命改変プログラム

ファーストなサイコロ

慌ただしき街



 慌ただしい音が響き、どこもかしこもドタバタしてる。僧兵に巫女さんとかが走り回り、遠くにはリア・レーゼの住民の長蛇の列。
 きっとみなさん世界樹にくっつくようにして建てられてる社の方へ避難してるんだろう。街もきっと戦場になる。だから奥の方へ退去してるってことだ。
 住民の皆さんはどこか不安気な顔色してる。だけどちゃんと説明してるのかな? 何もわからずに避難指示だけ受けての避難とか不満が出そうだよね。
 まあだけど周りの僧兵の人たちの慌ただしさをみれば、ただならぬ事態ってのが住民の人達も理解できるだろうし、変に不安を漏らす人はいないのかも知れない。
 それにみんなの必死差は伝わってるだろう。住民を今の内に避難させとかないと、万全な状態で聖獣軍団を迎え打てないもんな。
 一時的に奴らは退いたとはいえ、必ずもう一度来る。それは殆ど確定事項みたいな物だ。僕がメドゥーサ聖獣を打ち倒した。それが大きかったな。
 僕は雨が落ちる屋根をみる。激しい雨がまだ打ちつけてるよ。イクシードで払った雲は全てじゃない。戦場の限定的な部分の雲を晴らして竜の存在を消しただけ。
 リア・レーゼはまだまだ雨が続いてる。リア・レーゼの入り口部分でへたってる僕達にも巫女服来たモブリの方々が回復魔法を複数人で掛けてくれてるよ。


「生きてる事が不思議な感じね――特にアンタが」
「確かにもうダメだと思ってはいたね。だけどあの状況から逆転するとは、天晴れだよ。流石スオウ君だ。惜しむべきは僕達はその瞬間を見れなかった事だね」
「そうですね。いつの間にか音が収まってました。召還獣が土の壁を解除してくれるまで何がどうなったのかわからなかったです」


 みんなノームに守られてたからね。ノームもイフリートも描写はあんまりされなかったけど、頑張っててくれたのだ。まあイフリートの奴はただ夢中にバトルをやってただけ……みたいだった気もするけどね。
 ノームは本当に、一人で良く守りきってくれたよ。『儂は攻撃よりも守る方が得意なんじゃよ』とか得意気に言ってたし、ローレは適材適所な召還獣を寄越してくれてたみたい。イフリートは『ちっ、もう終わりか』とか不安漏らしてたけどね。結局あいつエルフ聖獣としか戦ってないし、もうちょっと担当しとけよな――と、今に成れば思うな。


「見れなくて私的には良かったですよ。どうせ無茶しかしてないんだし、幾ら命があってもこっちも持ちません。心配……はしてないけど、バカらしく成ります」
「おい、そこは普通に心配してるのに――で、いいじゃないか。なんでわざわざ否定するんだよ」


 セラの奴はもっと素直になって良いと思う。なんで目が合った瞬間に言い直した。


「うるさい。アンタを心配なんてするだけ無駄じゃない。無駄な事を私はしないのよ」


 そう言ってセラはそっぽを向いちゃったよ。全く、折角乗り切ったのに、その感動を分け合おうとは思わないのか? 


「ははは、しょうがないよスオウ君。それがセラ君だろ。だけど、一番君を心配してたのは他でもないかの――ぐふっ!?」


 何かを紡ごうとしたテッケンさんが粋なり殴られて回復の光の範囲外に出て、土砂降りの雨に打たれる羽目に。


「何やってるんだよセラ!?」


 幾ら何でもやりすぎだろ!! びっくりだよ。


「だってアイツが余計な事を……」


 悪びれる気がないな。手の骨を片手だけでポキパキしてるぞこいつ。それにいつもテッケンさんとかには敬語を使ってるのに、今アイツって言ったしな。本音出てる。そう思ってると、周りの巫女さん達がなにやら驚いた様子でこう言った。


「なななななんで動けるんですか!? まだ毒の排除は終わってませんよ!!」


 毒……確か通常の毒と違って神経毒だったらしいです。あのデカい蛇みたいなのが放ったのは。強力な酸と神経毒。それにやられてセラ達は動くことが出来なく成ったと言うことだ。あれだね。酸には耐えたけど神経毒まではシルクちゃんも予想してなかったって事だろう。
 で、実際今も動けない筈だったのに何故かセラの奴は動いて、テッケンさんを殴り飛ばした。その事に巫女さん達は驚いてる様だ。
 だけどそんな驚きを鼻で「フン」っといなしてセラはこう言うよ。


「そんなの気合いに決まってるじゃない。良くアンタが火事場のバカ力を自慢してるでしょ?」
「別に自慢なんてしてねーよ。てか、今出すくらいなら、戦闘中にだせよな」


 火事場のバカ力が無駄だろ。何で味方相手に出すんだよ。ここ一番ってここじゃないじゃん。


「私はそこまで無理しない質だから、そんな制御出来ないのよ。アンタみたいに慣れてないのっのの――」


 変な語尾を開発しようとしてる訳じゃなく、無理が祟ったのかセラはフラフラとなって僕の側に倒れてきた。やっぱりまだ毒は抜けてないらしい。
 まあ僕は毒受けてないからそんなセラをちゃんと受け止めてあげるけどね。いや、実際は微妙に受けたけど、ヒリヒリする程度だったんで戦闘に支障はなかった。


「大丈夫か? やっぱりまだ無理するなよな」
「ああああああ、アンタにだけは言われたくないわよ。てか触らないでくれる!」


 そう言ってセラは僕を必死に押そうとしてる……みたいだけど全然離れられない様子だ。力が一気に入らなくなったのか? 


「良いじゃないか。しばらくそのままで毒を抜ききるのを待とうじゃないか」
「テッケンさん……顔が凄い事に成ってますよ」


 しかも巫女さん達に腕を引かれる姿がどう見ても死に体だよ。テッケンさんも体動かない状態だから仕方ないけど、超哀れに見える。
 しかも折角回復をしてくれてる巫女さん達に二度手間掛けてるし、少しは反省して欲しい物だねセラに。だけどセラは理不尽に殴った相手にも横暴でした。


「何ふざけた事を言ってるのよ! こんな奴と密着したままなんて……」


 そう言ってセラは僕を見上げるよ。丁度僕もセラを見たから、至近距離で交錯する視線。なんだかセラの顔が赤い気がする。


「……ア……アンタが離れなさいよ。アンタは動けるんだからそれが出来るでしょ……」


 俯いてそう言うセラ。なんだか僕が悪い事したみたいな感じになってね? 端か見ると無理矢理セラを抱き止めてるみたいなさ。どういう事だよコレは。


「こっちだっていつまでもこんな事やってられるかよ。僕は既に回復済みだしな」
「なら、さっさと放せばいいじゃない!」
「その逆ギレはおかしいだろ!?」


 なんで僕がキレられるんだよ。全くセラの理不尽さは今に始まった事じゃないから別にいいけど。戦場では意外にも結構心配してくれてし、近づけたのかな~とか思ってたけど、どうやら勘違いだったみたいだな。


「あれは気の迷いよ。忘れなさい」


 静かなテンションでなんて事を言うんだ。マジじゃん。本気としか思えないテンションはやめろよな。なんか微妙に心が落ち込みながら僕はセラを壁に座らせるよ。
 何故にここまで言われたのに世話を焼かなきゃいけないのかの疑問もそろそろ募るよね。まあ仲間なんだからで納まる事だけど。


「回復してる時くらい静かにしとけよなお前等」


 なんだか騒がしいのに辟易したみたいに鍛冶屋の奴がそんな事を言う。こっちだって疲れてるのに騒がしくなんかしたくないっての。
 だからさっきまでは流れ落ちる雨を見つめて、雨の音に耳を澄ませてただろうが。騒がしくしたのはセラだっての。そんなセラは既に我関せずみたいに体丸めちゃってるから、何故かその言葉まで僕に向けられたみたいじゃん。
 なんてズルい奴。


「スオウ君は完全に回復してるのですか? 腕とかヒドかったですよね?」


 シルクちゃんの優しい言葉。ああ、なんだか心に染みるな。全くセラとは大違い……って訳でもないか。アイツも戦闘終わった直後とかは自分の体も大変なのに心配してくれた。
 けど余裕が出来るとコレだよ。セラの奴は適度に追いつめとく方が可愛いな。まあそんな事思うようには出来ないから意味ないけど。僕はシルクちゃんに手を掲げながらアピールするよ。


「この通り、全然オッケーだよ。やっぱり切り離されなかったから回復も早かったみたい」
「そうですか、それなら良かったです。でも本当は私が回復してあげなくちゃだったのに……そこだけが心苦しいです。パーティーを預かるヒーラー失格ですね」


 シルクちゃんは人の事にはスゴく優しいけど、自分に対しては厳しい一面がある。今もそんな感じで落ち込んじゃったよ。しょうがない事だと思うけど、やっぱり、パーティーのみんなを支えたいって思ってるんだよね。
 全く、少しはこの謙虚さをセラにも見習って欲しいものだ。僕は進んでシルクちゃんは慰めてあげたいって思う。


「そんな、あの状況じゃ仕方ないよ。それにシルクちゃんのおかげでみんな敵の攻撃に耐えられたんだろ? 十分だよ」
「それでも……私は誰にも代われないこのパーティーのヒーラーなんです。絶対に倒れちゃいけない。ヒーラーが倒れることはパーティーの壊滅を意味してます。
 それなのに一番回復を欠かしちゃいけないスオウ君だけを残しちゃうなんて……あり得ません。冷たい地面を感じながらスオウ君が死んじゃったら私のせいだって思ってました」


 瞳を悲しげに細める仕草がなんだか可愛い。睫も長くて、その儚さを演出してる様なさ……なんだかいいね。言葉の内容としてはシルクちゃんは本当に責任感が強い。
 気にし過ぎだよ。どう考えたってあの場で僕が死んだってそれはシルクちゃんのせいなんかじゃない。みんな僕のワガママだった。訳の分からない行動乙で済ませて良いことだ。
 まあだけど一番近くで僕に関わったみんなはそんな風には思えないんだろうな。みんな僕を助けようといつだってしてくれるし、それを思うと今回の行動は自分でもアホやったなって思う。
 結果的にはどうにか成ったけど、どうにか成ったのが不思議でならないよね。まあ取りあえず、僕がシルクちゃんに言えるのはこれだけだな。


「大丈夫。僕は今もこうして生きてるし、結果オーライだよ!」


 すると流石のシルクちゃんにも溜息吐かれてこう言われた。


「超結果論ですよそれは。私はあの時なにも出来ずにリタイアした自分が許せないんです。もっと色々と出来たはずです。もっともっと注意して、私だけのスキルで様々な対処を施しておけばきっと最後までいけました。
 でも結局はこの様です。ヒーラーの癖に早々にやられちゃって、結局ピクの力もあんまり引き出せずじまいです。
 私にこの子は荷が重いのかもしれません。LROで唯一のサポートモンスターのピクはきっとこれからの為のデータ収集も兼ねてると思うんです。
 だけど私じゃそんなにピクを活躍させてあげれないなって……ローレ様ならまた違うかも知れないですよね」
「う~ん、それはどうだろうか?」


 ローレがピク? 想像も出来ない。てかローレの姿をまだまともに見たことないし、想像できる訳もないか。だけどモブリの背丈でピクって……どっちがサポートモンスターかわかんないよな。


「僕的はシルクちゃんにピクはベストマッチだけどな。それにシルクちゃんがマスターだから出来る事もあると思うよ。更に言うとピクを使うってちょっと違う感じがする。
 ピクは今までの武器とは違うじゃん。感情を表すし、シルクちゃんとピクは友達のようなさ……そんな感じじゃない? きっとピクはシルクちゃんで良かったって思ってると思うな」


 僕はそう言ってシルクちゃんの膝でダルそうにしてるピクの顎を撫で撫でする。ピクも毒受けてるからね。まだまだ本調子じゃないんだ。
 ピクは何かを伝えたいのかちょっと頑張って「ピッピィ~」と鳴く。なんだか僕の言葉に同意してくれたと感じるのは僕だけかな? でもやっぱりピクにはシルクちゃん。この組み合わせは外せないと思うんだよね。
 なんてたってビジュアル的に最高です。白で清楚で可憐なイメージのシルクちゃんに、桜色で綺麗なドラゴンのピクはもうベストマッチとしか言いようがない。


「友達……ですか。そうですね。ピクと私は友達です。ピクは私でも良いんだよね?」


 頭を優しく撫でながらシルクちゃんはそう言うよ。すると気持ちよさそうにその瞳を細めたピクが体を細かく頭から尻尾の先まで振動させて「ピッピー」と元気に鳴いた。
 これは誰でもわかる「OK」の意だな。


「ありがとうピク。それにスオウ君も」
「僕なんかしたっけ?」
「生きててくれてって意味です。私は私を嫌いを成らずに済みました。私たちが意気込んで守るって言ってたのに、結局守られたのは私たちでしたね。
 だけど今度はちゃんと守って見せます。もう一度チャンスもくださいね」


 そう言ってニコリと微笑んでくれるシルクちゃん。もう本当に涙で前が見えづらく成りそうだ。本当にシルクちゃんはバカやった筈の僕を全然責めずに、それどころか自分にもう一度チャンスをくれって……どれだけ出来た子なんだよ。
 その健気さと優しさにノックダウンされそうです。僕にとっての女神はシルクちゃんに確定だな。シスカ神がどれだけの美女か知らんけど、シルクちゃん派を僕は貫くよ。例えこの世界を敵に回してもね。


「チャンスって……逆に頭下げてもお願いしたいくらいだよ。こんなにワガママ通して心配掛けたのにまだ見捨てないでくれるんだからさ。ホント、ありがとう」


 これは僕の誠心誠意の言葉です。幾ら感謝しても仕切れない。みんなの為にも僕は死ぬわけにはいかないよな。みんなに付き合わせてるこの冒険。それがいつか笑い話に出来る様に成るにはさ、誰も居なく成らない事が大切だ。


「そんな見捨てるとかないですよ。スオウ君の事も、セツリちゃんの事も私は大好きですから。みんなでまた冒険出来たら良いですよね」
「……そうだね」


 やばい、シルクちゃんの背後から後光が見えて目頭が熱くなった。もうマジで我慢できないよ。もしも許される事なら、抱きしめてあげたいくらいだ。
 でもそんな事出来る訳ないから、僕は自分の拳を握りしめて我慢する。許されないよね。特にセラの奴が許さないだろう。
 絶対にまた火事場のバカ力発動するよ。異様にシルクちゃんの事信仰してるからなセラの奴。今もシルクちゃんの隣でふてくされてるし……てか、絶対に聞かれてるよねこの会話。
 なんか恥ずかしい。そう思ってると頭に響く声が聞こえる。


『少しよろしいですか?』
「ん? ああ」


 エアリーロの声。イフリートもノウイもみんなをリア・レーゼに運ぶと同時に消え去ったけど、エアリーロだけはまだ残ってるんだよね。どういう事だろうか?
 僕は門の外に降りてきたエアリーロの元へ。空を飛んで危険がないかチェックしててくれたんだよね。僕はシルクちゃんに「ちょっと行ってくる」と言って門の外へ。僧兵がガシャガシャと魔法陣の準備とかしてる間を抜けるよ。
 そして屋根のある所でお札を使って雨避けもバッチリだ。


「どうした?」
『いえ、何がどうと言うことは無いのですが……』


 そう言ってエアリーロは遠くの森を見つめる。聖獣共が撤退していった森だ。メドゥーサが倒されて、いきり立ったモンスター共は更に荒々しく成ってたから、話と違うとか思ったけど、イフリートと戦ってたリーダー格のエルフ聖獣がモンスターと、僕に向かってた他の聖獣を制してくれたんだ。
 そして引き連れてあの森へと帰っていった。こんな捨て台詞を残してね。


「貴様だけは必ず殺す。そして世界樹も必ず取り戻す。これで勝利したと思わない事だ」


 聖獣達が潜んでると思うと、遠くに見える森がすっごく不気味に見える。きっと向こうもこっちを監視してるんだろな。


『奴らは必ずまた来ます』
「だろうね。来ない訳がない」
『ですがこちらにも今は準備の時間がある。それはとても大きな事です。本当に貴方は良くやってくれました』


 おお、なんだか召還獣に誉められるって変な感じだな。それに僕だけの功績じゃないだろ。エアリーロがいなかったらどうにも出来ずに死んでたしな。


『私は結局使われるだけの存在です。私自身では何も出来ない。ですから私を上手く使った貴方の功績ですよ。主もこれでどうにか胸をなで下ろしてる事でしょう』
「そう言えば報告とかに行かなくちゃだよな。聖獣の封印には失敗だし、今後の為にもさ」
『そうですね。それが良いでしょう。何なら私が運びましょうか? 成層圏位まで飛べますよ』


 おいおいとんでもスペックさらっと言ったな。いけたとしてもそれって僕死にそうじゃね? 大丈夫なのかな?


『大丈夫ですよ。そこら辺は私の風が守ります。行きますか?』


 万能な風に守られて優雅に宇宙を目指すのも新鮮味があって良い気もする。けど……僕は後ろのみんなが居る方を見るよ。そして首を横に振る。


「いや、いい。ローレの元にはみんなで行くよ。僕だけ先行したって意味ないしな」
『それもそうですね。では私もそろそろ消えます。あまり主に負担は掛けたくないので』


 自分で消えたり出来る物なのか? 案外召還獣も自由なんだな。てか、それならどうして今まで居たんだ?


『一応外を警戒する役目は必要でしょう? まだ私達が戻ってきた時はバタバタしてましたからね。守りの為に外にまで気が回ってなかったので、私が警戒してたのです。
 ですがそれなりに準備も整って来たようですし、そろそろ任せても良いかなと』


 なるほどね。確かに戻ってきた時は、スゴい混乱してたもんな。街中あび叫喚の嵐だったし、僕達が聖獣を追い返せなかったら、絶対に何も出来ずに終わってただろう。それだけ兵としてのレベルがちょっと低い。
 まあNPCの軍団なんてそんな物なのかな? プレイヤーが集まってればまた違うのかも。でも軍の殆どがプレイヤーだったアルテミナスとは随分違うものだよね。アルテミナスは国のトップがプレイヤーだからって事なんだろうけど、一応ここのトップもローレの筈だよね?
 でも元から僧兵って言う組織があって、それをローレは引き継いで使ってるとかそんな感じなのかな? でもそれならアルテミナスにだって元の軍はあった筈……だと思うんだけど……そこら辺は一体どうなってるのだろうか? 一般庶民の僕にはそこら辺のシステムは良くわからない。
 国の上に行くなんて、この三百万以上居るプレイヤーの中でもほんの数人だもんね。よくよく考えるとかなりスゴいな。


『そう言えば気になる事が一つあります』
「何?」


 僕がシステムについて考えてると、気になる事を言うエアリーロ。今度は遠くの空を見つめてる?


『風を切る野蛮な音が聞こえるんです。しかも大量に。少し離れた場所で止まってる様ですが、これはウチの船と同タイプの動力音です。
 後、知らない音もあります。召還獣としての勘ですが、まだまだこの街は荒れそうです』


 イヤな勘を働かせるな全く。でもそれが本当だとしたら不味いかもしれない。それにエアリーロの言葉はかなり説得力があるよ。
 それに心当たりあるしね。忘れてたりはしてないけど、僕達の敵は聖獣だけじゃない。寧ろ聖獣の方がポッと沸いて出た存在だ。
 僕達の当初の敵はクリエを狙う元老院……もとい、その支配化であるサン・ジェルク軍だ。てか、まさかこんなに早く動くとは予想外何ですけど。
 教皇は何やってんだよ? 取りあえず、本当に奴等が来てるのか知る必要があるな。


「それも含めて確認する為に、なるべく急いでローレの所に行ってみるよ」
『お願いします』


 そう紡いでエアリーロは消えていく。降りしきる雨の中、僕はエアリーロが見てた方向の空を見上げる。この空の向こうに来てるかも知れない、サン・ジェルクの艦隊を見据える様に。

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