命改変プログラム
同じ方向を向く事の難しさ
取り合えず早急にどうにかしないとサン・ジェルク側の艦隊は厄介……それだけはハッキリしてる。奴らは一応、交渉と言うテーブルにつけるだけきっとマシな筈だろ。
聖獣にはそんな事きっと何の意味もなさないだろうから、まずはサン・ジェルクの艦隊をどうにかしないと。
「どうにかね。だからクリエを一時的に渡すのが手っとり早いわよ」
「そんな事出来るか!」
何、コイツマジで自分以外は道具とかし思ってないんじゃないか。
「全くその通りだけど? 何か問題あるわけ? 世界にはね、使う側と使われる側しか居ないのよ。使う側はいつだって楽してるわ。
使われる側は一生馬車馬の如く働いてそこに生き甲斐を感じてればいいの。そうやって世界は一部の上流階級が得する様に出来てるのよ」
「そ……それは違うと思います!」
僕が思わず剣を抜いてこの布ごと、ローレの野郎をぶった斬ろうと思ってたらシルクちゃんがそんな言葉を大きな声で叫んだ。
なんだかシルクちゃんが珍しく怒ってる様に見える。
「何が違うのかしら? 私の言葉に間違いなんか無いわよ。だってリアルだってそうでしょ? 庶民は犠牲に成るのが常なのよ」
「確かに世界はそう出来てるのかも知れません。だけど私達庶民は決して偉い人たちの玩具じゃないんです。そこら辺はローレ様だって分かってる筈です。
私達は一生懸命生きてるんです!」
「ちっ……」
え? 今舌打ちしたよな? ローレの奴、シルクちゃんの言葉聞いて舌打ちしたよ! 良いこと言ったぞ。それなのに何で舌打ちなんだよ。
「はんっ、庶民の一生懸命を見てる上の連中なんか居ないわ。寧ろ自分たちを支えるには当然――くらいにしか思わないのよ。
そんな精神論で自分達を納得させてるだけでしょ。ホント、どこまでも良い子ちゃん振るアンタのその性格、マジで頭にくるわ。正しいことを……正しいと訴え続ければ、それがいつか届くなんてのは妄想よ。
正義も悪も世界にはなくて、ただそんなのは権力者の匙加減でしかないわ」
なんて事を言ってるんだローレの奴。一体世界にどんな恨みが? そう思える程、ローレの言ってることは極論だろ。
確かにそんな時代はあったかも知れない。でも今は違うだろ。まあ政治家とか芸能人が幅効かせてるのはあるけども……特に政治家とか無能しかいない癖にアイツ等が国を導いてると思うと時々、自殺したくなる。
国民にそんな感情を募らせる時点でアイツ等は罪だと思う。
「だけどローレ様は私達の声に耳を傾けてくれる権力者でしょ? 貴方の正義に、この街は付いてきてるのを私は知ってます。
だから言葉だけで、ローレ様がそんな事をしないと分かってます。こんな私が嫌いなのは知ってるけど、私はこう言うしかできないんです。
きっと私は、私を信じて言葉を出しても、沢山の人には届けられないって思うんです。だって私はローレ様の嫌う通りこんな感じですから。きっと悪い権力者に潰されちゃう。
だけどローレ様は違います。ローレ様は今ある状況や立場を使い分けれる人。悪い権力者に潰されずに自分の言葉を遠くに届けられるまで登り詰めれる人です。
それは今のローレ様が証明ですよね。だからどこまでいってもローレ様の思いとかは最初から変わってないと思うんです。
ローレ様は残酷な様でそうじゃない。そう信じてます」
「シルクちゃん……」
流石にそれは過大評価し過ぎだと僕は思います。んな訳ないない。コイツがそんな大層な奴なんて信じられません。もう本当にシルクちゃんは人が良すぎるよ。
幾らローレに良いところがなくて、どうしてリア・レーゼのトップに成ってるのかマジで謎だからって、ローレの良いところを妄想で補完しなくても……
「も、妄想じゃないですよ! 私は本当にそうおもって――」
「――うううううるさあああああああい!! スオウの言うとおり、変な妄想を私に押しつけるな! この年中脳内御花畑女!!」
布越しに響いたローレの怒声。おいおい、一応シルクちゃんは褒めてたのにそれはどうだろうか? 年中脳内御花畑って……確かにシルクちゃんはそんな感じだけど、それじゃアホっぽく聞こえるじゃないか。
シルクちゃんはそんなアホじゃない。御花畑だけど、ちゃんと頭良いぞ。怒声を受けたシルクちゃんは、少し震えてるけど、必死にこう紡ぐよ。
「どうしてそんなに否定するんですか? 自分勝手で横暴とか思われちゃいますよ」
思われちゃうって言うか、もう思ってるけどね。僕的にはシルクちゃんがローレの何を信じたいのかがよく分からない。
「別に間違ってないわよ。私は何だって利用して、庶民は私を崇め奉る為の存在でしかない。私はアンタの脳内で勝手に変換された善人なんかじゃない。
私は私の為に、何だって利用して何だって使って、自分のこの場所と地位を守る。考えてるのはそれだけ。それと欲をかいたらサン・ジェルクも頂いて……私の世界征服のシナリオはこのノーヴィス全土をまずはシスカ教のシスカを私にすり替えるの。
そして総本山のノーヴィスがそうなればLRO中がそうなるでしょう。そうなれば世界中が私を崇め奉るのよ。最高でしょ?」
「なんて恐ろしい計画を考えてやがるんだ……」
話聞いただけでこの身が震えたぜ。大胆不敵というか……コイツの場合誇大妄想で済ませれないから洒落にならないな。マジで計画してるだろ。
別に何をやりたいじゃなく、崇められたいって……やっぱローレはSだな。ようは世界中を見下したいんだろ? やっぱりシルクちゃんの中のローレ像は妄想だよ。
「ローレ様は本当にそんな事したいんですか?」
「当然でしょ。誰からも勝手に愛されるアンタには分からないでしょうね。せいぜい自分をチヤホヤしてくれる男共を顎で使って悦に浸ってれば良いわよアンタは」
悦に浸るって……シルクちゃんがそんな子じゃないってコイツも分かってるだろうに、ワザと挑発してるよなさっきから。いや、会ったときからローレはシルクちゃんを怒らせようと何度もしてた気はする。
まあそれでどうなるのかは僕には分からないけど。
「スオウ……」
女二人のバトルにクリエが僕の服を掴んで震えてる。流石にシルクちゃんも少しピリピリしだしてるから、その感じの違いをクリエも感じてるらしい。
女のバトルって派手さは無いけど、妙に怖いよね。居心地も悪いし。子供に見せるものじゃない。
「そうですか……それでも私はローレ様はきっと私の思う通りの人だと信じてます。苛つかせてもそれが私ですから」
そう言ったシルクちゃんは一礼して、入り口付近まで下がって正座する。出ては行かないんだね。そこら辺は大人だ。
そしてもっと大人に成った方が良いはずのローレはというと……
「何あの態度。マジでムカつく……こうなったら意地でもクリエをサン・ジェルクに差し出してやろうかしら? てか、同じ空気を吸うのもイヤなのになんでこの状況で外に出ないのよ。
澄ましちゃって……ああ~もう! こうなったら私が出てく!!」
そう言って何やら布の向こうでバサバサ聞こえる。でも目の前の布越しのローレ事態は動いてない様に見えるんだけど? どう言うことだ? 魔法で何かを遠隔操作でもしてるとか?
てか、この場面で出て行こうとするなよな。大切な場面だろ。これからのリア・レーゼの為にの筈なのに、なんで真っ先にこの街のトップが放り投げようとしてるんだ。
「主!」
流石に見かねたリルフィンが布の向こうに行った。僕たちは布越しの会話しか許されてないからね。止めたくても止めれないから、彼に期待しとこう。
「事態は一刻を争うんです! 今はどうするかを早く決めないと! それに今出て行かれると、再び街が混乱します!」
「うるさいうるさいうるさい! ならあの女を追い出しなさいよ。てかもうそんな気分じゃないから! いざと成ったら切り札を召還して、艦隊も森も焼き払ってやるわよ!」
「主!!」
一体何が起こってるのか……見えないけど言葉で大体分かった。やっぱダメだろアイツ。新しい代表を立てるべきだ。でも不思議な事に、僕たちと対面してる布越しのローレはまだ居るんだよね。
さっきの会話を聞く限り、どう考えても出てった様だったけど……いや、そもそも目の前の奴に向かってリルフィンは喋ってなかった。それって一体どういう?
僕が目の前のローレ(らしき物体)を見つめてると、いきなり大量の布が垂れてきてその姿さえ隠してしまったよ。
もしかして……今まで喋ってたのはローレじゃない? そんな疑問が沸いてきた。すると布の向こうからリルフィン登場。
「なあ……僕たちは今まで誰と話してたんだ?」
そんな言葉にあからさまにビクっと反応するリルフィン。だけど直ぐにそのフードを被り直してクールな声でこう言うよ。
「ふっ、何を言うのだ貴様は。勿論ローレ様と喋ってたに違いないだろう」
「確かに喋ってたのはローレだと思う。じゃあ質問を変えるぞ。今まで僕がローレと思ってたあのシルエットは誰だ?」
僕はビシッと布越しの影に指を指す。もう見えないけどさ、そこに誰か……が居ただろ。ローレじゃない誰かが。だけどまだまだリルフィンは諦めない様だ。
「何をおかしな事を……勿論そこに居たのは主だ。他に誰が居ると言うんだ?」
「いやいや、今ローレの奴出てっただろ? それにお前が最大のミス犯してた。目の前のローレと喋って無かったぞ。その時点でおかしいだろ。人形か何かか、替え玉だろアレ」
もうそうとしか思えない。僕は布をめくろうとする。するとリルフィンの奴が僕の腕を掴む。
「おいおい、確認させろよ。それが一番手っとり早い証明方法だ」
「悪いが、主がそれを許可してない。あの方は案外恥ずかしがり屋なんだよ」
誰がそんな事信じられるか! って声を大にして言いたかった。だって恥ずかしがり屋? それはどこのローレさんですか? アイツがそんな玉なわけないだろ! 僕はリルフィンの腕を押し退けて強引に布をまくりあげようとするよ。
だけどリルフィンの野郎は意地でも見せたくないのか、精一杯抵抗してきやがる。てか、この抵抗の時点でアウトだけどな。僕の想像は確信へと変わってる。
だけどここで引き下がるのもイヤだから、やっぱりこの目で確認したいんだ。もう僕とリルフィンと意地のぶつかり合いだね。
布の取り合い押しあい引き合いだよ。
「何で隠すんだよ? 僕たちにだって真実を知る権利くらいあるぞ! 協力しあってんだろ!?」
「協力? 主は道具としか思ってないわ!!」
酷い!? 良くそんな事を力強く言えたな!! あの主にこの部下ありだよ。マジ僕も頭きた、こうなったら意地でもこの布の向こうを見てやる!!
「道具上等! 実はこっちもお前達を利用する気満々だっったんだ!!」
「貴様等に良いようにされる主じゃない! 立場を弁えろ平民が!!」
既に布のめくりあいから、相手をぶっ飛ばす殴りあいに移行してる僕たち。丁度良い、飛空挺での決着を今ここでつけてやる。
実はセラだけじゃなく、僕もモヤモヤしてたんだよ。敵な感じで出てきた癖に、何しれっと共闘してんだよってな。
まあそうしたのは僕たちだけど!! けど、どこかで決めときたい気持ちはあるだろ。どっちが上か下か! そりゃあこっちはお願いする立場だから下手に出てたけど、何でもかんでもそっちの意向にホイホイ従う訳じゃないんだよ。
こっちだって求めるのは対等な関係だ。色々とヘマもやってるけど、聖獣一体でも倒した事もっと評価しろや! どれだけ大変だったと思ってるんだ!
ずっとこんな場所に居て、一人高見の見物。寄越すのは召喚獣だけって、お高いんだよ!
「主はやることはやってる! 貴様等に出来る事は戦う事しかないからそれしか役目が回ってこないだけだ! そもそも自分のミスを主に押しつけるとは言語道断だな!
評価して欲しいのなら、聖獣を全て倒しておくべきだったんだ」
「それが出来たら苦労するかよ! お前だって見ただろうが! 感じただろうがその肌で! 奴等の強さを! それでそんな事よく言えるな!?」
びっくりだよ。口にはしないけど、一体も倒してない癖に……僕は布を掴んでるのとは反対の腕を伸ばしてストレートを繰り出すよ。
「自分じゃ勝てないから主に頼ろうとするその根性が気に食わん!! それにちゃんと召喚獣を寄越しただろうが! それがなければ死んでた癖に文句を付けるとは、これだから品に欠ける庶民は質が悪い!!」
僕の拳を受け止めたリルフィンは、僕の腕を自分側に更に引っ張って頭突きをしてくる。ガツンと当たったリルフィンの額は想像以上に堅くて、かなり効いた。
「それについては感謝してる。けどな、少しはこっちの頑張りも認めろって事だよ。確かに原因は僕だけど、やる気を削ぐような事を言う必要ないじゃないか! もっとお互い良い関係がきっとある。最初から下に見てるその態度が気に入らないんだ。
同じ偉い奴でもアイリは違ったぞ!」
まあ出会った頃は自信を失ってたし、比べるべきじゃないだろうけど、今でもアイリは僕達に綺麗な言葉を使ってくれるよ。ガサツでもないし、普通にこの子になら協力出来るって思わせてくれる。
だからこそ、アイリはみんなの信頼を得てるんだろ。見習え。
「はん、実質アルテミナスの実験を握ってたのはその下の奴だった筈だろう。しかもそいつにクーデターまで起こされた。俺から見たらそんな主に付き従う事の方がわからん。
主とは比べるもなく劣ってる。自分事で国を傾かせる。それは上に立つ者としてやってはいけない事だ。つまりはアルテミナスの当主は無能ということ――」
その瞬間、リルフィンは後ろから突き出された拳をかわして僕の後ろに――――そしてそのリルフィンを狙ってた拳が僕の顔面に突き刺さる。
「ぐほっ!?」
「ちっ――アイリ様への暴言は聞き捨てならないわね。取り消しなさい。でないと……消すわよ」
セラの奴はその手を武器にのばしてる。ヤバい、こんな所で戦闘始める気か? てか、こいつ……
「お前な、僕を殴っといて一言もなしかよ!!」
「うるさいわね。今アンタなんかよりも百倍重要な事やってるのよ。口出さないでくれる」
殺気を帯びた目でマジで睨まれた。やっべ~、セラの奴、目の前で堂々とアイリがダメだしされたからキレてるよ。僕と言い合いして殴り合ってた時の雰囲気じゃない。
「ふん、我にとっては重要でも何でもない事だな。事実を言ったまでだ。あんな当主を立ててるから実質崩壊まで追い込まれる。それに歴史の無い国には守り手もいない。
脆弱な国だと証明されたな」
ブチッ――そんな何かが切れる音が僕には聞こえた気がした。そして俯き気味のセラから「フフフフフフフ……」なる不気味な声が聞こえ出す。ヤバい、これは死人が出る気がする。そして静かに俯いて笑ってたのが、突如上を向き大口開けて「アハハハハハハハハハ」に変わった瞬間僕は狂気を感じた。
人間じゃない何かにセラが見え出すよ。そこら辺のモンスターなんて比じゃない恐怖感。
「言っちゃいけない事をアンタは言ったわ。一応この状況が解決するまではとは思ってたけど、アンタの今の侮辱だけは許せない」
そう言ってセラは黄金色の武器を出す。そしてその武器の接続部分を全て外して床にばらまいた。
「何のつもりだ? それは可変組立式の武器だろう? そこまで分解したらもう戻らないぞ」
「ククククククッ、アンタは何もわかってない。私はね、同じ相手に二度負けない。だからその余裕もここまでって意味よこれは」
なんかセラの自信が凄い。つまりはこれは無駄に武器を分解したわけじゃない……そう言うことか? これが屈辱の末にセラが編み出したリルフィン打倒の策略――――なのかな?
流石に武器に使えそうな気はしないんだけど……せいぜい巻きびしとか? 靴履いてないし効果的かもしれない。
「それは楽しみだ。我は相手を過小評価しない。今出せる全力で叩き潰すが信念だ。だからきっとお前にこれからも負ける事はない」
リルフィンはリルフィンで凄い事言ってるよ。どこまでも余裕を出して、二人の空気は一色触発の空気。何やってるんだろうコイツ等?
どうしてこんな事に……って、僕のせいか。だけど完全に目的がスレ変わってるよね。いつからアルテミナスの絡んだ国家間のプライドのぶつかり合いになってんだよ。
僕は既に蚊帳の外だし……どっちか大人な対応を取ればいいのにとか思ったけど、僕のせいでリルフィンの奴も熱くなっちゃってたのかも知れないな。引かないし。
そんな中、怯えてるクリエを抱いてるシルクちゃんと目があった。そうだ、二人とも彼女の言葉なら聞くだろう。僕はどうにかシルクちゃんにその意志を伝えようとジェスチャーをするけど、シルクちゃんはシルクちゃんでローレとの言い合いでナーバスになってる様子。
僕を見てペコリと一礼すると、クリエを連れて部屋の外へと出ていくよ。
(えぇぇぇぇ!? シルクちゃんに見捨てられた!?)
僕がそんなショックに唖然としながらも、誰か他に頼れる人を……と思いテッケンさんを見る。するとテッケンさんも疲れてるのか大きなため息と共に立ち上がり、スタスタと部屋の外へ。
何気に鍛冶屋も並んで行って、難しい話を二人でしながら消えていく。
(くっそ……こうなったら……もう頼れるのはお前だけだノウイ!!)
「おっしゃーーー! セラ様に自分は加勢するっす!! 自分の居る場所はセラ様の居る場所っすから……へへっ」
な・に・こ・い・つ・照・れ・笑・い・な・ん・か・し・て・ん・だ? バカ? バカなの? 煽るな!
「うるさい、アンタなんかいらないから、どっかいっときなさい」
「……うっす」
そしてノウイも外へと消えていった。
「邪魔も無くなったし、そろそろ始めましょうか?」
「そうだな。実力の違いを見せてやろう。そして俺たちのどちらが立ってるかによって国の優劣が決まる。勿論主の優位性もな」
「上等じゃない」
ジリジリと互いの出方を伺う二人。全く、こんな戦闘狂共にはついていけないぜ。僕もため息一つ付いて、何気に出ていこうとする。
だけどその時、足下にしがみつく何かが僕の移動を阻害する。一体何だ? 布を巻き込んで何かが僕の足下に居るぞ。
「い……行かないで」
そんなか弱い声と震える体の振動が伝わってくる。え~ともしかしてさっきまでそこに座ってたローレ役の人か? この人も逃げ遅れたんだな。お気の毒に……だけどローレが出てった所から出ていけば良いのでは? 何故にそれをしない。
「私はローレですよ。ここに居ますよ」
「もう良いよそれは。このままじゃあのバカ二人の戦闘に巻き込まれるぞ。そしたらきっとただでは済まないと思う。それでも良いのか?」
僕は自分の身の安全の為に小さなそのローレ(偽)を脅す。だってマジヤバい。僕達を挟んでバカ二人は威圧しあってるんだもん。このままじゃ絶対に僕達の場所でぶつかり合うよ。
「言っとくけど、今謝っても――――――――――殺すから!!」
殺すのかよ!? そして素早く細く黒い針を出して迫るセラ。何だったん分解した武器は!?
「負け犬は負ける前から良く吠える!!」
セラの言葉に負けない言葉を放ってリルフィンもそのコートを脱ぎ捨てて迫る。おいおい、コイツも本気だな――ってなんで二人してまず射撃的な武器を投げる!? 左右から迫る黒い針と白い針。不味い不味い、間に居る僕たち目掛けて飛んでくるーーーーーー!!!!!
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