命改変プログラム
マーメイドストーリー
見上げれば丸く広がる蒼い空、見渡せばどこまでも続く青い海。その二つが溶け合うんじゃないかと思える程の場所で、情景を壊す大きな船が一隻。
そこから落ちてきた誰かが大きな水柱と共に海の中に沈んでいく様が僕には見えたよ。しばらく暴れてたけど、ふいに力尽きたのか、泡をブクブクとたてながら沈んでく。
きっとあの人は蒼い空と大きく聳える白い雲、そしてこの船に集まってるカモメを見つめて沈んで行ってるんだろうな。
最後に見た光景がそうなるんだ。流石に助けた方が良いのかな? でもあいつ等には僕は魚にでも見えてるらしいし、魚が助けるってのも……そう思ってると、パシャンと綺麗な音を立てて、日差しに煌めく姿が現れる。
それはこの船を見てた人魚? どうやら彼女はさっき落ちてきた人間を助けたみたいだ。その腕にはナカナカにイケメンな青年が抱えられてる。
そして船の上から必死に叫んでた人達が「王子!」とか言ってたから、やっぱり王子様みたいだね。その人達は小舟を引っ張りだしてきて、滑車か何か使ってそれを下ろそうとしてる。
だけどあれじゃ全然間に合わなかっただろうな。この人魚に感謝すべきだ。そう思いながら見てると、人魚の腕に支えられてる王子様が気付いたよう。
「う……君は……」
王子様はまだ朦朧としてる意識の中でそんな言葉を紡ぎ出す。それに対して、助けた人魚は顔を赤くして何かを言おうと口を開く。だけど実際は何も声には出さずに優しく微笑むだけだった。
するとようやく小舟が海面に降りた。そして爺と呼ぶにふさわしそうな人が「王子! 王子!」と言いながら、彼女から王子様を受け取って引っ張りあげた。
少し名残惜しそうに、だけどやっぱり安心した様な顔をする人魚。
「さあ貴方も早く!」
そう言って爺はなんと人魚にも手を伸ばす。てか、あの人達は彼女が人魚だと気付いてない様子。まあ僕は水中でその姿を見てるから人魚だと分かるけど、確かに今は上半身しか見えてないもんな。
あれじゃ、正体に気付かなくても無理はないか。上半身はまんま人間だもんね。まあ漏れなく全員美しい事以外を除いては……だけど。
でも美女が何十人と海から顔を出してたら流石に違和感感じるだろうけど、今は飛びきり級の美女一人……運命とか感じちゃいそうだね。
てか、こういう物語なんかあったような? そんな事を思ってると、手を差し出された人魚は振り返って勢いよく水の中へ。その時彼女の下半身の魚部分が見えた。
「きゃあああああああああ! 人魚!?」
誰かがそんな悲鳴を上げるのが聞こえた。その瞬間今まで彼女に向けられてた空気がひっくり返る。「王子を救ってくれた人」そんな見方をされてたのに、人魚だとわかった瞬間、その救ったと言う行為さえ完全に裏目に捉えられる。
「人魚!? 王子がこうなったのも貴様のせいかあ!!」
そんな訳の分からない責任転嫁を当然の様に人魚に向けて、爺は懐から金色に輝く銃を抜く。そして躊躇う事無く水中へ向けて何発も銃声を響かせた。
何発も何発も、汚らわしい存在を許せないみたいに、爺は引き金を引き続ける。なんだかその様子は狂気じみてるな。
よくもまあ、直前の善意を忘れて、憎しみだけを残せる物だ。人間の醜さが垣間見れてるよ。それを止めようとする奴もいないもんな。王子様は再び気を失ってるもようです。
込めてあった銃弾がなくなるまで撃ち続けた爺は、ようやく気が晴れたのか再び小舟を引っ張りあげる様に指示を出す。甲板からの男達の叫びと共に、小舟はゆっくりと浮き上がっていく。
そんな様子を実は人魚は見てました。水面にちゃっかり顔を出して、名残惜しそうに……そして大きく汽笛を鳴らす船にそのまま付いていこうとする始末。
まあ流石に仲間の人魚に止められたけど、銃まで出されたのに、なんて物好きな人魚だろうね。
それから彼女はこの王子様と出会った場所で毎日毎日、歌を歌うようになった。思い人を求めるかのように、その美しい歌声を来る日も来る日も響かせた。
う~ん、冷静に解説してるけど……実際僕は困惑気味だよ。その実時間を海に居続けてる訳じゃない。瞬きをするとチャッチャと時間が過ぎてる感じ。なんだか今回は、この状況が長い気がするな。
そんな気がしながらも僕は自分からはどうすることも出来ないから、彼女を見守り続けるよ。今日も一日中歌い続けて、蒼かった空が茜色に変わってく。
そんなとき、どこからともなく現れた大きな大きなウミガメ。なんだか島みたいなその亀が人魚にどうして毎日毎日歌い続けてるのかその理由を聞いた。
なにやら海の業界で噂に成ってるらしいよ。すると人魚はこう答えたよ。
「私の心はあの日、あの人間の方に持っていかれたのです。だから心を取り戻す為に、こうやって歌んい思いを込めるんです。もう一度出会いたいから」
そう言って彼女はあの日船が去った方向を見つめる。もしかしてこの人魚はあの王子様に恋でもしちゃったって事? 今更ながらに気付いたかも。てかやっぱりこんな物語あったよね。
するとそんな話を聞いた亀は、その長らく生きた知識を振りかざしてこんな事を言ったよ。
「そうかえ……そんなにその人間を……美しい人魚さん。あんたは全てを捨ててももう一度その人間に会いたいかえ?」
なんだか似たような話を知ってる僕にはそれが悪魔の囁きに聞こえるぞ。だけど彼女は亀の話に食いつきます。女は恋に生きる生き物だって誰かが言ってた気がするな。そんな様子を見てるとさ。
亀がもたらした情報は、海の王様は何か一つ『美しい物』を捧げると、その代わりに何でも一つ願いを叶えてくれると言うことだった。
人魚は丸一日位悩んで、その王様の宮殿へ向けて出発します。彼女の大冒険の始まり……だけどそこら辺は割愛。大変な事がそれなりにあったけど、何とか王様に謁見できた彼女はこう言いました。
「私は人間になりたい! 王様! 私の声を上げますから、その願いを叶えてください!!」
そして王様の前でその歌声を披露する人魚。それは城の誰もがうっとりするような歌声だった。彼女の歌声を『美しい』と認めた王様は不思議な瓶にその声を集めた。そして代わりその願いを叶えます。
王様が持つ三又に分かれてる大仰な槍が光を放ったと思ったら、目の前が一瞬真っ白になって場面が変わった。そこは白い砂浜。そこに人魚だった彼女は打ち上げられてた。しかも結構危ない格好でだ。
布一枚しか巻いてないよ。そこら辺はもっと配慮しろよ海の王様。女の子だぞ。そんな事を思ってると、どこからか近づいてくる足音が。僕はその姿を見て、王様も粋な計らいをすると思ったよ。
だってこちらに歩いてきてるのは、彼女が恋に焦がれた王子様ではないか!! 王子様は実際覚えてるのだろうか? てか、ほぼ裸の美女を見てどういう反応をするのだろうか? なかなかに気になる所だな。
だけどふと僕は気付く。なんだか王子様も浮かない顔をしてるような……そんな事を思ってる間に、王子はその高そうな靴で砂浜を踏みしめる。そして波際を歩くと案の定、人間に成った彼女を見つけたよ。
王子様はいかにも上流階級らしく、彼女を抱き上げる。そして彼女の顔を見た瞬間、王子様は目を見開いた。
「君は……」
震える声でそんな声を出す王子様。今度こそと思い、口を動かした彼女。だけどそこで声を失った事に改めて気付いたのか、喉をその細い指で押さえて、俯いた。
だけど割り切ったのか、直ぐに顔を上げていつか見せた笑顔で彼女は王子様に微笑み掛ける。
「やっぱり……そうだ。その美しい笑顔……忘れはしない。君はあの時私を助けてくれた……」
どうやら王子様はうろ覚えながらも彼女の事を忘れずに居てくれた様だ。これぞ運命の出会いとか? いや、出会いはもっと前にあった奴か……ならこれは運命の再会と言った方がいいんだろうな。
王子様は大層嬉しいのか、大仰に肩を震わせて彼女を抱えて涙を流す。
「ずっと……夢見てたんだ。君に再び会えるのを……」
そう言う王子様を見つめる彼女。多分何とか自分も同じ気持ちだった……そう伝えたいんだろう。彼女は王子様の頬に手を当てる。
「もしかして君も、私と同じ気持ちで居てくれたのか?」
これこそ以心伝心……そう言葉を紡ぐ王子様。彼女はコクリと頷いた。なんだか端から見てるのが恥ずかしく成るくらいの雰囲気だ。これはヤバいんじゃないのか?
そう思ってると、見つめ合った二人は次第にその距離を詰めていく。ゆっくりと、見つめ合ったまま、吐息がとろける距離を通り越して唇と唇がぁああああああああ!!
僕は思わず目を背けた。だって……だって……ちょっと自分には刺激が強すぎる。何というか、こんな堂々と他人のキスシーンなんか見るものじゃないよね。向こうは盛り上がってるから良いけど、こっちはすっげぇ居づらいわ。
背中の方でラブラブムードが盛り上がりをみせるなか、僕は意識を逸らす為に、周りに目を向ける。遠くの方に城が見えるな。なんだか中世風の……というかディズニー風の? よくもまあとんがった城だよね。
そんな風に思ってると、こちらに近づいてくる光が見えた。それは明かりを携えた使用人と爺とお城の兵隊だ。どうやら王子様を探しに来たみたいだな。
「王子やはりこちらに――って何をなさってるのですか!?」
爺が王子の興奮振りに驚きまくってるよ。まあ無理もないかな。砂浜で何回するんだよって位に唇を合わせてたもん。
盛り上がりすぎだ。まあ当人同士にとってはようやくで百年の恋も一緒だろうから、盛り上がるなって方が無理なのかも。
だって爺の叫びも関係なくチュッチュしてるもん。
「王子! いい加減してくだされ! 城の者も皆心配してたと言うのに……こんな所で乳くりあってるとは……もう少し自覚をなさい!」
爺はかなり怒ってらっしゃる。だけど一際熱いキスを交わして、二人で目を合わせると、王子様はさっきまでの涙なんてどこ吹く風のイケメンな顔で皆の前に立ち上がる。 そして全員を見渡し、大きく息を吐いて、口を開く。
「爺、皆の者も心配を掛けてすまない。だが、それも今日までだ。あの日……海に落ちたあの日からずっと恋い焦がれてた人に私は巡り会った。
私の心は今、これ以上ないという位に満ち足りてる!!」
どっかの劇場で芝居でもやってるのかと言いたい位に体を使ってそう伝える王子様。だけど全員そこはスルーで、王子の相手を見定めようとしてるよ。
そしてその顔を見たとき、爺が真っ先に動いた。
「こやつ!! あの時の人魚!? 再び王子を誑かしにやってきたか化け物め!!」
懐からあの時と同じ銃を取り出す爺。向けられた銃口に怯える彼女。だけど爺が引き金を引く前に、王子の一喝がこの場に響く。
「やめるんだ! 何をする!? 良く見るんだ爺。この人は人間だ!! この二本の美しい脚が見えないのか!?」
そう言って彼女の下半身部分を指し示す王子様。そんな王子様の指の先に誰もが注目した。そこには細長くしなやかな二本の脚が確かにあった。どう見ても最高の二本の脚だよ。
なんか砂がくっついてるのもエロいね。魚の部分なんてもうどこにもない彼女を、爺は人魚とは言い張れまい。
「ぬぬ? 確かに人魚ではない? だが王子よ、その者の顔は確かにあの時の人魚そのものですぞ。幾ら年老いたからと言っても、まだまだ記憶力を衰えさせた覚えはありませぬ」
爺も流石に混乱してる様だけど、やっぱり素性がしれないし、爺の癖に記憶力も良いから、疑いの目を向ける事をやめようとしない。
きつい目を向けられて完全に萎縮してる彼女。無理もないよね。初めて上がった地上で、反論する声も無く、どうすることも出来ないもん。
だけどここでも王子様はその王子様振りを見せつけてくれたよ。
「爺が言う人魚と言うのはあの時私を助けてくれた者だろう。もしもそれが彼女だと言うのなら、私は嬉しいさ。人魚とか人間とかじゃない。
あの時何のお礼も出来なかったし、それにやはりあの時に私は惚れたんだよ。この人は同じ顔をした全く別の人なのかも知れない……だが、私は寧ろあの時の人魚であって欲しいとも思うんだ。
夢物語だが、これは運命だ……そう思う」
そう言って王子様は砂浜に座ってる彼女に手を差し出した。優しい笑顔を向けられて、その手を取る彼女。まだ人の脚になれてないのか、かなりぎこちない。地面を踏みしめるって感覚がわかってないみたいに、なんだか生まれたての馬や鹿やそこら辺の動物みたいだよ。
だけど何とか王子様の支えで立ち上がる事が出来た彼女。そして王子様は彼女を抱き寄せてとんでもない事を言いました。
「爺、みんな聞いてくれ。私は彼女と結婚する!!」
大きく盛大に、そう宣言した王子様。やばいよ、勢いもそこまで行ったら極まってるよ。幾ら何でもそれは早いだろ。幾ら百年の恋でももう少し育もうとは思わないのか? 王子様盛りすぎ。
「んなななななな……王子! 何を行ってるのですか!? 確かにその者は人間みたいですが、素性も全くわからぬ者と結婚など!!」
「素性などどうでも良いことだ。私たちは互いに愛し合ってる。求め合ってる。離れる事など出来ぬよ。そんな思いが一番大事なんだ!
それに私の妻と成れば、それが素性……それでいいではないか」
「良いわけないでしょう!?」
爺がヤバい位に顔を沸騰させてる。まあ確かに良い分けないよね。当人達はそれで良いと思っても、周りは流石にそうはいかない。それに王子様は王子様だしね。
彼が何の変哲もないただの農民程度なら、素性もわからなくて人魚かも知れない女と結婚する事をそこまで反対する人はいないだろうけど、王子様って立場がデカいよ。
背負ってる物も大きいし、何よりも結婚したら彼女がプリンセスに成るんだもんね。簡単に「ええ、そうですね」とはいえないよ。
だけど王子様の意志は固い。彼は彼女を見つめて、改めてプロポーズを申し込んだ。
「僕は貴方の全てを受け入れます!! いつまでも愛し続ける事を誓います! だから結婚してください!!」
引いては返ってくる波の音をかき消すみたいに、聞こえたその声。なんかもうここまで来ると、清々しいと思った。なんかやっぱり王子様はカッケェよ。
藍色を帯びてた空が次第に光と共に鮮やかな色へと変わって行く。朝日に照らされて、波がキラキラと輝いてる。そんな風景の中、プロポーズされた彼女は流石に面食らってる。
人間に成って直ぐにこんな事になって、色々と大変だよ。頭がついていけてなくて当然だろうね。だけど真剣な眼差しで見つめる王子様に答える様に、彼女はコクリと頷いた。その瞬間感極まって王子は強く強く彼女を抱きしめる。そして彼女も、王子様の胸に顔を埋めて嬉しそうに微笑んでる。良かった良かった。これで万事OKだね。
みんなが幸せになって良い感じだ。
「王子! 私は認めませんぞおお!!」
プンプンという感情をむき出しにしたように腕を振りながらそう言う爺。だけどそれは既に爺一人だよ。周りの人達はパチパチと拍手をくれてた。
たく、やっぱり耄碌してるんじゃのかこの爺。二人が求め合ってるってのが何でわからないんだよ。王子様も言ってたけど、やっぱり最後は心って部分が大事なんだ。王子様だからって国の為だけに結婚相手を選ぶとか可哀想じゃないか。
こういう気持ちの繋がりがある方が僕は好きだよ。
二人はお城での生活を始めた。色々と最初は疑いの目とか向けられてたけど、その内そんなのもなくなって、彼女は徐々に人間世界にとけ込んでいった。再び瞬きするごとに場面展開が行われるよ。
流れるフィルムの一場面を切り取って観てるような感覚だね。誰かの幸せを観るってのも悪くない。心がほっこりするよ。
なんてたって王子様マジイケメン。彼女の事を大切にしてるよ。だけどそんな幸せな時間はやっぱり長くは続かない。世界はいつだって動いてるらしい。
最近はいつも空が黒く、不気味な風と雨が打ち続ける日々。そして城内はそんな外の状況と同じように暗い雰囲気だ。
原因は海から現れる敵の存在。おかげで航行出来ずに、周りの国や街と断絶状態で、世界中に海の化け物達が牙を向いてる。
世界はとっても深刻な状況なのだ。そしてある日、世界中の空に自分の姿を映して海の王が現れる。彼は世界を自分の物にすると宣戦布告。同時に世界中に怪物共を陸に送り込んできた。そして始まる開戦。
人も大人しく滅ばされるのを待ってるわけがない。至る所で戦が起こる状況で、双方の屍が積み重なってくよ。観てるだけで吐きたくなる光景だな。
これを観てるとLROも随分優しく描写されてるんだなと思う。やっぱり血や内蔵がそのままなのはヤバいな。前のアルテミナス戦でもこんなグロいとは思わなかったもん。
王子様は戦陣を切って軍隊の指揮に翻弄してる。彼女はそんな王子様を傍らで支えてる。だけど実際彼女は微妙な心境だ。だって前は彼女も海の住人。今の敵には、知り合いだっているかも知れない。
そんな中、海で暴れてた大きな亀が打ち倒されたという報告が。大きな亀って言葉に思い当たる節が会った彼女はその亀が打ち上げられる場所へ。そこで彼女は亀の口から海の王の事を聞きます。
海の王は沢山の『美しい物』を手に入れた。そしてあの瓶は沢山の『美しいもの』でその力を発揮するアイテムらしい。海の王はその身を代償に願いを叶え、美しい物を集めてたという。
それだけしても、海の王は世界が欲しかったと言うことか? 何の為に? てか亀も他の怪物達も、その美しい物が貯まった瓶の力で操られてるそうだ。それが瓶の力と言うことか。
海の王は強いんだろうけど、流石に世界を支配するには一人じゃ出来ないって判断だったのかも知れない。
「どうか……これ以上海を……汚さないでくだされ……」
そんな言葉と共に亀は消えていく。腐食して腐敗して、そして海に溶けていった。用はその美しい物が詰まった瓶を壊すかしないかぎり、この戦いは終わらないって事だな。彼女は大切な人が居るお城の方を見つめる。幸せで、大切だから、守りたいと思う。
自分の願いだけを叶えて、世界を終わらせる糧にされた自分の声。それを彼女はきっと罪だと思ってる。彼女はたった一人で荒れ狂う海へと出た。自分の声を取り戻す為に。それで例え王子様と別れる事に成ったとしても、彼女は守りたいときっと考えてる。
王子様の命を、受け入れてくれたあの国を、そして勿論自分が大好きだったこの海を。彼女が居なくなって王子様も直ぐに後を追った。だけど、時既に遅し。彼女の船は海の上でバラバラです。
海の王に支配された怪物達に襲われた後。悲しみにくれる王子様。だけど実は彼女はまだ生きてた。昔なじみの人魚に助けられてた。
どうやら人魚族は反乱してるようだ。人魚の歌も心を惑わす効果がある。だから『美しい物』を集めた瓶の力への耐性でも出来てたのかもね。
仲間に助けられた彼女は人魚達と共に海の宮殿へと向かう。そして王へみんなと挑む。上では王子達が頑張り、海の中では彼女と人魚達が王の野望を防ぎに動く。
だけど次々と仲間達は沈んでく。それでもたどり着いた王の間。みんなの犠牲の元、隙をついて瓶を奪います。そして思い切ってその瓶を地面に……地面に……震える腕、流れ落ちる涙。
きっと今までの思い出が彼女の頭に浮かんでる。だけどそれらを振り切って彼女は瓶を床に叩きつける。
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