命改変プログラム

ファーストなサイコロ

ピンチの開始



 何かが割れた様な音……そして光を反射する透明な欠片が周りに降り注ぐ。


「え? え? 何を壊した?」


 訳が分からないけど、阻むものがなくなったイクシードのウネリは宇宙空間へと伸び伸びと伸びていく。伸びて……あれ? こんなに今まで伸びたっけ? 色々な疑問が一杯だけど、とりあえず今は腕を上へ向けとかないとな。油断したらまた大惨事に成りかねない。


「キラキラして綺麗だね! 星屑が落ちてきてるみたいだよ!」


 そう言って離れた所でハシャいでるクリエ。たく、お気楽な奴はいいな全く。


「今の結界じゃないですか? 世界樹を守る……結界」


 シルクちゃんがボソッととんでもない事を口にした気がする。どうにかして耳から追い出したいワードだったな。華麗に無視しとこう。


「張られてるんでしょうか?」
「確か張られてた筈だ。だがまさか今のが……」


 遠くでイヤな会話が聞こえてる。世界樹を守る結界とか、どう考えてもヤバいだろ。それを壊すとか極刑じゃね? 僕は内心ヒヤヒヤしてます。すると突如音楽が鳴り響く。


「主からの通信だ」


 そう言って通信用のウインドウを表示させるリルフィン。一体何事……なんかイヤな予感がビンビンする。僕の第六感がそう告げてる。
 てか全然関係ないけど、今のしっとりとした癒し系サウンドは何なの? 着信を相手毎に変えられる事は知ってたけど、NPCも出来るんだね。
 てか、今の音楽がリルフィンがローレに抱いてるイメージソングなのかな。なかなか納得できない選曲だ。


【ちょっとフィンフィン。アンタ達何してるのよ。私が定期的に補強してる結界消えたわよ】
「すみません主。スオウのバカが、自分のスキルを暴走させまして」
【全く、あのバカは。自分の力も操れないなんて終わってるわね。そこに居るんでしょ? ちょっと見せなさい。直接言いたい事があるわ】


 おいおい、二人して失礼な事をペチャクチャと良く言ってくれるじゃねーか。そう思ってるとリルフィンがウインドウをこちらに向けるよ。横目で見ると、慌てて扇子で顔を隠すローレが見えた。
 アイツ今絶対に油断してたよな。惜しかった。もう少しで素顔が拝めたのに。そう思ってると、こっちを見れてるかどうかわかんないローレがため息一つにこう言うよ。


【ちょっとそこのバカ。何してくれるのよ。今アンタが壊した物がどれだけ重要かわかってる? わかってないわよね。
 土下座しても許さないけど一応土下座しなさいよ】
「許さない宣言されてるのに誰がやるか!」


 相変わらずふざけた事を全く動じずに抜かすなコイツは。その大胆不敵さにビックリだよ。ある意味大物か……それかやっぱり大概のアホなのかだな。


【ふ~ん相変わらず生意気ね。私に対する敬意って奴が見えないわ】


 だろうね。そんなん無いもん。


【取り合えずアンタが壊したんだから謝るのは当然でしょ。人として】


 コイツに人としての常識を説かれるなんて屈辱。だけどそれ所じゃないんだよ。この状況見てたらわかるだろ。


【あ~あ、不用意にその水を飲むからそうなるのよ。取り合えず効果が切れてから土下座しないよね】
「まだ言うか。てか、何なんだよこの水は!?」
【フィンフィンから聞いてないの? それは世界樹が生成する神聖な水よ。光ってる間はその効果が発生してるって事。私は『スーパーモード』と呼んでるわ】


 何得意気に中二病を宣言してるんだよ。スーパーモードってネーミングセンスねーな。なんかもっと無いのかよ。まああったとしても言わないけどね。


「じゃあこの水の効果は、自分の能力を引き上げるとかで良いんだよな? この光が続いてる間は」
【まあ大体はね。だけど能力を引き上げるってのは厳密には違うわね。その水は自分に最も必要な部分の力を上げるだけ。それが感覚なのか能力なのかはその人次第よ】


 必要な部分……じゃあセラが感覚だったのは、それが必要な部分だったって事か。確かにそのおかげで聖典の操作は格段に向上したな。てか、いつの間にかクリエもセラも光が消えてるな。
 効果は大体三分位? それなら僕も後少しで……取り合えずそれまではこの態勢で耐えるしかないな。


【だけど……まさか暴走とかちょっと考えられないわね。その水、『浄神水』は言ったとおり必要な部分を強化した状態になるわけだけど、だからって暴走はないわ~。
 必要な物が大きすぎるとか? それに今のアンタは追いつけないのかも】
「そんな事言われても……」


 こっちはこれでも急いで成長してきた気で居るんだけどな。幾ら敵が規格外に強くても、こっちの成長は規格外にならないんだから不利すぎるんだよ。するとここで何か変な事をローレの奴は言ったよ。


【まあ後考えられるのは、そもそもの力の前提がおかしいから、暴走してるとかかしら? その剣って流星とかついてるんでしょ?】
「まあ一応」


 シルフィングの時から『流星双剣』ってカテゴリーだった。だけどそれが何だ? 前提ってどこだよ。


【だから私的に見たら、アンタのその力のどこに流星があるのかなって事よ。どう見ても風と雷でしょ? 流星って感じじゃなく無い?】
「言われてみればそうかも知れないな……でも流星の力の形ってどんなだよ。イメージ的に近そうな風と雷を使ってるんじゃないのか?」


 考えた事も無かったけどさ、今更この力を否定されても困るっての。ずっとこの風のウネリとかに助けられて来たんだしな。今更流星っぽく無いからイヤだ、とかあり得ないから。


【まあ名前が全てを表す訳じゃない。それはわかってるけど、なんだか納得できないのよね。だってアンタのその武器は特別でしょう。LROに幾つもあるシルフィングとは違う存在。
 それならもっと流星っぽくても良いかなって。特別な何かがあって良いじゃない】
「そんな事言われても……それにお前が知らないだけで、セラ・シルフィングには十分特別な機能が付いてるぞ。イクシード1・2・3なんて破格の大業だぞ」


 僕はこのままの状況で何とか得意気に言ってみる。だけどローレの奴は小馬鹿にするようにこう言い返した。


【私の召還だって破格の大業よ。アンタのそのイクシードに負ける事はきっと無いわ】


 なんだかポイッと僕の自信が投げ捨てられた感覚。やっぱローレに言われると無条件でカチンとくるな。なんだかいつも通りにおかしな横道に逸れようとしてる感じ。だけどそこでリルフィンがそれを阻止するように言葉をくれる。


「主、結界が消えたとなれば張り直す必要があるのでは? と、言うかいつからそんな結界を……」
【フィンフィンはそういえば知らなかったっけ? まあその役目を担ってないものね。だけど張り直すには骨が折れるわ。世界樹は大きいから……けど確かに張り直さないと街が大変になるのよね】


 くっそ、もう少し軽く言ってくれれば僕はこんなに罪悪感に苛まれる事はないのに。いつものノリでそこも行けよな。なんでそこだけ深刻そうなんだよ。
 そう思ってると、ウネリの勢いが収まってきた感じ。光も徐々に薄くなっていってる。腕に掛かる負担も軽くなって、サイズがいつものサイズに。
 僕はイクシードを解除してようやく解放された。さて、これで話に専念出来るな。


「ふう……で、大変ってどう言うことだ?」


 僕は内心ドキドキしてたけど、一応そこを突くよ。どうせ、占いがやりづらくなる~とかだろ。そうであってください。


【そうね、軽くリア・レーゼが壊滅しちゃうかも知れないわ】
「すんませんっしたあああ!!」


 僕はすぐさま頭を床に着けました。いやいや、だってそうするしかなくない!? だって壊滅って……責任とれません。


「あっははははは! スオウってばおもしろーい」


 ケラケラ人の行為を見て笑ってるのは当然クリエです。こいつには僕の必死さが伝わらない様だな。まあガキだし、事態の深刻さってのがわかってないのも無理はない。だけどその笑いは止めろ。イラっとくるから。


「スオウ君……ローレ様、スオウ君を責めないでください。彼が悪いんじゃないんです。ただたまたまこんな事になっただけで……」


 ううう、やっぱり優しいねシルクちゃんは。僕の事を真っ先に養護してくれてさ……頭上がらないよ。


【あっははははは! シルクってばあっまいー。だけど不注意だからってなんでもお咎めなしってのもどうかしら? それに下の街が無くなった時、自分のせいじゃないって言ってられる? 別にただ責めたりしないわよ。少しでも罪悪感があるのなら、協力しなさいよって事】


 なんだか初めてローレがまともに見える。てか、マトモな事を言っている。確かにシルクちゃんの養護は嬉しいけど、一切の責任がない……なんて事は無いしな。協力は勿論するさ。


「何をすれば良いんだ? ていうか何でリア・レーゼは壊滅するかも知れないんだよ」


 流石に極端な気がするけどな。確かに結界が重要って事は分かるけど、そんな直ぐに壊滅なんてしないだろ。


【アンタは無知みたいだから優しい私が直々に教えて上げると――】


 なんかムカつく前置きだな。今の僕には突っ込む権利すらないけど、もうちょっと嫌味無く言えないのかコイツは。僕はじっと堪えて続く言葉を待つ。


【――リア・レーゼの周りのモンスターって強力なのよね。大人しいけど、かなりの強さ。そもそもここは最初に選択する街の一つに入ってないから、まあそこら辺はしょうがないのよね。初心者仕様は皆無の場所よ。
 アンタも観たでしょ。この街を囲む深い森。あそこってかなりの高ダンジョンな訳。そしてそこのモンスター共は虎視眈々とこの世界樹を取り返そうと狙ってる訳よ】
「取り返す?」


 僕はローレの言葉に疑問を浮かべるよ。だって取り替えすってなんかおかしくない? 壊すとか奪うとかならまだ全然分かりやすいんだけど……取り返すって。どういう事だよ。


【そう取り返す。この地のモンスターは私達がこの場所を陣取ってるのが気に食わないのよ。なんてったってここのモンスター達は、世界樹の影響かどうか知らないけど、この樹の守護者気取りだから。
 歴史では昔はそれはもうスゴい攻防があったとかどうとか。そこら辺は知らないけど、今でも時々森からモンスター共が一斉に出てくる時もあるくらいよ。
 だからそんな奴らがこの気を逃すわけ無いでしょう。それに抑止力も今や復活寸前だしね】
「抑止力ってなんの事なんだ?」


 それは結界の事じゃないんだよな。復活とか言ってるもんな。一体何が復活すると言うんだ?


【アンタが壊した結界。あれはこの地のリーダー格だったモンスターを打ち倒して、その力を柱と使って発生させてた物なのよ。
 だけど今、その結界は壊された。そうなると、その材料だったモンスター達も当然解放される訳じゃない。そうなると奴らの勢いが増すな~って事よ。
 それに再び結界を張るには、そのモンスターを討ち倒さないといけないわ。四体の聖獣をね】


 なんだかローレの口から大層な言葉が漏れた。聖獣って……それはなんだか凄そうだな。


「聖獣? モンスターなんだよな?」
【そうよ。だけど世界樹の影響を強く受けたのかどうか分からないけど、そんな訳でかなり強いのよね。その四体をいつからかこの地では聖獣と呼ぶようになったのよ。
 モンスターだけど、その四体はただのモンスターとは違う――らしいわ】
「らしいわって……見たことないのかよ」


 僕は不満を漏らしながらそういった。すると痛いところを突かれたよ。


【だってここには内側から結界を壊すような間抜けは居なかったもの】
「うぐっ……悪かったな間抜けで! てか、なんだか脆かったんですけど。あれで結界かよ全く」


 僕は図々しくも、結界批判をし始める。だってこのまま言われっぱなしなんてムカつくじゃないか! 何か一矢報いたい。てか、全ての責任押しつけられるのはイヤなんで、粗探しだ。


【全く、往生際悪いわね。どーんと『俺に全部任せとけ!』位言えないの? そもそも結界って物は外からの攻撃に対して強いのよ。だって中を守るための結界なんだもの。当然でしょ】


 ふん……随分まともな事を言うじゃないかローレの癖に。普通に何も言えないや。


「つまりは僕達でその聖獣を倒せば、お前が再び結界を張れる……そう言う事だな?」
【ええ、そう言う事よ。だからここを回るのは後にしなさい。こっちが緊急よ】


 まあ、しょうがないよな。流石にこれはブーブー文句言えない。原因僕だもんな。それに今ゴタゴタを大きくするわけには行かない。
 ただでさえゴタゴタしてるのに、これ以上ゴタゴタしたら、色々とヤバそうじゃん。問題は早期解決が一番だよな。


「私達もスオウの尻拭いしなきゃいけないの?」
「セラちゃんそんな事言っちゃダメだよ。スオウ君を一人にさせるなんて出来ないよ。私達が一緒にいないと。仲間なんだから」


 面倒そうなセラに対して検診的に僕の事を思ってくれてるシルクちゃん。少しはセラにもその思いやりの一パーセントでも見習ってほしいね。


「シルク様はお優しいですね。だけど実際スオウの安易な行動の結果だし、それなりの対応が必要だと思うんです。親しき仲にも礼儀ありが私のモットーですから」


 何得意気に嘘を吐いてるんだよコイツは。絶対にそんなモットー心に宿してないだろ。僕は礼儀を重んじられた事ないんですけど! 確かにセラは僕やノウイ以外の人達にはかなり礼儀正しいけどさ……それをモットーにしてるのなら、僕やノウイにだって同じ様に礼儀を見せるべきだろ。今しがた親しき仲にも~って言ったんだからな。


「確かに礼儀は必要ですよね。大切な事です」


 そう言ってセラの話に納得したシルクちゃんはこちらを見つめる。ぬぬぬ、シルクちゃんにそう言われたら僕は反抗する事なんか出来る訳ない。くっそ、安易な行動か……それならセラだってそうだろ。
 真っ先に水飲んだ癖に、コイツに安易な行動と言われるとは……なんか納得行かない。だけど僕一人じゃきっと太刀打ち出来ないだろうしな……早期解決早期解決。僕は頭でそれを唱えるよ。
 余計な事に時間を食われたくないけど、こればっかりは僕のせいだし、せいですし! しょうがないんだ。僕が悪い。はいはいその通りです。


「シルクちゃんもセラもテッケンさんもお願いします! 力を貸してください!」


 僕は素直に頭を下げてそう言った。


「はい! 勿論です!」
「当然。僕達は仲間なんだから、協力するよ。それにここは僕達の最後の砦みたいな物だしね。無くなってもらったら困る。それに何より、故郷の国の街だしね」


 二人は心良い感じの返答。流石仲間。僕にとっては最も古い友人達だよ。このLROでね。


「最初からそう言えば良いのよ」


 一人だけ明らかに反応が上からなのはセラだ。まあコイツの場合はこれがデフォルトだし、しょうがないから文句も言うまい。そもそも僕が悪いの前提だしな。僕は三人を見て「ありがとうございます!」と言うよ。
 すると下の方で服を引っ張られる感覚が……視線を下に向けると、離れてたクリエがいつの間にか足下に居る。


「ねーねークリエはクリエは!」


 そんな風に無邪気に何かを求めてるクリエ。もしかしてコイツも付いてくる気か?


「お前には別に何もない。僕達は戦闘しに行くんだから、お前は留守番してろ。それが一番だ。危ないんだからな」
「ええーー! やだよそんなの! クリエもクリエも聖獣みたい! 倒したい!」


 おいおい、見たいはまだ良いとして、倒したいとか無茶言うな。どう考えてもお前が食べられる側だろうが。


「だめだめ。これは遊びじゃないんだぞ。お前が来たって足手まといにしかならないっての。おいローレ、クリエはここで預かっててくれよ。良いだろ? お前達にとっても大切な存在なんだろうしさ」


 僕は画面の向こうで扇子で顔を隠してるローレにそう嘆願するよ。クリエが重要人物ってのは絶対だから断らないだろう。ここはきっと一番安全だと思うんだ。
 幾らリア・レーゼにもサン・ジェルクの回し者が居たとしても、ここには手出し出来ないだろうしな。せめて聖獣を倒し終わるまでは……たのんます。
 足にへばりついてブーブー言ってるクリエは無視の方向で。連れていける訳ないからな。


【まあ勿論その子は手札として重要だけど……連れて行けば良いじゃない】
「はぁ!? 本気で言ってるのかローレ?」


 なんで悉く僕の意見を却下するかな。僕の事を嫌いだとしても、感情優先で動くなよ。代表だろお前。街の為を思うなら、サン・ジェルクとの対等な交渉とかの為にもクリエは安心安全な場所に置いといた方がいいだろ。
 だけどコイツには常識って物が通用しないからな……


【本気も本気。それに言ったじゃない。ここには余所者を余り長く置いとけないって】
「クリエは余所物なのか? 僕達はまあしょうがないけどさ……」


 クリエはモブリだろ。同胞じゃないか。余所者ってヒドいぞ。


「クリエはクリエは一緒に行きたいの!」
【ほら、そんなに一緒に行きたがってるのにここで一人お留守番なんて可哀想じゃない。連れて行ってあげなさいよ】
「だけど……安全なんて保証出来ないんだぞ。万が一の事が起こったらどうする? 僕達も、ましてやお前も困るだろ」


 輝く小池の光が下から僕達を照らしてる。上の光量は弱いからね。地面にはさっきのイクシードで折られた枝や葉が散らばってる。随分メチャメチャにしたものだ。


【困るわね。利用できなくなるのは困る。けど、一緒に居たいと言ってるんだから、私はそれで良いと思うけど。行きたい場所にも行かせずに、守るために閉じ込めて置くなんて……それって元老院と同じじゃない?
 自分の無力差を私に押しつけないで頂戴。守るんでしょ? 連れていくんでしょ? 願いの場所へ。それなら、最初から最後まで手を離さない様にしなさい。それが責任って物よ】


 ローレの言葉はドガンと僕の胸に来た。一切ふざけた口調が無かったのに驚き、正論でさらに心にまで届かせたその言葉に驚いた。
 今のはまさに街の代表って感じだったな。それに痛い所突かれたし……元老院と同じか。それは確かにダメだな。僕達はアイツ等を否定してるんだ。同じ事は出来ない。
 それに無力差を押しつけるなも当然かも。案外的確な事を言えるじゃないかローレの奴。責任……それを僕はまた軽んじてたのかも知れない。
 セツリの時で学んでた筈なんだけどな……伸ばしてた手を取った側は、その手が放されるのを恐れる。だからこそ、今僕とセツリは離ればなれになってるんだろう。それと同じ事を僕はクリエにしようとしてたのかも知れない。


「スオウ! スオウ! スオウ!」


 ズボンを精一杯引っ張るクリエは人の名前をこれでもかと言う位に叫んでる。僕は上からそんなクリエを見つめるよ。


「危ないかも知れないんだぞ……」
「大丈夫だよきっと!」
「なんでそんな風に言える……」
「スオウもみんなも居てくれるもん!」


 僕の言葉に、目をキラキラさせてそう言うクリエが眩しく見えた。僕は足にしがみついてるクリエの頭に自分の手を乗せる。そして撫で撫でしてやるよ。


「そっか」


 間違いたくない。もう……手を離しちゃいけない。万が一なんて、起こさなければ良いだけだ。暴論だけど……そう言う事だろ。僕はみんなを見つめるよ。同意を求めるように。


「ローレが置いとくのはダメだと言うならしょうがないわ。ホント信じられない位に器が小さいわね」
「大丈夫ですよスオウ君! みんなが戦闘してる間は私がずっと側に行ます。任せてください」
「対策はいくつかあるし、ここがダメなら傍に置いとくのが一番だよ」


 一人の悪口を除いてはみんな協力的。これで行くしかないか。後の二人はまあ、良いよ。僕はクリエの頭を撫でて結論を告げる。


「じゃあ行くか」
「うん!」


 僕達は決めた。危険だけど、そこにクリエと共に行く事を。

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