命改変プログラム

ファーストなサイコロ

電波と敵とため息一つ



 結論から言うと、付ける事も情報を盗むことも難しかった。てか一度別方向に別れたせいでみつけれなかったってのが正直な所です。
 しかも今日に限って人がごっちゃまぜに成ったような多さ。そんな中で初めて会った奴を再び見つけるってのが無理あった。
 やっぱり何でも創作物の様に都合よくはありません。


「そもそも闇雲に探すのが間違いなのよ」


 本日何本目かもわからなくなったジュースを買ってると
、メカブの奴が一足先に買った『イチゴ練乳サイダー』とかいうジュースを飲みながらそう言った。


「じゃあどうしろって言うんだよ?」


 僕は自販機の口から『力水vrX』を取り出して瓶の蓋を開ける。口に含むと舌の上で炭酸が踊り、甘酸っぱい香りが鼻孔を擽る。冷たく冷やされた液体が喉を通る時ののど越しと言ったら、また格別。流石力水だよ。
 てか懐かしくも新しいジュースに今のアキバは満ちてるね。僕がリアルの回復薬で体力を回復させてると、メカブが早くも飲み終わった缶をゴミ箱に突っ込み携帯をいじり出す。


「こっちも向こうもイベントをやってる訳なんだから、そっち絡みで探せばいいのよ。つまりは近くのNPCを総当たりとか」
「……それでも交差するかは微妙じゃね?」


 だってもしも時計回りに僕達がそれぞれ進んだら、鉢会わしない。


「じゃあこのまま闇雲に探してて見つかるの? てか、私達だってあの宝箱狙ってるんだから、普通に情報を集める所から始めるのが一番でしょ」
「確かにそうかもしれないけど……普通にやってて数十人には増されないだろ。今まで通りにやってても後手に回るだけだ」


 僕達が有益な情報をなんとか手に入れたとしても、もう一度あそこに戻ったころには、宝箱は空っぽ――なんて事は大いにあり得る事だよ。


「確かにそうかもだけど、私達が尾行とかリスク高いわよ。だって顔ばれしてるし……それに尾行してて、確実に奴らの情報を盗み取れるって言うのならやる価値はあるけど、遠くから耳を澄ます程度の事じゃ、結局先手なんて取れないわよ」
「うぐ……」


 確かにメカブの言うとおりではあるな。尾行したって情報を盗み取れないんじゃ、そこら変のストーカー以下って事に……けど普通に僕達がやったって組織立ってる向こうに勝てるとも思えないし……じゃあどうすれば良いんだよ。
 力水を飲み干しても、全然力が沸いて来ないぞ。


 眩しく輝く太陽の光が、世界を焼いてる気がする。肌や髪の毛だけじゃなくてさ、地面から何からだよ。
 車の行き交う音、人の雑多な感じ、そしてどこかの軒先から漏れて来る聞き覚えがあるようで無いような音楽。てかこういうなかなか来ない場所も、よくよく考えたらLROとたいして変わらないよね。
 やっぱりその街独特の臭いや感じがあるわけでさ、こうやって壁にもたれてそれを眺めると、不思議なことに遠くに来た気がしなくもない。
 電車で三・四十分程度でこれる訳だけど……やっぱりホームとしてる住み慣れた街とは違うからさ。


「はぁぁ、結局どうしろって事なの? メカブはさ、普通にやって僕達が奴等を出し抜けると思ってんの?」


 僕は隣で二つの携帯をピコピコやってるメカブに視線を動かす。ピンだらけの黒くボサッとした髪……そして黒縁メガネの奥の瞳が世話しなく動いてるのが見て取れる。
 てかさっきから視線が妙に集まってるのはきっとメカブのせいだよね。こいつ足を大胆に出しすぎ。どれだけ自信があるのか知らないけど、ぱっと見じゃ、「下は!?」って思うもん。
 それだけ危ない。言う成れば足は全部出してるもん。覆い隠してるのはふっくらと膨らんだ部分だけだ。それなのにその足の先にある物が便所用のサンダルなんだから、これまた残念。
 メカブってどういう風に見られたいのかわかんないよな。そんな彼女と僕は普通に会話してる。今は電波の受信感度も弱まってるのか、それなりに頭痛く成らない普通の会話だ。


「思ってないわね。だって人数の違いは分かりやすい戦力の違いよ。普通にやってても勝てないのが道理。それは既に歴史が証明済みよ」
「歴史って……」


 これまた大きく出たな。


「かの織田公は桶狭間で鉄砲隊を上手く使って戦力の差を覆したりしたけど、それは時代を先取りした鉄砲と言う武器が会ってこそなり得た意表であり奇策。
 今のこの出尽くした感がある現代じゃ、オーバーテクノロジー位もって来ないと、意表なんて突けないわよね」
「オーバーテクノロジーって……そんなの持って来ようがないぞ。空から降ってくる訳でもないし……つまりはやっぱ、普通にやっててもダメだけど、普通以外にやりようがないって事じゃん」


 どうしようもないなそりゃ。こんな所でリアルでの友人関係の狭さを痛感する事になるとはな。いやまあ、一緒に遊ぶような友達が少ないってだけで、別にハブ等れたりとかは……してないとも言えないけど。けどどっちみち、オーバーテクノロジーなんて持ってる知り合いなんて出来なやしないけど。
 もしも目の前を通り過ぎてるイベント参加者っぽい人達と一瞬で友達になれたりしたら戦力差と言う部分では並べるかな?
 まあ出来ない事だけど。日鞠の奴なら苦もなく、それこそ雨が降った後は晴れに成るように、当たり前の事象の事のように出来そうだけど……いかんせん僕にはそれだけの行動力がない。


 だって普通他人に話しかけるのは抵抗があるものだ。その大小が人見知りであるかどうかだろ。飲み干した力水vrXに蓋をして、自販機の隣にあるゴミ箱に瓶を捨てる。この暑さと人の多さのせいか、既にゴミ箱は一杯に成りかけてるな。


「まあ私の頭にはオーバーテクノロジーさえもあるわけだけど、それをこの世に具現化させるには、後半世紀は必要なのよ」
「そりゃ残念だ」


 天寿眼は未来も過去も見通すんだっけ? てかそもそも人じゃないとか言ってたね。自称世界の監視者であるメカブの中には、どれだけ先の未来が想像出来てるんだろうな。
 メカブは自分の想像上のオーバーテクノロジーの話を意気揚々としてくれるけど、いかんせんチンプンカンプンだよ。こいつオーバーテクノロジーのオーバーを嘘大げさ紛らわしいに属すると勘違いしてんじゃないか?
 とにかく何言ってるかわかんないぞ。だけど最後にこうも言ったよ。


「まあ、現代の科学でも最高水準に私の腕なら出来るけどね。助手251の出番」
「何だその助手251って? ロボットか何かか?」


 電波は発信し続けると強化されて行くのかな? 今はシクラいなくてもなんとか対応出来る位には馴れてきたかも。


「助手251は文字通り私の助手よ。私が未来を見て得た知識を共有させた汎用人型決戦兵器」
「決戦兵器って……お前は人類をどうしたいんだよ……」


 滅ぼす気か? 


「決戦兵器って言っても武装は積んでないわ。ただ未来の技術を得た助手251は今の情報社会において決戦兵器に近い電子空間制御プログラムを構築してるの。
 今の社会においてはそれこそ最強でしょ?」
「え~と……つまり助手251は何なの? 超頭の良いメカブの友達か?」


 それか同類……とりあえず多分その類だと僕は見るね。まず人型言ってる時点で人類なんだろう。


「だから助手251は助手251よ。そこら辺の人類と猿が区別できない程度の脳味噌の生命体と一緒にしないで。取りあえず、助手251からアプローチするように指示を出しとくわ」


 そう言ってメカブは片方の携帯で指を信じられない早さで動かしていく。スゴい使い馴れてるな。てか、指示は普通にメールなんだな。


「つーか、助手251の宛先が統一郎君なんだけど」
「世を忍ぶ仮初めの名を与えてやったわ」


 いやいや、本名だろそっちが。誰が助手251だ。しかも統一郎君に何も掛かってないし……助手251。不憫じゃないか。
 もの凄く抑揚の無い声で言ったのがこれまた不憫だよ。なんか助手251を実は嫌ってないか? 


「てか、他人のメールを覗くなんて失礼よ。アンタも自分に出来る事を無能成りに考えてなさいよ」


 無能って……地味に傷つくんだけど。出来ることがあればやってるっての。


「アンタの取り柄ってややこしい事を引き寄せる事しか無いわよね」
「なんでそれを知ってる……やっぱりセラかリルレットとかのどっちかだろ。そろそろ教えろよ」


 まあ既にどっちだったとしてもイメージとかけ離れすぎてなんか違うんだけどね。てかややこしい事を引き寄せるって……別に今回は僕は無理矢理引っ張って来られただけだ。


「でも、ヤクザと抗争してる時点で厄介事を引き寄せてるわよ」
「抗争って程の事はしてねーよ」


 言う成ればこれは競争だ。抗争なんてバカなことをヤクザと出来るかよ。そんな事してたら、流石に暢気に自販機でジュース買えないよ。
 でも確かに僕だからこんな事に成ってんのかな? なんかLROでも次から次へと厄介事が舞い込んでくるし……これまでは日鞠の側に居るせいだと思ってたんだけど、最近は実は僕の方がそう言う体質だったのかと、少し思いだしてただけにショックだよ。


「てか、僕の質問に答えてないぞ。本当に誰だよお前」
「誰だよって質問もおかしいけどね。だってこっちの私がどっちかって言うと素だし。それにわざわざリアルとゲームを結びつける理由なんて無いわよ。
 よってその質問は永劫黙秘するわ。それにどうせ、無限の蔵も私の存在を覚えておくことは出来ないわ」


 少しだけ寂しそうに顔を背けたメカブ。またまたメカブの奴は、どっかのマンガの引用みたいなのを入れてきたな。何が存在を覚えておく事が出来ないだ。確かに時間を超越した存在が言いそうな事ではあるけど……ホント好きだなそう言うのが。
 僕たちがそんな他愛もない会話を自販機の横でしてると、メカブの携帯に振動が。


「来たわね助手251」
「統一郎君だろ」
「うるさい。その名を出すな!」


 指摘したら怒られた。統一郎って名は気に入らないみたいだね。全然知らないけど統一郎君とその家族に謝れよとか思った。
 メカブは横で携帯をピコピコ。統一郎君には何が出来るのか……メカブは口元をつり上げて満足気にこう言った。


「わかったわよ」
「うん? 何が?」


 僕は首を傾げるようにしてそう聞き返す。だって統一郎君は一体何をしてたんだ? その単語だけじゃ理解できないぞ。


「ハゲの居所よ。見てみなさい」


 そう言ってメカブは僕に携帯を見せる。そこには確かにあの三人組の姿が。


「あれ? これって動画か何か?」


 何か動いてるぞ。てか別にここまでの精度じゃなくてもと思うんだけど。防犯カメラの映像か何かかな?


「これはリアルタイム映像よ。助手251は中途半端な仕事はしないわ」


 リアルタイム映像ね……


「でもなら早くこの場所に向かった方がいいよな。防犯カメラの映像でも覗き見てるんなら、カメラ外に行かれると厄介……」


 あれ? そういえばこの映像何か防犯カメラの映像にしては目線が高い様な……当たり前だけど当たり前じゃない目線の高さ。まるで空から覗いてるみたいな。
 三人称視点だね。言う成れば。しかもさっきからハゲ達動いてるのに、その動きにあわせてついて行ってるみたいな感じがしなくもない。
 でもこれが防犯カメラの映像じゃなかったら何だって事に……空の更に向こうにあるもの?


「防犯カメラって……そんなショボい物じゃないわよこの映像は。きっと人工衛星でしょ」
「ああ~人工衛星ね。へ~人工衛星ってあんな高い所からここまで鮮明な映像が撮れるんだ――――って、人工衛星いいいいいいいいいいいい!?」


 僕はそんな叫びと共に空を見上げてた。そこにはどこまでも続く空の蒼と、ドデカい入道雲が鎮座してる。でもその更に上……なんだよな。


「ちょっとそこまで驚く事?」
「いやいや、驚くだろ。これってどこの人工衛星だよ。ここまで鮮明に見えるのなら、僕たちって防犯カメラの比じゃなく監視されてるじゃん」
「世界の知らない方が良いことの一つね」


 何したり顔でいってんのメカブの奴。そして更にこう続けた。


「だけど大丈夫よ。世界中の人間を監視するなんて不可能だし、映せてもそれを見る人の目には限界って物があるわ」
「それはそうだろうけど……でもやろうと思えば出来ない事じゃないよな。う~んハゲ達もまさか人工衛星で監視されるとは思わなかっただろうな……」


 画面の中でハゲ達は世話しなく移動してる。だけど外に居る限りはこの監視から逃れる事は出来なさそう……何とも恐ろしいんだ人工衛星。


「ただの人工衛星にはここまでのカメラは搭載されてないと思うけど。きっとどっかの軍事衛星でしょ?」
「軍事衛星いいい!?」


 それって超不味いんでないの? てかこれって何? ハッキングしてんの? 軍事衛星を? どう考えてもそれって不味いよね。
 僕たちよりもその彼が!! 統一郎君!! 軍事とかの言葉が付くだけで、途端に物騒で恐ろしくなるじゃん。しかもそういうのほどセキュリティ的にしっかりしてるし……機密とか色々……消されるんじゃね?
 僕の喉がなんか一気に乾いた様な。ヤクザなんかより国の後ろ盾を受けてる組織の方がよっぽど恐ろしいと思えるぞ。僕はメカブの肩を掴んでこう言った。


「今すぐ統一郎君を止めろ! 消されるぞ彼……」


 僕は超真剣にそう言った。額から流れ落ちる汗が鼻頭の所で溜まりそしてそれが落ちる。だけどそれなのにメカブの奴は、クスクス笑う事しかしない。


「何いってんのよ。そんなの映画とかの話でしょ? それに例え映画みたいな連中がいたとしても、天寿で見た未来の知識を与えられてる助手251が見つかる事はないわ。
 そんなヘマはやらないのよ」


 どっからその妄想設定で安心できるんだよ。流石に僕には無理だ。だって軍事衛星ハッキングしてみつからないとかあり得るか? この今見てる映像事態が痕跡に成りそうだろ。


「お前な……軍事関連をなめるなよ。下手したらこんなのテロリストだぞ」


 マジでもしかしたら、その衛生の所有国はパニクってるかも知れないよ。テロリストだって早々やらないだろうことを、ゲームのイベントでやってるんだから、これで消されたら統一郎君が不憫過ぎるじゃないか。


「大丈夫よ。取りあえず助手251の事は気にしなくていいの。今はイベントでしょ。場所もわかったんだから行くわよ」
「あっ、おいメカブ!」


 僕の腕を振り払ってメカブが歩き出す。たく、本当に大丈夫何だろうな……てかそもそも本当に軍事衛星とかなのかな?
 まあ考えたってここで僕が出来ることはないよな。せめてハッキングをこれ以上しなくても言いようにさっさとハゲ共を見つける位。
 それだけだ。僕はパカパカとサンダルを鳴らすメカブの後を追った。




「いたわね」
「ああ」


 物陰に隠れて僕たちは通りを見つめてた。行き交う人々に紛れてるハゲ達の姿を発見。どうやらまた別の場所に向かってるみたいだな。僕達も人混みに紛れてその後を追うことに。


「何やってるのかしらね?」
「お前が言ったみたいに、周辺のNPCを探ってるんじゃないのか? てか、もうその映像は良いだろ。どう考えても危ないから、労いの言葉と共にさっさと統一郎君を解放してあげろ」
「わかってるわよ。労いの言葉はともかく、確かにもうこれは必要ないからね」


 そう言ってメカブは衛生映像を落とした。まあ五分十分位だったし大丈夫……だよね。取りあえず今は目の前の奴らに集中だ。


「う~ん、何を喋ってるのか聞き取れないわね。あの携帯の内容も気になるし……もっと近づこう」


 メカブはパカパカ鳴らしてズンズンと三人に近づこうとする。いやいやいや、ちょっと待て!


「お前な、そんなパカパカ鳴らして後ろ向かれたらどうするんだよ。一瞬でバレるぞ」
「そんな気になるかなこれ?」


 本人はあんまり自覚してないのか……結構その音耳に付くんだけどな。近づきすぎたら絶対に分かると思う。


「取りあえずバレない様にするのが鉄則だろ。ちょっとは大人しくしてろ」
「ただ付いて行くことに意味なんて無いわよ。情報を奪わないと後手にしか回れないじゃない。それじゃあ意味ないの。助手251の頑張りを無にする気?」
「それは……そうだけど……」


 だからって見つかっちゃ台無しだろ。てか労いの言葉も拒否したくせに良く最後の言葉をいえたな。取り敢えずここは慎重に行こうって言ってるんだ。メカブの奴は気が早いんだよ。
 何にだってぶつかるタイプなのか? だからそんな格好が出来るのか。


「でも一度見つかったらバレなくても警戒されるんだぞ。そうなったらおしまいだろ。不用意に近づくのは危険なんだよ」
「じゃあどうやって情報を取るのよ。有効な手段を上げなさい」


 ぬぬ……そう言われると別に何もアイディアはないんだけど。てか何でこいつはそんなに不遜な態度なわけ? 協力してくれてるんだよね?
 なんか色々不満だけど、ここで言い争いしててもしょうがない。どうにかしてメカブを大人しくさせないと。そう思ってると、うるさい奴が一人増えた。


「ああもう、ちょっとスオウ。あの場所から出たなら出たって言ってよね。シクラちゃんを置いてけぼりなんて酷いぞコラ☆」


 たく、どっから沸いて出てきたこのウイルスみたいな奴。一生壁と遊んでれば良かったのに。無駄に高いスペック駆使して僕の携帯限定に登場してんじゃねーよ。


「はあ……」


 思わずコボレるため息。するとリアルと画面の中の両方から同時に言葉が降ってくる。


「ちょっと何疲れた様にため息なんて付いてるのよ」
「どうしたのスオウ? 疲れてるんなら私が特別に愛をチューチューして上げよっか? でもせっちゃんに怒られるかな☆」


 くっそ……ため息も付きたくなるよ。だって一緒に居るのが電波な女と、敵だからね。色々と疲れるっての。これで疲れない奴はいないだろう。


「ほら、さっさと案を出さないとあの宝箱ハゲ達に持っていかれるわよ」
「分かってるよ……けどだからって何か良いアイディアが早々浮かぶか――」
「どうしたの?」


 僕は自分の携帯を見つめて言葉が切れた。そこには画面一杯にちゅっちゅ唇を尖らせてるシクラが居る。そうブリームス側に居る存在……そしてこいつは僕からしか見えない設定を作ってる。
 しかも自由に動ける……って事は別に見えないままでハゲ共の携帯を侵略とか出来るんじゃ……僕はシクラの唇ドアップに成ってる画面を指で触れる。すると「うっ」とか反応したからそのまま横に弾いてみた。すると「んにゅ~~~~~」とかいう声と共に、シクラの顔がその指の動いた方に勝手に釣られて行ったよ。


「何今の声? その携帯には何が住み着いてるのよ」


 恐れおののくメカブ。ああ、そう言えばバレちゃ不味かったな。


「別に何でもないない。気にするな。それよりもちょっと良いこと思いついたかも。だからメカブは僕が携帯イジってる間、見失わない為にハゲを見張っててくれ」


 僕はそれとなくメカブの視線をハゲ共の方へ移してそしてまた画面を見る。


「ちょっと、いきなり何しちゃってるのよ。私の形の良い唇を摘んで引っ張るなんて……後で後悔しても知らないぞ☆ もうしてやんないぞ☆」


 なんでこいつは彼女的感じで拗ねてるのか理解できない。まあただのお遊び何だろうけどね。そんなのに付き合ってられるか。


「おいシクラ。お前って他人の携帯にも進入出来るのか?」
「誰のって訳でも無いけど、このアプリをダウンロードしてるのなら出来なくはないかな☆」


 なるほどね。こいつとしたくもない会話をしてた甲斐がここで発揮される訳だな。僕は思いきってシクラを使うぜ。


「よし! ならハゲ共の情報を盗み取ってこい!!」
「ラジャーー☆」


 それはなかなか素直なシクラの返事だった。

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