命改変プログラム
帰還想到
「かえ……れる」
減りいく数字を見つめてスズリさんがそんな風に呟いた。だけどその時だ。周りにまだゴーストはいたはずだ。でも、余りにも大量に奴らは居たから僕達は気づかなかった。
減ったようんは見えなかった。でも、奴らもただバカじゃ無かったんだ。
僕とセラはスズリさんのそんな言葉に頷いてた。
(さて、後五分)
そう思った矢先、スズリさんの足下からゴースト共はあがってきた。元々実体が有って無い様な奴らだ。土だってその気になれば関係なかったんだ。
森の木を普通に避けたから、そんな事にまで気が回らなかった。ゴースト共は、僕達に気づかれないように近づいてたんだ。
ぬあっという感じで足下からせり上がる大量のゴースト。でも奴らは通り抜ける事はなく。足の膝の所に現れたいつもと違う感じの魔法陣に、吸い込まれていく様に消えていく。
「ああああああああああああああああああああああああ」
「す……スズリさん!!」
僕もセラも彼へ向かって手を伸ばす。だけど、巻き起こる風がそれを阻むんだ。大量の光と圧力が僕達を押し退けて、更に周りを回ってた奴らまでもが、左右からスズリさんへと向かい、同じように魔法陣へと消えていく。
(なんなんだ? 一体何が起きてる?)
目の前で起きてる事がわからない。わからない事は良くあるけどさ、これって……まるで幽霊が彼の中に入り込んでる様な……
「ちょ――どうなってるのこれ? てかどうなるのよあいつ?」
「それは僕も知りたいな……」
僕やセラはゴーストに触れたけどこんな事には成らなかった。それはやっぱり僕達は眼中に無かったからだろうか。
ゴーストが雪崩の様に消えていく彼の体は、次第にちょっとずつ浮いてる様な……流石にただ見てるなんて出来ない。近づく事は無理でも、雷撃を届かせる位は出来るだろう。
僕はセラ・シルフィングの刀身に雷撃を纏わせてそれをゴーストの雪崩の一つへと向けて放つ。
「スズリさんから離れろ!!」
伸びていく青い雷撃。けどそれはゴーストに届く前に消え去った。どうやらこの風と圧力に阻まれてる様だ。
「ちっ、セラ、聖典はまだ無理なのか?」
ここを突破できるのは聖典の収束砲位じゃない確実じゃない。イクシードの風でもいけそうだけど、まだこっちは使えない。
「聖典はまだ無理よ。本家の人達には全然及ばないけど、魔法――使うしかないわね」
そう言うセラはウインドウを出して何やら操作してる。多分スキルスロットを別のに変えてるんだろう。熟練してる人達は最低三つはスロットを作ってるらしいからな。
セラも色々と対策してる筈だろう。
「お前、魔法使えるんだ」
「誰だっていくつかの魔法は使えるわよ。スキルの為に使うことに成った武器に付いてる場合だって有るし、全然持ってない奴なんてアンタか彼の様な初心者くらいよ」
そう言う物なのか……セラはウインドウを閉じ、魔法の詠唱を始める。足下に現れる魔法陣。そして……
「燃え盛るは高貴の炎ーーブライム・ファイアァアア!!」
セラは腕を顔の前から横へ腕を振る。するとゴーストが流れ込む三つの道にそれぞれ魔法陣が現れた。そしてそこから真っ赤な炎が……燃え盛りそうに現れたと思ったら、ボシュっという音と共に消え去った。
「おい……」
「あれ~詠唱どこかで間違ったかな?」
おどけた感じで言うセラ。
「何やってんだよ! 全然ダメじゃんか!」
「うるさい! 仕方ないでしょう! 魔法なんて殆ど使わないのよ! それに私はチマチマした事は苦手なの!」
なんだそれ。しょうがないからセラは、再びウインドウを出す。多分そこには呪文が表示されてる。今度は確認しながら呪文を唱える気のようだ。
だけどそんなモタモタやってる間に、全てのゴーストが彼の中へ飲み込まれていった。掃除機に吸い込まれる様な音の最後に、ギュポンなる音が聞こえて、周囲に静けさが戻っていく。
スズリさんは少し浮いた状態で、顔は天を仰いだまま口が大きく開いてて、目は白目をむいている。息をしてるのか心配な状態だ。体も少し光ってるし……でもそれは地面に足が着くと、消えていく魔法陣とともに、光は消えていく。
スズリさんは気絶してるのか、その場にドサッと倒れ込む。
「スズリさん!」
僕とセラはそんな彼に駆け寄った。倒れた彼を抱え起こして、声をかけ続ける。
「おい! おい! 生きてるか?」
「ちょっと! 死んだ? 死んだの?」
僕達の必死の呼びかけ。セラのはちょっとなんか違うけどさ……けどそれに彼は応えない。HPは全然減ってないのに……どういう事なんだ? どうなったんだ一体?
するとセラが「ちょっと貸して」と言って、スズリさんの胸倉を掴んで引き寄せて、おもいっきりビンタを食らわす。
「起きろー! 生きてるんなら起きなさい!!」
ビシバシビシバシと両頬を交互に叩いていくセラ。それはどうみても気絶してるやる事じゃない。普通にヒドいよ。
でもそれが幸をそうしたのか、スズリさんが僅かに反応した。
「う……ん……」
白く成ってた瞳に黒目が戻ってくる。口も開ききってたのが、僅かに力を取り戻す様に動き出した。僕達はそんなスズリさんに更に声をかける。
「大丈夫ですか!?」
「何か言いなさい!!」
グワングワンとスズリさんを揺らしまくるセラ。それじゃあ逆に喋れないだろ! そうこうしてる内にも、カウントダウンは進んでいた。一分を切った所で、空には異変が現れる。
蓋をしたような黒い空に渦が現れだし、青白いスパークの様な出てくる。多分もうすぐ僕達はここから強制排除される。
それは願ってもない事だ。だけど、最後に起きたこれは、スズリさんに何の影響も無いのだろうか? そう思ってると、ようやくスズリさんがちゃんとした反応を返してくれた。
「二人とも……何、そんな心配そうな顔してるんですか?」
「し、心配そうな顔なんてしてないわよ! それよりアンタ、大丈夫なの?」
「大丈夫? とは何がです?」
ん? その反応はおかしくないか? 変な懸念が生まれるぞ。そしてそれはセラも同じ様で、次にこう言った。
「何がって……アンタゴースト共に襲われたじゃない。なんだか体に入ってたみたいに見えたわよ。それで何とも無いなんて有るわけ無いじゃない。
奴らは仮にもモンスター、影響は出てる筈よ!」
「ええ!? 僕そんな事に成ってたんですか? そういえばここ数分の記憶は曖昧な様な……なんだか沢山の声を聞かされてたような気はするんですけど……覚えてないですね」
沢山の声? まさかゴーストの呪怨の声の連鎖とかじゃないよな。それなら覚えてないのは良いことかも知れない。
でもなんともないなんてやっぱり信じれない。僕もスズリさんに聞いてみる。
「本当に何ともない? 大丈夫なんですか?」
「ええ、今の所は……って空に穴が開いてますよ! やっったこれで僕たちは帰れるんですね」
スズリさんは覚えてない事より、目の前の穴に興味が行ってしまった。まあこれをずっと僕達は探してた訳だしな。
戻れるとわかれば嬉しくない訳がない。でも……やっぱり気になる。あんな光景を見て、まあいっかとは思えない。それはセラも同じ様で、彼に興味ないと言いつつ、厳しい顔で立ち上がってスズリさんの背中を見つめてる。
「本当に大丈夫なのかな? どう思う?」
僕がそういうと、セラは途端に興味を無くしたようにこういった。
「さあね。本人が何ともないって言ってるんならそうじゃないの? 元気そうじゃない」
確かに彼は空を見上げてはしゃいでるけどさ……なんかキャラ変わってないか? まあ今までも突然変わってはいたけど、それはダーク方面だったじゃん。
でも今は、テンション高く成ってるよ。けど、別にそこまで違う変化でもないのか。
「確かに見た目は元気そうだけど……お前だって影響無いわけ無いって言ってたじゃん。じゃあどこにあのゴーストどもは消えたんだよ?
なんの為の行動だ? 何も無いわけ無いだろ」
「それはそうだけど……目に見えないんじゃどうしようも無いわ。だから目に見えたときに対応するしか無いじゃない」
「……まあ、確かにどうする事も出来ないけどさ」
何をって所もわからないし……確かに見る限りではどこも変わってないんだよな。見た目には何も変わってない。でもそれが逆に不自然って言うか……気になる。
「それに私も疲れたわ。早くアルテミナスに戻りたい。アイリ様達も待ちくたびれてるだろうし」
「……確かにそれは有るな。連絡してないのかよ?」
「したわよ。でも待っててくださるってアイリ様は言ってくれたわ」
いつ戻るかもわからないのに待ってるって……もしかしてアイリは知ってたんじゃ? 考え過ぎかな。知ってたんならセラに隠す理由も無いしな。
空に出現した空よりも黒い穴。残り三十秒位で、僕達の体は僅かに浮きだした。スズリさんはそれを待ちわびた様に、光を浴びる様な態勢で先頭で浮いていく。
「ああ、ようやくだ……ようやく……」
ぶつぶつと何か言ってるスズリさん。本当に見た目だけなら問題ない。でも……
「ん?」
先に浮いているスズリさんの姿に何かが見えた様な気がした。染みだしこぼれ落ちる様な黒い影? それが一瞬見えた様な……
するとそれはセラもそうだったようで「あれは」とか呟いてた。イヤなものでも見る感じ。次第に高度が上がっていく中で、僕の腕の模様が何かに反応するように僅かに輝く。
これが反応するのはアイツしかいない。僕は周りに視線を巡らせる。黒い障気が漂ってる森が広がり、ここからでようやくその先が見える、三段の滝の上。そんな暗黒大陸の上層とでも呼べる部分にはいくつかの建物が見える様な。
でも幾ら見回してもアイツの姿は見えない。こっちからは見えない場所にでも居るのかも。「忘れるなよ」って事だろうか?
忘れる訳がないだろう。こっちだって命掛かってるんだ。僕は控えめに光る腕を握りしめて、それに応える様に思いを込める。
まあ伝わるかはわからないけど、有る意味繋がってる様な物かも知れないじゃん。離れていく地上に残されたカウントダウンの数字。それは十五秒を切っている。
すると僕達の体を薄い膜が包みだした。そして一気に速度が上昇。僕達はあっと言う間に穴へと誘われる。なるほどね、これで僕達が最初にこの穴の下にたどり着いた時の状態が出来上がる訳だ。
もしかしてあの時も、まだ空にはプレイヤーが居たのかも知れない。でもこの膜のせいで見えなかったとか。遠ざかる暗黒大陸を見ながら色々考察してみたり。
でももういいことだ。無事……かどうかは置いといて、取り合えずここから出れるんならさ。穴の中は真っ暗だった。それにたいそう揺れるし……膜の居心地もなかなか悪い。
これ途中で割れたらどうなるんだろうって事を考える位にぶつかるんだ。
「うぬぎぎぎぎ……あそこが出口か……」
激しく膜の内で転がる内に、穴の上の方に光が見えてきた。そこを目指して僕達は向かってるようだし、間違いないだろう。
暗い穴の中、光に近づくにつれてその眩しさが増していく。そして全部が真っ白に成ったと思ったら、突然浮遊感が無くなり、堅い地面へと落ちた。
「いっつー」
「もうちょっと親切設計にしなさいよ」
セラも痛かったのか、文句を言いながら立ち上がる。上を見えると、僕達がでてきた穴が閉じていく所だ。暗黒大陸に出たのとは違って、こっちのは随分と小さいな。控えめと言うか……
「あの、スオウ君退いてくれないかな?」
「ああ、すみません」
知らぬ間に僕はスズリさんを下敷きにしてた様だ。さっさとセラが立ち上がったのも、スズリさんを解放するため? だったら言ってくれれば良いのに……でもセラにそれを期待するのは間違いか。
「戻ってきたんですね」
「みたいね」
「なるほど、元の場所にちゃんと返してくれる訳だ」
僕達は暗黒大陸に飛ばされた岩礁地帯に戻されてる。白い岩石一杯の光景が広がってるよ。さっきまで暗くジメジメしたところにいたから、この岩も太陽の光も眩しく感じる。
空気は乾いてるし……でもこの暖かさは気持ちいいな。やっぱり日差しってのは大事だと感じるよ。
「さて、さっさとアルテミナスに行こうぜ」
「あれ? お二人はダンジョンに挑む筈だったんじゃないんですか?」
「んぎっ!?」
足の甲に鋭い痛みが……僕の失言にセラの奴が制裁を加えたようだ。確かにこれは僕が悪いけどさ……けどうっかり忘れるじゃん。
あんな事があったんだ、軽い嘘なんて頭から飛んでるよ。
「あーダンジョンね。そうそう、何言ってるのよスオウ。私たちの冒険の本番はこれからよ」
「あれ? でもそういえば暗黒大陸ではアルテミナスに戻らないととか言ってた様な……そんなの気にもしてなかったけど……」
「うう……」
なんだ、僕だけじゃないじゃん墓穴掘ってたのは。そういえばそんな話普通にしてたよな。スズリさんが突っ込まなかったから、僕もさっき普通に出てきたんだよ。
色々と切羽詰まってたから、スズリさんも気にして無かったんだな。でも、もうそれを気に出来る状況に成っちゃったのか……暗黒大陸を経験すればここら辺なんて、なんともないよな。
心の余裕が見て取れるよ。僕はセラを引き寄せて再び耳打ちする。
「流石にもういいんじゃないか? ここまで関わった訳だし。それに気になるだろ?」
「何がよ」
「スズリさんが大丈夫なのかだよ。このまま一人になんて出来ないぞ」
そう、いつあのゴーストの影響が出るかわからない。一緒にいた僕達としては知らんぷりなんて出来ないだろ。当然関係ないなんてのもいえない。
セラはイヤそうだけどさ、もうただの通りすがりの関係じゃない。
「あの最後のゴーストね……でも、言ったじゃない。私たちに何が出来るでも……」
「だからって一人にするのか? 見守る位出来るだろ。せめてアルテミナスまでとかならさ」
街まで行ければ、取り合えず安心だよ。このままここでまた分かれたら気になるよ。気になって仕方ない。僕のそんな訴えにセラは、大きく息を吐いてスズリさんに向かう。
「どうしたんですか? ダンジョンには行かないんですか?」
「まあそうね、今日は流石に疲れたってスオウが情けない事を言うから、私たちもアルテミナスに戻る事にするわ。ついでで良いなら付いてきても良いわよ。
アンタじゃ日が高い内に付けるかわからないからね」
僕のせいかよ……と言いたかったけどそこはグっと我慢だ。わざわざ遠回りするよりも良いし、セラが珍しく妥協してくれたんだしな。
でも、今度はスズリさんが気を使ったような事を言う。
「いいんですか? なんだか僕のせいで予定を狂わせてしまったみたいで心苦しいですね」
「何初心者が殊勝な事を言ってるのよ。どうせ情けないスオウが悪いんだから別にいいの。それに私の予定は、アンタのドジなんかに影響されないわ」
気にするなって言いたいんだろうけどさ、どれだけ意地っ張りなんだよ。普通に言えないのか? それにやっぱり僕のせいに成ってるし……しつこいぞ。
それに僕達の予定はアルテミナスに戻る事だから、色々と多大に影響されたけどな。まあだけど、ここまで言われたらスズリさんも納得してくれた様だ。
「そうなんですか? ええ~と、それなら助かります。あと少しの間ですけどよろしくお願いします」
「まあ、大船に乗った気でいなさい。アルテミナスは私の庭みたいな物だからね」
得意げなセラはいい気に成ってる。そういえば僕はスズリさんに聞きたい事があったんだ。暗黒大陸から出れたし、最初に彼に誓ったことを聞きたい。
「ねえスズリさん。どうだった? あの冒険はさ。最後はちょっとミスったけど、イヤだった? 後悔してる?」
すると彼は思い返す様に目を瞑り、首を横へ振る。
「いえ、全然。刺激的でしたよ。リアルでは体験出来ない事でした。今度は役立たずなんて言われない様になって、リベンジしますよ。
その時は、また一緒に付き合ってくれますか?」
「私たちでいいわけ? 仲間じゃないとか言われたわよ」
「水差すなよセラ!」
折角綺麗に纏まりかけてたのにさ……本当に空気を読まない奴だな。確かに言われたけど、それはセラが仲間じゃないとか言ったからだろ。
「ええと、それは本当にすみません。自分はお二人に守ってばかりだったのに生意気言って……ちょっとそういう事に敏感で……ダメですか?」
スズリさんは会ったときの印象そのままに真摯に頭を下げる。あの狂った姿を知らなかったら、なんて良い人なんだろうと素直に思えるんだけど、あれを知ってると色々あるんだなと思ってしまう。裏って奴が……敏感の域を越えてた気はするけどな。
けど、ダメと言われると別にそういう訳じゃない。てか、このままダメなんて言える分けない。
「そんなわけないですよ。その日が来るの楽しみにしてます」
「まあ、そんな日が来ないこともないかもね」
「ありがとうございます!」
ようやく僕達はちゃんと向き合ったのかな? なんだか雰囲気も良くなってきたし、早速アルテミナスへ向かう事に。アギト達を待たせてるしな。
「じゃあ急いで行くわよ」
「はい!」
「まあ流石に急がないとやばいからな」
絶対に愚痴垂れるよアギトの奴。僕達は青空の下を駆けだした。やっぱり気持ちよさが違う。心も軽く、空気はおいしい。流れゆく雲を追いかける様に、僕達はアルテミナスを目指す。
「うお~」
「ここがアルテミナスですか~」
僕とスズリさんはアルテミナスにつくなり、そんな声を出していた。ワイワイガヤガヤと予想以上に人が一杯だったんだ。壊された町並みもかなり元通りになってるし、あの残酷な現状を目の当たりにした僕にとっては衝撃だよ。
絶対にリアルじゃ、この数日間でここまで復興は出来ないよ。スズリさんは純粋に驚いてる様だけどさ、僕も負けない驚きしてるからね。
「どう、結構復興したでしょ? 更地のままにはしておけないからね」
「結構てか、かなりだろこれ。前ともう遜色無いじゃん」
どれだけ部下をこき使ってるんだよ。まあどうやって直してるのかは知らないんだけどさ。
「ふふ、家の技術を甘くみない事ね」
中に足を踏み入れると更に復興した具合が良くわかる。てか、光明の塔も戻ってるじゃん。
「綺麗ですね。アルテミナスは」
「当たり前よ。この世界一なんだから。まあ私達はちょっと用があるから、案内出来ないけど良いわよね?」
「はい、ここまで連れて来て頂いただけで十分です」
流石にアイリ達の所まで連れていく事は出来ないか。もう既にセラは分かれる気満々みたいだしな。そこら辺は無理を通す訳にも行かない。
立場とかあるしな。なんせアイリは王女様だし。気になるけど、これ以上は本当にどうしようもない事か。ずっと見守る事なんか出来ないしな。
「これからはもっと気を付けた方がいいですよ。スズリさんしっかりしてるようで抜けてるから。それに今度は、一回切りじゃない仲間も出来ますよ」
「はい、でもがんばっていつか二人に恩を返しに来ますよ」
「まあ、期待せずに待っててあげる」
セラはまた嫌みっぽく……たく、しょうがない奴だ。行き交う人混みの中、僕達は互いに手を振って分かれる。こんな出会いと別れが、LROでは日々繰り返されてるんだな、とか何となく思った。
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