命改変プログラム

ファーストなサイコロ

無邪気な天使



 吹き荒れる衝撃の嵐。激しい熱量……そして足下から崩れ去る踏みしめてた筈の場所。この大爆発と共に、飛空挺はきっと限界を迎えた。


「くっ……」


 投げ出された真っ黒な夜空。みんなは無事なのか確認したいけど、そんな余裕すらない。頭上には炎に包まれた飛空挺が今まさに崩れ掛かってた。
 外壁はどんどん剥がれて、このままじゃ僕達を再び巻き込んで地面に激突しそうな勢いだ。流石に不味い……けど体がなんだかまともに動かないんだよな。
 きっとさっきの爆発のダメージのせいだろう。一番リアルに近い形でLROに居る僕がこいつを背負うべきじゃ無かったかも……そう後悔してしまう。
 せめて鍛冶屋とかに持たせてたら、まだ対応のしようもあっただろうに……


「ふわぁ~~、空です空! 真っ暗な空に真っ赤な船。凄い!!」


 胸の所でそうやってハシャいでるモブリは気楽なもんだ。こっちはどうやって地面に無事足を着けるか必死だってのに……とにかく継続してるイクシードを使うしかない。
 いつもの様に風のうねりを先に地面に当てて勢いを削ぐやり方で行こう。みんなの無事を信じて、今は自分が無事に生きれる行動を取らないと……


「おい、危ないからちょっと静かにしてろよ」
「は~い」


 まずはこの飛空挺から距離を取った方がいい。着地したその上に落ちてきて貰っても困るしな。僕は風のウネリをボロボロの船体にぶつけて、そこを軸にバネの様にして距離を取る。
 ちょっと落ちる勢いが増したけど仕方ない。後は気合いの問題だ。


「舌噛むなよ!!」


 僕はそう言って森の木々へと突っ込んだ。バサバサバサと葉っぱと小擦れ合う音がして、小枝やらなんかもバキバキと音を立てて落ちていく。
 かなり細かく痛いけど、後少し……そして木々を抜けて地面が直ぐそこまで迫ったときにセラ・シルフィングを地面に向けた。
 地面を抉りながら拡散する風のウネリ。それはある意味、腕自体がどうにか成りそうな位の勢いだった。だけどここで力を緩める訳には行かない。
 だけど全身に負った爆発のダメージに一瞬気が取られる。その時、真っ直ぐに降りおろしてた風のウネリに僅かなズレが……グワングワンと揺れて僕達はまともに地面に着くどころか、今度は風のウネリに振り回されて飛ばされた。


「うわああああああああああああああ!!」
「きゃははははっははははは!!」


 ケラケラ笑ってるモブリの体を必死に庇って地面を転がる。二・三回位背中に衝撃が走ると、ようやく勢いが収まってくれた。


「し……死ぬかと思った」
「あ~凄かったね。遊園地のゴーって行く奴よりも凄かった!!」


 腕の中でまだきゃははとしてるこいつは、何気に凄いなと思う。まあただ事態の深刻さに気付いてないだけの様な気もす――その時地面に伝わる振動と衝撃が、大きな音と共にやってきた。


「きゃうわ~、クリエビックリ!」
「飛空挺も落ちたみたいだな……」


 今のはその余波みたいな物だろう。明らかに飛空挺が落ちたと思われる場所は赤く成ってる。激しい炎が立ち上ってるんだろう。


「うん?」


 その時ガササと小動物達が一斉に遠ざかる様に逃げて行くのが見えた。何事か? じゃないか……飛空挺が落ちたんだからそれは大惨事。小動物が逃げるのも頷ける。だけどその中には明らかにモンスターもいて……しかも暗い森の先がなんだか赤く成ってるような。


「なんだか焦げ臭い」
「確かに……それにこの光景……なんだか山火事でも起こってそうな――って山火事だよこれ!!」


 僕はモブリを担いで走り出す。ああもう、次から次へと何なんだ一体!! ちょっとは休ませてほしい。テッケンさんやシルクちゃん、それに鍛冶屋の事だって気になるし……まあ僕が生きてて彼らが死んでるなんて事はないだろうけどさ。


「うっわ、マジ無理……体力限界……」
「ええええ!? ダメだよそんなの、ダメダメ! こんがり燃やされるのはイヤーー!」


 そうは言ってもな……こっちはHPかなり奪われてるし、走りまくって足は棒の様だしで一杯一杯何だよ。今だってかなり無理してる。
 全身ズキズキするしさ……くっそなんて不幸なんだ。とある主人公のとある台詞をまさに今叫びたい気分だよ。まあだけどそんな事を考えてると、叫ぶ前に僕は足を踏み外した。


 森だからね。しかも暗いし……明るいのは迫りくる後方だけなのだ。だから前の方は暗い闇。どこをどう走ってるかもわからないから、いきなり地面が下り坂に成ってる事に気付かなかった。


「うわっうわっわっわわあああああああ!!」


 坂道を転がり落ちる僕。木に激突して止まると、視界が反転してた。ようは頭が地面に付いて、足が空を向いていた。


「ふ……不幸だ」


 ああ、思わず言っちゃったじゃないか。まあでもしょうがないよな。飛空挺の爆発に巻き込まれて、空に投げ出されて、死にものぐるいで地面に着いたと思ったら、今度は山火事に追われる羽目に成って終いには転がっちゃ、誰だってそう言うよ。
 まあ、でも……おかげで炎からは逃げれた様だった。一段階下に成ってるからな? まあ炎の事はよくわからないし、火事に巻き込まれないのなら何でもいいや。
 けどだからって完全に大丈夫って思える訳もない。とにかく今はこの森から出た方が良いだろう。


「よし、取りあえず火が回ってなさそうなこっちへ行くぞ」
「おおーー!!」


 モブリのその子は、こんな状況でも元気一杯だった。ある意味この明るさには助けられるよ。僕達は炎を避けて森からの脱出を目指す。




 で、三十分後……僕達は山の高見に来ていた。目の前に広がる光景は広大な大地と星空を写す大きな湖が見えている。
 煙たかった空気もここではもう澄んでいて、息を吸う度に山の匂いが肺に満たされる。


「ふう……って、どこだよここは!! 森から出ようとしてた筈なのに、もっと高い所にきてんじゃん!?」


 やっぱりあの暗闇の中、光も無いのに歩き回ったのがいけなかったな。くっそLROも誰もが光を出せる魔法を使えると思わないでほしい。
 せめて足下が見える位の光は確保しとけよな。


「ただ単に月明かりに誘われて来たらこう成るよ。だってお月様はお空のもっと高い所にあるんだもん。まだまだ全然届かないよ」


 んしょんしょと頑張って月を掴もうと腕を伸ばしてる小さなモブリ。子供に言われるのも何だけど、あそこで道しるべに成りそうなのだったのは、時折差し込んでた月明かりだけだったんだよ。


「月になんて手が届くわけ無いだろ。あれはもっともっとず~~と高い空の終わりのその先にあるんだよ」


 僕の意地悪な言葉に、だけどモブリの子供は手を伸ばすのを止めずにこう言った。


「でもでも、私はあそこから落ちてきたんだよ。だからきっと帰れるもん!」
「なんだそれ? お前はカグヤ姫か?」


 月から落ちてきたって言ったら、僕達日本人の頭にはそれがよぎるよな。これで生まれは竹からなら完璧だけど……僕の言葉にモブリのその子は首を傾げて、こう言った。


「カグヤ姫? 違うもん! 私そんな名前じゃないもん!
 私はクリューエルっていうんだよ!!」
「ああ、はいはいクリューエルね……ってクリューエル?」


 なんだか聞き覚えがあるなその名前。なんだっけ? 爆発の衝撃ですっぽ抜けた感じが――――するとその時、耳元の機会がノイズを発してピピピガガガと何やら言っている。
 そういえば、この存在も必死過ぎて忘れてたな。これ使えばみんなと連絡取れるじゃん。反応してるって事は近くに誰か居るんだろうし……でも調子悪いな。


 もしかして壊れたとか? そんな事に成ったら、セラに弁償させられるじゃないか。僕は指で何回かトントンと機械を叩いて調子を確かめる。
 するとノイズの中に微かな声が入ってきてた。


『ガガガ……オウ君……無事……ガガガ……僕達……ガガガ……メイズの……ガガガ……集合……で』


 ノイズが酷すぎて文章には成ってないけど、誰かは何となくわかった。これは多分テッケンさんだろう。そんな感じがしたもん。
 で、内容でかろうじて聞き取れた部分で一番重要そうなのがメイズって部分だな。その後に集合っても言ってたし、村か何かの名前かも知れない。
 そこに行けば取りあえずみんなと合流出来そうだ。僕はウインドウを開いて地図を確かめる。


「メイズメイズ~っと。お、やっぱりあった」


 地図上で見つけたその村は、どうやらここから見える湖の傍にあるらしい。水辺に沿って町や村が出来るって言うけど、そこら辺はLROも同じみたいだな。
 けどここからじゃかなり遠いな。それにあの暗い森の中を正確に進めるとも思えないし……どうした物か。この大まかな地図だけじゃ流石に、たどり着けないよな。


「はあ~」


 大きな溜息を付いてウインドウを閉じる。せめて道を照らす位の初歩的な魔法位覚えておくんだったと後悔しつつね。


「どうしたの?」
「別に、ただどうやってあの湖の所まで行こうかなって悩んでるだけだ。てかいつまで手を伸ばしてるんだよ」


 さっきからずっとその態勢だぞクリューエル。腕とか疲れないのかな? すると腕を卸して、ちょこんと僕と同じように地面に腰を下ろした。


「疲れた~。もうちょっとで掴めそうだったのに~」
「嘘付け。そんな短い腕で月になんて届く訳ないだろ」


 月へ手を伸ばすとかアホな事やってないで、もっと現実見つめろよ。僕達今、遭難中だぞ。でも相変わらずクリューエルは月の事へ興味津々だ。
「じゃあどうやったらお月様へいける? 私はね……あそこに行かなきゃいけない気がするの……」
「行かなきゃいけないって……LROってそもそも月にいけるのか?」
「行けるよ。だってあそこにあるもん! それにお話も一杯あるし、お月様にはもう一つの世界があるんだよ」


 もう一つの世界ね……もしもそれが本当ならLRO中に衝撃を走らせる事が出来る。まあでも、子供が元居た場所へ帰りたいってのは普通の事か。
 いや、子供じゃなくても……そう思うはずだろう。僕もその場に腰を下ろして、夜空の半分欠けた月を見上げてこう言った。


「行かなきゃいけないってのは、そこに家族でも居るのか?」
「……わからない。けど……きっと大切な人に伝えたい事があった……気がするの」


 まっすぐに夜空の月を見上げてそう呟くクリューエル。その幼い横顔には、なんとも言えない哀愁が見える様な気がする。
 まあ小さな子の夢を壊すのも何だしな。


「そっか、大切なことか。そらなら伝えに行かなきゃな」
「うんー! ねぇねぇ貴方はお名前なんて言うの? なんで私を助けに来たのー?」


 無邪気な顔を向けてそういうクリューエル。小さい子特有の勢いって奴がこいつにはあるよ。テンションもコロコロ変わるしな。


「僕はスオウって名前だよ。お前はクリューエルな」
「うんー! クリエで良いよ。お友達はみんなそう呼ぶんだぁ」


 ただでさえモブリは愛くるしい容姿をしてるのに、子供ってなるとまた一段と……それはクリエだからなのかな?
 クリッとした目に左右で結んだ青い……と言うか、不思議な色合いを見せてる髪。そして服は多分宗道服みたいな物なんだろう。
 白を貴重にした袖口が広い袴っぽい服だ。子供なのに大胆に肩が露出してるよ。この時期ならいいけど、冬になると寒そうだな。
 そしてその首もとには涙の様な形をした、クリエの髪色と同じ色のネックレスがある。
 僕は楽しそうにクルクルその場で回ってるクリエにちゃんと説明してやる事にした。そうそう、あのオバサンが探してたのってクリエだし。
 思い出した思い出した。


「クリエな。僕の事はまあ、呼び捨てでもなんでもいいぞ」
「う~んとね」


 少し考え込む素振りを見せるクリエ。そしてトテテと僕の前に来るとガバッと抱きついてこう言った。
「お兄ちゃん!! お兄ちゃんがいい!!」
「は?」


 呆気に取られる僕。だけどクリエは気持ちよさ気に顔を擦りつけて来て懇願する。


「クリエねクリエね、家族がほしいの! スオウはクリエの事助けてくれるからお兄ちゃんなの!!」


 ギュム~と力を込めてしがみついてくるクリエ。それを見てるとまあ、別に良いかなとも思えてくるよ。
 どうせそう長くは一緒に居られないだし、一緒にいる期間だけでも……そう思った。


「はいはい、別にそれでいいよ」
「お兄ちゃんに成ってくれるの!?」
「おう、いつでもお兄ちゃんが守ってやるよ」
「やったーー!!」


 弾ける様な笑顔で跳ね回るクリエ。そんなに嬉しい事なのかな? こっちはやっぱり気恥ずかしいだけど。いたいけな女の子にお兄ちゃんと呼ばれる事は、くすぐったいしな。


「さてと、さっさとみんなと合流しなきゃな。迷うかも知れないけど結局森の中を歩かなきゃいけないのか……」
「大丈夫、どうにかなるよー」


 お気楽にそう告げるクリエ。本当にいつでも楽しそうな奴だ。


「まあどうにかしないといけないんだけど。そうしないとお前をミセス・アンダーソンの所に届けられないしな」
「ミセス・アンダーソン?」


 その瞬間ピタリと動きを止めるクリエ。そしてガクガク震えだした。え? 何その反応? 地雷でも踏んだかな?


「お兄ちゃんは私を死刑台に送る気なの?」
「は? いや、元々そういうミッション……じゃ無かったけど、報告はしなきゃだろ。顔見せでもしないと本当に死んだことにされちゃうぞ。
 一応心配はちゃんとしてたしさあのオバサン。僕達があそこに来れたのはそのオバサンのおかげだ」
「そうなんだ……でもお兄ちゃんは勘違いしてるよ」
「勘違い?」


 するとクリエは今までに見せたこと無い、大人っぽい顔してこう言った。


「そう勘違い。あの人……ううんあの人達が心配してるのは私じゃなくて私の存在なの。大切なのは信仰心。それが傾く事が恐ろしい」
「……それじゃあ、クリエにはシスカ信仰を傾ける何かがあるのか?」


 妙な雰囲気だった。自分の足下サイズのクリエに場の雰囲気が飲まれてる様な……そんな感じ。初めてただの子供じゃないと思った。
 それになんだか似た感じを、つい最近感じた様な気もしないでもない。僕の質問にどう答えるのか……それに注目していたら、クリエはニコッとハニカんだ笑顔で笑う。


「わかんない!!」
「はい?」
「だからわからないの。私も自分に何があるのか知らないもん。アンダーソンもシスターも誰も教えてくれないし……でもきっと何かあるよ!
 お兄ちゃんもクリエの秘密を一緒に見つけよう!!」


 秘密の対象者と共にその秘密を見つけるって……なかなか無いシチュエーションだな。でもわからないか……考えてみればそれは納得かも知れない。
 クリエはまだ子供だ。きっとそれが絶対的な傷害なんだろう。それか別に知る必要ないのかも……でも確実に何かあることは確かだよな。
 この愛くるしいクリエの中には大人達が必死こく何かが……って


「お前さっき存在がどうとか言ってなかったか? それは何だよ」
「ええ~とね。雰囲気?」


 キャハ☆ みたいに言いやがるクリエ。雰囲気であんな意味深な台詞を吐くなよな。気になってしょうがないだろ。


「雰囲気ってお前な……まあとにかく、あの村目指すぞ。ミセス・アンダーソンの所に届けるかどうかは、そこで相談して決めるからな」
「ううう~クリエあのオバサン苦手なんだよね。勉強押しつけてくるし、いつも宗教事熱く語るし……いい加減耳にタコができちゃうよ」


 はは……そんな風に思われてるのか。向こうはかなり真剣に心配してた様だったけど……なんだかな~って感じだよ。


「あのオバサンもクリエが大切だからだろ。可愛がって貰ってるんじゃね? まあ僕は何にも知らないけどさ。箱庭って所に閉じこめられてたんだろ?」
「うん……だけど閉じこめられてたって感じはしないかも。だってかなり広かったし。でも退屈ではあったよ。けどね、退屈と嫌なら退屈がまだいいの。
 あのオバサン、遠出する度に古めかしい本ばっかり私に買ってくるんだから。しかも超分厚いの!! しかもまずはそれを自分で読み聞かせるんだよ!
 地獄だよ、あれは~~」


 確かに……遊びたい盛りの子にそれはどうかと僕も思うよミセス・アンダーソン。いや、クリエの話からも相当な愛情が伝わってくるけど、得てしてそれは本人に上手く伝わってない。
 メッチャから回ってる。アプローチの仕方が間違ってるよな。


「はは。そいえば何だっけ元老院とか言うジジイとかはどうなんだ? そいつ等の事も知ってるんだろ?」


 僕はなんとなく、イベントで出てた名前を言ってみる。


「げんろういん? それってあれかな? 時々オモチャを送ってくる人達かな? よくわかんない。だってクリエの居た所には殆ど誰もこないもん。いつも一緒に居たのはシスターだけ」
「ふ~ん、お前も大変なんだな」


 なんだかあっさりした感じで答えてしまった。だけどクリエは別段気にする事も無く、こう言った。


「そう、クリエは色々と大変な子供なんだよ~」


 それはもう色々と疲れきった奴の吐く台詞だろ。でもあんまり見せないだけで、クリエにも相当な物が貯まってるんだろうな。
 だからこそ、箱庭から逃げ出したんだ。




 僕達は再び真っ暗な森の中を進み出した。暗くても暗黒大陸を経験した僕には、この位怖くもなんともないんだけど、何故かクリエがズンズン進むのが謎だ。
 だって普通子供は怖がる物だろ。子供が怖がる最たる物が暗闇だろ。でもクリエは小さな体の癖にどんどん進む。そんなにズンズン歩かれたら、見失いそうで大変だ。
 ただでさえ暗くて、クリエは小さいのに、マジで勝手に動き回るのは止めてほしい。


「おい、適当に進んだら危ないぞ」


 暗黒大陸じゃ無いにしろ、ここだってモンスターは居るし、さっきから鳥の鳴き声とかもやっぱり聞こえて不気味だぞ。
 透き通る様な空気感に、不気味ってよりは変に神聖というかそんな感じなんだけど、僕達にとっては魔の領域も神の聖域もんな変わりはしないと思うんだよね。
 どっちだって得体知れないしな。でもクリエは僕の方に振り返ってチッチッチなる事をする。


「大丈夫だよお兄ちゃん。クリエにお任せあれ!」
「不安でならねーよ」


 これで不安じゃない奴はいないだろう。だってクリエだもん。ちっさいもん。どうみてもバカっぽいもん。


「失礼しちゃうな~。ちゃんとお友達に聞いてるから大丈夫だよ!」
「お友達? 何お前ってどこかの電波を受信してるの?」


 確かにそんな感じはするけどさ。そのカミングアウトはちょっと……


「違うよ! お兄ちゃんって時々意地悪だよね。私のお友達はそこら中に居るんだから!」
「そこら中?」


 周りを見回すとザワザワと揺らめく草木がある。何だろう……こっちを見てる……わけないよな。


「そういえば親しい友達がクリエって呼ぶって言ってたよな? それなのに傍に居るのはシスターって人だけっても言ったよな?
 じゃあお前の友達って誰だ?」 


 暗き夜の帳の中、僕の言葉が闇へ溶ける。妖しく笑うクリエ(の様にみえるだけ)が両手を広げて周りを示す。


「私の友達はみんなだよ。ここに存在してるみんなが友達!!」


 その瞬間、森がざわめく様に唸った気がした。なんだか森が答えた様な……そんな感じ。もしかしてクリエには、やっぱり僕達とは違う物がその目に映ってるのかも知れない。


 そして僕達は、そのお友達の案内で無事に村に着くことが出来ました。


「マジかよ……」
「マジだよ~」
 

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