命改変プログラム

ファーストなサイコロ

抱えた花



「シスター、なんだかさっきから外がうるさいよ」
「どうやら、彼らがここを見つけた様です。でも大丈夫ですよクリエ。ここの結界は強力ですから、そう簡単に破れないから、読書に集中してなさい」


 優しそうな笑顔を作って黒い服に身を包むシスターはそう言います。だけど、それはやっぱり無理って言うか……私がどれほどお気楽な子供でも、ここまで来ちゃうと不安に成るよ。


「う~~無理無理!! 幾ら頑丈で安心だって言っても、こんなうるさいんじゃ読書なんて出来ないよ!」


 しかも分厚い宗教学の本なんて、元々読む気も起きないよ! 読む振りをしてただけだもん。私は椅子を引っ張って来て、外の様子を伺うために椅子へ上って窓の外を伺おうとします。
 だけど顔を出した瞬間に、狼みたいなモンスターが窓の一歩手前で大爆発。


「きゃうあ!!」


 私は思わず椅子ごと後ろに倒れちゃいます。別に爆発の衝撃とかそんなのは一切なかったんだけど、それでもビックリしたの。
 だって凄い形相なんだもん。しかも音は凄かったしね。


「大丈夫ですかクリエ?」
「うん、ありがとう」


 私が地面にぶつかる前に、シスターが受け止めてくれた。外は伺えなく成っちゃったけど、次々と起こるさっきの爆発音には、やっぱり不安をかき立てられる。


「本当に……大丈夫なのかな?」


 キュッとシスターの服を強く握る。するとその手にシスターの手が重ねられます。大きくは無いけど、暖かい手。私が一番信頼してる手です。


「大丈夫……何があっても、貴女だけは命に代えても守るから」
「そんなのヤだ!! シスターが居なく成っちゃうのはイヤだよ! 私は……そんな事に成るくらいなら、私が!!」


 だってだって、ずっと一緒に居てくれたんだもん。家族だもん。だから私は、シスターが居なくなるなんて望まない。
 だけどシスターはそんな私の頭を撫で撫でするだけ。顔を上げると優しい笑顔がそこにあります。


「ありがとうクリエ」


 そんな言葉が小さな体の奥に染みます。いつもはそれで安心が広がるのに、今は胸の奥からジワジワとイヤな感じが染み出してくる。
 だから私は、更にギュっと体を精一杯シスターにくっつけるの。どこにも行って欲しくないから……私は必死にくっつくの。
 するとその時、リィンリィンという音と共に宙に画面が表示された。そしてそこに写ってたのは私のお家を襲撃してきた奴。


「クリューエル様、探しましたよ。ですがどこへ逃げても同じこと。箱庭という場所に居る限り、私達の目から逃れる事は出来ません。
 素直に出てきてはくれませんか? 別にヒドい事をしようと言うわけではないのですよ」


 どの口がそんな事を言ってるのよってマジで思った。今まさにヒドい事やってるじゃない。ドンドン、ドンドンあんなモンスターまがいの物まで使って……私は震える体を押さえつけて、画面に向かって文句を言う。


「そんなの嘘ばっかり! 私だってアンダーソンの事あんまり好きくないけど、でもあんな事しちゃいけないもん! 信じれないよ貴方の言葉なんて!」
「あれはですね。実はアンダーソンが悪いのですよ。彼女こそ、クリューエル様を連れ去ろうとしてるのです。私達はそれをいち早く察知し、先手を打ったまでですよ」


 人の良さそうな顔でそんな事を言う画面の中の人。元老院の中でも若い感じのその人は、一回位しかここに来たことない人。
 てかそもそも、元老院の人は殆ど来ないんだけど……でもその時の印象はこの顔通りに良かった。けど今は……その言葉がどうやっても信じれない。


「それって……本当なの?」


 私は画面を見つめて、もう一度確認の為にそう聞きます。するとその人は笑顔で「勿論」と言いました。シスターは「アンダーソン様がそんな……」とか呟いてるけど、私にはわかる。
 嘘かどうかじゃなく、どっちを信じれば良いのかって事が。それを私のお友達が教えてくれるもん。
 私は画面の中のその人じゃなく、周りに置かれてる物に目をやってた。私のさっきの言葉は、その人じゃなく、周りの物へ向けての言葉。
 彼らは私の呼びかけに答えてくれる。そしてこう言ってる。


『そんなわけない! そいつの顔に騙されちゃいけない! 君を狙ってるのはそいつ等だ!』


 みんなの声は確かにそう言ってた。そして私は、シスター以外ではこの声を絶対的に優先すると決めてるもん! だから私は画面の中の人物を睨んでこう言います。


「ダメ! そんなの信じない!! 貴方に騙されちゃ行けないって、みんなが言ってる!! 嘘つきはさっさと消えてよ!!」


 すると画面の中のそのモブリは、明らかに顔が変わった。嫌悪するものでも見るように、細く尖らせた目で私を睨んで、舌打ち一つしてこう言います。


「ちっ、ゴチャゴチャゴチャゴチャとアンダーソンと言いお前といい。誰のおかげで今まで生きてこれたと思ってる? そろそろその恩を返して貰おうか? 
 君には結構、お金が掛かってるんだよ!」


 するとその瞬間、連続して爆発音が響きます。それに伴って家の中の揺れがどんどん大きく成っていく。本棚の本が落ちていき、テーブルやら椅子がガタガタと唸ってます。私はシスターと抱き合ってそんな揺れに耐えます。


「けはははははっはっはははははは!!」


 画面からはそんなおかしな笑い声が聞こえてる。それがとってもムカついて、更になんだか悲しいけど、私にはどうすることも出来なくて……そしてそんな中、遂にお菓子の家の壁が崩壊します。


「結界がやぶられ……」
「けはははははははは! さあ鬼ごっこは終わりですよ! 貴方にはこれまでの負債分を纏めて返却願わないと! お気楽な日々はもうおしまいです!!」


 ビスケットの壁は壊れて、粉塵が黙々してる。その向こうにはきっと大量のモンスターがいるんだろう。もうダメなのかな?
 ここで捕まったら、もう自由なんてない様な気がする。そんな事を考えて震えてる私。すると暖かな温もりがギュっとしてくれます。


「大丈夫……大丈夫ですから。私が守って上げますよ」
「シスター……」


 そう言ってシスターは私を背後に回します。そして見据えるのは煙の向こう側。そんなシスターの体はちょっと震えてます。
 私の前だから気丈にそう言ったけど、シスターに戦う事が出来るなんて私も思ってない。


「はは、無意味な事を……そもそもお前はただの――」
「それでも! 私はこの子に幸せに成って欲しい! ずっと触れ合って行くうちに、そう思える様に成ったんです!」


 画面から聞こえる声を遮って、シスターは大声を出します。私はそんなシスターの大声を聞いたことなかったから、ちょっとビクッとしました。
 でも……それ以上に心が温かく成ります。だって嬉しいもん。そんな風に思っててくれて嬉しい。いつもワガママばっかりで、最近なんて家出したのに、私が連れ戻されたとき、笑顔で「お帰りなさい」って言ってくれた。
 そして一杯、大好きな食べ物作ってくれた……私はその背中にしがみついて、顔を埋める。
 ダメなの……こんなのダメ。そう心が叫んでる。


「私が……クリエが、そっちに行けば、シスターは助けてくれるの?」
「ええ、それは勿論。そうしてくださると、助かりますね。そもそも用済みですし、それは」


 用済み? その言葉がなんだか引っかかったけど、でも助けれるのなら……何だって……そう思ったとき、シスターが強く私の手を握って、進めない様にします。


「ダメです……クリエ」
「シスター、クリエはクリエは……シスターが死ぬのなんてイヤだもん!!」
「私は良いんです! 良いんですよクリエ……貴女が居ないとこの場所も私の存在価値も無くなるのですから……」
「え?」


 そんな事を言ってる間に、煙の向こうから二体のモンスターが飛び出してくる。それらは真っ直ぐにこちらに向かって来てる。
 そしてそれらから庇う様に、シスターは私の腕を引いて抱き寄せる。自分が食われても私だけは……そんな態勢だ。


「だめ! 止めて! 止めてよ! クリエがそっちに行くから!!」


 私は画面の男に向かって手を伸ばす。だけど、そいつは、イヤな笑みを浮かべて……本当に心をかきむしる様にこう言います。


「いやいや、ですがちょっと距離があって。私が命令をしても直ぐには止まらないかも。まあだけど良いじゃないですか、もうそんな物……不要でもありますし」


 不要って……なに言ってるのこの人? 私がそっちに行けば助けてくれるって言ったのに……言ったのに!


「助けて……」


 私は今、心からそう誰かに願う。誰でも良い、信仰心あんまり無いけど、これからはちゃんと毎日祈ってあげるから、神様でもなんでも……悪魔でも大魔王でもこの際良いよ!!
 だけどどれもわからない。思い浮かばない。そんな中、ふと頭の中に現れた姿……その人の名前を私は叫んでた。


「助けてよ……スオウ!!」


 居るはずも、届くはずもないそんな声。だけどその時、目の前に『彼』が現れた。


「――任せろ!!」


 そんな言葉と共に、煙を風で押し退けて現れた彼は、両手に携える二本の剣を振りあげる。すると刀身から発生してる風のうねりが、私たちに向かって来てた狼に直撃した。
 そしてそのまま私たちの頭上を越えて、更には天井を突き破って、空の高い位置で狼たちは爆発した。


「んなっ……なっ……ななな……」


 変な声を上げてる画面の男。だけどそんなのもうどうでも良かった。だって目の前に彼が居る。私のピンチに駆けつけてくれたヒーローが居るもん!


「よっ、約束通り、ちゃんと迎えに来てやったよ」
「スオウ!!」


 私はシスターの腕から飛び出して彼へダイブします。シスターとは違う大きな胸へと一直線です。だけど大きいだけじゃない……やっぱり優しい……暖かい。彼が私を優しく抱いてくれるから、私は力一杯彼の胸にしがみつきます。


「遅いよ! スオウのバカバカバカ! クリエの事、見捨てたかと思った!!」
「そんな訳ないだろ。ちゃんと言ったじゃん。お前の行きたい場所に、僕は連れてってやるってさ」


 そんな言葉が嬉しくて……嬉しすぎて、さっきまでとは違う涙が、瞼から止めどなく溢れてくる。優しい手が私の頭を撫で撫でしてくれる。
 私はこの胸に包まれてると、安心感で一杯に成りそうだよ。


「お前は……どうして!? 道は確かに閉じた筈!! いや、それ以前に箱庭にこの世界を土足で荒らす、猿共が入ってこられる訳が無い!!」


 画面の中のモブリが、私達の感動の対面に水を差すようにそう言います。どうしても、その人は彼がここに居ることが信じられないと言った様子です。
 けれどそんな声には、もう一人の駆けつけてくれてた人が応えます。


「猿共ね……でも彼はここに居るわ。貴方達の妨害を乗り越えてここに……それはこの人が、貴方達よりも上の覚悟で立ってるからよ。
 まあ頭の芯から腐ってるアンタ達には理解しようが無いでしょうけどね」
「き……さま、生きてたのか?」
「死体の確認もしないで殺した気になってるなんて、だからアンタ達は詰めが甘いのよ」
「アンダーソンンンンンン!!」


 画面の中で必死に形相を作って、画面を投げ飛ばしたらしいその人。だけどそれでも、今は全然怖いと思わなかった。
 だって負け惜しみだってわかるから。てか、ミセス・アンダーソンは無事だったんだ。私達も驚きだよ。でも安心した。彼女があの時来てくれなかったら、私達はここに逃げ込め無かったもん。


「アンダーソン様ご無事で……」
「ええ、見ての通りよ」


 シスターもそう言って涙が頬を伝ってる。良かった。みんな無事で入れて……本当に。


「くきゅあははははははははははははははは!!」


 すると再びおかしな笑い声がこの家の中へと響きます。現れてる画面を見ると、いつの間にかその人へと画面があわせられてる。
 そこで顔を押さえてそいつが笑ってる。


「まあいい、まあいいですよ。考えて見れば取り乱す程の事でも無いじゃないか。手負いの年増一人に、猿が一人増えただけ。そんなの何の問題も無く踏みつぶせる!!
 なんせ箱庭は、我等の領域だ! 何をやってるゴミ屑ども!! さっさと奴等を爆死させろ!!」


 そう言って何かに指示を出そうとするその人。だけど空いた穴からは何も飛び出して来ることはありません。


「爆死ね。残念だけどそれは無理だ」
「何?」
「あんまり僕達を舐めるなよオッサン。アンタの手駒は、もう居ない」


 そう言ってスオウはその場から一歩横にズレます。するとそこには……何もない。あるのはただ焦げた地面がくすぶってるだけ。
 そしてその光景を見て、画面の中の人は開いた口が閉じない状態に成ってます。そして更に彼は宣言します。


「言っておいてやるよ元老院。お前達の欲望の食い物に、こいつは絶対にさせない!!」


 もう怖くなんて全然ない。スオウが居てくれたらどこへだって行ける気がする。


「くふっ……威勢が良い猿だな。だけど調子に乗るなよ!
 そこはあくまでも私達の領分が罷り通る場所だ!!」


 そう言うとそのイヤな人は、どこかへ指示を飛ばしてる様だった。するとゴゴゴゴゴと地面が揺れだし、激しい風が、空いた穴から家へと入ってくる。


「なんだ? 何やった!?」
 そんな声を画面へ向かって出すスオウ。だけどその時、空からは閃光が落ちてきて、とっても大きな爆発音が轟いた。
 耳がキンキンするほどの音だ。
「落雷? まさか箱庭を潰す気ですか貴方達は!?」
「くふふふ、回収はそちら側でと思ったんですか、入れ替える手間も省けますし……だけどもう良い。そんな用済みの場所は貴様達もろとも潰してくれるわ!!
 大丈夫、クリューエル様の接続はその前に直接切って上げますよ。勿論ね」
「っつ! 貴方達は本当に!!」


 ミセス・アンダーソンが画面を激しく睨みます。だけど、それを軽く受け流し更にその人はイヤな笑みを浮かべて続けます。


「ああ、そうそう、お土産も置いていきましょう。確実に貴様達をぶち殺す為のね。我らの崇高な思想にはアンダーソンもそこの猿も、邪魔でしかありませんから!! はははははははははは!!」


 そう言い残して画面はこの場から消え去りました。すると今度は外に大量に魔法陣が現れます。そこからはさっきの狼みたいなモンスターが数十? ううん、数百は現れます。


「なっ!? あの野郎、やってくれたな」
「スオウ……」


 私は不安を表す様に、スオウの服を握りしめます。


「大丈夫、ちゃんと守ってやるよ」
「……うん!」


 私の不安はその一言で掻き消えます。スオウがいたらどうにか成るもん。そう思えるもん。だってこの人は、私のヒーローだからね。




 はてさて、クリエには格好付けたけど一体どうするか? あの数は流石に二人で相手するにはきついぞ。単位が違うもん。十の位じゃないもん、その一つ上だもん。まあだけど、今更弱音は吐けないけどね。
 てか、さっきから断続的に雷が落ちてるのは何の予兆? 空いた穴から空を見ると、青空が隠れて怪しい雲が渦巻いてるんだけど……なんか嫌な予感しかしねーよ。


「なあアンダーソン。ここはどうなるんだ?」
「多分、崩壊するんでしょうこの箱庭は」


 この箱庭? それじゃあまるで箱庭が複数あるような……いや、そんな事はさっきのいけ好かない画面のモブリも言ってたな。入れ替えがどうとか……取り合えずここは、そう長くは持たないって事か。


「出口は? 正規のじゃないルートをアンタは用意してるんだろ?」


 このくらいの事態は予想してた筈だ。元のが元老院側が用意してる物なら、それに逆らおうってんなら当然だろ。そして僕のそんな問いかけにミセス・アンダーソンは頷きます。


「勿論、用意はしてるわ。でもここから間に合うかどうか……それにあのモンスターの数……あれは」
「良いからさっさと案内しろよ。失敗する可能性なんて考えても仕方ないだろ。今は生き残る事だけを考えて行動するんだよ!!」


 僕は弱気な事を言うミセス・アンダーソンに渇を入れるよ。ようやくなんだ……それはこの人だって同じだろう。ようやく取り戻した小さな存在。
 こいつを守れなきゃ、ここまで来た意味自体が無い。まあクリエは無事に移されるらしいけど、僕達が手を繋いで置かないと、それこそ無意味。
 元老院なんかの手にはやれない。ミセス・アンダーソンは僕の言葉に決意して「そうですね」とそう返す。僕はクリエを卸して、セラ・シルフィングを構える。


「貴方は……」


 するとその時、そんな声を黒い宗道服に身を包んだモブリが聞いてきた。そう言えば自己紹介してなかったな。そんな雰囲気でも無かったし、しょうがないと言えばしょうがないけど、この人がシスターって人なんだろう。
 なら挨拶位しておくべきだよな。
「スオウです。安心してください。絶対にクリエは守って見せますよ」
「大丈夫だよシスター! スオウは普段はあんまりパッとしないけど、戦闘になるとスゴいんだから!」


 悪かったな普段はあんまりパッとしなくて。クリエのそんな失礼な言葉に、シスターと呼ばれるそのモブリは「はあ」と言いつつも礼儀正しく頭を下げてくれた。
 とてもこのクリエを育てて来た人には見えないな。クリエに一体何を教えて来たんだろうって感じ。礼儀の一つでも叩き込めば良かったのに。


「挨拶はそこまで! そろそろ行くわよ!」


 そんなことをやってる間に、ミセス・アンダーソンは自身の十字架を五本位展開してる。やる気満々だな。まあそっちの方が助かるけど。


「勘違いしないで。これは二人と私を守る為の物よ。だってそうでしょう? 外は自然の驚異とモンスターの驚異が合わさった地獄よ。
 そこに何の保護も無く二人が飛び出せる訳がないでしょう? だから私の十字架で守護領域を作ります。アンタは一人、外で道を造る役目を全うしなさい!」
 ナンダッテエエエエ!! と叫びたかったけど、ミセス・アンダーソンの言うことはごもっともだったからそれは止めた。
 確かにあれだけの数だ。万が一の為にもこのオバサンには二人の護衛に回って貰った方がいいのかも。一人であの数を相手にするのは正直超しんどいけど……やるしか無いよな。


「出来るわよね?」


 ミセス・アンダーソンが強い眼差しで僕を見つめる。そもそもここで出来ないなんて言えないだろ。僕はセラ・シルフィングを信じてこう言うよ。


「やってやろうじゃねーか!!」
「良い返事ね。だけどモンスターに構い過ぎないでよ。私達は貴方が開けた道から突破するからちゃんと付いて来ること、良いわね!」
「分かってるよ。クリエ達の事頼んだぞ」
「任せなさい。アンタには破られたけど、そうそうこの十字架の守護は破れないのよ!」


 僕達はそれぞれを信じて行動するしかない。崩壊しだした箱庭でも、それが出来るから僕達には希望って物があるんだ。
 外は嵐に成りつつある。飛び出すだけでも一つの勇気が居る状態。だけど行かないと。僕が行って、道を造らないと、ここから移動する事も出来ない。
 覚悟を決めて……イクシードの段階を一つ上げる。


「イクシーード2!! いっくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 空いた穴から一気に飛び出す。そして振り回す風の渦が、次々と爆発の波を作り続ける。雨に風に雷に、全てが煩わしい程に強力で、僕達の邪魔をしようとしてるとしか思えないレベル。
 だけどそんな泣き言は言ってられない。だってようやく、目的のものに手が届いたんだから……だからここで終わらせない為に、まだまだ戦わないといけないんだ。

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