命改変プログラム

ファーストなサイコロ

共闘成立?



 天井から降りてきた布。そこにはミセス・アンダーソンとクリエが包まれていた。そしてやっぱり二人は未だ、その瞼を堅く閉じてる。


「クリエに、アンダーソン……何かしたのか?」


 僕達は二人の包まれてる所まで駆けて、息をしてるか確認。僅かだけどスゥスゥとした吐息が漏れてるのがわかる。一安心だな。
 流石にこれだけ眠ってると、不意に死んでるんじゃないか? って思うことがあるからついついこんな事をしちゃう。
 それにまだまだ目的のわからないリア・レーゼの奴らに連れて行かれたっ切りだったしさ。無事かどうか不安だったんだ。


「何かってまぁ、色々と調べさせてもらったわ。だって気になるじゃない。アンダーソンのおばちゃまは友達として、そしてその子は……単純に興味本位でかな?」


 なんだかこれまでのガキっぽいキンキンとした声じゃなく、どこかに含みを持たせたような声を出してそう言う姫御子。興味本位って……


「アンタは、面白半分でこの状況を見てるのかよ。クリエは同じモブリだぞ。心配する気持ちは――」
「待ちたまえスオウ君!」


 僕が言葉を言いきる前に強引にテッケンさんが僕の言葉を遮ってきた。そして僕に変わって姫御子へと言葉を掛ける。


「姫御子様、自分はテッケンです。彼の無礼な発言と態度はその子を思う余りの事なんです。どうか寛大な心でお許しを。
 所で、今調べたと……アナタ様の力なら、何かおわかりに成ったのでは?」
「ん~まぁ、テツがそういうならそこのクソ生意気で印象最悪のバカでも辛うじてここに居ること我慢してあげるわ。
 そうね、まあ私って大抵、メッチャスゴいからわからない事ってそうそう無いのよね。何たって星詠みの御子だもの」


 うぜっ――と僕は心の中で呟いたよ。流石に口に出さなかったのはこいつがアホだから、直ぐに機嫌を損ねられても面倒だもん。
 何かわかったのなら、そこら辺は聞いておきたいしな。


「それで分かったこと言うのは?」
「フィンフィンも来るね。私に色々と求めちゃうね。グイグイと私を求めすぎだよ。幾ら望まれたって私の体はひ・と・つ・だけ!」
「ウゼ……」


 今ウゼッって言ったぞ。おい、こちら側じゃなく向こう側の忠誠誓ってそうな奴までウゼって……僕と同じ気持ちを口に出したよ! まあ今のは本気でウザかったと思う。リルフィン君も大変だね。


「ちょっと今聞き捨て成らない声が聞こえたわよ? 何? ウザッ言った? 酷い! 私主なのに! あ~あ、なんだか教えたくなく成っちゃったな。今日はこれで解散でよろしく。さっさと出てけそこのウジ虫共」


 そう言うと卸してくれてたクリエとミセス・アンダーソンが再び布にくるまれて天井目指して上昇を始めた。


「おいおいおいおい!! 待て待て待て待て!! このまま帰れるか! ちゃんと説明しろよ!!」


 何いきなり機嫌を損ねて終わりにしようとしてるんだ! 許されるかそんなこと!! 


「そうです! 教えてください!!」
「シルクちゃん」


 僕に続いてシルクちゃんもそう言ってくれる。やっぱりシルクちゃんは最高だ。いつだって僕の天使だね。


「そう……教えてください! あの布って普通じゃないですよね? 何で出来てるんですか? 気になります!!」


 ズゴーーーーだよ!! てかシルクちゃんにガッカリしたの初めてだ。もしかしてさっきからずっとクリエの側に居てサワサワしてたのはその布に関心があったからかよ。


「も、勿論クリエちゃんもミセス・アンダーソンさんも心配ですよ。だけどあんな肌触りの布初めてなんです。裁縫もやる身としては気になります」


 可愛い顔して自分の気持ちを貫こうとするその思いは流石だよ。だけどそれは後で一段落着いた後でお願いしたかった。
 てか、いつものシルクちゃんなら勿論そうするんだろうけど、それだけシルクちゃんも興奮してるって事かな? 僕とは違う意味合いでさ。僕は姫御子の言動とかにかなりイライラして興奮してる訳だけど、シルクちゃんはこの天井に張り巡らされてる特殊な布に興奮を覚えてる訳だ。


「ふふ……そう、まあ答えてあげなくも無いわよ」


 どこかで機嫌が戻ったのか、含み笑いと共にそんな事を言う姫御子。てか、姿を見せないの不便なんだけど、さっきから声が聞こえる方向が微妙に変わってる気もするし……そもそも失礼だろ。まあこの姫御子様は、そんな事微塵も感じそうに無いけど。
 上に立つ人ほど、他者を立てれる人だと思ってました。まあそれこそ人それぞれって訳だろうけどさ。少しはアイリを見習えよ。
 あの人は偉ぶりもしないし、腰も相当低いよ。だけどそんな彼女をエルフの人達は「支えてあげたい!!」って思ってると思うんだ。だから今のアルテミナスは一枚岩みたいな強固さを誇ると思う。
 それに比べてここの姫ときたら……


「アンタが私にひれ伏すと言うのならねシルク!! 私のアドバンテージを悉く奪おうとするなんて、私はその無邪気な笑顔には騙されないわよ!!」
「ほえ?」


 ダメだこの姫。尊敬できる部分が一個もない。実際今まであった長くLROやってる人達には流石って思う部分が一つはあったものだけど、コイツには皆無だな。
 LROで大冒険を繰り広げてたからか、大抵の人は誰かに優しく出来たり、なんだか人間的に大きくなったりしたりする筈なのに、この姫御子ってそう言う要素を感じれない。
 よくもまあ姫御子なんてやってるな。バランス崩しも選ぶプレイヤー間違えたんじゃないの? そう思わざる得ない。てか、コイツが反応したの僕じゃなく、シルクちゃんだし。
 どっちが重要だと思ってるんだ! クリエの事はリア・レーゼにとっても重要な事だろ。自分の感情だけでないがしろにし過ぎ……良いのかよ星詠みの御子として。


「ちょっと、何勝手な言いがかり付けてるのよ! シルク様がそんな事をするはず無いじゃない。さっきから聞いてれば、そこのバカと同じような低脳さでこの人を虐めるのなら焼き払うわよ!」
「うわあああああああ! ちょっとセラ様! それは幾らなんでも暴言っすよ!」


 おいおい、フォローに入るのは良いけど、ノウイの奴僕と姫御子が低脳呼ばわりされた事は全然否定しないのな! そこにもフォローが欲しかった。てか、尊敬とかしてたんじゃないのかセラの奴。
 こいつのブランドに女子二人して感心してたじゃないか。手のひら返しだな。まあそれほどに、シルクちゃんが優先って事か。


「あらら、どこのデカ女が無理な格好してるのかと思えば、クス……そんな古くさいメイド服着てたら五歳は老けて見えるわよ」


 その瞬間、セラの体が何にも貫かれてない筈なのに、まるで攻撃を受けたかの様に反り返って後ろに倒れた。


「セラ様ぁああぁぁぁぁああぁぁぁああ!!」
「なんて惨い攻撃を……」
「一番聞きたくなかった事を言われたなセラ」
「セラちゃん! 私は出来る女って感じでそのメイド服好きです!!」


 おいおい、なんだこの雰囲気は。みんな何が起きたか理解してるの? なんで今生の別れみたいな雰囲気になってんだよ。
 死亡フラグなんて立ってなかったよ。


「みんな……」


 なんだか掠れた様な声でそう言ってるセラが、チラリとこちらに視線を寄越す。なんだ? 僕にまで加われってか? まっぴら御免被る。だけどみんなして僕を見てくるから言わなくちゃ行けない雰囲気に。


「……その、確かに古くさいデザインだよな」


 その瞬間細長い針が僕の足にサクッと突き刺さる。お得意の暗器か!? この全身武器庫みたいな女、危なすぎる。


「お前な!」
「言ってみなさいよ。このメイド服のどこが古くさいって?」


 くっそ、やっぱり元気じゃねーか。僕を威圧する目はいつものそれと大差ない。てか、いつもより迫力あるぞ。


「く……じゃあ言うけど、まず色が黒と白っていかにも過ぎるし、デザインだって十六世紀かよって感じの物だ。それじゃあリアルと大差ないって言うか……ここはLROなんだからLROらしさが欲しいよな。
 それに一番の原因はお前の色が強すぎると思うんだ。他の大多数の侍従隊はそれでも良いけど、セラにはちょっと物足りないって言うか。
 似合っちゃいるけど……なんだか服が負けてる気がする。お前の雰囲気に」
「……ねぇ、それを聞いて私は怒ればいいの? 照れればいいの? どっち?」


 なんだか困惑してるセラ。なんだその反応、僕が折角よく分からないファッションの素直な感想を述べたのに受け取る側がそんなんじゃ、真面目に答えた事が恥ずかしくなるだろ。


「つまりスオウ君が言いたいのは、メイド服は大好きだけど、このメイド服じゃセラちゃんに萌え萌え出来ないと?」
「あれれ~なんだか今初めてシルクちゃんにイラッと来たぞ~」


 何無邪気な顔して誤解を招く様な解釈を垂れ流してくれてるんだよこの子は! そんな事誰が言った!? 萌え萌え? セラに? 吐き気がする。その成分はシルクちゃんで補ってるんでセラにそんな期待してません。


「萌え萌えって……アンタ私に何をさせたいわけ? いっとくけどメイド服はそんな感情を与える為の物じゃないんだからね!」


 なんで体を両腕でガードしながら言うの? まるで今も僕がそんな目でセラのメイド服を見てるみたいじゃないか。そんな事断じて無いからな!


「知らなかったよ。スオウ君がメイド服にそんなに拘りがあったなんて……」
「え?」
「俺は武器にしか興味はないが、お前のメイド服への情熱は変わらない物があるように感じた。突き進め、誰になんと言われようとだ。そしたら必ず、道がある」
「え?」
「スオウ君はズルいっすよ! 興味のない振りをしておいて、土壇場でそんな情熱を晒すなんて……やっぱりギャップすか!? それ狙いっすか?」
「ごめん、お前の言ってる事はマジで理解できない」


 てか、なんかみんなの僕を見る目が変わってる気がする!! なんでだよ! 絶対におかしいよ。みんな誤解してるんだよ! 僕はメイド服にそんな情熱持ってないし! だけど弁解する前に止めと言わんばかりに、カリスマが僕の言葉に同調した。


「スオウだっけ? アンタの事……ちょっと誤解してたわ。私が言いたいこと、全部言ってくれたわね。その見極める目と、メイド服に対する情熱……装飾を手がける者として尊敬に値するわ」


 そんな姫御子の言葉にこの場の雰囲気が変わった。なんだか朗らかになったような……「まさか彼女に認められるなんて」みたいな空気。
 いろんないざこざがどうでもよくなって、ようやく互いに素直になれた……そんな雰囲気。だけど僕は心の中でこう叫んでたよ。


(てめぇら、絶対僕を苛めてるだろ!!)


 ってさ。






「え~と、私たちって何やってるんだっけ?」
「思い出させてやるから面だせオイ」


 僕はおちゃらけた感じでそういう姫御子に額の筋をピクピクさせながらそう言ってやる。だけどどうやら、僕をからかって熱が収まったのか、姫御子は今度はそれなりに冷静だった。
「主よそれは……」
「分かってるって。それよりも気付いたけど、これって流石に失礼じゃないかしら? てか、全く見えないって私の威厳がちっとも感じられないからイヤね」


 そう言うと再び指パッチンする姫御子。すると今度は天井に張られてた布が部屋を分断するように降りてきたよ。そしてその薄い布の向こうに小さな陰が見えた。


「これなら良いでしょう? ほらほら、時代劇なんかで、えら~い人が顔を見せないようにするアレを参考にしてみたの」


 そう言ってシルエットの姫御子が指を立ててエッヘンと胸を張ってる。まあ顔は見えないけど、色々とその動きは分かるな。やっぱり姫御子にふさわしくないバカっぽさを感じる。


「まあ、これなら……主も一通りの気が済んだでしょうし、そろそろ本題へ」
「分かってるわよ。ちゃんと行こうとしてました。ほんとフィンフィンって**にしては口うるさい」


 ? 今なんて言った? なんだか聞き取れない部分があったような? よく分からないけど、取り合えずリルフィンがフィンフィンって混乱するから辞めてほしい。てかただでさえリルフィンって名前、奴に合ってなくね? とか、思ってたのにフィンフィンって……パンダかよ。
 頭の中で檻の向こうで笹を持ってるリルフィンを想像したらなんだか吹き出しそうでした。ちょっと気が晴れたかも。


「なんだ?」
「何でも……いいから本題へ移ろうぜ姫御子様」


 いぶかしげな視線を向けて来るリルフィン。僕は必死に笑いを堪えて、姫さんに話を進めて貰うよ。


「ねえ、アンタの口から姫御子様なんて言われるの気持ち悪いからやめてくれない。なんだか尊敬されてる気分にならない」


 だろうね。バカにしつつ言ってるもん。てか、またどうでも良いところへ話を持って行きやがって、とことん紆余曲折させる気か? たく、バカでめんどい女なんて最悪だな。


「じゃあ、なんて呼べば良いんだよ。僕はお前の名前なんて知らないぞ」
「そうね……まっ、スッゴく不本意だけどしょうがない。教えてあげる。その耳クソしか溜まってない様な耳の穴を綺麗にしてよく聞きなさいよね。
 私、星詠みの御子の名前を告げてあげる。『ローラン・レーゼ』だから『ローレ』と呼びなさい。それを許したげるわ」


 レーゼ? なんで無駄に意味のない名字なんて付けたがる奴がLROにはいるかな? とか思ったけど、もしかしてレーゼってリア・レーゼのレーゼか? 
 そう言えばアイリもアルテミナスが入ってたな。国や街の代表になると、自動的にそうなるのかな? そんなことを考えながら、僕は同時になんだかイメージと違うと思ったから、こんな事をポツリと呟いた。


「はぁ、バッカニアとかじゃないのか。普通過ぎてつまらん」
「アンタ、私が女の子だって認めたくない訳? まさか名前にダメだしされたのは初めてよ。生憎、私はローレ。それが気に入ってるから変更する気はないわ。
 まあどうしてもそう呼びたいのなら何だって良いけど」


 良いんだ。そこはもっと食いつて来るものだと思ってた。気に入ってるんなら尚更。


「お互いにしか通じない呼び方ってのもある意味特別な感じで良いじゃない。そうやって私を特別視したいんでしょう? わかるわかる」


 なんだか、変な解釈して満足してるぞあのバカ。何が特別視だ。僕の中での評価は著しく低いんだけどな。ほんとなんでこんな奴がバランス崩しを持ってて、リア・レーゼの代表なのかわからない。
 今の所、天地がひっくり返ってもきっとわかんないだろうな。


「はいはい、んじゃバッカバッカと特別な呼び名を僕の中で付けたから文句言うなよ」
「ちょ!? アンタそれバッカニアじゃないじゃない!」
「いや、バッカバッカは繰り返すのが好きそうだったんで、好みに合わせるという配慮をだな――」


 だってフィンフィンだってそうだしね。僕は意外と気が利く男なのだぞ。感謝してほしいくらい。だけど僕のそんな気遣いのどこが気に入らないのか、姫御子は声を荒くこう言った。


「いらないわよそんな配慮! アンタやっぱり私をバカにしたいだけじゃない! 言っとくけど、星詠みの御子になってここまで私に無礼な態度とった奴はアンタが初めてよ!!」
「………それは……照れるな」


 そんな息巻いて興奮しながら言われるとこっちまで照れちゃうじゃないか。


「褒めてねーよ!! 立場を考えろやボケ!! もう一度牢にぶち込むぞオラアア!!」


 ヤバいな。彼女の星詠みの御子としての威厳が今まさに崩壊中だ。まったく女の子がボケやらオラやら、上品さに欠けるぞ。ましてや一応姫御子なのに……さっきから布越しに見えてる小さな姿がかなり近寄ってきて、人差し指を立てると共にファッキューファッキューしてる。
 流石にこれでもかと言うくらいにからかいすぎたか。こっちもやられたからやり返したくなったんだけど、またご機嫌斜めになってしまったかも知れない。


「たく、特別な呼び方で良いって言ったくせに……」
「ふふはは……アンタには一度私の威光を見せつける必要がありそうね。取り合えずバッカバッカなんて禁止よ! 絶対に禁止! アンタは『ローレ』と呼ぶ事! てか、ローレとしか呼ぶな! ここでのアンタの義務だからな!」
「ローレね……まっ、義務ならしょうがない」


 渋々納得しといてやろう。リア・レーゼで何故か義務が追加された僕だった。


「たく、主も貴様も悪ふざけが過ぎます。話が全然前に進まない。少しは真面目に行ってください」
「「だってこいつが」」


 二人して同時に互いを指さすと、そんな様子を見て大きくため息を吐くリルフィン。そして僕の首に腕を回して強引に引きずって後方へ。


「おい! ちょっ……苦しい……」
「貴様、主に協力を仰ぐ気あるのか? あの方はああ見えて、この街の全権を握ってる。あの方が敵に回ると言うことは貴様たちの終わりだぞ。
 もう少し賢く生きろ人間。それと一番大事な事を言っておこう。これ以上主をバカにするのなら貴様の命を散らす。わかったな?」


 キラリと光る細い銀色の毛が、僕の喉元に硬質化して突きつけられてる。こいつ本気だ。そう感じました。てか、最初の方なんていらなくて、こいつの本心は後半部分だけじゃん。
 我慢ならなかったって事か……まあこれ以上ないって位に無礼だったしな。しょうがないから反省しよう。殺されたくないし。
 僕はコクコクと無言で頷くよ。なんとか解放された僕はペタペタと床を踏んで再びローレの前へ。


「ローレ、僕達にはやるべき事がある。わかってると思うけど、クリエの事とかだ。だから協力してほしい!」


 僕は綺麗なお辞儀を心を込めてやりました。


「アンタ……またいきなりね。今までの態度から良くその言葉を言える神経がスゴいわ」


 なんだか呆れられた? まあ当然かも知れないけど、それじゃあ困る。


「ローレ、これはリア・レーゼにだって関係があることだ!」
「関係って、アンタ達がイザコザを持ち込んだ様な物だけどね。やっぱり星詠みで観たリア・レーゼに災厄をもたらす存在はきっとアンタ達よ」


 う……そういえば飛空挺で相対した時、リルフィンがそんな事を言ってたな。それってやっぱり僕らなのかよ。だけどここに頼る意外なかったんだ。僕達の道はここに示されてた訳だからな。


「まあでも……その先はわからないのよね。このままじゃリア・レーゼには危機が訪れるでしょう。だけどその先にここが滅ぶかどうかはわからない。久しぶりに、私でもわからない。ねぇ、それってワクワクしない?」
「まるで今までは未来の全てが見えてた様な言い方だな」


 僕がそんな事を言うと、ローレは至極当然みたいにこう言った。


「見えてたわよ。私には未来が見える。星が観る未来を私は詠める。だから星詠みの御子なの。だけどそれってつまらなくない? 未来はわからないから信じて行けるのにね。
 だから今、私はとっても興奮気味。さっきの言い合いとか、テンション高くないと私しないわよ。ぶっちゃけるとリア・レーゼとかLROとかじゃなく、私は私自身がどうなるのかこの世界での顛末を見届けたいわ。
 そのために未だここに居るような物だしね。だから協力はしないわ。利用はする。それで良いでしょう?」


 いつのまか用意してたのか知らない、床に直接置くタイプの椅子に腰掛けてローレが告げる。十分だ。ここにいて、自由に動くことを許されるなら、それだけで良い。僕は笑みをもらしながらこう返す。


「十分だ」

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