命改変プログラム

ファーストなサイコロ

向かう方向



 漂う重苦しい空気……外の喧噪から完全に隔離された様なこの空気が苦しい。


(どうしてこんな事に……)


 そんな事を思わずには入られない。そりゃあ確かに待たせたのは悪いと思うけど、こっちだってあんな事に成るなんてわかるわけないじゃないか。
 ちゃんと戻って来たことをまずは喜んで貰いたいよ。僕はアルテミナス城の一つの部屋でなんだか被告人みたいに座らされてる。
 正面の一段高い場所にはアイリがいて、その前にアギト、傍らにはセラが控えてて、右横にはテッケンさんにシルクちゃんに、なぜだか鍛冶屋まで。鍛冶屋の野郎、あの戦いの時いたっけ? 
 あとはリルレットにエイルもいるな。僕のこの状況にニヤニヤしてるよ。
 そして反対側には、目が点エルフのノウイを含めた、多分幹部か何かだろうのエルフの面々。これからを話し合うって聞いてたけどさ、裁判でも始まりそうな雰囲気なんですけど……




 スズリさんと別れた後、僕達は真っ先にアルテミナス城へ向かった。行き交う人々をかき分けて、出来る限り急いださ。
 到着したアルテミナス城も人一杯だった。慌ただしく中と外を行き交う人人人。するとそこでセラが「ちょっと待ってて」とか僕を待たして中へと入ったんだ。


(なんで待つ必要が?)


 とか思ったよ。だって一緒に入ればいいじゃん。アイリ達は待ってるんなら、そっちの方がいい。だけセラが言うには


「アイリ様はVIPなのよVIP。違う種族の奴がそう易々と会えるとか思わないで。アンタは意識してないようだけど、特別なことなんだからね」


 てな、事らしい。まあ確かにこのLROで一番の勢力のエルフ達の親玉がアイリな訳だからな。そりゃ相当なVIPなんだろうけど……僕的にはアイリはもう友達みたいなもんだからさ、そこら辺気に出来ないよ。
 リアルでも会ってるし……なんだか王女様って気がしないんだよな。それにアギトは結局アギトだしさ。


 アイツも立場戻ったらしいけど、僕的には何が変わる訳でもないんだ。
 ぶつぶつ文句言いながら、周りの慌ただしさを遠めに見てると、ザッザッザと城の方から足並み揃えた行進音が聞こえてきた。
 なんだか更に周りがザワザワしだす。何事かと思って城門を見ると、軍の甲冑に身を包んだ奴らとそれを率いてアギトの野郎が出てくる所だった。


(今から出兵でもするのか? ようやく着いたってのに、どうするんだよ)


 とか思ってたら、黒い鎧に身を包んだ奴らが僕を囲んだ。


「え?」


 そんな声を漏らすと同時に、アギトの奴は険しい顔で僕を睨んでこう言った。


「連行しろ」
「うおっちょ!? アギト、何のつもりだ!?」


 一斉に軍の奴らに羽交い締めにされる僕。何々? 何やった? こんな仕打ち受ける覚えはないぞ。僕の言葉に何も答えず背中を向けるアギト。そして僕は大注目の中、城へと有無を言わさず連行されて行きました。
 そしてこの状況が出来上がった訳です。




「あのさ、どういう事これ?」


 僕はこの空気に耐えきれず、恐る恐る声を出す。すると有無を言わさず、傍らのメイドがこう言った。


「うるさい、黙れ被告人」
「て、ちょっと待て!! 何でお前はそっち側なんだよ!?」


 まあアイリとかアギトが、ここでは偉そうにするのは百歩譲って納得するよ。だけどセラが一番楽しそうにしてるのが気にいらない。
 だっておかしいだろ! 僕と一緒に着いた筈のセラが、なんでアイリ達と同じ立場!? 一緒に小さくなって座ってろ。それに被告人って何だよ。


「私はアイリ様専属メイドなので、ここが指定席なの。それよりも頭が高いわよ、下手人の分際で」
「あんの、極悪メイド……」


 被告人が下手人に格下げされた。まあどっちが下かなんて知らないけどさ、下手人って古くて貧乏そうなイメージがあるから、僕の中では下なんだ。
 言いたい放題なセラは、ホームだからってヒドすぎないか? いつもより楽しそうに僕の事を罵倒してるように見える。


「セラ、そこら辺にしといてください。別に彼は被告人でも下手人でもないんですから」
「まあ、アイリ様がそう言うのであれば、私は下がります」


 アイリの言葉で、そそくさと自分の立ち位置に両手を組んで佇むセラ。


(そのまま石に成ってくれないかな)


 僕はそんな事を願う。だって口を開けば罵倒されるからな。だけど妙に変な所で勘の鋭いセラは、そう願った瞬間に僕を睨む。


(今失礼な事を考えたわね)


 そんな声が、その視線から聞こえる気がする。まあ、セラが大人しく成ってくれたからビビる事もないさ。僕はアイリへと視線を向けて言葉を紡ぐ。


「あのさ、僕は被告人とかじゃない……なら、どうして連行されたの?」
「それはまあ、色々ですよ。今アルテミナスは慌ただしいですからね。それを狙ってる他の国も無いとは言えません。
 城くらいは厳重に警備してる所を見せないと」


 それに僕が使われた訳か? うん? いや、それって……


「もしかしてその狙ってるってのは人……人間なんですか? だから人の僕だけをって事?」
「明言はしません。だけどまあそんな所です。それよりもこれからのお話をしましょう。それと暗黒大陸でスオウ君が出会ったと言う人の事も、詳しく聞きたいですね」
「まあそれは良いんだけど……」


 僕は周りを、特にエルフの面々が入る方へ目を向ける。するとアイリは何かを察したのか、僕を安心させる様にこう言った。


「ああ、大丈夫ですよ彼らは。ちゃんと信頼に値する人たちです。ここまでされた以上、私達も指をくわえてる訳にも行きませんから、アンフィリティクエスト――それにアルテミナスは全面的に協力しましょうって意志の現れです。
 彼らの事は私が保証しますから、どうかお願いします」


 アイリは立ち上がり、僕へ向かって頭を下げる。すると周りのエルフの人たち全員が立ち上がり、アイリに続いた。おお、流石の統率力。
 まあ別に、アイリの言葉を信じない訳はないけどさ。それに流石に、これまで通りのやり方じゃ、シクラ達に追いつけないかも知れないってのはある。
 世界最大級の国の力は願ってもない事だよな。情報だって、個人とは比べものに成らないだろうし。するとエルフ側とは反対側のテッケンさんが彼らをフォローするような事を言う。


「このクエストはもう、君達個人の問題じゃ無くなってしまったよ。僕達は勿論協力を惜しまないけど、流石に限界が来た感じはしてしまう。
 折角ここまで真摯に頭を下げてくれてるんだから、信用できるよ。いや、僕達は信じる事から始めなければね」
「テッケンさん」


 相変わらず格好良いなこの人は。きっとモブリの中で一番格好良いと思うよ。小さくても格好良さには関係ないと、この人を見てると思うよ。
 リアルでもきっと格好良いんだろうな。勝手な妄想だけど。


「スオウ、大丈夫だって言ってるだろ。アイリの事が信じれないのか? あん?」
「ああもう、暑苦しいんだよお前は。別にアイリを信じてない訳じゃないっての……」


 たく、チンピラかよアギトの野郎。アイリとやっとで一緒に入れるからってハシャいでるんじゃないか? 別に話さすのはやぶさかじゃないけどさ、どこまでこの人たちは知ってるんだって事だ。
 ガイエンの事とか話してるのかな? まあ、そこら辺は別に僕が言う事じゃないか。僕はチラリとシルクちゃんへ視線を移す。するとビクッとしてモジモジして……うん、何とも癒される可愛い子だ。


 いつまでも見てられそうです。でも、僕の視線に、何かを求められると思ったらしいシルクちゃんは、一生懸命意見をくれる。


「えっと、私はスオウ君が決めれば良いと思います。私達は手伝う事しか出来ませんから。でも……手を差し出してくれる人たちがいるってのは幸せな事だよ」


 癒される微笑みをくれるシルクちゃん。ゆったりした服に白い髪が微かに揺れて、僅かに染まる頬と共に作り出されるその笑顔はまさに天使だ。
 スゲーよ、LROの完成度スゲー! シルクちゃんがそう言ってくれるなら問題ないな。


「わかりました」


 僕はそう言って立ち上がる。そしていつまでも頭を下げてくれてるエルフの人達の方へ向いた。こんなにいつまでも頭を下げてくれてるんだ。こっちも礼を尽くすべきだよな。


「確かに、もう僕達だけの力じゃどうにも出来ないのかも知れない。だからどうかみなさんの力を貸してください」


 すると一番初めてにアイリが頭を上げて透き通る声でこう言った。


「はい、勿論。私達はそのつもりです」


 はは……なんだか最初に会ったときとは随分印象が違う感じに成ったな。初めて見たときは、俯いて歩くただのか弱い女の子だったのに、今はもう弱々しいなんて部分は見えない。
 ドレスにまで負けてた雰囲気は、今はそのドレスを引き立てる程だよ。自信に満ちてるし、凛としたその雰囲気はまさに王女様って感じだ。
 まあどこか優しい雰囲気もあるのも良いんだろうな。エルフの人達に愛されるのがわかるよ。




 僕達はアイリの着席にあわせて再び席に着いた。てか、この状況はどうにかしてほしいんだけど……なんか視線が集まるから落ち着かないよ。
 でも僕が喋らないと始まらないんだよな。なんかみんなそれを待ってるし。


「ええ~と、どっちから行けばいいわけ? これからの事? それとも暗黒大陸?」
「暗黒大陸での事からお願いします。それはきっと、これらからの事に重要ですから。まずはその情報がほしいです。
 スオウ君は会ったんですよね? テトラ神と」


 するとそのアイリの言葉で周りの人達が少しざわめいた。それはテッケンさん達も同じ様だ。やっぱりアイツはLROでかなり重要な奴の様だ。
 僕はシナリオ部分を殆どやってないから知らないけどさ。


「ええ、まあ。本当に本人かは知らないけど、アイツはそう名乗ったよ」
「ほ、本当にテトラって言ったんだね?」
「そう……聞こえましたけど」


 テッケンさんまでその小さな体で、前のめりに成るようにして問いつめてくる。う~んやっぱり相当な事なのかな?


「まあ、アイツが二人の神の内の一人ってのは聞きましたけど……たった一度会ったくらいの事が、そんなに重大なんですか?」


 僕は何気にそう言ったけど、その質問はちゃんとLROをゲームとしてプレイしてる人達にとっては痛恨の極みみたいな……そんな感じだったらしい。


「じゅじゅじゅ重要だよ! テトラ神の姿はまだ誰も知らなかった訳だからね。銅像だって無いし、OPには映像だって映らない。
 もしかしたらラスボスなんじゃないかって言われてるくらいだよ」
「へぇ~そうなんだ。流石テッケンさん」


 ラスボスね。LROの壮大な冒険のラスボスなら、確かにスゴい事だな。まあでも、ラスボスね。最初襲われただけの印象なら、それもあり得そうなんだけど、その後の事まで入れたら、なかなかそうは思えないような気もする。
 アイツ真剣そうだったし。


「テトラ神との邂逅は、確か今攻略組が躍起になって狙ってる事だと聞きました。それを誰よりも早く成し遂げたんですからスゴい事ですよ」
「成し遂げたって言ってもな……」


 そんな気、自分には全然無かったわけだからどう思えば良いのやら。それに横から割り込んで来た状況で、変な契約もさせられたし、僕にとっては迷惑極まり無かったけど。


「それで、テトラ神とは何を話したんですか?」
「ええ~と」


 僕はあの時の出来事を包み隠さず話す。途中色々と質問来たけどそれは切り捨てて、まずは自分が体験したことを話しきったよ。
 巨人が残したアイテム。それを狙って現れたテトラ。でも途中で目的を変えた事。そして交わした契約――そこまで話した瞬間、アギトが勢い良く立ち上がった。


「お前また!! なんでいつだって真っ先に命を懸けるんだ!?」
「知るかよそんなの……そう言う流れだったんだ。仕方ないだろ」
「仕方ないってお前……日鞠の事もちょっとは考えろ!」
「何で今ここでアイツの名前が出てくるんだよ? 関係ないとは言わないけど、死ななきゃいいだけだ」


 そうすればアイツの元へいつだって戻っていける。だけどアギトの奴は、本当に真剣に僕を見つめてこう言った。


「死なせはしねーよ俺たちが。でもなスオウ。そうじゃなくてもアイツはいつだってお前の心配してるんだ。
 あんまり気苦労増やすなよ。いつだって……いつまでだって一緒にいられるなんて限らないだろ」
「そんなの……」


 お前に言われる間でもない――とか言いたかった筈だけど言葉には成らなかった。てか、自分の教訓をアギトの奴は語ってるじゃん。
 まあそれほどに身に染みたって事なんだろうけど……一緒にいられないね。上手く想像出来ないな……日鞠がいない日常なんて。
 アイツ強烈だから、忘れようとしたってきっと忘れられないんだろう。まあでも、あの時だって考え無かった訳じゃない。寧ろ、これは日鞠との約束でもある。


「でもさアギト、僕はセツリをここから連れ出さなきゃいけない。それは日鞠との約束でもあるんだよ。約束破ると怖いじゃんアイツ。
 だからこそ多少無茶はやらないとな」
「多少って……お前の賭けてるのは命だろ。多少じゃないだろそれは。もっと考えて行動しろって言ってんだ」


 呆れる様に息を吐くアギト。一応これでも考えて行動した結果なんだけど……だから僕は真剣な顔して返す。


「強く……強く成らなきゃダメなんだ。テトラは言った。強くなれるってな。本当かどうかはわからないけど、でもこのままじゃダメなのは確実なんだ。
 そうだろアギト……いや、それはテッケンさん達だって感じてる筈だよ」


 僕の言葉にみんな考え込むように沈黙する。ここにいる大半は、あの戦いに加わってる。きっとLRO史上最も大きな戦いに成ったであろうあの戦いで、自分達が向き合った敵の強大差を感じなかった奴はいないだろう。
 乗り越えれたのは、今考えたら結構奇跡みたいなもんじゃん。そんな風に思いたくはないけど、実力的には僕達は劣ってた。奴らの目的がアルテミナスの消滅だったなら、今こうしてここに入れたかわからないんだ。


 シクラ達は自分達の目的は達した。だから去っていった。でも……それでたった一人が目覚めない眠りに落ちた。僕達は決して勝ってなんていないんだ。
 すると誰もが黙ってる中で、アイリが静かに声を出す。


「確かに、今のままじゃダメなのかも知れません。次が会ったとしても私達は負ける気は無いですけど、でも彼らの強大差はこの身を持って体験しました。
 スオウ君はセツリさんを助けないといけない。それには力が必要。求めない訳には行きませんよね。だけど本当に死に急ぐ様な真似だけはしないでください。
 日鞠ちゃんとは私も友達ですから、悲しむ所なんて見たくありません」
「それは、僕だってそうですよ。アイツは存在自体がバカらしいけど、そのバカらしさが毎日を楽しくしてくれてるんですからね」


 言われる間でもないこと……誰が一番ずっとアイツと付き合ってるって思ってるんだ。僕が一番、アイツを泣かしたくないって思ってるよ。


 だからこそ、死ぬ気なんて無い。それにここで死んだりしたらさ、セツリにだって変な物を背負わせる事に成るよ。僕は物語はハッピーエンドしか認めちゃいないんだ。
 そうなるためには、誰も欠けちゃいけない。そう思う。
 すると横からテッケンさんがこう声をかけてくれる。


「大丈夫だよ。僕達が君を死なせはしないさ」
「ええ、私達がちゃんとフォローします」
「お前が行くところは、珍しい武器がありそうだからな」


 シルクちゃんに鍛冶屋も協力的だ。だけどそこでエイルが気だるそうにもの申す。


「まあ僕達は今回たまたま協力しただけだけどさ。どうしてもって言うなら、僕達だって協力してやってもいいよ。ねえリルレット」
「もう、またエイルはそんな意地悪い事言って。話したでしょ、スオウ君はエイルが柱にされた時、一生懸命にだね」
「ああ~~そんなのしらね~」


 耳をパタパタと両手で叩くエイル。たく、同じモブリのテッケンさんをもうちょい見習えよと思うね。全然タイプ違うから無理だろうけどさ。
 しょうがないから、僕も嫌味にこう返してやろう。


「別にいいよリルレット。無理に付き合わせる事無いし。だから――リルレットだけにお願いするよ」
「なっ!?」


 くわっと目を見開くエイル。


「え? でもそれは……」
「エイルはイヤだと言ってるけどさ、リルレットもそうなの? リルレットが居てくれると心強いな僕」
「えっと……」


 僕の言葉に少し頬を染めて視線を逸らすリルレット。そんな様子を見て、エイルの奴は肩を震わせてた。そしておもいっきり机を叩いて立ち上がる。


「ふざけるなああああ!! そんなの俺が認めない。死ねよお前。リルレットを口説くな!」
「何でお前がそんなに怒るんだよ。それに別に口説いてないし。お願いしてるだけだ」
「なら僕にもお願いしろよ! 這い蹲って頭を地面に擦りつけろやこらあああ!!」
「ええ~そこまでして別に来てほしい訳じゃないし、いいよ別に」


 怒り心頭のエイルの言葉を投げやりに返す僕。もうからかい半分だけどね。リルレットの事になると、直ぐに怒るんだから面白いよこいつ。
 するとそんな僕達を見てたアイリがパンパンと手を叩く。


「そう言う事は後でしてください。ではこれからの事を話しましょう」


 これから……それが一番大事だな。


「取り合えずスオウ君は五日以内にもう一度テトラ神に会わないといけないんですよね? こっちも復興が終わるまではそんなに動けないし、取り合えず情報は集めてみます」


 五日ってよく考えたらかなり急だよな。テトラの野郎も無理難題を突きつける物だ。てか、五日ってどう換算したらいいのだろうか?
 LROに居る間での五日なのか? それともリアルに戻ってる間も入れて五日なのか? その場合は、五日後にLROに入らなかったら、どうなるの? 次に入ったときに紋章が広がって死んじゃうんだろうか?


 まあそんな事考えても意味ないか。それよりも僕も死なないようにやるべき事の道しるべを見つけないといけない。
 テトラの奴は、この金魂水を使えと言ってたけど、そのクエスト探し出してって事だろう。ただ使ったって意味はない。
 アイツの目的が達成出来る使い方があるはずだ。だからその情報をアイリも探してくれるって事。うん、ありがたいな。僕は素直にお礼を言って頭を下げる。


「それじゃあアギト。協力してあげて、今まで通り」
「良いんですか? 結構偉いんでしょこいつ?」
「こいつってお前な……」


 だってアギトはアギトだから……それにようやく一緒に入れる様に成ったのに。国民公認だろこいつら、それを連れ回すのはどうだろうかって思うよな。
 するとそこで手を挙げる人物が一人。


「アイリ様、恐縮ですが私が行きます。今アギト様が国を離れるのは得策ではありません。この期を狙ってる国もあります。アギト様の存在はそんな国への権勢に成りますので」
「それはそうだけど……いいのセラ?」
「ええ、アルテミナスを裏切る様な行動をしたら、後ろから刺しておきます」


 にっこり笑ってなんて物騒な事を言うんだあのメイド。でもそれを冗談としか受け取らないアイリは快く認めた様だ。


「では、こんなものでしょう。後は有力な情報が入り次第ですね。解散と行きましょう」


 そんなアイリの締めの言葉で、この会議は終わりを告げる。いつの間にか空は黄昏色に染まってる。

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