命改変プログラム

ファーストなサイコロ

終わらない戦い



 不気味に輝くその瞳。まだ奴は生きている。僕達は再び武器を構える。


「まだ終わらないか……」
「だけどもうボロボロだ。畳み掛けようじゃないか!!」


 テッケンさんが真っ先に走り出し、それに僕達も続く。だけどそんな僕達を追い越して迫るのは、セラの巨大な手裏剣だった。巨大な手裏剣はボロボロの聖獣の胸を斬り裂いて回転しながら戻っていく。
 聖獣は今の攻撃で仰向けに倒れる。だけどまだHPは残ってるし、僕達は止めを刺すまでは止まらない。どんなに残酷でもこいつをこのままにはしておけない。
 すると壊れた機械仕掛けの人形みたいな音を出しながら聖獣がひび割れた天井へ向けてその腕を伸ばし出した。それは「外へ出たい」事への現れか。
 でも……それを許すわけには行かないんだ!! ようやく追い詰めたんだ。ここで逃がす訳にはいかない……そんな事出来るわけがない!! 僕達は止めを刺すために聖獣へと向かって走り出す。


「あわわ~、クリエのせいじゃない……クリエのせいじゃないよね?」


 どこからか聞こえてきたそんな言葉。僕は思わずその足を止める。


「クリエ?」


 でもアイツはここに連れて来てない。まさか壊れ掛けの空間だから外のクリエの声が聞こえてるって事か? あり得なくはないよな。雨だってこの空間に進入してるし、外の音が入ってきてもおかしくはない。
 するとその時だ。テッケンさんと鍛冶屋が同時にその武器を降り卸した時、いきなり聖獣は気が狂った様な叫びを上げる。
 その声は今までのうめき声じゃない。意志を持って叫んでるって感じの声。声だけでビリビリと空気が震えてる。まだ何かあるのか? 
 そう思ったけど、二人は攻撃の手を止める事はしてない。どの道これで終わり。そう思った。幾ら激しい声を出したってそれは所詮声なんだ。攻撃効果はない。確かに一瞬ビックリしたけど、それだけだ。
 けど、どうやら聖獣はそれだけじゃなかったみたいだ。二人の攻撃が自身に降り卸される前に、今度は例の強烈な閃光を放つ。視界が光に包まれて何も見えなくなる。


「くっ、またか!」
「往生際が悪い。だが、そこに居る事に変わりはない筈だ!!」


 そんなテッケンさんの言葉の後に、大きな音がこの場に弾ける。どうやら視界を奪われても二人とも関係なしに攻撃したみたいだな。ナイス判断だ!!
 慣れのせいか今度はなかなかに視界の回復が早い。既にボンヤリとだけど見える。これなら粉々になった聖獣の確認位は出来るだろう。


「テッケンはどうだった?」
「そうだね……堅い感触はあまりなかったかもしれない」


 攻撃をした二人がそんな言葉を交わしてる。まさか……あの状態で避けたのか? 僕達は攻撃の跡地に目を凝らす。う~んバラバラに成った……様に見えなくも……そう思ってるとサングラスをまだつけてるリルフィンから声が上がる。


「外してる!! 奴は向こうだ!!」


 僕達はリルフィンの指さす方へ視線を向ける。すると確かに何かが動いてるのがわかる。空間の端っこ、そこで何とか立とうとしてるのか? 一体何がアイツをそこまでさせるんだ? と、言うかあの状態で何がしたいのかよくわからない。
 既に僕達を倒すのは不可能な筈。それなのにああまでしぶとく生きようとするなんて……システムに沿ったモンスターなら潔く倒されてろよ。


「たく、情けないわね!!」


 そう言ってセラが再びその手裏剣をブン投げる。なんか今度は炎を的って火車みたいになってるぞ。セラも決めに掛かったな。
 実際誰が決めても良いし、そろそろマジで終わりにしたい。だから僕達もセラの攻撃に、この思いを乗せるよ。


「「「いっけえええええええええええ!!」」」


 炎を的った手裏剣が聖獣へと迫る。すると再び聖獣は閃光を放った。同じ手を何度も何度も、既にそれしかもう出来ない事を自分で言ってる様な物だ。
 それに既に攻撃はこっちの手から離れてるんだぞ。幾ら僕達の目を潰したって、手裏剣は止まりはしない!! 直後、当たった事を知らせるかどうかはわかんないけど、爆発が起きた。そんな爆炎の中、手裏剣が炎を無くしてセラの元へと戻ってくる。


「今度こそやったのか?」
「当然、奴はこれで粉々よ」


 得意気に胸を反らすセラ。確かに避けれたとは思えない。奴は立つので精一杯な状態だった筈だからな。けれどその時、パシャパシャと激しく音を立ててリルフィンが走ってる。そしてローブを脱ぎ去って、その白銀の髪を逆立てて、態勢を低くしてまるで狼の様に一声「がぁ!!」と叫ぶ。
 するとその音の大きさが凄まじく、水が変な振動の仕方をしたよ。僕達も思わず耳を塞いだ。


「ちょっと、一体何なのよ!!」


 セラが耳を押さえた状態で抗議の声を上げる。無理もない、僕もそう思ってた。するとリルフィンは勢い込んでこう言うよ。


「奴はまだ生きてる。あそこだ!!」


 そう言って再び例の爆音の様な叫びを上げる。何だこいつ? まるで音の大砲でも撃ってるかの様な叫び声だぞ。 獣か何かか? そう思いながらも僕達の視線はリルフィンがその音を向ける方へ。すると空中に確かに聖獣の姿がある。全身にはヒビが入り、動く度にその亀裂が広がって行ってるにも関わらずに、アイツはまだ動いてた。
 ここまで来ると天晴れだな。けど何で空中に? セラの攻撃の爆風でも利用したのか? でもそれにしても無謀だろ。今の聖獣の状態じゃ、着地の瞬間に粉々に成りそうな物だ。それこそあんな高く上がったら……高く? 
 リルフィンの攻撃に当てられて空中でクルクル回ったり弾かれたりしてる聖獣。だけどそもそも何であんな高くに上がる必要があったんだ?
 そもそも何で逃げるのか分かんないし……


「くっ……しぶとい!!」


 そう言って音の砲撃を連発するリルフィン。聖獣の腹の一部分がそれによって欠けたりしてる。みんなそれを見て、やれると思ってる様だし、僕だってそう思う。みんなには苦し紛れに逃げてる様に見えるだろう。
 だけど……何か目的があるように僕は感じるよ。でないと、あんなボロボロになっても諦めないなんて事はない。何かその魂に刻んだ物があるから、あのモンスターは無様でもみっともなくてもその場所を目指してる……だけどついにはその仮面までもリルフィンの攻撃で剥がれ落ちる。だけどその時僕は気付いた。奴がどこを見据えてるのか……リルフィンの攻撃に翻弄されながら、どんどん上昇してる聖獣。その顔はどんな衝撃を受けてもその場所を見据えてる。
 まさか……アイツ!!


「ダメだ!! 攻撃をやめろリルフィン!!」


 だけどその時、放たれた音の砲撃に聖獣が今までにない対応を見せた。音の砲撃を掴んで、そして弾けるタイミングを見計らってその衝撃を利用しての最大跳躍。その勢いで両足が砕け散ったけど、聖獣はそんなの気にしちゃいない。
 そして聖獣は天井に開いた亀裂から、外へ出ていった。


「なっ!」
「アイツはきっとこれを狙ってたんだ。戦闘で空間がボロボロに成って、自分が出やすく成るようにさ。まああそこまで追い込まれるのは予想外だったろうけど、あの状態でもアイツは上手く僕達を利用したんだ」
「くっそ……私はなんて事を……奴がここから出たがってる事は分かってた筈なのに……」


 そう言って歯を喰い締めるリルフィン。だけどそんな場合じゃないぞ。


「悔しがってる場合じゃない! 僕達も奴を追いかけて外に出るぞ! まだ間に合う。奴には既に足がないんだからな!!」


 出られたからってあの状態じゃ素早く動く事も出来ない。だからまだ間に合う筈だ。
 僕達は急いで出口へ向かい、再び鍵を使って外へと戻る。土砂降りの雨が打ちつける中に戻ってきた僕達が見たのはそれは最悪の光景だった。




「スオウ……」


 打ちつける雨の中でそんなか弱い声が聞こえた。それは間違いなくクリエの声だ。アイツ……どこに? 封印の祠から戻るとお札の効果はなくなってるから厄介だな。
 また掛け直すのが面倒で僕はそのままクリエを探す。すると雨が不自然に避けてる場所を見つけた。それと一緒に引きずった様な後……イヤな予感が直感でしたよ。
 僕がその後を辿って光の方へ進むと、聖獣に抱えられたクリエの姿があった。足がないから、聖獣は片手でクリエを確保したまま、もう片方の腕で地面を掴んで体を引きずりながら進んでた。これはその跡だったと言うわけだ。
 僕を見つけたクリエは、泣きながら何度も何度も僕の名前を呼ぶ。


「スオウ! スオウ! スオウ!!」


 僕はセラ・シルフィングを構えて叫ぶ。


「止まれ!! そいつを放して貰おうか」


 僕の言葉を受けて、聖獣は引きずるのを止めて止まった。こいつの足じゃ逃げられない事は明白。本当に、もうそろそろ諦めろよな。
 こんな事したって、なんの意味もない筈だ。自身の体から破片をコボしながらこちらを振り返る聖獣。仮面が無くなったその顔に僕は思わずギョッとした。


「なっ……」


 それ以上何も言葉が出ない。だって仮面に隠れてた部分は明らかに他の箇所とは違うんだ。体も顔の半分も石膏の様な白く堅い素材だから仮面が無くなってもそうだと思ってた。
 だけど実際は仮面に隠れてた部分は顔がない。内部が暗くなって仄かに蛍の光の様な光がその内部で煌めいてる。それに外側に黒い残滓みたいな物が染み出てた。
 そして更に驚く事が起こる。


「う……ゴク……な……」
「しゃべっ!」


 まあ確かに人型してるから喋ってもそこまで違和感ないけど、だけど今までは変なうめき声と叫び声しか上げなかった奴が喋ったんだ。そりゃあ驚くよ。


「スオウ君! ――きゃあ!」


 追いついてきたシルクちゃんがそんな声を上げて聖獣の顔なしの姿に驚く。他のみんなも大体同じ反応だよ。


「スオウ……」


 聖獣の腕に絡めとられてるクリエが苦しそうな声を上げる。あの野郎、暗に絞め殺す的な警告をしてるのか? これじゃあ迂闊に動けないな。
 打ちつける雨が体の熱を奪っていく。頭の天辺から足のつま先まで既にビシャビシャ。まあ雨に打ちつけられる前からそうだった訳だけど、こうずっと水に当てられ続けると底冷えしてくる。
 だけど熱が冷める事は良いことだ。冷静な判断ってのが出来るからな。クリエが人質に取られて、実際は激高したい所だけど、それじゃ何も解決なんてしないんだ。
 それよりも僕だけじゃない出来ない事をしよう。僕には頼りに成る仲間が居てくれるんだからな。


「大丈夫だクリエ。必ず助けてやる。だから安心しろ」
「…………うん」


 クリエは小さく頷いてくれる。クリエは僕を信じてくれてるんだ。


「人質とは随分汚らしい奴ね。消し炭にしてやろうかしら」


 セラが冗談か本気か分からん事を言ってる。だけどそれもアリかなって思うよ。そう、奴は消し炭にしないと気が済まない。


「セラ、消し炭にするなら聖典を回り込ませろ。出来るだろ?」
「――当然。てか、私に命令しないでくれる。お願いしなさい」
「お前な……そんな事してたら気づかれるだろ。これも貸しにしとけよ」


 一応聖獣だって警戒してるだろ。だから慎重を期してるんだ。しかも一刻も早くクリエを助けたいから、貸しでも何でもしといてやるさ。
 そう思ってると、セラはちょっと意外な事を言ったよ。


「貸しね。ふん、いらないわよそんなの。別にお願いなんて冗談だし……私はそんな小さくないの。やってやるわ、何の見返りもなくたってね」


 そう言ってセラはこっそりと聖典を一機放つ。それは僕達の後ろを迂回して、雨の中へと消えていった。思わぬ所でこの雨が役に立ったな。
 これだけの雨なら、かなり近づかないと見えないし、気付かれない。ついでに聖典は足音とか無いしね。こっちは聖典が準備に入るまで、慎重に睨み合いをしてるしかないかな。
 そう思ってると聖獣は少しずつ再び進み始める。僕達が手を出せないと知り、行動を再開したみたいだな。僕達は見失わない様に、一定の距離を開けたままジリジリと追いかける。
 下手な行動は取れない……でも大丈夫、今の聖獣の移動スピードは赤ちゃんのハイハイ位だ。焦ることはない。どうやら森を目指してるみたいだけど、まだまだ森も遠いしな。
 すると聖獣は森へ向かって変な声を出し始めた。今までのうめき声や叫び声、はたまた人の言葉を真似た物でもなく、どちらかと言うと、綺麗な分類の声だ。


「何?」
「森へ向かって何かを伝えようとしてるみたいですね」
「何かって何を?」
「それは……ちょっと分かりませんけど……」


 セラとシルクちゃんと僕は、そんな会話をしてこの声を警戒するよ。綺麗だけど……なんか不気味だ。遠くの森は輪郭しか見えない。別段変わった様子も無く、実際この雨だからその声が届いてるかも微妙そう。
 けどモンスターは五種族と違って野生的だからな。僕たちよりも十倍位の嗅覚や聴覚があってもおかしくない。野生ってその位普通だろ。
 それに何をやってても、こいつが彼処までたどり着く事はない。それは決定事項だ。ここまで追いつめて、逃がすなんて事は出来ないしな。
 土砂降りの雨の中を、聖獣はみすぼらしく這いずって進む。音を途切れさせずに必死に森を目指してく。


「スオウ、今から奴の腕を狙うわ。タイミングを逃さずにアンタが救出しなさい」
「良し、分かった。頼む」
「それなら僕達は、スオウ君がクリエ様を救出した時を見計らって一斉に聖獣を攻撃しよう。それで終わりだ」
「そうですね。よろしくお願いします」


 段取りは決まった。僕はセラ・シルフィングを握る腕に力を込める。そして一回髪をかきあげて、滴る水を振り払う。
 まあ雨は降り続けてるから意味はないけど、一回水を振り払って、気持ちを引き締めたかった。


「行くわよ」


 セラのその言葉の瞬間、雨のカーテンをくり貫いて金色の光が聖獣のボロボロの腕を直撃する。流石セラ、ナイスコントロールだな。
 聖獣の声が綺麗な声から叫びに変わり、聖獣の腕がその攻撃で崩れた。その瞬間に解放されるクリエ。僕はそんなクリエをダイブしてキャッチするよ。


「クリエ!!」
「スオウ!! スオウ!! スオウ!!」


 何度も何度も僕の名前を連呼して首に抱きついてくる。怖かったんだな。それが伝わってくるよ。僕はちらりと聖獣の方を見る。するとそのくり貫かれた様な顔面の中の光と目が開ったような気がしたよ。
 だけどそれも一瞬。僕は握ってたセラ・シルフィングを凪いでベチャベチャに成った地面の泥を巻き上げて聖獣から離れる。
 視界を奪って僕達が離れたタイミングでテッケンさん達が一斉に聖獣へと襲いかかる。これで本当に終わりだな。人質を失って、聖獣一機の攻撃でさえも耐えきれないその体じゃ、絶対にこの一斉攻撃を耐えきれる筈がない。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 テッケンさんに鍛冶屋、そこにリルフィンも加わっての一斉攻撃。だけどその攻撃は地面から出てきた大きな蔦みたいな物に阻まれる。


「何!?」


 更に蔦は周囲から次々と出てくる。聖獣の力? だけどこんな事が出来るなら、体を引きずる意味なんて無かった筈だ。攻撃が阻まれた三人は別の蔦によって弾かれる。


「みんな! ――つっ!?」


 弾かれたテッケンさん達の安否を心配してた僕達にも蔦は迫って来た。クリエを抱えた僕は蔦の連続攻撃から、クリエを抱えて素早く逃げる。これじゃあ近づくことが出来ないな。


「ちょ!? なんなのよコレ?」


 さっきまで優位な位置に立ってた筈なのに、いきなりの蔦の襲来にパニックに陥ってるよ。みんなそれぞれに自分の身を守りながら反撃してるけど、次々に出てくる蔦に苦戦してる。


「スオウ……」
「大丈夫だ。こんな蔦にやられる奴はいないさ」


 僕はクリエを安心させる為にそう言いながら、襲い来る蔦を切り伏せていく。この蔦、数は多いけど強い訳じゃない。太くてそれなりに頑丈だけど、セラ・シルフィングなら一発で切れる。


「スオウ君、聖獣が!!」


 そんな声がどこかから聞こえて、僕は聖獣の方へ目を向ける。すると蔦に巻かれて聖獣が立ち上がってる……と言うか、持ち上げられてる。
 地上から三メートル位高い位置からこっちを見てるような……もしかしたらあのまま蔦を利用して森の中に消えようとしてるのかもしれないな。
 それは不味い。折角あそこまで追い込んだんだ。ここで逃がす事なんかしちゃダメだ。僕はセラ・シルフィングに雷撃を帯電させる。そして襲い来る蔦を切ると同時に、青白い雷をスパークさせる。
 すると雨で濡れてるのも相まって、全ての蔦にその雷撃が流れた。青白い雷撃の光が蔦を包むと、地面から地鳴りの様な音が響きだす。
 そして聖獣が掲げられてる真下から、本体が姿を現す。それはなんと貝みたいなモンスターだった。植物系かと思ったら貝かよ。
 その貝の開いた口から沢山の蔦がニョキニョキと延びてるんだ。だけど土の中に居るだけあって、なんか苔とか付いてて綺麗じゃない。貝殻からはなんか草とかも生えてるよ。
 しかもかなりデカいモンスターだ。有に四・五メートルはあるデカさ。口を開いた状態がって事ね。体の大きさは更にデカい。こんなのが居て気付かないとは……元からその場に居たんだろうか?
 もしかして聖獣が呼んだとか? だけどこいつは移動できそうには見えないな。罠を張って獲物が通るのをジッと待つタイプのモンスターじゃなかろうか。
 聖獣の奴の運が良かったって事か……だけどその運もこれまでだ。本体が出てきたのなら、その本体を潰すだけ。


「よくやったわスオウ!!」


 そう叫んでいち早く動いたのはセラだ。展開してた聖典で真っ先に本体の貝を攻撃しだした。勿論貝の堅い部分じゃなく、大きく口を開いてる部分を攻撃してる。
 だけど効いてるのかはデカすぎてわかりにくいな。蔦も口いっぱいにあるし……流石に密集してる所は防御力高いだろうしな。
 けどやりようはさっき見つけた。僕は手近な蔦を切りつけてそこからまた雷撃を全体に浴びせてやる。すると大きく貝がガンガン揺れる。これは分かりやすい反応だ。しかも地味だろうけど、聖獣だってこの攻撃は届いてる筈。
 地味に死んでくれる事を僕は期待してるよ。僕は次々に蔦を切り電撃を貝にぶち込んでいく。そんな僕を見てシルクちゃんや僧兵の人達も雷系の魔法で攻撃しだす。
 どんどん削られて行くHP。するとその時、空から雨じゃない何かが降ってきた。


「うおう!?」
「きゃあ!?」


 所々から悲鳴が上がる。地面が揺れる程の衝撃を伝えて落ちてきたのはなんと木だ。デッカい森の木が、まるまる一本引き抜かれた感じで降ってきた。


「おいおい、今度はなんだ?」


 森の方を見ると、なんだか森全体がザワザワと動いてる様に見えなくもない。すると今度は木が次々と落ちてくるよ。


「なっ――ちょ――これは」
「明らかに僕達を攻撃してるよ。別のモンスターの襲来だ!」


 テッケンさんの言葉にみんな気を引き締める。マジで次から次へと……そう思ってると、雨の中から突然、人の形を模した木の人形みたいな奴が剣を振り回して襲ってきた。
 僕はセラ・シルフィングで受け止めて、凪払う。けどこいつらは一匹二匹じゃない。次々と現れてる。そしてその時、更なる予兆を告げる光が四本、曇天の空に突き上がる。

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