悪い。そうみせつけてるだけ……だよな? そもそもそんな事が出来ないと分かってるから、ローレはここまで強気なんだ。


「ほらほら、やれるものならやってみなさいよ。でもどのみち、後悔するのはあんた達だけどね。私にとってはゴミよ。だけど、きっとあんた達にとっては違う。
 幾ら私がこう言っても、意味はないでしょう。寧ろ私的にはさっさとソイツは落としてくれて良いくらい。なんたってゴミだし」


 ローレの奴、ゴミゴミ言い過ぎだろ。幾ら必要ない事を強調するためとはいえ、僕の心は傷つくんだぞ。てか強調したい部分はそこじゃなくて、元老院側に僕にその価値があると思わせる事だろ。
 なんだか自分ごとだからなのか、ゴミばっかりに意識がいっちゃうよ。本当にちゃんとこの老人モブリは僕に「価値」がある……と思ってるのか?
 手をこちらに向けてる老人モブリをみると、その長い帽子の下の顔を歪めてた。あれは迷ってる? まあ、もしかしたら……そんな感情はたった一言でも植え付ける事は出来るか。


「どうする? 私はどっちでも良いけど?」


 楽しそうなローレの声が響いてる。沢山居るサン・ジェルク側の僧兵も不安そうにしてる。トップが追いつめられてるから、指揮も下がってるんだろうな。
 なんだかその長い帽子も名折れだね。滑稽に見えるよ。


「ふう、いつまで迷ってるのよ。まさかその年で自分じゃ判断出来ないとかほざかないでよ? その無駄に刻んだ皺は本当に無駄皺な訳? ズバッと決めなさいよ。スオウを落とすか、秘密を話して双方良好な関係を目指すかね」


 どの口が良好な関係とかほざいてるんだ。絶対に仲良くなんかなれない。少なくともローレと元老院、どっちも健在してる間はあり得ないだろう。
 無駄皺とか言われてるし……ここまでバカにされると元老院のプライドはズタボロだな。いつも高い椅子の上でふんぞり返ってる者同士、せいぜい好きなだけ足引っ張りあってろ――とも思うけど、自分が巻き込まれてるから、高見の見物ともいかないよ。
 良いから早く甲板に戻して欲しい。今の僕はその場にとどまり続けるスカイダイビングやってるような物だよ。しかもパラシュートなしで、いつ地面への落下現象が起きるか分からない状況。
 スリル満点だぜ。まあだけど八割方は落とす訳ない……とも思ってるんだけど、この老人モブリがヤケクソに成らないとも言えないよな。老人は気が短いとも言うし。


「はぁ、そんなに悩む事かしらね。情報だけ与えたって意味ないでしょうに。あんた達はその使い古した情報だけで、自分達の目的の鍵を手に入れる事が出来る……悩む必要なんて全然ないわ。
 ああ、ごめんなさい。独り言なの気にしないで」


 独り言? 完全に聞かせてたじゃねーか。あ~あ、この言葉で更に僕を捨てることは難しく成ったな。だけどこれだけ言ってても信じられないローレの信頼の無さといったら。
 ギャルゲーならバッドエンド直行だな。まあ元々元老院側も、誰かを信じるとかきっとしてこなかった組織なんだろう。だから幾ら、自分達に都合よく聞こえても裏を疑りたくなるってね。
 しかも相手はローレだから、逆に親切な顔するなんて怪しすぎる……とも思えるよな。でも結局どう思おうが、僕への疑いと希望はこの老人モブリから消える事はない。その時点でローレが勝ってるんだよ。
 だけどそれでも、どうにかして別の要求に出来ないものか……とか悩んでそうではある。吹き抜ける風。下を見ると高さを実感しちゃうな。普通の木とかが小さく見える高さだよ。
 なんてたって空の上だしな。もしもここから落とされたら、流石に助かりそうもない。うまく着地を……とかの問題じゃないもん。今はセラ・シルフィングも無いのが痛いよな。まあ引き渡す相手が武器を持参してるとか、あり得ないから、装備一式取り上げるのは分かるけど、いざって時困る。
 そう、例えばここから落とされた時なんか、いつもならイクシードのウネリを地面に先にぶつけて勢いを殺す――と言う方法があるけど、それも使えやしない。
 まあそもそも後ろ手に拘束されてる時点でそんなの無理なんだけど……


「もうしょうがないわね。じゃ妥協してあげましょう。アンタは直接私に言うのがイヤなんでしょう? それなら同じ条件に出来るやり方で行こうじゃない。
 私に言わなくても別に良いわよ。空中で漂ってるそいつに教えなさい。後で直接聞くからそれでいいわ。まあもしも言われたくなかったら、同じように口封じしとけば良いのよ。ねっ、同じ条件でしょ?」
「それで……本当に良いのか? なにを企んでる? 貴様がそこまで妥協するなど……得など何も無いではないか」


 確かに。ここまで妥協すると、リア・レーゼが不利なような気がする。どこで方向転換したんだ?
 それともローレにはまだまだ勝てる見込みでもあるのか? いや、違うな。ローレの奴、ここでの条件なんか破談に成るとわかってるから、ここまで妥協して情報を引き出す気か。
 そもそも機密を敵側の船で教えてもらって無事に帰れるなんて思わないし、いろんなことを言って、今度は元老院側がたかるかも知れない。
 だけどそれら諸々、この後にぶっこわれるだろうから、今は甘い顔をして得だと思わせといてあげよう……そう言う魂胆か。元々、元老院側の得なんて考えてないんだよ。良好な関係なんて真っ赤な嘘だ。
 こいつは僕をここに送る途中で言ってた。サン・ジェルクと聖獣を戦わせて、お互いが弱った所で両方を叩いて漁夫の利を得るんだって。
 だから確実に僕も取り戻せる腹づもりって訳だ。それなら僕も折角の情報を自分のために役立てるのも良いかも知れないな。
 まあ、この状況とこの艦隊を手玉に取れればの話だけど……色々と無茶だけど、やるしかないんだよな。気が重くなるよ。


「あんた達と一緒にしないで。安全牌だけを取るやり方は私はしないのよ。折角だから教えてあげる。私とあんた達の違い。
 野望ってのは、障害を叩き伏せて行くほうが面白いのよ。それに一つ一つ地道に裏返して行くのって面倒なのよね。周りを黒で固めてれば、一気に裏返す事だって出来る。
 そんな醍醐味を知らずに、高見でほくそ笑むだけの磐上の遊びじゃ飽きちゃうじゃない」
「若いな……まだまだ若い。世界を取るのは勢いでは無いぞ。堅実に、表にでずに常に裏で暗躍するべきなのだ。
 自身を過大評価する者は必ず足下から掬われる。それを儂らは何度も見た。貴様もそんな愚かな一人になろう」
「言ってなさい。器の違いを教えてあげるわ」


 姿が見えないローレと、この場に居る老人モブリとの火花がどこかで散ってる様に見える。僕的にはどっちにも世界なんてやりたくないけどね。共倒れしてればいいと良いと思う。
 そう思ってると、魔法で甲板からはみ出されてた僕の体が、老人モブリの方へと再び引っ張られた。ふう、どうやら地面に落とされずには済みそうだ。
 そう思ってると、突如消える浮遊感。


「ぶへっ!?」


 てな声を出して僕は甲板にカエルみたいに落ちました。もっと丁寧に扱えよな。貴様等の鍵は今は僕だぞ。そんな考えで顔を上げると、高い帽子の老人モブリが僕を見下してた。


「ふん、あの女の吠え面が目に浮かぶ様だ」


 悪い顔して、マジで意地汚い事言ってるよ。まあだけど、きっとローレも同じ事言ってると思う。実は案外気が合うかもね。


「その条件を呑んでやろうじゃないか! こいつだけに我らの目的を教えよう。そして貴様はコイツに掛けてる魔法を解く。それでいいな?」


 曇天の空に高々に叫ぶ老人モブリ。追い込まれてる時は常に震えてた癖に、少し甘い顔を見せたらこの調子に乗りよう。「チョロいわね」とかきっとローレに思われてるぞ。
 そしてそんな風に思ってる(僕の想像)とローレの声が曇天の空に響くよ。関係ないけどさ、ここもそろそろ雨が降り出しそうな感じだな。気のせいか、雨の範囲が広がってる様な……リア・レーゼの雨はしばらく止みそうになかったもん。それだけの勢いと量だった。


「ええ、良いわ。よかったわね私の心が広く寛大で。取り合えずスオウにアンタ達の目的を先に話しなさい。それでスオウが納得したら、私も魔法を解除してあげる」
「むむ……何を言ってる? 貴様が先に魔法を解除しても同じであろう! 逆にしろ!」


 うわ、モメると思ってた所で当然の如くモメる奴らだな。テンプレな事が好きな奴だなこの老人。流石老いてる。


「アンタバカなの? 同じな訳無いじゃない。スオウはアンタの船に居るのよ。それなのに私が先に魔法を解除したら、アンタにつける枷がなくなるも同じじゃない。
 どうせそのゴミは逃げられはしないんだから、取り合えず教えて、それから私に魔法を解除させて、その後はそれから考えたって遅くはない。そういう先を見据えた考えはアンタ出来ないの? 
 もっと余裕って奴を見せないと、交渉とか後手に回るだけよ」


 流石無駄に自信があるだけ、その余裕のありっぷりが半端無いなローレの奴は。まあ確かに、ここでローレが先に魔法を解除したら、実際確実に教えるかどうかも怪しいもんな。
 最後の駆け引きで確実に情報を頂く為にも、これは譲れない条件って事だ。それに僕に教えた後も、直ぐにその情報がローレにまで流れる訳じゃない。
 そこもポイントだよな。だからローレはそこら辺も考えなさいよバカって言ってるんだ。だって情報を教えて貰う僕は、この老人モブリ共の船に居るんだから、その後どうするかはコイツ等次第。
 情報の漏洩を防ぐ手段なんか幾らでもあると……いや、既にローレは僕に魔法を掛けて送り返せば良いじゃないとか老人モブリにアドバイスまでやってた。
 あいつもしかして、僕だけが知ってれば十分とか思ってるのか? ローレの考えって脳内であいつ基準に紆余曲折してるからわかりづらいんだよね。
 まあ確実なのは、どうにかこうにか上手くはいきそう……かな? って思える所か。


「くっ……わかったような事を……だが、確かに……」


 悔しそうに呟きながらも、床に倒れてる僕を見下げる老人モブリの目は、イヤな色に染まってる。どうせ「コイツは我が手の内にある!」とか悪役の言いそうな事を考えてるんだろうな。
 そろそろ、色々と巧みに誘導されてる事に気付いた方がいいぞ。まあ気付かれたら僕が困るんだけど……


「どうなの? その小さなオツムで冴えたやり方は見つかった?」
「うるさい! ああ、貴様の破滅への道が見えてきたさ。よかろう、儂が先にコイツに我らが崇高な目的を教えてやる。貴様にそれが伝わるかはわからんがな」
「さっさとそう言いなさいよ」


 最後の部分の老人モブリの言葉は完全スルーしたローレ。そろそろコイツとの交渉にも飽きが見え始めてるな。そう思ってると、老人モブリが僕の耳を握って引っ張る。


(いででででででで!)


 そっちが顔近づけろよな。何でわざわざ引っ張る必要がるんだよ。


「哀れな奴だな。あんな奴に利用されて……そして死んでいく」


 耳元でまた、とんでもない事を……哀れな所は同情して貰って構わないけど、死んでいく気はない。利用はされてるけど、それだけで終わる気も毛頭ないんだこっちは。僕は老人モブリを睨んでやるよ。


「ふん、ゴミが何か言いたげだな。だが、権力の無い者は一生使われる側だ。その事実はどこでも変わらんよ。そして今から、お前はあの女にじゃなく、我らに使われる道具になるんだ。
 これを聞いて、自由になれると思うなよ」


 妙な脅し文句を言ってきた老人モブリは、更に耳の近くで「ごにょごにょ」とその『目的』を僕に明かす。僕の感想的には


(なっ!? はぁ~ん、ふ~ん)


 てな感じ。言葉出ないから、表情でリアクションしてみました。でもこれは……僕が頭の中で色々と今の発言を整理してると、老人モブリは空に向かってこう言うよ。


「伝えたぞ。約束通り、コイツの魔法を解け!!」
「まあ、慌てないでよ。老い先短いからってね。まずは確認が先」


 ちょくちょく相手を小馬鹿にしないと気が済まないローレの言葉で、僕は耳をひねあげられてるんですけど……ギリギリ――耳がギリギリ悲鳴を上げてる!


「ほら、スオウあんたちゃんと聞いたの?」


 そんな声が空から僕に向かって投げかけられる。なんかムカつくな。僕はそう思ったから、首を横に振ってやった。ふん、困りやがれ。
 すると思わぬ所から声が挙がった。


「何? 貴様それはどういう!? 儂はちゃんと伝えたぞ!!」
「ええ~? だけど私には確認する術が無いのよね。そこのゴミの行動でしかね。ようはそこのゴミはアンタの情報に納得してないんじゃない?」


 あれれ? 僕の意地悪が思わぬ方向に作用してるぞ。てか、ローレの奴嬉しそうだし。相対して老人モブリは歯ぎしりしながら僕を睨んでる。


「貴様、ゴミの分際で儂等にたかるつもりか? この代償は高くつくぞ」


 別にたかるつもりは無かったんだけど……結果的にそうなってるな。


「良いじゃない別に。それが私まで届くとも限らないんだし、スオウが納得するまでつき合ってあげなさいよ。話したくないことなんか山ほどあるでしょ?
 真っ黒な元老院の中にはね」
「くっ……」


 そんな悔しげな言葉と共に、老人モブリは再び僕の耳を引っ張るよ。そして「ごにょごにょにょ」
(へぇ~はぁ~なるほどなるほど)
「これでどうだ!!」


 僕は面白くなってきたから、もう一度首を振るよ。てか、耳を引っ張るのをやめて、土下座するまでやってやる。


「ダメみたいね」
「きっさまあああああああああ!!」


 激怒する老人モブリ。はっは、まだまだこれからだぜ。それから僕は次から次へと元老院の情報を引き出すよ。どうせその情報をローレまで届かせる気がない老人モブリも、ごねたら案外直ぐに新たなネタを教えてくれたし、完全に調子に乗りました。


(ほむほむ、なるほど~)
(へぇ~あぁ~そっかぁ)
(それはそれは、マジっすか?)


 てな感じのネタを手に入れて、僕はようやく首を縦に降ったよ。最後にはマジで土下座してくれそうだったけど、耳引っ張るのはやめてくれたから妥協してやった。僕はローレほど悪い奴じゃないからね。
 ふっふ、かなり元老院の裏側をしれた気がするな。




「それじゃあ、解除してあげる」


 その言葉と共に、僕へかけられた魔法が解除される。「あ~あ~」と試しに声を発してるみる。うん、大丈夫だな。


「ようやくか……はは……さて、貴様にも存分に吐いて貰おうか?」


 あれれ~、なんか僕まで恨み買ってない? まあ随分遊んだけどさ……


「コイツは好きな様にさせて貰うぞ!!」
「どうぞご勝手に、だけどそんなに待ってる時間もないんだし、一時間ね。それ以上は待ってられないわ」
「ああ……十分だ。どんな状態でもちゃんと返してやろう。ゴミを抱える気はないからな」


 うわ~イヤな顔してる。どうなるんだろう僕。武器もないし……不安が募ってくるな。


「所で、そこの僧兵どもはいつまで居る気だ? 儂の船を汚されるのは気分が悪い」
「そんな事言っても、一応帰りの為に必要でしょ?」
「…………ふん、一時間甲板で大人しくしてろ!!」


 そんな言葉と共に、老人モブリは扉を目指し出す。そして僕は周りの護衛の魔法によって浮かび上がらされて、その後に連れていかれる。
 てか、よく考えたら、コイツ等の目的ってもうわかってるし、ここで一発暴れて砲弾を森に向ければ……って流石に武器も無しに、この人数相手には出来ないか。
 何かローレが作戦を用意してる事を信じよう。それしかないから、僕は素直に飛空挺の中へと誘われる。

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