命改変プログラム

ファーストなサイコロ

墜落必死

 強気に出た艦長。その理由はまさしくそれだった。後ろから何かが一瞬光った様な気がした瞬間、僕達の乗る飛空挺を追い越した二機の何か。
 いや、何かなんか言い方しなくても、きっとあれが――


(バトルシップ! 戦闘用飛空艦か)


 てか一機じゃなかったのかよ。何故に二機も。しかも追い越すとか、見せびらかしたいのか? でも実際、桁違いの速さなのは、今の一瞬で理解した。だってバトルシップ二機がこの船を抜き去った瞬間、衝撃波みたいなの来た。
 一体どれだけスピード出てるんだよ。艦長も速さが全然違うって言ってたけど、これは納得。まさに雲泥の差だ。


「これで終わりだよ君達は。見て分かった筈だ。逃げられる訳がないと。さぁ、降伏しなさい。今なら私だってそれほど酷いことをされたとは言わないでおいてあげるよ。
 終わりなんだよ。君達のハイジャックごっこはここまでだ」


 艦長の諭す様な言葉がなんか引っかかる。ハイジャックごっこ……こっちは本気だったよ。今はそうでもないけど、その時はクリエやミセス・アンダーソンの為にってこれしかないって思ってた。
 決して遊びなんかでこんな事をする分けないだろ。僕達はそんな、その場のノリでバカな事をやるバカな奴らじゃない。助けたいって気持ちがちゃんとあったんだ。


「スオウ君! バトルシップが!」
「おいおい、不味いぞこれは!」


 シルクちゃんと鍛冶屋のそんな声が扉の向こう側から聞こえてくる。分かってる……分かってるよ二人とも。バトルシップも、これが不味い状況だってのも理解してる。あれだけデカいのが横切ったんだ、気づかないわけない。
 そんなバトルシップはこの船を追い越したと思ったら、前方で一気に急上昇や、急旋回。なんか二機同じ動きをピッタシとシンクロしてしてる。航空ショーかよ。
 でもそれはバトルシップのスペックを見せつける為の行為なのかも。実際スゴいしな。あんなのこの船型の飛空挺じゃ絶対に出来ない。まさに戦闘型と言った所だ。だけど……


「心遣い感謝します艦長。だけど無理なんです。僕達に投降の選択肢はない。それだけは絶対にやれない。あいつ等の為にも」


 そう言って僕は部屋の隅で眠ってる小さなモブリへと視線を移す。


「子供と、そしてミセス・アンダーソン様を浚った極悪人なのだろ? それこそが都合の良い言い訳とは思えないのか?」
「浚ってなんかいませんよ。まあそう見えるのは無理はないし、実際元老院側からしたらその通りだろうから、弁解に意味はないかも知れないですけど、僕達がどちらかと言うと、ミセス・アンダーソンの意志を引き継いでます。
 あの子を、クリエを守ってやりたいんですよ。だから投降はしません」


 厳しい言葉を言われた……だけどそれに真摯に向き合って紡いだ言葉。真っ直ぐ見つめると、艦長はちょっと怯んだ様な感じになった。まあだけど犯罪者と刷り込まれてる奴の言葉にどれだけ耳を貸すかはわかんないけど。
 それでもこの人は頭ごなしに否定してる訳でもないと重う。聞いてくれてるしな。本当に頭ごなしはすぐ横で拘束されてる奴を言うんだよね。


「騙されるな艦長! この状況を見るに間違いなく、その二人を浚ってるのはソイツ等だ! もしもミセス・アンダーソン様の意志がソイツの言う通りなら、何故その人さえ気を失ってるんだ。
 アンダーソン様の言葉を自分勝手に折り曲げる事に他ならない!! 国を守り続けて来た、元老院と犯罪者。どちらかを信じるかなんて、比べるべくもない!!」


 ああ、もうウルサい奴だ。シルクちゃんもどうせなら、口まで塞いでくれてたら良かったのに。まあ大抵はそんな考えに行くのもわかるし、こいつは僧兵。仕方のない事だってのも理解するよ。
 だけどさ、それは自分のその目で見たことを、ちゃんと自分で考えて出した結論か? 上から言われてるからそれは悪なら、お前たちには頭なんて立派な物はいらないだろ。


「はっ、立派な事を言った気にでもなってるのか? これは自分で考えた結果だ。お前たちは自分たちの意志でハイジャックをしたんだろう。みまごうとこなき犯罪者じゃないか!
 本当に違う・仕方なかったとか言うのなら、出るところに出てみろ!! 我らの神は罪人しか裁かない!」
「裁くのは神じゃなくてお前等だろ」


 その時点で僕達は真っ黒にされるんだ。法は権力を持ってる奴に平等なんだよ。僕達が出るところ出たら、間違いなく有罪にされる。例え白でも真っ黒に出来る。それが元老院だろ。


「そんな事をするわけが……あの方達は立派な……」
「黒くない権力者なんていないだろうから、ある意味立派かもな。だけど黒にされるとわかってる舞台に行くわけには行かない。
 それにそんな時間も僕達にはないんだよ」


 僕自身のタイムリミットだってあるしな。悠長な事はやってられないんだ。法廷で言い争うなんて論外だね。正しさは行動と結果によって証明してやる。僕は僧兵にそう宣言をして、艦長へと向き直る。
 するとその時どこからか声が届く。それは操舵室の通信機?


『あ~あ~、そこに居るかハイジャック犯? イヤ、我らが同胞ミセス・アンダーソンと我が国の子を誘拐した罪深き犯罪者達よ。
 我らの神は貴様等を許しはしない。だが、我らがシスカ神は慈悲深くもある。今から投降するのであれば申し開きの機会を与えてやろうと元老院のお方達は言ってくださってる。大人しく降伏しろ。
 白旗を持って甲板に姿を現せ。それが貴様等が取れる唯一の方法だ』


 大人しく降伏しろとの提案。無駄な航空ショーをやってた二機のバトルシップが平行してこの船に両側から挟む様に並んだ。既に捕まった格好だな。


『さあ一分以内に姿を現せ』


 そんな声と共に、数を数える声が飛空挺に響く。まさか気長に六十まで数える気かこいつ。まあある意味十秒とかじゃないぶん良心的ではある。


「どのみちもう終わりだ。諦めなさい」


 艦長から届くそんな声。確かに既に詰みの状況だ。チェックメイトを宣言された感じはある。だけど今、僕の中では最後のロスタイムが一分刻まれてるんだ。どうにか出来ないかそれを必死に考える。
 だけどこの船で両脇のバトルシップを追い払うのはどう考えたって無理だ。物理的にきっと不可能。パッと見でもそれはありありとわかる。
 メタリックな外装に、この船とは違う流線型した滑らかな形。それはきっと空気抵抗とかも考えられてたりしそうだ。そしてプロペラじゃなく、どちらも機体の中央に光る青い線が、後方で広がり羽みたくなってる。
 きっともう推進力から違うんだろうな。それに機体の胴体にはデッカい銃みたいな物も見えるし、見える分だけの武器しかないとも限らない。
 てか、こんな大層な物があるのなら、モンスターに襲われたあの時に出せよな。なんで今なんだよ。僕達に向けての初出動なんておかしいだろ。超迷惑。今の状況じゃなかったら、普通に興奮出来る筈だけど、今はゾッとする以外ないな。
 そんな事を思ってる間に通信機から聞こえる数は三十秒を切り出した。これは不味い。てか一分切っても出てこなかったらどうするのかな? とか思ってたら、両脇のバトルシップから魔法陣がいくつか伸びてきた。
 それは僕達の居る飛空挺と、バトルシップとの間の空間を埋める様に敷き詰められてる。まさか……あそこが渡れたりするのかな? すると今度はバトルシップの側面が四角く開きそこには大量の僧兵の姿が……どうやら一分を過ぎても出てこなかった場合の対処法は制圧らしいな。




『さあ、早く出てこい。降伏しろ。逃げ場の無い空で、袋小路に行き着くだけだぞ。観念の時だ』


 そんな言葉を送って再び数を数え出すリーダー格の奴。確かに袋小路……この船が駄目ならバトルシップでも乗っ取ろうかと思ったけど、あの数はな。僧兵……しかもこのタイミングでこんな大層な物で送り込まれる奴らはきっと元老院に忠実な奴らだろうから、ぶっ飛ばすのはやぶさかじゃないんだけど、流石に無謀か。
 まだセラ達とも合流できてないし……てか一体何をやってるのか……珍しく今回は活躍してないぞ。監視室を占領出来なかった時点でこっちに来ても良さそうだけど、それはセラのプライドが許さないのか?
 取り合えず、この通信は船内全体に響いてる様だから、状況位はわかりそうだけど――そう思ってると、例の船内通信用お札が音を鳴らし出す。あの監視室から一度来た奴ね。
 バトルシップからの通信じゃ映像は映らないんだよね。それはやっぱり船が違うから? まあ取り合えず、出てみる事に。


「こちらノウイっす! そっちはどうすっか? って言って場合でもないっすよね。本当はそっちに行きたかったんっすけど、セラ様がそっちはそっちで上手くやれた筈っておっしゃって。
 取り合えずスオウ君がそこに居るって事はその筈なんすよね?」
「ああ、まあな。シルクちゃんのおかげでなんとかなった。だけど今度はバトルシップに挟まれてるんだ。どうしようもないぞこれ」


 僕が現状の説明と泣き言を漏らすと、ノウイはやけに余裕をかましてこう言った。


「まあまあ落ち着いてっすスオウ君。取り合えず、舵を確保してほしいっす。そして直ぐにアクションをこちらから起こすんで、その後一気に船を急降下アンド加速してほしいっす」
「おいおい、何やる気――」
「取り合えずそう言う事でよろしくっす!」


 僕が言い終わる前に強引に通信は切られた。なんだなんだ? 何する気だよ。イヤな予感しかない。そう思って僕は何気に外を見た。
 するとその時、一筋の黄金色の光が空を激しく貫いた――と、同時にバトルシップの一機の後方翼部分がモゲて、爆発炎上。
 大きく揺れて、飛空挺から離れて行く。僕は唖然としながらもこういう事か! って思って行動を開始。バトルシップ側からの通信が、なんだかとってもウルサくなったけど、ここは取り合えず無視の方向で。


「艦長、すみませんけど舵を借ります!」
「君達はなんて事を! まだ抵抗する気なのか!?」


 僕は艦長の横から強引に舵に手をかける。この船の舵は普通に丸い木の物だ。車のタイヤ位大きく丸い舵。まあ車のハンドルの大きくなった感じだね。
 ちょっとモブリには大きすぎる気もするけど、それは高さも同じか。艦長の座るイスは床から階段がついてるもん。しかも実際には座らずに立ってる訳だし。一応モブリ向きには作られてるみたいだけど、やっぱりそれなりの視界を確保するためにはそれなりの高さが必要で、舵もそんなに小さく出来なかったって事だろうか? 
 まあ僕には不便の無い高さにあるわけだけど。舵は僕が持っても大きいけどね。


「抵抗しますよ。出来る限り、何度だって! だから大人しくしててください。もしもこの後に不味い事になっても、脅されたで通していいですから。
 だから今は、この船を借ります!」


 僕はそう言うと、舵を握る手とは逆の手で、艦長を椅子から卸した。実際邪魔だったからね。そしてどうやるかわかんないけど、取り合えず左側に残ってるバトルシップから距離を取るために舵を右に回す。
 すると張られていた魔法陣がバチバチと音を立てて消えていく。後、少しだけ隣のバトルシップも揺れたみたいに見えた。
 だけど丁度良い、揺れた事と目の前で起こった事の同様に乗じて、距離を取れればいいんだ。


「スオウ君! 船が動いてるよ!」


 そんな声が部屋の外から聞こえてくる。そう言えば驚いたのは僧兵共だけじゃないか。シルクちゃんたちもいきなりの事で驚いてるに違いない。


「動かしたんだ! さっきの攻撃はきっとセラだからさ、それに乗じて逃げる! 荒い運転になるかもだし、しっかり捕まってろよ二人とも!」
「りょ――了解です!」


 そんな了承の声を聞いて僕は再び舵周辺に視線を這わせる。舵の前にある半球体の物はレーダーか何かだろうか? リア・レーゼと表示された点が有ることから何となくそう予想する。後は舵の周りにゴチャゴチャある数値やメーターは高度とかスピードとかの物だろう。
 てか速度アップとか減退とかはどうやってるんだ? それに上昇下降もわかんない。そんな風に色々とアタフタしてると、船の前方に丸い玉が連続で横切っていく。そしてその玉は地面を激しく抉ってる。おいおいこれは威嚇射撃か何かか?
 あんなの食らったら、この木造の船は一発で終わるんじゃないか?


『止まれ。これは最終警告だ。次は当てる。その船を落とすのは一機で十分事足りる。それを見せてやったんだ。無駄な足掻きはよすんだな』


 一方的な言葉が通信で入る。確かにこんな木造の船を落とすのは一機で事足りるだろう。だけど一機減って逃げれる可能性が増した事も事実だろ。それが例え数パーセントの違いだとしても、行動を起こした以上止まれるか。
 後戻りなんか出来ないし、サン・ジェルクには戻る場所さえないんだよ。だからこういってやろう。


「無駄かどうかは結果を見て言うんだな! 僕達はともかく、この船には仲間の僧兵も、一般人も乗り合わせてるんだ。そう易々と当てられるわけないだろ!」


 僕は強気にそう宣言して、取り合えずそこら変に有った、アップダウンのボタンをポチリと押す。アップは青でダウンは赤だったから赤をポチリとね。すると少しの揺れと共に飛空挺が下降を開始した。
 一体どういう原理だよ。僕は慌ててもう一度赤いボタンを押すと、今度は降りた位置で真っ直ぐに飛び始める。なるほどボタン一つで上昇と下降が出来る訳か……でもこれで着陸してたかと思うと、スッゴく怖いな。
 なんか簡素過ぎだろ。だけど取り合えずもうちょっと高度を下げようと思い、もう一度赤いボタンをプッシュ。


「あ、あんまり色々イジるな! 飛空挺は子供のオモチャじゃないんだぞ!」


 椅子から放り出された館長さんが後ろから文句を言ってくる。でも子供って……子供以下の身長の人に言われてもな。


「それなら操縦の仕方を教えてくださいよ。取り合えず、奴らだってそう簡単に直接攻撃は出来ないだろうから、その間にでも――うお!?」
 突如大きく揺れる船内。そして操舵室の窓に大量の木片が! これってまさか……


「そんな……攻撃を当ててるのか? 私達も居るのに……」


 艦長の信じられないと言うような声。だけどまさにその通りだろこれは。やつらはこの船にさっきの攻撃を仕掛けてる。


「きゃああああああああああ! スオウ君!」


 外から聞こえるそんな悲鳴。僕達は中に居るから良いけど、シルクちゃんや鍛冶屋はこの破片を浴びてそうだな。それにセラ達もこの攻撃でどうなるか……取り合えずどうにかして避けないと!


「くっそ……このままじゃマジで落とされるぞ! アクセルはどれだよ?」


 僕は視線をキョロキョロと舵周辺に這わせる。上昇下降も有ったんだ。必ず有るはず。


『ふはははは! 侮るなよ犯罪者。我らの役目はクリューエル様の回収だ。後の事はどうにでもなるんだよ』
「バカかお前! この船が墜落したらクリエの命だって危ないだろ!? その位考えろ!」


 無茶苦茶しやがって、クリエの回収目的なら、もっと丁寧にやれよな。するとそんな僕とバトルシップとの会話に、艦長が割り込んでくる。


「ま、待ってください! この船にはまだ私達も、お客様も居るんですよ。攻撃を直ぐにでも止めて――」
『残念だが艦長。それは出来ない相談だ。そいつ等は神に逆らった罪人。何よりも罪を罰する事は優先される。それに攻撃を止めろとはそいつ等の肩を持つ気か君は?』
「そうではなく、私達は無関係なのですよ!? 神は私達を見捨てるのですか?」


 艦長は必死に食い下がって嘆願してる。まあ当然だよね。自分たちの命が掛かってるし、拘束されてるこちらの僧兵もさっきから「助けてください!」とうるさい。


『見捨てるだなんて人聞きの悪い。神の近くに君たちでも行けるんだよ。それを素晴らしい事と思いなさい。きっと神も快く迎えてくれるだろう』
「そんな……」


 その時再び大きな衝撃が船全体を大きく揺らす。ヤバい、なんだか理解できないメーターが急速に減ってるぞ。高度……じゃないみたいだけど、これは?


「スオウ君! 船の後ろの部分が抉られたよ! 何かキラキラしたもの出てる!」


 キラキラしたもの? まさかそれがこの数値の減退の原因か? 一体何だそれ? 僕は絶望に打ちひしがれてる艦長に声をかける。


「おい、さっきの言葉聞こえてただろ? ここのメーターがどんどん下がってるのと関係あるのか? おい!」


 舵を右左に切りながら心なしの回避行動を取りながら僕は答えを求める。だけど艦長は見捨てられた事のショックに打ちひしがれたままだ。
 まあ神の為に喜んであの世に行けとか言われたらそりゃあ、そうなるのも分かる。だけどこのまま言われた通りに死んで良いのかよ!?


「死にたくないんだろ? てか、そんな勝手な都合で殺されてたまるかよ! そう思うのなら、足掻くんだ! それともこのまま死んで良いのか?」
「……私は……神を……シスカ様を信望してる」


 っつ――まさかそんな答えが返ってくるなんて。神の為なら死ぬこともやむなしなのかよモブリって! そんな中さらに同じくらいの衝撃と音が響く。シルクちゃんの甲高い悲鳴が同時に耳に届いた。
 ヤバい、今度は船首部分をやられたぞ。木片が大量に操舵室の窓に当たって、その衝撃でフロントガラスにヒビが入る。既に飛んでいられるのが不思議な状態かもしれない。


『くはははは! そんな旧式の船でこのバトルシップの攻撃から逃げられる筈も無かろう。次はその胴体部分を吹き飛ばそうか? そこには何が有るか……貴様も知ってるだろう?』


 意味深にそんな言葉を振ってくる僧兵。胴体部分? たしかそこには……


「動力炉か!」
『その通り。一発当てたらそれでドカンだ』
「お前! だからそれじゃクリエだって……」
『その心配には及ばない。その娘には特別な力が有ると聞いている。だからどうにかなるだろうとな』


 な……んだと? 元老院共、クリエの力を過大評価しすぎだろ。いくら神の力をもってるっていっても、自分で制御出来てる訳じゃないんだぞ。
 実際クリエが死にそうになったこと何度だって有るだろ。その時都合よく、神の力が助けてくれるなんて無かった。だから今回だって……


「それをしたら、お前たちは取り返しの付かない事をしたことに成るぞ」


 僕は必死にそう訴える。だけど犯罪者の言葉に耳を傾けるような奴じゃ無かった。


『だからいっただろう……今更後悔しても遅いと。そんな脅しが利くと思うなよ!』


 横に付いたバトルシップの砲芯に魔法陣が浮かび、光が収束しだす。逃げようと試みるけど、そもそもの速度と性能違いで、引き離すことも出来ない。ピッタリと横に付いたバトルシップが狙うのは勿論動力炉。
 このままじゃ本当に終わり……だけどその時、飛び立つ桜色の影が見えた。


「私とピクが障壁を張って防ぎます!!」


 そんな声と共に、飛空挺側面に現れる五重の障壁。その瞬間放たれた砲撃。障壁は一気に破壊されたけど、でも大きな爆発は無い。防げたって事なのか?
 だけどそこで僕は絶望的な事に気付いた。バトルシップの砲芯は一つじゃない。


「素晴らしい魔法だった。だが、続けざまにあのクラスの障壁は張れまい!!」


 そんな声と共に収束される光。だけどその時、無数の何かが空を駆けて飛び出した。その数ざっと見でも二十。僕はあれを知っている。あれはそう聖典だ。

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