命改変プログラム

ファーストなサイコロ

遠い空、近い大地



 空を縦横無尽に駆け回る聖典。それらが勢い良く、そして様々な方向から収束する光と砲芯へ向けて攻撃を放った。
 聖典の黄金色の細い光……それらを強引にねじ込ませたから、光が膨張してその場で爆発を起こす。そして砲芯もモゲ落ちる。
 黒い煙がバトルシップを汚く彩ってるよ。良い気味だ。そんな事を思ってると、通信機からセラの怒鳴り声が聞こえてくる。


「今よ! さっさとスピード上げなさい! 突っ込んでも良いから、スピードアップアッ……ッツウウウ」
 声が途中から痛々しくなった。どうしたんだ? と思ったけど、そう言えば聖典を使うと頭が痛くなるとかいってたかも。
 しかも二十機なんて確か最大数だ。頭痛も今までよりも凄そうだよな。いつもは慎重に二・三機ずつしか出さないのに行き成り二十とか、それだけ不味いと思ったのか。
 でも確かに、シルクちゃんとセラがいなかった今頃墜落しててもおかしくは無かった。


「おい、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。セラちゃんの事はこちらに任せてくれて良いから、そっちは操縦に専念してくれ!」
「テッケンさん……はい!」


 何故かセラはそっと退場してた。代わりにテッケンさんが心配無いような事をいってくれるけど、ちょっとは心配だな。ちらりと視線を外に移すと、聖典が空を駆けてバトルシップに絶え間無く攻撃してる。
 その動きとか、一人の人間が操ってるなんて思えない高度差だよ。セラってあれだよな。きっと『ニュータイプ』とかなんだと思う。
 あの動き見てたら頭痛く成るのも分かる気がする。取り合えず僕達がセラに負担を掛けないようにするにはさっさと加速させてリア・レーゼを目指す。それしかないよな。


「私達は……生きてるのか?」


 なんだかそんな事を呟く艦長。流石に動揺し過ぎじゃないか? ハイジャックが起きても冷静沈着だったのに、何で今の状況にはこんなに弱いんだよ。


「生きてるよ。言ったろ、僕達は諦めないってさ! 頼りに成るんだよ僕の仲間って奴は! だから加速の方法教えろ。死にたくないんだろ?」


 僕のそんな言葉に、艦長はフラフラとしつつ立ち上がり外へと首を伸ばす。何なんだろう? 何を思って外を見てるんだ?


「足掻くこと……それは神への反抗ではないか? 我らモブリはどの種族よりも教えに尊いからこそ、シスカ様の愛を受け続けて種族だ。
 我らにとって教えは絶対……神の為に死ねと言われるのなら……死まで受け入れるのが我らモブリの鏡……そうじゃないのかな? 僧兵の貴方はどう思います」


 艦長にいきなり話を振られた僧兵はちょっと驚き気味に「え?」っと発して視線を上下左右にさまよわせてる。あれは答えに悩んでるって事か?
 僧兵こそ、さっき艦長が言った事を迷い無く実行する立場じゃね?
 そしてしばらく迷ったあげくに拘束された僧兵はこう答える。


「も……勿論、そうに決まってる。我ら僧兵は死は神に近しくなる行為と教えられてるからな。ははは、だからそんな犯罪者どもに協力なんてする事はないんだ」


 僧兵はそう言いつつ、なんだか冷や汗だらだらだぞ。死は神に近しくなれる事なんだろ? ならもっと盛大に受け入れてろよ。


「ふっ……これだから無信教者な人は困る。何も分かってないからな。例え神に近しく成る行為でも、そんな事に喜んでたら、シスカ様が悲しむだろうが。
 あの方はとても慈悲深い神なのだ」
「お前さ……もう言ってる事が色々とおかしいぞ」


 なんで慈悲深いシスカ様が、信者が死ぬのを良しとするんだよ。おかしいだろ。そんなの教えじゃない!


「お前達を縛ってるそのおかしな考えは、本当にお前達の信じる神の意志か? 違うだろ! それは自分達の都合の為に部下の命をないがしろにする、上の奴らの思惑だ! 目を覚ませ! そんな事でたった一つの命を安っぽく投げ出す気か?
 そんな事する方が、教えに背いてるんじゃないのかよ!」
「君がシスカ教の何を知って語る!」


 僕の必死の言葉に、艦長も語気をあらげてそう返す。NPCのモブリにとって、シスカ教は絶対。心の支えその物みたいなものなんだ。
 縋ってきた物は裏切れない? 裏切りたくない。間違いだなんて思いたくない? でも僕は何もシスカ教その物を否定したい訳じゃない。
 僕が否定したいのは、教えを都合よく利用してる元老院共の言葉……そしてそれを受け入れようとする無知なあんた等だ。
 縋り続けて来たせいで、自分で考える事が出来なく成ったんじゃないか?


「僕はシスカ教なんて興味もないし、その教えを受けようとも思わない……だけど、死が神に近づく行為? それはバカなんじゃないかと思う」
「バッ!? バカだと! 我らモブリは、いつしかシスカ様の傍に再び行ける。その思いを信じ。その為の教え何だぞ!」


 艦長さんが必死に僕にそう訴える。その顔は結構仰々しい。モブリの顔は全般的に可愛い感じの筈だけど、今の艦長さんにはそんな感情芽生えそうもないな。
 刻んだ皺を浮かばせて、瞳孔開いたその顔は結構怖い。まあそれだけ必死なのも分からなくもないけど。だって信じて来たんだもんね。心の底から。それが普通だったんだ。
 それを無信教者な人に言われちゃね。まあまだ誤解があるようだから、もう一度、ちゃんと言おう。


「すみません、言い方が悪かったですね。僕は何もシスカ教をバカにしてる訳じゃないし、そんな教えを守り続けるモブリの人達がおかしいなんて思わない。
 ただ、その教えが命を奪うなんておかしいって言いたいんです。本当にそんな事をシスカ教は正当化してるんですか?
 慈愛の神シスカが、そんな事を言うと思ってるんですか? そんなのおかしいじゃないですか! 僕にはシスカ教の事なんて分かりません。だけどどの種族だって一つの体に一つの命なのは変わらない!
 その重さは、僕だって分かってるつもりです。命の重みを、シスカ教は教えないんですか? 軽んじるんですか? 命を差し出せるかどうかが信仰の度合いじゃない。誰かの解釈を鵜呑みにするんじゃなく、自分自身の解釈で教えを教授して生きていく。
 それが正しい信仰じゃないのか!?」


 僕のそんな言葉に、艦長もそして僧兵も黙り込む。外では聖典が絶え間無い攻撃を続けるけど、どうやらバトルシップ事態に強力な障壁が張ってあるのか、聖典一機程度の攻撃じゃ通らない。
 やっぱり最初の不意打ちで見せた収束砲じゃないと、バトルシップを落とす事は出来ないみたいだ。でもあれは不意打ちだからこそ出来た事。
 今聖典が一カ所に集まったら、間違いなく狙い撃ちされる。何てったって、こっちの驚異はそれくらい何だからな。しかも砲芯二つなくなっても、バトルシップの武器はまだまだあるみたいだし……流石はバトルシップ言うだけある。
 魔法を重鎮したミサイルやらなんやらがさっきから空で爆発してるよ。それら全てを聖典が引きつけてる間に、こっちは少しでも加速して、リア・レーゼに向かいたい所なんだけど……いかんせんまだ把握してないこと一杯。それにやっぱり損傷激しいし、変なメーターがさっきから赤いラインに到達してピーピー言ってるしで、なんだかヤバそう。


「正しい信仰……か」


 艦長がポツリとそんな言葉を漏らす。するとその時、場にそぐわない声が聞こえてきた。


「クク、ハハハハハハ」


 そんな笑い声。どっから聞こえて来るかと思いきや、それはドアを開けてそこにぶら下がってる鍛冶屋の腕にある物から聞こえてきてた。


「どうしたんだ?」
「いや何、俺もシルクに加勢しようと思ってな。この船を守らないとだろ? それにちょっとこいつが邪魔だったからここに置こうと思ったんだが……」


 そう言って鍛冶屋は腕に抱えるひし形のクリスタルを見つめる。さっきからフードの下で大きく口を開けてゲラゲラしてる。
 そんなキャラだったかこいつもさ。どいつもこいつもブレ過ぎだろ。


「ふん、人に諭されてしまうとはな。正しい信仰……あながち俺は間違ってないと思ったよ。サン・ジェルクの奴らは信仰に溺れてるからそれをどう受け止めるかはわからんが……これだけは俺からも言ってやろう。
 信仰の豚になるな。信仰はあくまで支えであって、生き方を決める指針は己でやれ。それがこちら側のあの方の言葉だ。
 そしてあの方がサン・ジェルクを好きでない理由も、豚が多いから。改善しろよ。星の加護が受けれなく成るぞ」


 ?? なんだ一体? いきなり喋り出したかと思うと、訳の分からないことばかり述べやがって。こっちは置いてけぼりだっての! まあ信仰の豚になるなって所は大いに共感したけどな。まさにその通りだと思ったよ。上手いこと言ったなこいつ。


「あ~まあ取り合えず、ここに置いておくからな。お前はしっかり運転しろよ」


 奴が雄弁に喋るから捕まえてるこちら側としては微妙な所なんだろう。鍛冶屋の言葉からそんな感じが伝わってきた。まあ置いとくのは良いとして、この飛空挺の操縦はちょっと荷が重いよ。もっと経験豊かな奴はいないのか?


「飛空挺を操縦したことある奴なんていない。諦めろ。それこそあのバトルシップみたいなのがプレイヤーにも普及するのなら、後々には操縦できる奴も現れるだろうが、今はいないな。
 お前が舵を握ってるんだ丁度良いだろ。それにそこのモブリは詳しいはずだろ。取り合えず、お前は船を飛ばし続けてさえすればいい。バトルシップからの攻撃は俺とシルクが防いでやる。
 攪乱はまあ……セラにしか出来ないだろ。聖典位だからな、あれだけ空で自由自在に動ける武器は」
「それは……まあそうだな。お前等も防ぐたって一発一発がデカいんだから、無茶し過ぎるなよ」


 鍛冶屋の言葉は最もで、だから僕は気遣う感じの言葉を返す。本当に心配してるしね。だってさっきシルクちゃん吹き飛ばされた訳だし。それだけバトルシップの攻撃は強力だ。
 なんてたってデカいもん。それが全てだろ。実際あんなのは防ぐなんて考えるべきじゃなく、避けるって考えるべき物だ。
 でも、この船ではそれが出来ない。向こうの方がスペックで上回ってるから、避ける事自体が難しい。鍛冶屋も言ったけど、僕のやるべき事は結局この船を飛ばし続ける事だ。
 無理に避けようとする事が無駄か。


「お前にそれを言われたらおしまいだな。心配するな。俺たちはお前とは違う。HPが尽きても死ぬ訳じゃない。最悪、お前達だけでもリア・レーゼに送れれば良いんだよ。
 俺たちは時間をかければ普通に追いつけるんだしな」
「鍛冶屋、お前……それはどうなんだよ。言っとくけど、僕とクリエとミセス・アンダーソンだけで辿り着けても困るんだぞ。右も左もわからないじゃないか」


 僕はおもいっきり不安をぶつけてやった。だって不安な物は不安だろ。リア・レーゼなんて行ったことないんだぞ。しかも眠った二人のモブリを抱えてって、どうしろって言うんだ。


「重要な事を忘れるな。俺たちにとって大切なのは、お前達が無事にリア・レーゼにたどり着けたっていう事実だ。お前達はきっと取り返しがつかないんだから当然だろ。
 それは全員無事に……が一番良いが、最悪の場合は、俺たちの中ではそう言う風に決めてる。だからお前はその舵を放さずしっかり握ってろ。
 案外大丈夫だろ。お前は裸一貫で知らない町に投げ出されてもなんとか出来る奴だ。俺はそう思ってる」


 なんだかそんな失礼な事(?)を言って、鍛冶屋はドアを勢い良く閉めて行った。たく、僕が知らない間に、みんなの中ではそんな取り決めがしてあったとは。
 確かに僕達は取り返しが効かないだろうからな……取り合えずそうしてくれるのは実際にはありがたいとは思う。けどやっぱりどこか心苦しいよね。なんだか仲間を犠牲にして行くみたいで。
 まあだけど、ようは全て上手くやれば良いことでもあるよな。鍛冶屋も最悪の場合って言ってたし、このまま何とか飛び続けて、リア・レーゼに突っ込めれば全員で晴れてリア・レーゼ入りする事が出来る。


「過度な希望はよしておけ。絶望が濃くなるだけだ。そもそもこの船は今すぐ落ちてもおかしくない」
「はぁ?」


 僕が折角ポジティブ思考を巡らせてると、床で無造作に転がったクリスタルからそんな聞き捨てならない言葉が聞こえた。何を根拠にそんな事を言ってるんだこの野郎。


「それはどういう事だ? 今の攻撃を受けたせいって事か?」


 後方と船首が抉られてるからな。スクラップされた船みたいになってるのは事実だ。だけどまだ飛んでるぞ。それともこのピーピーうるさい音か? よくよく見ると高度計も少しずつ下がってる様な。
 真っ直ぐに浮いてた筈なのに、少し斜めってる気がする。


「それもあるが……なあ艦長。このままじゃこの船は落ちるだろう?」


 奴はそう言って艦長に話を振る。自分で言うより、艦長に言ってもらった方が、信憑性が高いとか判断したんだろうか? まあ実際、こいつの言葉はどこまで信じれるのかわかんないから、その判断はなかなかナイスと言わざる得ないけどね。
 そして話を振られた艦長が、僕とクリスタルに閉じこめられたそいつを交互に見て、震える口から声を出す。なんだか奴のこの状態に恐怖してるのか、自分も逆らったらこんな風に……とか思われてそう。


「た……確かにこの警報は動力炉で生成してるエネルギーが不足してる音を示す物。それにさっきの攻撃で機体の損傷も激しくなって、大量に外に漏れだしてる」


 漏れだしてるね。この青く光る紙切れみたいな光がそうなのかな? 確かに前からも後ろからもどんどん減ってるな。


「そしてその漏れだした分の供給がどうやら間に合ってない。バトルシップが追いつく前から、生成量がなんだか不足してたが、こうなると機体を浮かせて置くことは出来ないんだ。だから今度こそもう終わり……」
「それはもう良いです! どうにか出来ないんですか?」


 そう言う事を教えてくれたって事は、やっぱりちょっとは協力する気になったって事だろ? なら解決方法まで提示しろ。


「別に私は犯罪者に協力する気はない。だが、まだ神の身元に召される気もない。私は脅されてるんだ。凶悪な犯罪者にな」
「それで良いから解決方は? このままじゃどのみち神の身元に召される事になるぞ」


 まあ実際はNPCなんだし、何事もなかったかの様に艦長として復活してそうだけど。このモブリはそんな重要なキャラじゃなくモブっぽいし、きっとそうなる――んだよね? 
 まあ今は取り合えず、協力してくれるんだしそれでいいや。


「解決方なんて言っても……実際調子が悪くなったのはバトルシップが現れる前。攻撃が原因じゃないのならどうしようも……君も感じてただろう? スピードが落ちてたのを。それも動力炉の不調が原因だ。
 途中まではなんともなかったんだがね」
「そんな……」


 それじゃどうしようもないじゃないか。いや、攻撃が原因で動力炉損傷しててもどうしようもなかった訳だけどさ、たまたま調子悪くなったのならそれこそ偶然、運が悪かったと思うしか……
 そんな絶望感の中、窓の外では聖典の一機がバトルシップから放たれたミサイルに落とされてた。赤い炎に包まれて、爆発と共に消えていく。攻撃が通らなくたって、セラには負担が掛かるんだ。
 倒せる見込みがないのに、聖典を操り続けるのは苦痛だろ。いつまでも持つわけない。


「どのくらいだ?」
「何が……だ?」
「リア・レーゼまでの距離だ! 届く事はないのか?」


 僕は必死に艦長にそう聞いた。レーダーはあるけど、見方がわからないからね。なんだかさっきから近づいてるようで近づいてない様な……とにかく直す事が出来ないなら、それを願うしかないじゃないか。
 だけどやっぱり艦長の顔は芳しくない。


「いくら何でもここから今の推進力でリア・レーゼまでは無理だ。だが、かと言ってここら辺に降りられそうな場所はない……」


 なんてこった。期待薄だったけど、まさに絶対絶命じゃないか。


「おい、ちょっと聞け」
「くっそ、こうなったら一気に加速して少しでも距離を稼ぐってのは……」
「それはダメだ。これだから素人は直ぐに無茶をやりたがるから困る。ここを空の上だと忘れるな。無理にスピードを上げても、地面に高速で激突するだけだぞ。
 ある程度スピードを落としながら着水するんだ。そしてその為にも当然エネルギーは必要だ。良いか、覚えておけ。空の上での無茶ってのは死に直結してるんだ。
 しかもこういう大型船なら、自分だけじゃない誰かを巻き込む事を知っていろ。迷惑を掛けないんじゃなかったのか?
 あの言葉は嘘なのか!?」
「嘘じゃない! 嘘じゃないけど……それならどうすれば……」


 僕は唇を噛みしめて苦悩する。みんな頑張ってくれてるのに、僕は進み出せてもいない。それどころか、次から次へと絶望的な状況が露わになるだけだ。
 そしてまた一つ、視界の端で聖典が炎に包まれて消えて行ってる。聖典が一つ減るごとに敵には余裕が出来るのか、それとも聖典が対処してた所に穴が出来るからか、この飛空挺に来るミサイルの数が増えてしまう。
 そしてそれに寄ってピクとシルクちゃん、鍛冶屋の負担が増えるんだ。


「おい、だから俺の言葉を聞けって言ってるだろ」


 こんなグズグズやってられないのに、実際にはこれ以上グズグズになりそうなんだからみんなに会わせる顔が無くなりそう。本当にこうなったら、この船に見切りをつけるべきかも知れない。それがある意味一番現実的な様な気がする。
 バトルシップには僧兵しかいないだろうし、気を使う必要もないだろ。あのバトルシップをハイジャック……本気で考えるしか――


「おい! いい加減応答しろ!! こっちは重要な事を告げてやろうとしてるんだぞ!」


 ――僕が一世一代の決意を心で固めようとしてるときに、横から割って入ってきたそんな声。一体なんだよ。


「てか、そもそも何でお前はそんな僕達に協力的になってるんだよ? 敵だろ?」
「別に貴様等を認めた訳じゃない。お前達が自分勝手な事で人々に迷惑を掛けるのは変わらんしな。それに予言もある。実際リア・レーゼには入ってほしくないが、ここでサン・ジェルクの僧兵に踏みつぶされる訳にはいかない。それが理由だ。
 それに貴様はなかなか面白そうではあるしな」


 なんだそれ? お前だって結構自己中心的な考え方じゃん。で、一体何をさっきから訴えようとしてたんだ?


「ああ、それはだな……実は動力炉の異常は俺がケーブルを一・二本引き抜いてたせいなんだ。お前達の妨害工作の為にな」
「テメェのせいか!!」


 思わず外に放り投げてやろうかと思った。


「まてまて! 考えろ! それは当然の処置だろ。お前達と私は敵だ。嫌がる事をするのは当然。だが逆に、ただ調子が悪いみたいな事じゃなくてよかっただろ。
 これならケーブルを繋ぎ直すだけで、動力炉の稼働は通常に戻る筈だ!」


 まあそれはそうだろうけど……やってくれたなコイツ。そんな事をしてたとは、抜け目のない奴。


「モメてる場合じゃない! 取り合えずケーブルを戻すんだ! 君の仲間は甲板に居るので全部じゃないんだろう? なら早く!」


 命掛かってるからって随分艦長が積極的になってきたな。まあだけど急ぐことに異論はない。取り合えずここはノウイにでも連絡して……って監視室にまだ居るのか? メールはダンジョンや戦闘中は送れないんだっけ? でもここは基本送れる場所の筈。取り合えず試しに送ってみる事に。すると直ぐに返事が来た。


『了解っす!!』


 なんとも頼もしい文面。自分の中で目が点野郎って呼ぶのをやめてあげようと思った。

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