命改変プログラム
なんとかで、取りあえず
「うぬあああああああああ! 止まれええええええええええええ!!」
二本の風のウネリが地面を抉る、だけどバトルシップの主砲を防いでその勢いを加算された飛空挺は簡単には止まらない。
止まるためのエネルギーも少なくなってるし、飛空挺自身での停止は望めないんだ。だから何としてもスピードを落とさないと、このままの勢いじゃ地面に接触して木っ端微塵だよ。
「うぐぅぅぅぅ! 余計な事を女!」
「余計な事って何ですか!? 私はただ、みんなを守りたいだけです! それが私の役目なんです!!」
二人して必死にバトルシップの主砲を防いでるのはシルクちゃんと敵側なのか微妙な奴。シルクちゃんはその魔法で障壁を張ってあの凶悪に見える光の砲を防いでるのは分かるんだけど、奴は実際どうやって防いでるのか分からない。
僕からしたら、お前こそ余計な邪魔をしてるんじゃないだろうなって言いたいところだよ。まあそんな余裕なんてないんだけどさ!
後方からの攻撃と僕一人のブレーキ程度じゃ確実に前者に分があるみたいで、ある意味スピードアップしながら高度が下がって行ってる。
それにそもそも、進んでる船を後ろから押すのと、前から止め様とするの、どちらが大変かと言われれば、絶対的に後者だよな。
動き出してる物を押すのなんて簡単だ。しかもここは空の上から下へと行ってる訳で、運動エネルギーとか位置エネルギーとか重力の事とか、色々と僕だけでは重すぎる理由がいくつもある。
だけど弱音を吐いてる場合でも無いんだけど……そんな泣き言言うほど既に口も回らない。叫ぶ――そんな事位しか今の僕には出来ないんだ。
地面が近づき、生い茂る太い木に当たりだして大きく揺れる機体。ベキボコメキガキャとイヤな音が船底あたりから聞こえる。
きっと木とぶつかった部分がブッ壊れて行ってるんだろう。ホントもうボロボロだから、それは想像に難くない。そして木々をへし折り、船体を破壊しながら、それでも止まらず飛空挺は森へと突っ込む。
大量の葉や枝が目の前に散乱して、体の節々を打ちつける。だけど僕がこの場から動くことは出来ない。だってこの船のブレーキは僕にしか出来ない。
視界が無くても、枝が体に突き刺さっても、木っ端微塵になるよりはまだマシだろ。鈍い痛みなんてとっくに馴れた。
今重要なのはここまで来れたって事だ。そしてここまで来れたのに、その全てを無駄になんて出来ないって事だ。ミセス・アンダーソンの思いも、ノエインの思いも、そしてセラの頑張りだって、無駄にしてたまるかよ。
特にセラにあそこまでやらせて「駄目だった」なんて言ったら、折角良好に向きかけてた関係が逆走しちゃうかもしれない。それはイヤだ。あんな不遇な態度に戻るなんてゴメンだね。
だから頼む! 止まってくれ!
「「「うわっわあああああああああああああ!!」」」
甲板に残ってる男三人が轟いた衝撃にそんな声を上げる。ヤバい一気に船底部分が消えたかも知れない。それほどの衝撃だった。
地面に船体が着いた瞬間、爆発と共に一回浮き上がり、再び地面を抉るように滑ってるんだ。多分最初の爆発は動力路が原因だと思う。
てかもうそれしか考えられないし。きっと今は船体を削りながら地面を進んでる状態だ。早く止まらないと、船体はバラバラに成っちゃうだろう。
だけどそれには上から降り注ぐ主砲が止んでくれないと難しいかも知れない。さっきから必死に風のウネリを地面に当ててるけど、大きさと元のスピードが原因か、止まる気がしない。しかもまだまだ凶悪な赤紫の光は健在。
あのバトルシップ……この船が木っ端微塵に成るまで止まらせない気か。
(くっそ、駄目だ。バトルシップの主砲と、人一人が生み出せる風のウネリじゃ、威力に差がありすぎる。これじゃあ船は止まらない!)
そんな考えが頭に浮かぶ。だけどだからと言って、この手を離すわけには行かない。少しは……きっと少しは意味があると思うんだ。地面にぶつかった瞬間に終わらなかったのも、意味が有ったからだと思いたい。
だけどそろそろマジで、腕の感覚が無くなって来た感がある。これだけの大きさの物を止めようとしてるんだから当たり前だろうけど、一瞬でも気を抜いたら、手から剣をこぼしそうな程だ。
「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれよクソオオオオオオオオオオオオ!!!」
その瞬間、近くにあった木に触れて、僕のすぐ横の側面部分が砕ける音と共に無くなった。その衝撃で大きく揺れた船。僕はその時自分の足下を踏み外した。どうやら床の板もかなり持って行かれたみたいで完全に態勢が崩れた。腕にばかり意識を集中してたから、足下が疎かに成ってた。このままじゃ船から投げ出される。だけど僕の両手は二つの剣で埋まってる。
するとその時だ。僕の腰をガッシリと掴む感触がした。
「スオウ君!」
そんな声と共に僕を捕まえたのはテッケンさんだ。そしてその後ろに鍛冶屋がいる。鍛冶屋はテッケンさんの足を掴んでて勢い良く、テッケンさんと僕を引っ張りあげた。
「たく、気を付けろ! お前がいなくなったら動力路が無くなったこの船をどうやって止めるんだ!」
「分かってる……そんなの分かってるさ!」
僕は鍛冶屋の言葉に、ムキに成ってそう返す。分かってるから、精一杯頑張ってるんじゃないか! イクシードはまだ健在。まだ僕はやれる。
「スオウ君、さっきの木のおかげで船の方向が急に変わった。そのおかげで今はバトルシップの主砲を逃れられてる。今しかチャンスはないよ!
もう一度あの光が追いついたら、きっと止まれない。ここで止めよう!」
「なるほど……」
僕は船首部分よりも損傷が激しい後方部分に目を向ける。確かにさっきまで降り注いでた凶悪な光が、この船一個分位ズレて、地面を焼いている。
確かにこれはチャンスだな。無駄に勢いを付けてた攻撃が無くなったんだ。ここで止まらないとどうするって感じ。
だけど腕に力を込めようとして気づく。なんだか少し力を入れるだけでプルプルと筋肉が弛緩するような感じ。まともに剣を振るえる状態じゃないな。
だけどそこで僕のそんな状態に気づいたのか、テッケンさんが僕の腕に飛びついて来て、ガッチリと自分の腕で僕の腕を支えてくれる。けれどこれは、彼の体重を全部僕が支える羽目に成るんだけど……
「大丈夫! スキル『エアウープ』発動!」
そんな言葉をテッケンさんが紡ぐと、彼の小さな体に青い光が発言。それと同時に何故か腕が上に引っ張られるような感覚が。
「えっ? えっ? 何?」
僕は慌てて腕を元の位置にまで戻す。なんだかまるでテッケンさんに浮力が付加されたような……風船にでも成ったのか?
「近いね。でもこれで僕の体重を気にせずに剣を振るえるだろう?」
「……そうですね。ありがとうございます」
確かにこれならいける。僕の腕をしっかりとテッケンさんが固定してくれるのなら、剣がすっぽ抜ける事もないだろう。
「いやいや、僕は今回殆ど役に立ってないからね。この位は当然だよ。今回でなかなか思い知った。どんな力でも突き詰めれば武器になるとね。
ノウイ君のスキルなんてまさにそうだよ。それに対して僕は……いや、今はそんな事を言ってる場合じゃないね。ほら鍛冶屋君は左腕を頼むよ!」
「……くっ、しょうがないな。俺は男の手を取る趣味は無いんだがな」
テッケンさんに促されて、渋々と鍛冶屋が僕の左腕を握る。これで両腕がしっかりと固定されて、思う存分セラ・シルフィングが振れるな。
テッケンさんに色々と言ってあげたい事も、鍛冶屋の言葉に返しい事も有るけど、今はやっぱりその時じゃない。今僕達が見なきゃいけないのは、この船を止めるその姿。頭で思い浮かべて、この手で実行するんだ!
僕は無言で二人を交互に見つめる。そんな視線に二人は頷いて答えてくれる。バトルシップは真横方向に移動するのは苦手なのかモタツいてるから、この時しかない。
僕は大きく腕を上げセラ・シルフィグを掲げる。すると散っていた風が再び集まりだし、激しい放電現象と共に、森を突き抜ける風のウネリが出来上がる。両手に伝わってくる、仲間の力強さを感じつつ、僕は心でこう叫ぶ。
(今度こそ止める! これは絶対だ!!)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
腕を振り卸し、風のウネリを地面へと突き刺す。そして今度は三人で、その衝撃に耐える。全身を振るわす激しい振動。だけど今は一人じゃない! だから――
「止まれえええええええええええ!!」
船と主砲が地面を削る音が響いてた。僕達が騒がしくするから、森全体が呻くように騒がしく鳴いている。飛び散る枝や土や葉っぱが痛い。だけどそんな散々な中で、視界の先には光が見えてた。森の向こうに見える光。それに僕達は突っ込んでいく。
けれど力は弱めない。地面から伝わる振動が少しずつだけどゆっくりに成ってる気がしてた。そして飛空挺ごと、光の中に突っ込んだと思ったら、飛空挺はその動きを止めていた。
焦げた臭いに、頭上から降ってくる青々しい葉っぱ。両側のテッケンさんと、鍛冶屋が「止まった……」と同じ台詞を紡いでる時、僕は全く別の事を思ってた。
この時の僕はきっと、船が止まったことも、後ろからまだバトルシップが迫ってる事も忘れてた。だってこの光の中の光景に目を奪われてたから。
薄暗い森をボロボロの飛空挺で必死に抜けてきた先。見つけた光の向こうに有ったのは、きっと目指してた場所。圧巻の世界樹と呼ばれる大樹。その木にヘバリツくように建てられた建築物は地面に広がる大きな根まで続いてた。大きすぎる木で太陽光が届かない筈なのに、やけに優しい光で包まれたこの場所こそが『リア・レーゼ』なんだ。
凄い……なんだか空気が違う。世界樹の雄大さのせいか? 思わず唾を飲み込んでしまう程、目を奪われる。
『くはははははは! これで終わりだあ!!』
僕が呆けてると後ろから聞こえてきたそんな声。既に止まってしまった飛空挺に避ける術はなく、凶悪な赤紫色した光が木々をなぎ払い地面を抉り僕達に迫ってきてる。
目の前がその色に染まってしまう。凶悪で目の奥に焼き付くようなその光。だけど地面を抉りながら迫ってた主砲は何故か僕達の居る飛空挺まで届かなかった。
なんだか、突如空間に亀裂の様な物が現れて、その中に主砲の光は消えている。
『何!?』
そんな驚愕の声がバトルシップからも聞こえるけど、それは僕たちだって同じだよ。
「なんだこれ? どういうことだ?」
障壁とかとは別次元のやり方。別空間に流してるって感じの対処方。それでも必死にバトルシップは撃ち続けてるけど、いかんせん防いでるんじゃなく全く別の場所へ流してる感じだからこれをやってる術者の負担には成りそうもない。
そう思ってると、どうしても僕達を踏みつぶしたいからか、バトルシップは再びその砲台を開き空に線を描くミサイルを発射する。
どんだけ僕達に執着するんだよあの野郎。そろそろマジで諦めて欲しい。だけどミサイル程度なら、僕のイクシードでもやれる――と思ったら、今度はリア・レーゼの街の方がカッと強烈な光を出した。
すると無数の光がバトルシップを襲った。そして射出されたミサイルも届く前に撃ち落とされる。船体にそれほどダメージはなさそうだけど、主砲も流された今の状況は不利と考えたのか、大きく羽を広げて後ろへ急後退。後退しながら器用にバトルシップはリア・レーゼからの攻撃を避けている。
その機動力はやっぱり圧巻だな。空を縦横無尽に前からでも後ろからでも動けるんだから凄い物がある。
「スオウ君。今の内に船から離れた方が良いんじゃないかな? リア・レーゼは直ぐそこだよ。ノウイ君のミラージュコロイドを使えば――」
「そうですね。ここに留まるのは危険そうだし、そうした方が良いかもですね。もう良いですよ二人とも。ありがとうございます」
僕がそういうと、テッケンさんが僕の腕から離れて空中をフワフワと風船の様に漂う。うわ、なんかいいなそのスキル。
てかやっぱり自分を風船とかにするスキルなのかな? でもあんまり戦闘とかでは使えそうにないように見える。だって現にテッケンさんは空中で手足をジタバタさせてるもん。風に流されてるだけ? なのかな。
僕がそんなことを思って眺めてると、テッケンさんがスキルを解除したのか、体を覆ってた青い光が消えてテッケンさんは地面に落ちる。
だけどそこはテッケンさん。体を丸めて回転させて、格好良く地面へと降り立った。
「ふん、まだまだセラ・シルフィングの可能性を俺に見せろよ」
そんな事を良いながら鍛冶屋も僕の手を離す。僕は「おう!」と言って笑ってやるよ。実際鍛冶屋にも世話に成ってるし、それにセラ・シルフィングの可能性には僕だって賭けてるんだ。
まだきっと上に行ける筈。てか、そうじゃないとシクラ達には対抗出来ない。
僕達三人は船首から操舵室に近い甲板の中央部分へ。そこにセラを見守る感じでノウイが居る。すると反対側からはシルクちゃんとピクもこちら側に来てくれてる。流石ちゃんとわかってるね。
「あれってリア・レーゼっすよね? この攻撃は彼らが自分達を助けてくれてるって事でいいんすか?」
集った僕らにそんな投げかけをしてくるノウイ。助けてくれてる――ね。それはどうなんだろうか?
「さあな、それはどうだかわからないけど、取りあえずここに居ると危険だろ。自分達でリア・レーゼを目指そう。僕はクリエとミセス・アンダーソンを拾ってくるから、ミラージュコロイドを頼むノウイ」
「それは良いっすけど、自分達だけでいくんすか? この船には操舵室以外にも人が居るっすよ。置いてくのは危険っす」
むむ、そうなのか? 僕を襲ったプレイヤーどもはここまでで全員落ちたと思ってたんだけど……確かにまだ中に人が居るのなら、放っておくのは不味いな。ここには奴も居るしな。
僕はそう思いつつ、操舵室よりも後ろで空を眺めてる白い奴に視線を向ける。なんだか空間から浮く位に白い毛と髪がキラキラしてるから、思わず白い奴って呼んじゃったけど、まさに白が際だってるんだよな。
まあ厳密には白じゃなく白銀なんだけど……あいつに僕は言ったからな。自分達のエゴで誰かを犠牲になんかしないってさ。まあ実際犠牲に成っちゃった奴らは既に多数だろうけど、あのプレイヤー共は自分のエゴを走らせた結果でもあるよね。
だからそこはノーカンで。僧兵は一応聖院で元老院側なら敵だ。まあこんな飛空挺勤務の末端はどっちに付いてるとかないだろうから、犠牲には出来ない奴ら。そしてこの飛空挺船員も勿論犠牲になんて出来ない。
既に彼らの職場をボロボロにしちゃった僕が言える事じゃないだろうけどさ、こんな事になったから見捨てて良いって事じゃない。危険な所からはやっぱり離さないとだ。
「確か、お前を襲って来たプレイヤーもまだ下に居るはず……か? 流石にもう起きててもおかしくはないと思うが。いや、奴の得体の知れない攻撃でノックダウンしたから、何かの効果付きなのかもしれないな。
取りあえず……本当に全員連れていく気か?」
面倒臭そうにそう言う鍛冶屋。まあ確かに手間だけどさ、仕方がないだろ。自分達だけ助かるって言うのも目覚めが悪い。僕はそれなりに繊細なんだよ。
「言っとくけどな、これはゲームだぞ。プレイヤーはまだわかるが、ただのNPCにまで気遣う必要はないと思うけどな」
「お前も今更そんな事を言うか? もう僕にとってLROはただのゲームじゃない。実際みんなだってそうじゃないのか? ここはもう世界だろ。僕達が違う人生を生きてる世界。
それにただのNPCを見捨ててアンダーソンだけ連れてくってのもな……なんか違うだろ。LROは何気ないただのNPCにだってちゃんと僕達が知らない設定があるみたいだしさ。
見捨てて良い存在じゃやっぱりないだろ」
だって誰しもが生き生きしてる。その姿を僕達は知ってる。最近は特にそれを感じるし、本当にNPCとプレイヤーの区別ってのが難しい位だ。
何でもない筈のNPCにだってここではちゃんとした設定が見えてくる。それだけ作り込まれた世界だ。それなら家族とかいるかも知れない。
それを考えるととてもNPCだからなんて言えない。そりゃあこれから一生会うこともないかもだけど、僕達だけの都合で左右されて良い存在なんてきっと居ないんだよ。モンスターを除いてね。
「まあ良いじゃないか鍛冶屋君。僕達も随分LROの見方が変わった。放っておくなんて出来ないのには賛成だよ」
「そうですね。大変だけど、見捨てる事はしたくないです。私は誰も見捨てない為にヒーラーをやってるんですから」
そう言って仲良い二人が同意してくれた。空ではまだしつこくバトルシップが僕達を狙ってる。だけどリア・レーゼからの攻撃でバトルシップはまともに攻撃できてない状況。今しかないよな。
「よし、良いよな鍛冶屋?」
「しょうがない。俺一人が反対してもお前達はお人好しだからどうせやるんだろ。俺もミラージュコロイドが使えれば、一人で逃げるんだがな」
「またまた、そんな事言って僕は知ってるぞ。お前もなんだかんだでお人好しだってな」
僕がそう言うと、「お前達と一緒にするな!」と言われた。たく、鍛冶屋は照れ屋なんだからな。一生懸命一匹狼を演じてるんだろう?
「遊んでないでやるんなら急ごうっす! 機内のわかる所は自分とテッケンさんで回るっす。ミライージュコロイドを使って。
その他のプレイヤーとかはスオウ君達で頼むっす」
「了解」
なんかノウイに怒られたけど、そこら辺はしょうがない。鍛冶屋をからかってる場合じゃなかったもんな。僕達は早速それぞれ行動を開始!
「待て貴様等!!」
――しようとしたら突然の制止の声。いや、声と言うか叫び、思わず体がビクッと反応するような、そんな強い声だった。
「なんだよ……自分達だけで逃げるんじゃないぞ」
「人数の問題じゃない。逃げる必要がないって事だ。いや……そもそもお前達はそこを動くな」
そう言って奴がこちらに歩きだした。僕達は警戒して奴の行動に目を見張る。すると突然、操舵室の横で止まったかと思うと、ジャンプして操舵室へと入っていった。
「しまった! クリエ!」
僕は慌てて駆け出す。だけどその時、艦長の声がして、そして再び奴が甲板に降り立つ。その腕にクリエと、ミセス・アンダーソンを抱えてだ。
やっぱりか……そうするんだろうと思った。
「人質か? そんな事をする奴だったんだなお前」
「勘違いするなよ。私は救っただけだ。お前達は結局犯罪者だしな。貴様はリア・レーゼにくればどうにかなると思ってるみたいだが、同じ国だぞ。
指名手配犯が許される訳ないだろう。だから救出した。この二人をな。お前達には色々と聞きたい事がある。出るところに出て貰おうか」
そう言ってこれみよがしにクリエをこちらに向ける奴。救出だと? どうみても脅しに使ってるじゃねーか! 僕達は動けない。でもまだバトルシップはそこに居るんだぞ。危険だろ。
「そこら辺は心配ないさ。言っただろう。この空はリア・レーゼの空域だ。奴らでさえ自由に飛ぶことは出来ない」
そう言うと、奴はリア・レーゼの方へ視線を向ける。するとその街には大きな船が浮いていた。
「貴殿らの行為はリア・レーゼへの侵略行為とみなせる! これ以上の暴挙は、この街の尊厳の為に排除することになるが……どうするか?」
リア・レーゼの飛空挺から正式な勧告を受けるバトルシップ。すると流石にこれ以上は不味いと思ったのか、素早く引いて行くバトルシップ。なんとか助かった……って雰囲気じゃないな。人質に取られたクリエとミセス・アンダーソン。
そして前から迫る飛空挺。これは歓迎されてるとみても良いのかな? ある意味そうかもだよね。なんだか苦笑いが漏れてきそうだった。
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