命改変プログラム

ファーストなサイコロ

降り注ぐ太陽



 知らない人は知らない。そして関わりない人は、僕たちを奇異の視線で見ては通り過ぎていく事だろう。今この街にはもう一つの街が重なりあってること。空には輝く紋章が浮かんでること。そして未来を賭けてる……かも知れない戦いをやってること。
 だけどそれは別に関係ない人たちにとってはどうでも良いことだ。見えず知らず聞かず……それなら存在なんてしてないのと同じ何だろう。
 だけど僕達は違う。僕達には見えて聞こえてそして知っている。首を突っ込んで求めたんだ。みんなの想いでLROは生まれて(厳密には違うけど)そして僕達だけが知る街が、この秋葉原という街に重なりあってる。
 だけどそれももう後少し。歴史をちょっとだけ変えて、帰って貰おうと思う。僕達が復旧を待ってるLROという世界に。


 銃声の音がうるさく響き、だけどそれに負けない程に重なりあう雄叫びがあがり続けてた。けれど僕達の邪魔をする奴らが現れない事を考えると、ラオウさんはたった一人であれだけの人数相手に奮闘してることになる。
 武器の差があると言ってもスゴい事だ。まさに名前に違わぬ猛者。あの人の場合、名が体を表してる。これでもかって位に。
 ラオウさんにだけ、頑張って貰うわけにはいかない。燦々と降り注ぐ炎天下の光の下で、僕もこれまでの役立たずっぷりをここで挽回しないとな。そうしないと頑張ってくれたみんなに対して申し訳ない。
 こんな自分を引き留めてくれた、信じてくれて必要だと言ってくれた。そんなみんなの為に、こっちでも何かが出来ると信じたい。自分の為に、そして向こう側で出会った人達の思いを背負って。


「そろそろ決めるか。どっちがアイテムを取るのか」
「上等だな。こっちもモタモタはしてらんねぇ。あの化け物シスター止めるのも限界があるっぽいしな。やってやろうじゃねぇか」


 僕達は互いに並んで、画面に映る銀色に輝くモンスターを見据えてそう言った。てか、僕は彼女がよくやってるって感じだったけど、既にこいつ等に危機感さえ与えてたとは天晴れだ。
 どうりでさっきから武器を使いまくると思ったけど、あれは焦りでもあったんだな。こいつの背中にはラオウさんという恐怖が迫ってる。それを実感してるみたいだ。
 まああれだけ使える武器があるだけで僕としては羨ましい限りなんだけど……幾らなんでも無駄玉撃ちすぎ。こっちはおかげでちょっとした光は見えてるけど、決定打には欠けるよな。
 HP表示が無く、幾ら攻撃を当てても効果がないのなら、きっと何かしらの条件付きで倒せるはず。それなら一個でも多分大丈夫だよな。
 僕は画面の左下に表示されてる武器の残段数を見る。そこには数字の2の表示。これが投げたら一に成り、持って直接使用なら1,5になる。
 だから最大で攻撃出来るのは後四回。だけど僕はせめて後二回の攻撃でこの考えを確実な物にしたいんだ。だって最後の一個で直接攻撃しか出来ないんじゃ、威力として心許ない。
 幾ら条件付きとは言ってもだ。だから出来る攻撃は後二回、最低一回。


『グガガガガアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


 画面が妙にブレる雄叫びを上げるモンスター。ちょっと前から思ってたけど、これってかなりウザい。スマホの小さな画面でしかその姿を確認出来ないから、動きながらだと、常に画面内に対象を入れておくって事が難しい。
 それなのにこの叫びの最中はやけに画面がブレる物だから、良く画面を外される。まさかこれってこのモンスターの特殊効果か? 


「ちっ、またコレか!」


 そう言って画面を必死に凝視する赤髪ライオン。その気持ちは分かる。だけど僕は慌てない。こいつがモンスターの気を引いてくれてる間にそれなりにちゃんと観察してたからな。
 このモンスター、デカくてデザインも拘られてて、実際LRO本体で出てきたらかなり強いだろうと思うけど、このイベント使用なのか、かなり攻撃パターンが少ない。
 とにかく噛みつくか突進か尻尾を使っての全包囲攻撃か、後は前足で凪払う位しかない。
 そして大抵止まった状態から雄叫びと来たら、突進だ! 僕は横に飛んで取りあえず緊急回避。その瞬間「うお!?」ってな声が聞こえた。多分逃げ遅れた赤髪ライオンの驚く声。僕は直ぐにスマホを向ける。すると、モンスターと赤髪ライオンが重なりあってる所だった。そして直ぐにモンスターは尻尾まで含めて駆け抜けてた。


「ん? あれって……」


 そこで僕はある物をみた。モンスターが赤髪ライオンを抜けると、なんだか赤いオーラの様な物があった。最初に金髪とモヒカン相手に見たあの赤いオーラ。
 それが赤髪にもあって、なんだかモンスターに引っ張られて引きちぎられた……そんな感じに成ってた。もしかしてあれがHPなのか? 生命力みたいな感じで表現してあるとか? でも自分の体の一部を映しても、そんな物見えないんだよね。どういう事だろ一体?
 そんな事を思ってると、再び赤髪ライオンが、卵型の爆弾を投げまくってた。本当にどれだけ持ってるんだ? 四次元ポケットでも与えられてるのかかね? だけどそんな爆発の中からモンスターは悠然と姿を現す。そして噛みつき攻撃。それを何とか交わしながら後ろに下がる赤髪ライオン。
 てか、回り込んでこっちに来るな。


「男だろ? 逃げ回ってないで相対してほしい物は手に入れろ!」


 こいつ倒し方わからないからって僕を巻き込むつもりか。てか、勝手にターゲットを取ったのはお前だろ。まあでも確かめたい事があるから、やるけどね。こっちには逃げ回る体力さえろくに残ってないんだ。
 だから出来るだけ早く倒したいと思うのは同じだ。それでも僕達が間違っても協力……なんて事は無いけど。僕達はきっと、互いに上手く相手を使う事を考えてると思う。
 だからこそ僕はこういってやろう。


「ちゃんと自分でやるさ。てかお前な、足を止めたいのなら上じゃなく足下狙えよ!」
「はっ、んな事分かっとるわ!!」


 そう言って足下に向けて二・三個続けざまに爆弾を放る赤髪ライオン。すると再びモンスターは後ろ足で立ち上がった。


(よし、これを待ってたよ!)


 進行は止めれたけど、奴の攻撃本能はまだ赤髪ライオンに向いている。モンスターはデカい爪を持った腕を前に伸ばしてきて赤髪ライオンを狙ってる。ただ振り下ろす感じの攻撃。
 てかそんな長く立ってられないから、体が落ちるのに併せての攻撃。僕はここで前に出た。HPは後一回攻撃を受けたら無くなるだろう。だけどここしかないと思ったよ。
 確かめなきゃいけない。そうでないと先に進めない。だから僕は振り下ろされた腕を直前まで引きつけてから卵形の爆弾近接の型で弾き返す。


「お前……まさか俺を……」


 避けきれる自信が無かったのか、前に出てモンスターの攻撃を止めた僕に、そんな声を掛ける赤髪ライオン。そう見えたかな? だけど実際お前の為じゃない。僕は無視して地面を蹴った。
 ちょっとふらつくけど、頑張ってモンスターの懐へ潜り込む。そして狙うはあの紋章の場所。僕は画面一杯に広がる白っぽい胸の中心を指で突く。
 するとその瞬間、雷撃の青白い閃光が辺りに飛び散った。モンスターの銀色の体に反射して、なんだか前使った時よりも明るく感じる。
 取りあえず画面の向こう側だから、結構あっさりしてる。生……な感じはしないけど、浮かび上がってきた紋章に「よし!」と心で言った。しかもなんだか胸に亀裂が入った感じに見える。
 それで僕は確信したよ。「間違いない」ってね。


 僕はモンスターが倒れきる前に脱出。直後にズズ~~ンと重量感のある音が響いた。胸に亀裂が入ったからか、なんだかさっきよりも興奮してる様に見えるモンスター。もの凄く感覚短く叫びまくって、画面がブレブレの状態に。


「おい! 何したんだお前!?」


 そう言って掴み掛かってきそうな雰囲気の赤髪ライオン。だけどそう言ってる間にブレた画面一杯に銀色の陰が――


「避けろ!!」


 ――僕は思わずそう叫んでた。二人して同じ方向へとっさに飛んだ。直後、画面からズゴゴゴゴなる音が聞こえてきた。


「ちっ、また助けられたな」


 そんな事を言いながら、なかなか立ち上がれない僕に腕を差し伸ばしてくる赤髪ライオン。何のつもりだこいつ。




「俺たちの世界じゃ、義理や人情を大切にしてんだよ。それに借りを作ったままじゃ俺が我慢ならねえ。だからホラよ」


 なかなかマシな顔してそんな事を言うから、僕は手を伸ばす。まあヤクザが義理人情を重んじるってのは映画やマンガとかでもあるよな。仁義とか良く言ってるイメージがある。
 そう思ってると、伸ばした腕が後少しで重なる……そんな直前で手のひらを返された。虚空を切る僕の腕。そして同時に顔面に走る重い衝撃。


「ぐはっ!?」


 そんな声と共に、僕は後ろに倒れる。この野郎……元からこうする気だったな。耳に届く不快な笑い声と共に、赤髪野郎はこういうよ。


「きゃはははははは! バ~~カ。義理人情? いつの時代だよそんなの? 俺達は基本利益市場主義なんだよ。金のない奴からだって搾取する。それが今時のヤクザだよ!!
 人を助ける奴なんてのは、バカなんだよ」


 そう言って高笑いを続けるクソ野郎。こいつ……本物のクズだな。


「テメェ……」
「はは、良い様だぜ。そろそろ目障りだったんだよ。潰そうとしても潰そうとしてもしぶとく生き残りやがって、しまには何だあの化け物? 誰かの為とかで動いてる奴らが集まって来やがって、そんなのは偽善なんだよ。
 人は自分の事しか考えてねぇ。それが真実なんだ。お前だって実はそうだろ? あのバカ共を上手く利用できて満足だろ? 少しでも他人を信用する奴は勝者には成り得ない。
 だからお前は今、そこに転がる羽目に成ってんだ!!」


 そう言ってモンスターに向かう赤髪ライオン。こいつ……どうする気だ?


「取りあえず、お前と同じ事をしてみれば良いんだろ? 簡単だ。俺には尽きない武器がある」


 やっぱりか。こいつ幾らでも無駄弾撃つと思ったけど、弾切れの心配がないからだったんだ。ズル過ぎだろそれは。


「勝利のファンファーレが俺には既に聞こえるぜ!!」


 そう言って奴は前へ出る。僕は必死に手を伸ばしてそれを阻止しようとしたけど、いかんせん向こうの動きだしの方が早かった。
 空を切る僕の腕、スマホからは既に複数の爆発音。やらせる訳にはいかない。こんな奴に……渡すわけにはいかないんだ!!
 僕は鼻から流れ落ちる血を強引に拭って立ち上がる。顔面がジンジン痛む。なんか視界が狭い。遠くから「無限の蔵!」とか、「あんの野郎! 卑怯な真似を!」とかの声が聞こえてた。
 みんなが見てるんだ……ふがいない自分のままでいられるか。ボヤケる視界の中で、腕を前に出し画面を見る。


「ちっ」


 やっぱり上手く見えない。だけど……やらないと。このままじゃアイテムはアイツが持ってく事になる。そんなの認められるか。引きずる様にでも足を進める僕。


(まだやれる……まだやれる。まだまだまだまだまだまだ――)


 頭の中に「まだ」が一杯に成っていく。自分の可能性を信じて――と言うか、もう言い聞かせるしかない。どこまでこの体を騙せるか、結局は心で引っ張るしかないだろ。


「さあ! 足を上げやがれ!!」


 そんな声が前方から聞こえる。そして掲げてるスマホからモンスターの雄叫び。同時に「きたああああああ!!」と叫ぶ赤髪ライオン。
 前に飛び出す奴に並ぶように、僕はその瞬間一気に体を加速させた。


「テメェ!? まだ!!」
「諦めれるか! 負けれるかよ!! 手に入れなきゃいけない……そのアイテムには、損得だけじゃない、特別な思いが僕達にはあるんだ!!」


 最後の一個、後二回攻撃出来る武器を握りしめて僕は赤髪ライオンに並んだ。目の前には多分大きなその体を持ち上げたモンスターが居るはずだ。
 居るはずだってのは僕の視界の狭さもあるけど、画面が異様にブレて殆ど見えないから。これはあのモンスターの雄叫びの影響。
 殆ど見えないけど、僕達はお互いに引くわけにはいかなかった。この一撃で全てが決まる。それが互いに分かってたからだ。
 しっかりと地面を踏んで狙いに辺りをつけてる赤髪ライオン。それに対して僕は踏み込んだ瞬間もそして今現在も、体の芯がブレてるように、ふらふらだった。
 それでも懐には同じく入れたと思う。後はこのスマホを狙いの場所に向けてタッチするだけ……ブレてまともに見えないって条件は同じ筈。
 後は互いの運次第か。そう……思ってた。だけど赤髪の意識は蹴落とすって方向にまず向かう様だ。


「やらせるかよ!!」


 そんな声と共に、右わき腹に入る重い感触。体が後方へ押され、足から力が抜けて――――たまるかよ!! 僕は崩れ落ちる膝を強引に支えて前を睨む。
 だけど睨んでるのは赤髪ライオンじゃない。僕はスマホの向こうのただ一点を見据えてるんだ。


「いっけええええええええええええええええええ!!」
「ちっ、させるかああああああああああああああ!!」


 僕達の声が重なりあってこの場に響いてた。執念の元に観念した赤髪ライオンも既に僕じゃなく、画面を見てる。どちらが速く突けるか、それともどちらがより正確にあの場所を捉えてるか……それはもうホント全然わかんない。
 だけど僕達の指はただ一点を目指すのみ。迷う事なんかもうない。全てをこの指先に込めて、後はただ信じるだけ。けれど不意にだ。不意にこんな言葉が幻聴? と思える程に聞こえた気がした。


「ホント、つまんない事をしてくれたわね。やっぱりスオウと遊ぶ方が楽しいな☆」


 まあだけどきっと気のせいだろ。アイツは後半全然姿見せなかったし、案外既にLROにでも帰ってるのかもしれない。だからどうでも良い。
 僕達の指はほぼ同時に画面を押した。その瞬間、画面から溢れ出しそうな程の光が瞬く。僕のは青で、何故か赤髪ライオンの方の色は赤かった。
 大地の震える様な断末魔の叫びが木霊する。僕たちの画面から放たれる光は、再び周りのみんなのスマホにまで感染してた。そして音と共に光りも次第に弱まっていく。


 銃声はいつの間にか聞こえなくなってた。みんながこちらの状況を固唾を飲んで見守ってるのかもしれない。どっちが倒したのか? そもそも倒せたのか……真っ白に成ってた画面に、すこしずつ色が取り戻されていく。


「くっ……づはぁっはぁ……」


 僕は崩れる様に地面に膝をつく。強引に動いたから、さっきのドテッ腹への一撃が今更聞いてきた。状況を見なくちゃ。どっちが……僕は勝てたのか?


「くきゃははは! 既に敗北ムードだなお前等の方は。まあ諦める気持ちも分かる。俺様に勝てる訳……」


 不意に途切れた赤髪ライオンの言葉。不快な言葉は途切れて良かったけど、どうしたんだ? 僕は画面を上を向けた。
 銀色のモンスターの影。それがボロボロと崩れていってるのが分かる。やれた様だな……けどどっちが? それが一番問題だ。
 僕の画面には何も表示されてない。判断できない。するとその時、赤髪ライオンが大きな声でこう叫んだ。


「こんな事……バカな!? 信じれるか!!」


 そう言って赤髪ライオンは大きく腕を振りかぶって、地面にスマホを叩きつけようとした。だけどその手をいつの間にか近づいてきてたハゲに捕まれる。


「若、何がどうなったのか、儂達にも知る権利がありますよ。どうなったのか、言ってください」


 そんなハゲの言葉に、赤髪ライオンは強くハゲを睨んだ。そして罰が悪そうに、「ならテメェで確認しろ!」と言ってスマホを押しつける。


「では、失礼して――」


 そう言ってスマホの画面を見据えるハゲ。誰もがそんなハゲに注目してた。どうなった? 僕は勝てたのか? ハゲはそっとスマホの画面側を下にすると、こう言った。


「儂等の負けだ。若は戦闘不能。これはつまり負けって事だろう?」
(戦闘不能?)


 一瞬上手く理解出来なかったぞ。だけど僕の画面にはそんな物出てない。てか、どのタイミングで……そう思って画面を見てみると、崩れていくモンスターの形の名残がそれを物語ってた。
 赤髪ライオンが居た右側の前足の方が、左側よりも下にきてる。つまり、最後の最後にあれが当たったって事か。それにどうやら、赤髪ライオンの攻撃位置は胸の中央部分からズレてる。僕が少し左斜めから胸の中央紋章を打ち抜いたんだ。
 ――と、言うことは……


「勝ったんだな僕は……勝っ――――――しゃあああああああ!!」


 僕は感極まって大声で叫んだ。その瞬間、押し寄せたみんなによって潰される。体中を撫でられまくる僕。一番最初に飛びついてきたメカブの体の感触がヤバい。
 てか胸がヤバい。その放漫な胸囲が僕の神経を狙い撃ちしてる。


「無限の蔵! 無限の蔵! 無限のく……ああもう言い難い!! とにかく良くやったわ!!」


 ようやく言い難さに気づいてくれたけど、なんか今更感一杯。でも取り合えず今は喜ぼう。


「若! まだやりようはありますよ! アイツをボコッてアイテムを渡させればいいんす!!」


 そんな提案が丸聞こえなチンピラ共。すると不機嫌そうにしてた赤髪ライオンは光明を見いだした様な顔でこちらを見据える。


「ああ……それもそうだ。なあ言ったよな? このままじゃ終わらせねぇって!」


 そう言って赤髪ライオンはこちらに迫ろうとした。だけどその時「若! ダメです!!」そんなハゲの声と同時に、赤髪ライオンの体が吹き飛んだ。
 地面をバウンドする事数回。生き残ってたチンピラ共の中に無様な姿で突っ込んだ。


「がっはっ!?」
「これ以上、無念たらしい事をするのなら、今度はその顔の骨全てを砕いてやりましょう。私が居る限り、誰にもこれ以上、あの人を傷つけさせない!! わかったか!?」


 大きな体のシスターが、僕たちとチンピラ共の間に堂々と立ちふさがる。筋骨隆々のその姿は、ほんと頼もしい。


「テメェこんな事して……」


 そんな事をまだ呟く赤髪ライオンに最後の銃を向けるラオウさん。そしてこう言ったよ。


「デッドオアアライブどっちが望み?」


 背筋が凍る言葉。この人が言うと、迫力が違う。まじでやりそうだからな。


「若、ここはもう無理です。あの化け物に今の装備で勝つことは不可能。引きましょう。我らの負けです」
「くっ――」


 奴の視線が僕を向いてラオウさんへ向く。引き金はいつでも引ける状態で脅しを掛ける彼女に、震え上がった赤髪は、もうこういうしかない。


「――そおおおおおおおおお!!! 撤退だ! だがな、この恨みは絶対に忘れねぇ!!」


 そんな捨て台詞を残してハゲ達はこの場から引いた。


「終わったな」


 僕は思わずそう呟いた。勝ったんだ僕らは。そんな余韻に浸ってると、ハゲ達が消えた方から近づいてくる人影が二つ。あれは……秋徒に愛さん? 何故ここに?


「終わってねぇよスオウ。まだ未来は確定してない。後二個のレアアイテムをゲットしようぜ。まずは一個目、お前のだ」
 そう言って秋徒が示す場所には、光輝く宝箱がある。あれが本物。僕はみんなから解放されてそれに近づき開く。
中にあったのは『アフタークロック』と称されたアイテムだった。


「さて、それじゃあ今度は俺達の見つけたアイテムだな」


 その時、空にはもう一つの紋章が浮かんだ。どうやらそっちはそっちでやってたらしいな。


「まっ、ここまでやったんだしな」


 そう言って僕達はまた、歩き出す。

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