命改変プログラム
遠くない日
花瓶の向日葵に自分のを足す。よくよく考えたら、自分で花瓶って用意してない。だって考えたらさ、花を持って行くシーンとかは色々とドラマとかで見るけど……てか普通にリアルでもやるわけだけど……花瓶って病院に常備されてる訳じゃないよね?
そりゃあ一個くらいは病室にあるだろうけど……それが既に使われてる場合、花瓶は自分で持ち込む物なのか?
「まあ、そんな多く買ってなかったから良かったな」
僕はそう言いながら向日葵が事前に差してあった花瓶に、自分が買った向日葵を加えてく。先のも数本くらいだったから余裕があって助かったよ。
太陽を目指して伸びる元気な花。真っ直ぐ成長する向日葵には願いを込めたよ。ほんといい加減真っ直ぐに正面から向き合えってな感じの願い。そして生きろって願いだ。
堅くなに目と耳を閉ざし、どんなにリアルから逃れようとしたって、コイツはまだここに居る。もうこっちでは何も見たくないし、聞きたくも無いんだろうけど……今度目を開けたら、今までとは違う世界にきっと成ってるよ。
もう一人じゃない……僕がそう言ってやる。真っ先にさ。それにきっと僕だけじゃないと思う。秋徒だって日鞠だって、きっと友達に成ってくれるだろうし、LROで協力してくれてるみんなだって多分気にしてくれるよ。
もう閉じこもる必要なんてきっとない……
「だから、それをちゃんとわからせてやる」
白いベットに横たわる眠り姫に向かって僕はそう言った。摂理のリーフィアはちゃんと稼働してるっぽいな。流石にこのサーバーダウンで都合良く意識が戻ってる……なんて事は無かったようだ。
そしてそれは、摂理の隣で眠り続けてる人も同様だ。並んで眠ってるもう一人は当夜さん。フルダイブシステムの開発者でLROもこの人が作ったような物だと言っていいだろう。
そんな凄い人だ。この人を助けるのは摂理以上に難しいのかな? LROでは見ないし……でも、この人もこのままじゃダメだ。
たった一人の家族、ある意味当夜さんを先に戻せれば、摂理もこちらに戻りたがったりするのかも。それこそ本当の意味で、一人じゃなくなるしね。
家族はどこまで行っても家族だ。僕が色々と考えて摂理の横顔を眺めてると、ドアがガラリとスライドした。そこから現れたのは白衣に身を包んだ看護士さん。
まあここには早々一般の人は来ないからね。てか、本当はこれない様にしてあるんだっけ? 僕たちは関係者だから顔パスで入れるけどね。
「また君か。どうなのかな、お姫様は救えそうなの?」
部屋に入ってくるなり、そんな事を聞かれた。まあ僕も何度か入院してるし……知らない人ではもうないよな。
「まあ、どうにかして連れ戻してみせますよ」
「そっか、そうだね。君には頑張って貰わないとだよ。勿論今だって十分に頑張ってるのは分かってるんだけど……でも本当に……」
んん? この明るさが取り柄みたいな人がなんだか珍しく気が重そう。どうしたのかな? 何かあった? 失敗のしすぎは今更だし……やっぱり何か摂理に関係あることかな?
「どうしたんですか一体? 何か不味い事でも?」
僕は不安になりながらも、それを口にした。だって気になる。すると看護士さんは、何度か言うかどうか迷った様な素振りを見せつつ、最後には自分で何かを納得させて、話してくれた。
「えっと……落ち着いて効いてね。実は摂理さんの脈が最近弱まってるの。それに伴って時々発作とかも出るように成ってる……彼女が眠り続けてもう三年……三年もただ眠ってるだけじゃ、体の機能はどうしたって低下する。
あのねスオウ君。こんな事言うのはどうかと思うけど、彼女に残された時間は、このままだとあまり永くはないわ」
耳を通ったその言葉が、頭の中を巡り巡ってる。反響をするように頭に響き、僕の瞳孔はきっと揺れてた。拳は強く握ったし、歯だって強く噛みしめた。
力を入れれる所にありったけの力を込めてたと思う。永くない……それは分かってた筈のことでも有ったはずだ。でも……三年も眠り続けてるからこそ、LROから連れ帰れればどうにか成ると思ってた。というか、そこまで早くに死が差し迫ってるとは、思わなかった。
そりゃあいつかは、こういうことに成ってもおかしくなくないとは思ってたけど……思ってたけどさ……いつかは今日や明日や、少なくとももうすぐって訳じゃないじゃん。
僕は揺れる瞳孔を隠すために俯いて訪ねた。
「どれくらいですか? あとどれくらい、摂理には時間が有るんですか?」
点滴が一定の間隔で落ちていく。でもそれだけじゃ、摂理を引っ張りあげる事は出来ない。それが出来るのは僕だけ……
「具体的な所は分からないけど……後何回か発作が起きたら、心臓が止まることが有るかも知れないと、先生は言ってたわ」
「そんな……」
何回かって、マジでそんなもんなのか。見た目では分からないけど、摂理の体は相当限界にきてるって事か。確かに細いもんなコイツ……ガリガリだよ。
夏の日差しが激しく照りつけてる。きっとだから、頭が異様に熱いんだよな。この足下がふらつくような感覚はきっとそのせいだよな。
「でも、どうしてかしらね。一時期は発作もあまり出なくって顔色も良いときが有ったのに……最近はなんだか発作も感覚が短くなってきて……まるで生きることを止めたいみたい……ってこれは聞かなかった事にしてね。
ただの独り言だから。さあて仕事仕事」
そう言って看護士さんは摂理に近づいてなにやら始めた。きっと今日の摂理の状態をチェックしたりしてるんだろう。
てか、生きることを止めたいみたいね……痛いところを突かれたよ。やっぱりこれは……精神の影響が体にも出てるって事なんだろうか?
今の摂理はもう自暴自棄も同然だ。リアルに希望を見出せなくて、LROに留まる選択をした。アイツはもうこっち側で、生きることをしようとしてない。だからこそ、肉体は言ってしまえば死のうとさえしてる。
魂が無くなった入れ物は、永くは持たない。これもきっと僕のせいだな。僕が失敗したあの時まではまだ、リアルに見切りをつけてなんか無かった。今までもずっと、心のどこかでは帰りたい気持ちがあったんだろう……だからこそ、こんな永く持ったんだ。
でもあの場所で……エデンで摂理は諦めた。いや、拒絶したんだ。僕を拒絶して、リアルを拒絶して……見切りって奴をつけられた。
だからこそ、ここ最近は発作が頻繁に起こってるのかも。僕の気持ちまで沈んだその瞬間、病室に甲高いアラーム音が響いた。
顔を上げると、ベットで眠ってる筈の摂理が異様に胸を反らしてる。そして何回も続くそのアラームの度に、ビクンビクン反り上る。これって――
「先生発作です!! 桜矢摂理さんが発作を起こしてます!!」
ナースコールを押して、看護士の人がそう言ってた。そう、これが発作……画面の心電図が大きく成ったり小さく成ったり……心臓の鼓動を表すそれがなんだかとても怖く見えた。
あれが何も示さなくなったら……波じゃなくただの棒に成ったら……それはつまり――
「摂理!!」
僕は近づいて両肩を掴む。強く強く掴んで、そしてベットに押しつけた。
「まだだ……まだ逝くなよ。そんなの絶対に許さない。認めねえ!」
摂理の鎖骨あたりに僕は顔を持ってってた。押さえるのに夢中でいつの間にか近づけてたんだ。アラームが世界を支配してるように聞こえてた。
止まれ止まれと僕はそんな音に願い続けてた。するとその時、僕は大きな腕に強引に引き離された。強引だったからそのまま僕は床に尻餅を付くことに。
どこのどいつだとか思ったけど、それはどうやら医師の様だった。急いで駆けつけてくれたのだろう。数人のスタッフも一緒……何も出来ない僕の変わりに、彼らが摂理を助けてくれる……その筈だ。
けどそう思った瞬間、胸が一瞬痛んだ。何かに刺された様で、何かにかきむしられた様でもある痛み。騒がしく動いてる医師や看護士の人達とは違って、僕はただこの場で俯いた。
俯いて、願う事しか出来なかった。この時僕は思ったよ。ああ、今の僕は命を繋ぐ点滴以下だなって。
暫くすると、騒々しい音は収まり、響いてたアラーム音も今はいつも通りの安定した脈へと戻ってた。だけど僕はまだ床に座り込んだままだった。
なんだか立ち上がれない……立ち上がる気に成れない。そんな感じだった。自分がけたたましい蝉の声にとけ込んでいきそうな、そんなイヤな気分。
安心出来てる筈なのに……それを感じれない。するとその時、頭をいきなりかきむしられた。
「おい、もう大丈夫だって言ってんだろ。聞いてるのかガキ? ああ!? たく、てめえが死んだような面してるんじゃねーぞ」
おいおい、どこのチンピラだよ……と思いながら顔を上げる。するとそのチンピラは白衣を着てるんですけど。何? またこいつ……これでも医者か?
「おいガキ、お前今、これでも医者か? とか思っただろ?」
「別に……そんな事は……」
なんかバレてるし。まあきっと言われ成れてるんだろうな。
「はん、まあいい。俺は寛大な心を持ってるからな。そしてありがたく思え。俺が居たからこの子はまだこうして生きてる。
おらおら、ありがとうございますはどうした?」
「ちょ、ちょっと先生。おふざけがすぎますよ」
おふざけ? 不謹慎とかだろこれは。こんなのが医者とは日本の医療も終わりが近そうだ。看護士の人に言われても懲りた様子は全くないし……
「何を言うか。医者とは感謝されてなんぼのもんだ。それが明日の俺の糧になる。そしてその糧で俺は更に多くの命を救う。
そうやって俺の世界は回ってる」
凄い考えの奴だな。それは傲慢なのか思いやりなのか分かりづらいんだけど。まあ誰も損はしなさそうだけどさ。ある意味真面目なのか? でもそれなら……
「ありがたいと思ってます。摂理をここで死なせないでくれて……でも医者なら、コイツを救ってやることは出来ないんですか?
今の繰り返しで、命を救うなんて貴方は言えるんですか?」
それは結構失礼な物言いだったかも知れない。でも何も出来ないここでの自分に苛ついて、そして久しぶりに触れた誰かの死が怖くて……そういう風に言う事しか出来なかった。
儚いんだよ。今摂理の命はとても儚い。コイツに差してある管の一本でも抜いてしまえば、今の摂理は簡単に逝ってしまう……一滴一滴垂れる点滴一つにしても、きっとそう。
油断したら手からこぼれて地面に叩きつけられて割れてしまう水風船より儚いよ。
「はん、お前に良いことを教えてやろうか? どんなに天才な俺でもな、全知全能で無ければ万能でもない。まあどっかには何でも出来るそんな奴も居るのかも知れないが、基本天才なんてのは一つの事にしか徳化してない物だ。
俺は天才的な医者だが、引きこもりを助ける精神科医じゃない。子供専門の小児科医ではあるけどな。
そしてこの腕が神の腕と呼ばれ代物――いわゆる『ゴッドゥハンドゥ』だ」
そう言う医者は、取り合えず自分に並々ならぬ自信があるらしい。とにかくゴッドハンドの発音がムカつくけど……なんでそんなに舌を巻くんだよ。周りの看護士さん達も痛そうな目でアンタを見てるぞ。
てか、自慢じゃ無ければ何を言いたいんだっけ? ようは自分じゃ救えないって事なのかな?
「そのご自慢の腕が、今まさに小さく可憐な命を取りこぼしそうじゃないですか」
僕のそんな言葉に、医者はチッチッチと立てた人差し指を顔の前で振る。なんかイライラが止まらないぜ。
「それは違うな。俺がこの子を見る限り、俺はこの腕に賭けて旅立たせたりはしない。冥土への通行証は、この手が何度でも奪って置いてやろう」
「何度でもって……後数回発作が起きたらやばいんでしょう? 確実に命を繋ぎ止めておけるなんて、言っていいんですか?
さっき一つの事しか徳化してないから天才だって言ってたじゃないですか。その手は、ゴッドハンドとか呼ばれてるのなら、外科手術の方に徳化してるんでしょ?」
大体そんな風に呼ばれるのは外科医とかだよな。精神科医とかがゴッドハンドとは呼ばれないだろうし、内科医の人もあんまりピンとこない。
ゴッドなんて付くのは、目に見えやすいからだろ。で、比べやすいからとか。だけど僕のそんな言葉がなんのその――的に、医者は自分の手を見せつける様にしてこう言った。
「それも勘違いだな少年。教えてやろう、この我が手に秘められたパァワーの真実をな。俺は確かに外科手術で多くの子供を救ってきた。
だがそれでも越えられない一線の数字というのはある。全ての患者を俺たち医者は救える神ではないからだ。まあもっと言えば、命とは始まったときから少しずつすり減ってる。それを取り戻す事は絶対に出来ない。
俺たち医者に出来るのは、命を繋ぐこと。俺が誰よりも多くの命をこの病院で実際に救ってるのは、この手が命を掴み繋ぐからだ。ゴッドゥハンドゥは伊達じゃないぜ」
命を掴むって……それこそよく分からないんだけど。なんだか中二病的な痛い医者だな。ゴッドハンドに安心するどころか、逆に不安になってくるよ。あ、ゴッドゥハンドウだっけ?
「じゃあそれは……何回だって有効なんですか? 絶対に……掴み損ねないって言えるんですか?」
僕の言葉にその医者は目を反らして遠くを見る。
「イヤな事を聞くガキだ。絶対なんて言葉ほど嘘っぽい言葉は無い。俺はそんな言葉は使わん!」
「それって……」
「だが、出来る限りの事をやると言ってやってるんだ。お前はどうだ? それが出来る事をやってる奴の顔か? 言っておいてやるがな、花なんて別に慰めになんかならねえぞ。
何かをしたと示したいだけだろ。出来る事がある奴は出来る事をやるべきなんだよ」
何患者を思っての行動を否定してんのこの医者? 普通誰でも花くらい持ってくるだろ。出来る事をやれってのも分かるけど――
「今はLROはサーバーダウン中なんですよ。それにこれだって僕に出来る事でしょう」
摂理にはあんまりお見舞いに来てくれる人なんて居ないんだしさ。無意味な訳ないだろ。ここに僕が来てることに気付きもしなかったって、別に気付いてほしいわけじゃないんだよ。
「貴様は言った。こんな事の繰り返しでこの子を助けられるのか? と。ああ確かに、こんな事の繰り返しではこの子は助けられない。
幾ら俺がこの子の命を強引に掴んで繋げても、そう遠くない内に、体の限界は超えるだろう。何せこの子は生きようとしてないからな」
生きようとしてない……その言葉がイヤな感じで頭に……いいや、心に響く。アイツはこっち側に戻る事を諦めた。だからこそ、生きようとする事も諦めた。
ただただ、訪れる死の間際を悲しく無いように過ごそうとしてる。でもそれは……結局何も無いじゃないかと、僕は思う。
アイツはまだ生きれるのに、自分からその権利を放り捨てるなんて間違ってる。
「そして生きようとする気力を取り戻す事は、今の俺ではできん。俺もこの子一人に構ってる訳にはいかんのでな。このゴッドゥハンドゥを待ってるガキはまだまだいる。
本当なら俺も世界のどこまでも駆けつけたいさ。俺は人だが、全てを救うことを諦めてもいないからな。貴様どうだ?
俺の様に全てを救うなんて思わなくて良いぞ。俺は天才だからな。そしてお前は一介のガキだ。お前が失敗したって投げ出したって、そこに社会的な責任なんて無いだろう。
だが言っておいてやるよ。男が女を助けたいと思うのは正義なんだよ。それは世界共通でな。お前にはまだ、その気持ちがあるか?」
何……言ってやがるんだこの医者。そんなの――
「当然だろ。僕は摂理を連れ帰る事を諦めちゃいない」
「そりゃ良かった。今までのお前はどっか他力本願気味に見えたからな」
うぐ……確かにどうして医者の癖にと、アタってたのかも知れない。出来ない事があるくらい分かってる筈なのに……そしてこれは僕にしか出来ない事だって分かってるのに。
逃げ出したかったのかな? 本当は誰かの命を背負う事を重荷に感じてるのかな……いや、感じない訳はないか。だって命だよ。この医者も言ったとおりにそれは一度無くしたら取り戻しようが無いものだ。
世界できっと、一番価値があるもの。命という宝石……命と言う奇跡。脈打つそれを手にしなきゃいけないプレッシャー。
何回だって言われたよ。そこまでする必要無いとかさ。でも選んだのは自分で、間違ったのも自分で……けどそれでも、連れ帰りたい……諦めたくないと思ったのも自分だ。
それなのに今更他人事になんか出来るわけないし、して良い筈もないよな。
「俺もまだ残念ながら全てを救えないし、この子を救えるのかも知れないのはお前だけなんだろ? しょうがないから譲ってやるよ。
お前は心を救ってやれ。そしたら後は……体の事は医者の仕事だ。一人で出来ない事は二人でやれってな。それでも駄目なら三人で、それでも駄目なら何十人だって良いんだよ。
命の前では、俺のこのプライドだってボロ雑巾の様なもんだ。だから期待してるぞ少年。男は女の為にボロボロなる方が格好良いってな」
「そりゃどうも……」
ボロボロの度合いが半端無いけどね。チンピラ相手に喧嘩する程度じゃないんだよ。こっちは命賭けてやってんだ。だからバシバシ背中を叩くのは止めてほし――
「つっ!」
「お、ちょっと強すぎたか? いや……ちょっとお前体触らせろ」
「触らせろって――ええ!?」
セクハラ発言だよ今のは。てか、同意する前に体触ってきてるし。
「どうしたんですか先生?」
看護士さんの言葉も無視して、僕の背中辺りをやたらと触る医者。そして「脱いでみろ」とまで言い出しやがった。
「何故に!?」
「いいから脱げ。ただで診察してやってるんだからありがたくな」
なんと言う横暴な医者だ。僕はしょうがなくシャツを脱ぐ。別に表面上は何も無かった筈だけど、少なくとも寝る前に風呂に入ったときは別に何も……
「お前、これ痛いか?」
「いっっっっっっっってぇえよ!」
何した今? 背中の肩胛骨辺りを押された様な。そしてそれからも所々を同じようにされた。
「じゃあ最後に聞くが、その右腕の模様は何だ? 流行ってるのか? 随分薄いが、良く見るとわかるぞ。流石に学生なんだし不味いだろう」
僕はその言葉に慌てて腕を見る。確かに見える……うっすらとだけど、浸食が進んだ呪いの模様が。マジかよ。
「これはなんて言うか……」
「まあそれはどうでも良いんだが、お前また無茶な戦い方をしただろう? まだ前の傷だって完治した訳じゃないんだぞ。あんまり無茶すると、お前の方が先に壊れるぞ」
流石医者……腐っても患者のことはわかるんだな。そういえばイクシード3を使ったんだっけ。今回はそこまで長くも無かったから大丈夫だったと思ったんだけど、どうやらそうでも無かったらしい。
気付かない所から体って壊れて行くものなんだな。でも良いんだ。この医者だってさっき言ったしな。だから僕も、格好いい笑顔を作って言ってやろう。
「良いんだよ。この位の無茶は命張ってりゃ当然だ。それに、男は女を守ってボロボロに成る方が格好良いんだろ?」
「はっ、死んだらそれはただのバカなんだよ」
言われたな。でもそんなのも当然承知してる。だから死ぬ気なんて僕にはないって言ってんじゃん。それに何の為にあんた達が居るんだっての。僕は片目を瞑りこう紡ぐ。
「なら、体の面倒は頼むわゴッドハンド」
「生意気なガキが、医者泣かせなんだよお前等は」
そう言った医者は、面倒くさそうだったけど任せとけみたいな笑顔をしてたよ。
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