命改変プログラム

ファーストなサイコロ

揺れる花

「ミセス・アンダーソン!! お待ちくださ~い!」


 飛空挺昇降口にて、息を切らして走ってくるモブリが一人。


「何かしら、騒々しいわね」
「こ、これを! 先ほど本国から連絡が入りまして」


 彼は護衛に囲まれてる女性のモブリに、手に持った書類を渡す。それを受け取った女性は、次の瞬間驚愕の顔とともに打ち震える。


「なっ……まさか……これは事実ですか?」
「間違いなく本国からの連絡です。間違いは無いかと」
「そう……それなら早く戻る必要がありそうね。ありがとう報せてくれて」
「いえそんな……」


 そこで出航を告げるベルが鳴り響く。女性は護衛と共に飛空挺へ上がり、書類を持ってきてた彼は頭を下げてその姿を見送った。




「何だったんだ今の?」


 僕は頭を抱えて今の光景に疑問を投げかける。すると周りで同じようなシーンを見たんであろうテッケンさん達がこう言った。


「今のは強制イベントだね。どうやら、僕達の選択は間違いじゃ無かったみたいだ」
「そうですね。少なくとも、私達の周りでは既に何かが始まってる……そのようです」


 何か……か。それが僕の求める物であってくれたら幸いだ。でもこのタイミングで発生したイベントなら、そうと思えるけどね。
 僕がこのアイテムを持ってるからか、それともテトラと接触したからか……取りあえずどれかによって、何かが始まってるんだろう。


「ここで考察してても仕方ありません。さっさと乗り込みましょう」


 そう言ったのはセラ。こいつなんだか既に飽きてないか? それにシルクちゃんには相変わらず敬語だな。ドライなセラはさっさと掛けられた桟橋を渡って飛空挺へ乗り込もうとしてる。
 でもその時、僕達にもさっきのイベントとデジャブみたいな光景が起きた。


「お~~い! 待って……待ってくださいっす!!」


 遠くからこちらに向かってくる一人の影。誰だろう? なんて誰もきっと思わなかった。だってその喋り方に特徴があるんだもん。
 あれはきっとノウイだ。緑の髪に、目が点な色々と残念なエルフだ。でも、どうしてアイツが僕達を追ってくるだろう?


 まさか既に良い情報を掴んだとか? いやいや、幾ら何でも早すぎだろ。ノウイも素通りでゲートを潜ると、ゼイゼイ息を切らして立ち止まる。


「よ、よかったっす……なんとか追いつけて……」
「何やってるのよ? 確かアンタも情報収集が役目でしょう?」


 桟橋から厳しい視線を投げかけるセラ。まあ上司みたいな物だからな。部下の行動を確認したいんだろう。するとノウイは息を必死に整えてこう言った。


「じ、自分も一緒に行きます! 行かせてくださいっす!」
「ダメ。そんな台詞は、まともに戦える様になってから言いなさい。仕事しないさいよ仕事。情報収集だって大切なのよ」


 彼の熱意を一蹴するセラ。だけどノウイだって半端な気持ちで僕達を追いかけて来た訳じゃない様だ。


「だ、大丈夫です。それなら侍従隊の人達ががんばってくれるそうですから。それに頼まれたんです。セラ様の事を頼むって!!
 アルテミナスの代表として旅に同行するセラ様を支えるのが、今の自分の仕事っす!!」


 キッと、何故そこで僕を睨むんだ? 意味が分からない。侍従隊の人達もそうだったけどさ……なんか勘違いしてるよな? 
 お前等ちゃんと僕達を見てるのかって言いたい。僕めっちゃセラに嫌われてるんですけど……


「あの子達は全く……こんな移動と隠密行動しか出来ない奴を寄越してどうしろって言うのよ……」
「が、頑張りまっす!!」


 結構酷い事を言われてたのに、全然気にする様子がないノウイ。攻撃はさっぱりな癖して打たれ強いじゃないか。


「どうするのよスオウ。アンタが決めて良いわよ。この旅の中心はアンタなんだからね」
「は? 投げやりだなお前……」


 なんで僕が決めなきゃ行けないんだ。確かに中心はそうかもしれないけどさ……僕はある意味、付いて行ってるだけだぞ。


「お願いしまっすスオウ君!! どうか自分を同行させてください!! 戦闘では役に立てるかわからないっすけど、他の事では頑張るっす! それをここで誓うっすよ!
 騎士の誓いは絶対っす!!」


 相変わらず「すっす」うるさいなノウイは。まあでも彼のレアスキル「ミラージュコロイド」は魅力的な力ではある。
 実はあれが戦闘に行かせるんなら、ノウイはかなり強いんだけどね。でも弊害があるみたいで、それは出来ないみたいなんだよな。


 けど、それを差し引いても役に立つスキルではあるんだよな。でもこのままじゃノウイだけ余る事になる。パーティーは五人一組だからね。
 でも、ノウイなら簡単に逃げる事も出来そうだな。それに元々先行調査みたいな感じが主な役割だったし、それなら一人の方がやりやすいのかも。
 それになんだかここで拒否したら、呪われそうな雰囲気が伝わってるんだよね。執念というか何というか……怖い物を感じるよ。


「ええ~と、まあ人数は居た方が僕も心強いよ」
「ありがとうっす!!」


 思わず抱きしめて来るノウイ。うっわメッチャ気持ち悪いよ。すると耳元でポツリと何かが聞こえた。


「侍従隊の皆さんから伝言っす。セラ様に何か粗相をしたら『殺す』だそうです。自分は逐一報告しないといけないんでそこん所よろしくっす」
「…………」


 しまったぁ! あの冥土へ誘うメイド部隊からの脅迫なんて怖すぎる。それにその怖さは既に身を持って体験してるし……これは下手な事は出来ないな。
 なるべくセラには近づかない様にしておこう。アイツだってそれが良いはずだし。お互いの為にもって奴だ。


「よろしくノウイ君」
「よろしくお願いします」
「はいっす! お二人ともまた一緒に冒険出来て嬉しいっす!」


 晴れやかに鉄拳さんとシルクちゃんの手を取るノウイ。だけど鍛冶屋だけは我関せずって感じだ。ノウイが挨拶してもこんな感じで突っ張ってた。


「よろしくっす鍛冶屋さんも」
「ふん、武器に愛されもせぬ物に興味はないな」


 だそうだ。鍛冶屋の一番の興味は武器であって人じゃない。武器を扱えもしないノウイは眼中に入らないらしい。「はは、まあさっさと乗ろうよ。僕は初めてだから早く乗りたいんだ」
 それなりにチケットも高かったしな。これで乗り過ごす訳には行かない。僕達はセラの待つ桟橋を渡り、ようやく飛空挺へと乗り込んだ。




 流れる様に水を切り動き出す飛空挺。両サイドにからは何やら青い光が漏れてるけど、多分それが動力の源か何かなんだろう。
 そして遂に自ら浮き上がり、大空へと繰り出す。夜天の空に水しぶきをまき散らして飛空挺が空を駆けだした。




 そんなムービーが僕の頭に流れて、どこからか音楽が流れ出して来たと思ったら、飛空挺の室内に居た。木造だけど、装飾品とか内装は結構豪華にしてある。部屋から出ると、旅に必要な物を売ってる店もあった。
 構造はさっき僕達が居た大部屋が一階で、二階にはVIPの為の部屋がいくつかあるみたいだ。そして三階はテラスというか、船の甲板だな。
 案外単純な構造だ。まあ長旅って訳でもなく、三国間を結ぶだけの物ならこんな物かもしれない。


「ちょっと、あんまり一人でウロウロしないでくれる?」


 ハシャいでた僕にそんな釘を刺すのは、誰でもないセラだ。するとその後ろからテッケンさん達も姿を現した。


「まぁまぁ、誰でも初めて乗ったら興奮するよ。それにここならそんな危険はそうそう起きないさ。何てたって空の上だからね」
「そうでしょうか? 私的には、そのそうそうを起こすのがスオウだと思ってますけど」


 ひでぇ言われ様だな。僕だってそうそうに何て巻き込まれたくないっての。勝手にそんな希な事がやってくるだけだ。


「だけど、少しの間くらいは。セラちゃんだって初めて乗った時は嬉しく無かったですか?」
「まあ、それはそうですけど」


 相変わらずシルクちゃんには弱いセラだ。そこで更に畳むようにシルクちゃんは両手を合わせてこう言った。


「それじゃあみんなで外に出ましょう。外の方が気持ち良いですから」


 僕達はシルクちゃんに促されて甲板へ続く階段を上がる。そして大きな扉を開くと、強い風が吹き込んできて、一瞬たじろいだ。
 だけど次の瞬間目を開くと、そこには星空がとても近くに広がってた。 これが昼間なら青空がここにあるんだろうな。


 甲板を走って端の方へ乗り出してみる。下には既に遠い町の灯りが僅かに見える。やっぱりリアルとは違うな。明かりは点在してるだけで、地上をくまなく照らしたりはしないもん。
 夜の風に当たりながら僕は今、空からこのLROという世界を見てる。


「そういえばさ、何でテッケンさん達はチケットいらない訳?」


 僕は同じように空を眺めてるテッケンさんにそんな事を聞く。まあだって気になるじゃん。高価なチケットもいらずに乗れるなんて良すぎだよ。


「それは僕達が冒険者として国から認められた証を持ってるからだよ。ある程度のミッションをこなしたら、それが発行されるんだ。
 まあ一人前って事かな?」


 成るほど。僕がお金を払わなくちゃいけない訳だ。ミッションなんて一回もやってない僕は半人前どころか、国にとっては何の利益ももたらさない、駆け出しなんだな。


「それよりも一回さっきのモブリを探しましょう。多分二階のVIPルームに居ると思うけど、アンタが話せば何か起こるかも知れないわ」
「ああ、確かにそうだな。行ってみよう」


 僕は夜の空を満喫したので、セラのその言葉に乗った。まあ行く気ではあったしね。てかあんなの見せられちゃ行かない訳にはいかない。
 するとそこで、一人あのイベントを知らないノウイが声を出す。


「何か有ったんっすか? もしかして既に手がかりを?」
「ええ、先程飛空挺に乗り込む前に強制イベントが有ったんです。それでそのイベントのNPCもここに居るはずなので、彼女を当たろうと」
「成るほどっす」


 僕達は階段を降り再び二階の通路へ。そして十分な光量で照らされた通路を進み一番奥の部屋の前へ。まあどこも大体同じ様なドアなんだけど、とりあえず一番デカい所に来たわけだ。


「よし」


 僕は気合いを入れてドアノブを回す。流石に豪華なドアだけあって、滑らかに扉は開いた。するとそこには、僕達庶民には縁の無い部屋が広がってた。
 まあ、アルテミナス城も大概だったけどさ……あれは城だからしょうがない所がある。でもこれってどうよ。僕達は大部屋で我慢してるのに、何でベットまでついてるんだよ。
 床には絨毯も敷かれてるし、全ての調度品がなんかキラキラ輝いてる。


「おいおい、世界って理不尽だな」


 思わずそんな言葉が漏れてしまう。知らなければこんな気持ちに成ることも無かっただろうに、同じ乗り物の部屋でこうも違うか。
 まあリアルだってそうだよな。この世に平等なんて、自分が見れる狭い範囲にしか存在しないんだ。


「そう? ならアルテミナス城のアイリ様の私室なんてこの比じゃないけど。それにアルテミナス城その物がアイリ様の物みたいな物じゃない。
 アンタが幾ら働いたって買えやしないわよ。それなのに別に怒ってなかったじゃない」
「アイリはだって、羨ましいけどその立場には成りたくないってか……しょうがないと思う部分が有るんだよ。それに城一つなんて、小市民の僕からしたら、それを手にする事自体が想像できない。
 でも、ここはほら、自分達と比べ易いんだよ。同じ船での部屋の違いだからさ」


 そりゃあ向こうは金を一杯払ってるんだろう。ようは飛行機のファーストやビジネス、エコノミーとかと同じ事。僕達はさ、ファーストクラスなんか知らなかったら、空を飛んで、ただそれだけで普通に感動出来た筈なんだ。


 だけどふと開いた扉の向こうには、すし詰めなんかじゃない、広々とした場所が広がってって、そこにはエコノミーの席がパイプ椅子に見えるほど、豪華な席が一人一人余裕を持って有るんだ。
 すると思うじゃん。


(ああ、なんて惨めな場所で喜んでたんだろうって)


 僕達が小さな飛行機の窓を必死に覗き込んでる時、ワイン片手に同じ空を眺めてた奴らがここに居るんだ。いや、それはもう違う空何だろう……あ~世界ってどこも変わりはしないな。
 僕が世界の理不尽を嘆いていると、セラがどうでも良さそうにこういった。


「いいからさっさと話しかけなさいよ。ゲームなのよゲーム。なんでも真っ直ぐに受け取ってんじゃないわよ」
「はいはい、わかってるよ」


 そりゃあセラはそっち側なんだから、どうでも良いだろうよ。ホームはアルテミナス城って言う一等地だろ。でも確かにセラの言うことも最もだから、そんな事気にしてても仕方ない事だ。
 てかその人――何だっけ? ミセス・アンダーソンさんは直ぐそこに居た。足が弧の様な形状してる椅子に座って、ユラユラ揺れてる。
 どう考えてもRPGってのは失礼極まりないけど、僕達はまだ壷とか壊したり、タンスを漁らないだけ増しだよな。あれってどう考えても犯罪だよね。


 画面を通してだとそんな意識さほどないけど、流石にLROでは罪悪感とか感じるからか、そんな事は出来ない様に成ってる。
 まあ、普通に開けて覗く程度なら、出来るは出来るけど。他人の物を勝手に拝借は無理なんだ。
 僕はどうせ聞こえてないだろうけど、最低限のマナーとして「失礼します」とだけ言って部屋へと踏み行る。すると再び、意識が引っ張られる様な感覚に陥った。


「はぁ~あの方にも困ったものね。もう少し立場って物を考えて貰いたいものだわ。私達がどれほど苦労して、このシスカ信仰の威厳を保ってるのか、わかっていないのだから。
 それと自分の重要せいも……」


 ぶつぶつと何やら呟いてるミセス・アンダーソン。これは再びの強制イベント。起こってる事を雲の上から見るような不思議な感覚がする奴だ。
 ミセス・アンダーソンは顔に皺が出始めてる位の、ちょっと老けたモブリだ。修道女の様な地味でゆったりとした服に身を包んでる。


 そんな彼女の護衛なのか、傍らには騎士……とはちょっと違う様な二人が控えてた。背中に背負ってる武器は杖なのか槍なのか……なんだか両方をくっつけたようなそんな武器で、騎士よりも甲冑部分が少ない青を基調として、大きく宗教のシンボル入りの防具で身をかためてる。
 そしてそんな二人の内の一人がこう言った。


「あの方はまだ幼いですから、そこら辺は致し方ないのでは? 成長とともに自覚も目覚めて来るのではないでしょうか?」
「それじゃあダメなのよ。あの方は特別なの、特別でなくちゃいけないのよ。神秘的な存在が、そう易々と人前に姿を現しちゃ、ありがたみが薄れちゃうでしょ」


 なんだか怪しい話をしてるな。飛空挺が飛び立つ前に入った連絡もきっとこの事何だろう。誰かの事を言ってるみたいだけど……僕にはそれが誰かわからない。
 テッケンさんとかならわかるかも知れない。このイベントが終わったら聞いてみる事にしようじゃないか。


 そして今度はもう一人の護衛の服のどこかから、着信音みたいな音が響いた。すると小さなビー玉みたいな物を取り出す護衛。何かその表面に映し出されてる文字を確認してこう言った。


「本国からの連絡です」
「どうせ泣き言か何かでしょう。繋ぎなさい。元老院どもの情けない顔が拝めるわよ」
「言葉にはお気をつけてくださいアンダーソン様。いらぬ事は言わない方が身のためです」


 するとそんな護衛の言葉に、フンと荒々しく鼻を鳴らすミセス・アンダーソン。なんだかこの人も、僕の中のシスターって言うイメージを壊してくれそうだ。


「何も言う必要がなかったら、私はこの口を糸で縫い合わせたって良いわよ。だけどそれじゃあ、救われないのよ。救われない人々に、信仰という希望を与える為にもね。
 口は閉じる為に有るものじゃないわ。伝える為に有るものよ。
 それに、誰かが言わないと調子づいたバカは止まらない物なのよ。だから私の口は、その前段階の釘差し。言わない訳にはいかないわ」
「……お繋ぎします」


 諦めたのか、それとも彼女の言葉に論破されたのか、護衛はビー玉を指で弾く。するとビー玉が宙で止まるじゃないか。そして光を放ち、複数のウインドウに様々な顔のモブリが映し出された。
 どれもとっても高齢なモブリ達だ。


「アンダーソン、クリューエル様が箱庭から逃げ出した事は聞いておるな」
「ええ、今し方この飛空挺に乗る前にお聞き及びましたわ」
「まあ、なんじゃその……お前の魔法でちと探索してもらえんだろうかの? お前ならそれが出来るであろう」


 するとそんな言葉の後に、別のウインドウの老人が「ほ、本意ではないがな」


「致し方ない」


 とか、言い訳じみた事を言っていた。するとミセス・アンダーソンは毒づいたような笑みを浮かべてこういう。


「あらあら、確かに私ならそれが出来ます。ええ出来ますとも。私としてもクリューエル様が見つかる事は本意ですし、やらない事も有りません」
「おお、なら早速」


 沸き立った老人達、だけど彼女の言葉はそこで終わりじゃなかった。


「ですが……この責任はどう責任取るおつもりか聞かせて貰いたい物ですね。あの方はあなた方が管理してる筈でしょう。
 それなのに箱庭からは逃げ出され、さらには見つけることもまま成らなくて私に泣きついて来るなんて……お笑い草じゃないですか。
 そんな傑作な方々は、一体どうやって責任を取るつもりで? あの方は私達にとって……いえ、シスカ信仰にとって無くては成らないお人だと言うのに」


 嘆かわしい……言葉にはしなかったけど、きっとそんな言葉が続いたよ。ウインドウに写った一同は一斉にミセス・アンダーソンから視線を逸らしてる。
 かなり苦手なんだなこのおばさんが。するとここで、ミセス・アンダーソンは妥協案みたいな物を提示した。


「まあ別に責任と言っても、あなた方が取りたくないのなら無理にとは言いませんよ。ですがそれには口利き料が必要じゃございません事? 大切なクリューエル様を逃がした事への謝罪は信者へとするのが普通でしょう。
 何、あなた方が無闇に豪奢な生活を送るために使ってるお金を僅かばかし、日頃お世話に成ってる信者えのお返しとすれば良いのですよ。
 それならば、我らがシスカ神も貴方達の悪行を許してくれるでしょう」


 おいおい、この人金をがっぽりと搾取する気だよ。まあ有るところから取るのは別に良いけどさ……やっぱり僕のシスターのイメージは崩壊寸前だ。


「くっ……貴様は本当に……」
「それで本当にいいのだな」


 苦虫を噛み潰す様な顔をする老人達。うって変わってミセス・アンダーソンは晴れやかだった。


「本当に? 何でしょう。親切すぎましたかね? そんなご感謝の言葉などもったいない。気持ちよりも見えるもので示してください。
 お振込はいつもの口座でお願いします。勿論額はそれぞれのお気持ち次第で結構ですよ」
「た……頼んだぞ!!」


 みんな討ち震える様な声を出して消えていった。光を失ったビー玉は護衛の手へと戻っていく。きっと護衛は思ってる……この人にはかなわないなとさ。


「さて、ではちゃんとお願いを聞いて上げましょう」


 そう言って彼女は手に持ってた本を閉じ、懐から小さな人形(?)みたいな物を取り出した。そして床に映し出されたノーヴィスの地図に投げる。するとなんと人形は動き出すじゃないか。
 段々と詳細に成っていく地図。だけどあれ? この場所は……

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