命改変プログラム
受信と送信の関係
「ほんといつもバカみたいな事しかしてないのね」
目の前に現れた誰かの言葉。それは失礼極まり無く、そしてトゲトゲしい。今の僕にそんな言葉をかけれるなんてよっぽどの心冷たい奴だろう。
普通ならまず「大丈夫ですか?」の場面だろうここは。僕が苦しんでるのわからないのこの人? てか、地面と触れあってる皮膚が絶賛焼かれ中なので、一刻も早く日陰に入りたいんだけど……くっそどこのどいつだよ、こんな邪魔をする奴は。
僕は見えてる足部分をたどって視線を上の方へ。まあ多分女の人だろうとはわかる。だって足細いもん。足首がキュっとしまった良い脚をもってらっしゃる。
まあ靴は何故か、サンダルなんだけど……しかもお洒落な外出用とかじゃ絶対に無い奴。なんていうか……学校のトイレに常備されてるアレみたいなのを履いてる。
まあでも脚が綺麗なのは良いことだよね。
「んん?」
視線を上げて行くと同時に、その脚を見てる訳だけど、思わずそんな声を出す位にちょっとドキドキだ。太股の位置まで来てるんだけど……なんかズボンとかスカートらしき物が出てこないんですけど?
これって、このまま視線を上げて行っていいのだろうか? でもこのまま進行方向を阻害されたままじゃ命に関わるからな……もしもパンツがモロ見えしてたとしても、それって不可抗力だよな。
てか流石に、こんな講習の面前にパンツを晒して現れるなんてしないだろう……と思いたい。
ドッキンドッキン――期待と不安が入り交じった胸の鼓動がなんか激しく成ってきた。さっきまで空気足りなくて苦しかったけど、今は別の意味で苦しいよ。
僕は視線を上げていく。そして脚線美の終着点は直ぐそこ……一体どうなってる!! と胸に期待を膨らませた訳だけど、実際はやっぱり公衆の面前でパンツを晒す女の子はいなかった。
まあだろね。女の子でも犯罪だよそれは。目の前に現れた誰かの大事な部分は上着の延長線上によって隠されてた。大きめの服をきっと着てるんだろう。
でもかなり危ないけどね。だってこれ……隠れてる部分はほんとギリギリだろ。見えそうで、見えない。その限界を追求してるよ。
まっ、ちょっと残念だけど、あからさまに見えてるよりはこっちの方が何か心に来る物があるから良しとしよう。僕は更に視線を上げていく。
すると頂けない頂が二つあった。なんていうかこう……それはそれはご立派なお山だ。
(サイズが合ってない服を着ててもこれだけ強調されるって……どんだけなんだよ)
僕は密かにそう思った。てかなんかほんと、独創的なファッションしてる。彼女の上着……明らかに途中からデザインとかおかしい。
まるで違う服を切って繋げた様な、そんな印象を受ける。てかわざわざ長さをそうやって伸ばしてる? 下半身を隠すために?
実際ただのTシャツっぽいんだけど、そこは見えない様に工夫はされてる。ヒラヒラしてるんじゃなく。お尻周りを包む込むような形にそこは整えられてるみたいだ。
裁縫のスキルに長けてるのかな? それにしてはデザインが最悪だけど……何故にどうしてそれを組み合わせた? みたいな感じ。
適当に古いのから継ぎ接ぎしましたって感じだ。だから統一性なんて合ったものじゃない。いや、もしかしたら狙ってるのかも知れないけど……そうはみえないかな。
そして実際もう一枚を着てる訳だけど……なんか着てるのか着てないのかわかんない。胸の下まではチャックで胴体を覆ってるんだけど、その上はもう肩にさえ引っかかってないよ。肘の所で、その上着は辛うじて脱着してない感じ。着たいのか着たくないのかわからない。
これは外出着なのかな? 自室から急いで飛び出した感が垣間見得るんだけど……てか、考察長い。こうしてる間にも、僕の体はアスファルトと言う鉄板に、その身を焦がされてるよ。
「良いから……退けよ。てか、どいてください」
僕は干からびた喉から、掠れた声を絞り出す。すると彼女はおもむろにペットボトルを取り出した。そしてキャップを取ると、逆さにして僕めがけてその中身をぶちまける。
「うぱっ――ちょっ――何すんだ!」
「取り合えず冷やそうかと思って」
だからっていきなり水をぶっかけるか? 確かに地面もこれでかなり温度が下がったし、僕の体の熱も逃げてくれたみたいだけど……結構な荒療治だよ。彼女のメガネの奥の瞳はなんか冷たく僕を見下ろしてそうだな。眼鏡で見えないけど。
水を僕にぶちまけた彼女は、それだけ言うと、影の方へ自分で行った。僕も取り合えず、このまま日差しの下に行るのは辛いので彼女を追って日陰へ。
重い足取りだったけど、なんとか彼女の隣で腰を下ろす。
「ねえ、誰なのよこれ?」
そんな事を画面の向こうから訪ねてくるシクラ。そう言われても僕にだってわからない。こんな奇抜な格好の知り合いは心当たりがないんだけど……僕は「さあ」としか返せないよ。
「はい、コレ」
すると今度は頬に冷たいジュースが当てられた。僕はちょっとビックリしたけど、それを有り難く受け取る事に。スッゴい喉が乾いてたんだ。だけどスポーツドリンクは温かったんだよね既に……だからこれは有り難い。
僕はプルトップを上げて、冷たい飲料水を喉に流し込む。
「プハァ!」
体に染み渡る。HPが少しは回復してるかな。てか見た目と違って随分優しいね。隣で壁にもたれ掛かる彼女は、自分の分のジュースを口に含みながら、自身の携帯を街に翳してる。
この人もつまりは、イベント参加者か。
「あの……お金払いますよ。百二十円で良いですか?」
見ず知らずの人にただで物を頂くのは抵抗がある。だから一応、このジュースの費用くらいはね。
「百二十万を私は要求するわ」
「は?」
今なんてこの人言った? サラッと言ったけど、聞き間違いじゃないよね? 百二十万がなんたらと……
「だから百二十万よ。返す気があるならそれだけ要求するわ。私をこんな人の臭気が集まるゴミ溜めに呼び寄せたんだからその位当然よ」
すごい事言ってるよ彼女。小さな唇から、思わず聞きほれそうなすずやかな声で、とんでもないことを言ってる。いや、でも待てよ……
「返す気を引っ込めたらどうなるのそれ?」
「ならいらないわ」
あっさりと彼女はそういいました。冗談だったのかな。てか、この見上げる様な感じは危ないな。ほんと……見えそうで見えない。
「ねえ」
「はい!? なんでしょう?」
やましいことを考えてたからか、声をかけられて思わず声が妙に高くなってしまった。うう、恥ずかしい。だけど彼女はそんな些細な事には触れようともしない。
いや、そもそも興味すら無さそうに流してくれてる。
「君ってスオウよね。LROで何かと話題の」
「それは……」
どうしたものか。別に名乗って困る事でも無いけど、なんだかこの人は独特なんだよな。それがネックだ。
「濁したって無駄。ネタは上がってるわ」
そういって彼女は携帯の画面をこちらに向けた。するとそこにはLRO内での僕の画像が。
「へぇ~よく似たキャラもいるもんだね。まあ世界には同じ顔の人間が三人はいるって言うし、ゲームの中まであわせたらもっといたりしても――」
「――LROにはこれと同じ顔の人なんか二人といない。微妙でしょ?」
悪かったな微妙で。そりゃあ確かにLROには美形が一杯だよ。それか突き抜けた顔の奴らかのどっちかだね。極端なのはノウイの目が点な顔とか。
そりゃあ僕みたいに中途半端は少ないだろうけど……言い方って物があるよ。
「それに他にもネタはあるの。知ってた? 参加者をタップするとLROのIDが表示されるわ。それを自分のリストと照合すれば……」
そういう事か。それだと言い逃れできない……ってまてよ。リストって事はこの人って――
「ちょっと待てよ。他人のIDなんてフレンド登録しないとわからないだろ。だから幾らこのイベントの参加者のIDがわかっても知り合いじゃないと確信はもてない。
つまりはさ、もしかしてこっちにも君のIDの登録があるかもだよね? LROでなんて名乗ってる?」
「それは言えないわね」
速攻でそっぽ向かれたよ。まあけど、こっちもその方法で確認出来るか。この人のIDを確認して、僕の少ないフレンドリストと照会すれば良いだけだ。だけど表示されるのは、IDだけなのかな? ちょっと気になる事があるんだけど……まあ今はそれはいいよ。
それより彼女は一体誰なんだろう? 候補としてはリルレットかセラかシルクちゃんになるんだけど……イメージ的にシルクちゃんは無いな。
すると残りは二人……一体どっちが……カメラを向けようとしたら僕の携帯が潰れるかと思うほどに、彼女は携帯を強く握ってカメラを防いだ。
「女の子のプライバシーを無断で犯すなんて、しないほうが良いわよ」
「ならなんで僕のはいいんだよ。僕にだってプライバシーはあるぞ」
女って言葉は使い勝手良すぎだろ。男は男だからって事が多すぎる。ないがしろにして言い訳じゃないよな。
「元の顔でLROに入ってる人が何を今更」
「それは別に、僕の意志じゃないっての!」
思わず言ったその言葉に、彼女はニヤリと口元を上げた。
「今、認めたわね。自分がスオウだって」
「あっ……」
確かに今のは完全に自分で認めてしまったな。
「ああーもう良いよ別に。そうだよ僕はそのスオウです。認めてやるからそっちも教えろ。知り合いなら別に問題ないだろ?
リルレットか? それともセラか?」
僕は必死に携帯を引っ張る。だって自分だけ情報を開示するなんて割に合わない。それに別に隠す事じゃないじゃん。知り合いなら。
そっちがそもそもちゃんとLROでのキャラ名を言えば、難なく教えた物だよ。けどなぜか、この目の前の彼女はそれを頑なに拒むんだ。
「リアルはリアル、LROはLROよ。こっちでは知られたくない事が一杯なの。だから詮索はしないで」
「……むむ」
なんか真剣な感じで言われてしまったな。別に嫌なら無理して聞こうとは思わないけど……でもどこか納得できない様な……すると画面の中のシクラが肩を竦めてこう言った。
「スオウはホント、女からしたら扱い易い男よね」
なんだその不名誉な言葉は。
「ん? 今何か聞こえなかった?」
「え? どっかの誰かの声じゃ――」
一瞬、シクラの事バラしてもいいような気がしたけど、よくよく考えたら、それは不味いと判断したよ。だってもしこの目の前の女の人がセラだったらさ……携帯壊されそうだろ。
エルフで、シクラを許してる奴なんていないだろうし、僕だって実際そうだけど、セラは時々感情と行動が直結するじゃん。
流石に携帯壊されたら、殴られるよりも効くぞ。だから、そんなもしもを考慮してシクラの事は黙っとく事に……
「ちょっとスオウ、この私をどっかの誰かなんて心外――」
プツ――っとうるさい奴が喋りだしたから、電源を落とした。たく、あいつは誰も彼もが僕の様に接っす事が出来ると思ってるのか。敵だって事、忘れるなよな。
「やっぱりなんか、直ぐ近くでスオウと呼ぶ声が聞こえたような……」
隣にいる彼女はそういって周囲を見回してる。まあよくよく考えたらそうなるよね。ここはリアルな訳だし画面の向こう側から言ってるとは思うまい。
「気のせいだろ。それとも僕の事を考えてるから、どっかの声がそういう風に聞こえたとかさ? まあちょっと照れくさいけど、そういう事も――」
「なないわね。バッカバカしい……ななななにゃによそれ」
彼女の唇が震えてる様に見えるのは気のせいか? それににゃによって言ったし……でもこれで気のせいの方向に持っていけそう――と思った矢先、再び耳障りな奴の声が携帯から聞こえてきた。
「だから、こんな事したって私には意味ないもん☆ なんせ私は規格外の女シク――」
プツッ――と再び電源を落とす僕。たく、もうちょっとシクラの奴は、自分が嫌われ者だという自覚を持て。
「なんだか、そっちの方からさっきと同じ声が聞こえた様な? しかも何か言いかけてなかった? シクなんとかって……」
そういって、今度は僕の方と、その後ろの先を重点的に見る彼女。けど、何かが見つかる訳もない。だって喋ってた奴は、携帯の中にいるんだからね。
「完全に気のせいのだろ。この暑さだから、幻聴が聞こえてもおかしくないよ」
「私を貴方達の様な下等生物と一緒にしないで。この程度の暑さ……私は全然へっちゃら……よ」
それにしてはさっきから汗が不味い位に見えるのは気のせいか? 絶対にこの暑さに参ってるように見えるんだけど。
「そう……なのか?」
「何よその目? 貴方には見えないでしょうけど、私の体の周りには薄い球状の膜があって、それが中の温度を一定に保っててくれてるのよ。
まあ見えない貴方にはわからないでしょうけど――ふふふ、私に付いてきたかったら、自分の魂のレベルを上げなさい」
汗だくの癖に、奇抜な格好した彼女はそんな事を言った。ファッションだけじゃなく、中身も痛いなこいつ。まあここで無駄に否定して感情を煽っても仕方ないから、ここは「はいはい」と適当な相槌でもかますかな。
こういう自分の中で設定を作ってる人は、無理に現実を説いても意味ないからね。
「はいはい、気が向いたら善処してもいいか――」
「ププ――魂レベルだって、相当痛い設定かましちゃってるわね☆」
僕が最後の「な」を言おうとしたところで、再び厄介な奴が復活してきやがった。たく何でこう、こいつはタイミング悪く出て来る訳? 絶対に狙ってるよな?
「誰だ! 今言った奴!?」
彼女は今のシクラの言葉で周りにまで向かってそう叫ぶ。ちょっとそれにはビックリだよ。大人しそうな顔して周りにまで噛みつくんだな
まあシクラの発言も発言だけど……あんな事言ったら、この手の人は怒るよ。自分の中の設定で心のバランスとか、社会との付き合い方を保ってる人もいるんだよ。
やっぱり人間って奴を理解してないな。まだまだAIからの延長線上って事か。
「ほらほら、もうそこら辺で人を呪えそうな視線を放出するのやめろ。今の声だって、どっかの電波がたまたま入ってきただけと思えよ」
「……」
なんか今にも周りの人達に随時「死ね」とか言って回りそうだったから、僕は彼女の腕を掴んでそういった。だって目が……血走ってるよこの子。黒縁メガネの奥の瞳が怖い位に。
「誰が電波よ。電波はそこの痛い女――」
「――マジ黙ってろよ頼むから」
シクラの口を糸かなんかで縫い合わせたい。マジで。たく、画面の向こう側にいるからって気楽な奴だな。こっちはなんかいたたまれない風になってるんだぞ。ただでさえ彼女の格好は目立ってたのに、更にさっきの言動で注目の的だよ。
ホントいうと、ここから今直ぐにでも逃げ出したい。けどジュース奢って貰ったしって事で、放っておく事も出来ない。
ある意味心配だしなこの子。すると周りに向けられてた顔が急にこちらを捉える様に、グリンと回ってきた。
「今、あの頂けない声が聞こえたわ。やっぱりさっきの声の正体は貴方?」
うおおおおい! 何故か矛先がこっちに着ちゃったよ。てか、腕に持つ携帯から出てる声何だから、こっちだと気づくのは当然かもだけど……ヤバいって。
「いやいや、落ち着いて考えろよ。さっきの声は女だろ? 僕は男だぞ。だからその呪いの瞳を向けるのやめろ」
「これは呪いの瞳じゃない。でも着眼点は悪くないわね。特別に良いこと教えてあげよっか?」
何々? また彼女の電波的な話が始まってる様な気がする。僕がどう言おうか迷ってると、どっかのクソが僕の声色をまねてこう言った。
「まっ、まさか呪眼よりも更に高度な目を持ってると!? もしかして君の瞳はアレか?」
すると彼女はそんな誰かさんの言葉に満足したのか、口元を少し上げて「ふっ」と笑った。
「そうアレ。アレが分かるとはまさか貴方もインフィニットアートを?」
「はは、まあ何を隠そうゴールデンボールを二個程、この体に宿してる」
ゴールデンボール…………いや、それ金○だろ!? 僕は心の中で精一杯突っ込んだ。てか、インフィニットアートも謎だし……シクラの奴、面白がりやがってこのままどこまで突っ走る気だよ。
なんか向こうが乗ってるから、ここで無理矢理止める訳にも行かない。
てかなんか、彼女が震えてるんだけど? やっぱりゴールデンボールは無かったんじゃないかな?
「ま……まさかそんな奇跡の種を宿してたなんて。どうりで初めて見たときから、私のこの瞳が反応してた筈だわ」
そういって彼女はメガネ越しに、自分の瞳を片方隠す。なんかありだったっぽいね……ゴールデンボール。奇跡の種とか言ってる時点で、金○だと気づいてそうだけど。
あ~頭が痛くなってくる。
「君のインフィニットアートであるその目は一体? 呪眼よりも上となると、そっちも相当のハイエンドだね。楽しみだよ。聞かせてくれるかい?」
どうでも良いけど、なんでシクラの口調はいちいちこう……キザッたいの? 美形を想定して話してないか? 僕だと言うことを前提に口調を整えろよ。僕はそんな甘い声で囁かないんだけど……しかも勝手に「ハイエンド」なる言葉を作ってるし。
バカにしてた割にはノリノリだな。きっと彼女を騙すのも、僕が困り果ててるのも面白くて仕方ないんだろう。良い性格してるぜ。
てかそろそろ終わりにしたい……このノリでの会話。周りの視線が痛いんだけど。
「私のこの瞳は『千里眼』よりも更に上の『天寿眼』よ」
「な……なにいいいいいい!? 天寿眼だと? そんな物がこの世に存在してる訳が……」
おいおい、流石に付いていけないぞ。声にあわせて一応演技してるこっちの身にもなれ。超恥ずかしいんだからな。
「ふふふ、私を貴様達と同列の存在と考えるな。天寿がこの瞳に宿りしそのときから、私は人を超越した存在として、未来と過去を幾重も見てきた。いわば世界の監視者となったのよ!」
彼女は恥ずかしさなんてひとかけらも見せない。きっとこれが地なんだろう。とても凄い精神の持ち主だな。僕なら、こんな自分には耐えられないよ。発狂しそう――てか彼女は発狂してそうだな。
今は台詞をシクラが言ってるから良いけど、全部一人でやってたらきっと悲しくなると思う。自分自身に。
「監視者だと? そんなラスボ的存在うらやま――じゃない、それじゃあ今までの戦いもお前は分かってて? 何で理不尽な世界を変えようとしないんだ!?」
「ふっ……理不尽こそが世界だと天寿は私に見せてくれたのよ」
なんだこのどっかの少年マンガの最終回的な会話は。てか今までの戦いって何だよ。まあ突っ込んだら負けなんだろうな。しょうがないから最後まで付き合ってやるさ。
「くっ……それだけの力を持ってながら……監視者よ、僕はそんな運命にあらがってみせる。今ここでそれを宣言して生き続けてやる!」
「けれど貴方も歯車の一部になるだけよ。私は貴方の未来も知ってるわ。これから卒業して三十になるまで就職も出来ずにフラフラと『充電期間中』と言い張り、ようやく勤める会社は社員三人の町工場。
それから二年後に結婚するも、奥さんには尻に敷かれて、月の小遣いは五千円。搾取され続ける毎日に耐えきれなくなり不倫をし、そこで女に騙されて借金を一千万こしらえる。
毎日借金取りに追われる日々。だけどそこで意外にも支えてくれた妻。二人でがんばり借金返済。そして五十代半ばで町工場の小さな社長に成れましたとさ」
どっかで見てきたかのようなその言葉に、僕は寒気を覚えたよ。何故か目に浮かんだそんな光景が恐ろしい。
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