命改変プログラム

ファーストなサイコロ

解答提示



 蓋をしたような黒い空に、上って行った半透明な大量の存在。それは空に橋を架けるように、あるところで一斉にアーチへと変わる。
 大量のゴーストが、ジェットコースターの一番最初の下り部分の様に駆け降りる先、それは落ち込んだスズリさんの所の様だ。


 彼があの渦の中心だった以上、それは目指してた場所へ飛び込もうとするかの様な物なのかも。実はフェイントで、もう一昇りするなんてきっと無いよな。
 実際、このゴースト達が何をしようとしてるのかはわからない。僕やセラは、大量のゴーストの渦の中に居ても、何とも無かったんだから、普通に考えればスズリさんだってすり抜けそうな物だ。


 けど……このゴースト共は彼を目指してた訳だし、飛び込むかの様なこの勢いと、奴らの意志によっての行動ならなにか違う事が起こり得るのかも知れない。
 だから僕は剣を抜いた。最悪の結果に成らないとも限ら無いんだ。このゴースト共が、モンスターで有る限り。


「スズリさん! 落ち込んでる場合じゃない! 上を見るんだ」
「上? なんだか沢山の光が落ちてきてますよ」


 それはゴースト共の目の光だよ。僕はその場から彼を離れさせたかったんだけど、彼は立ち上がりはしたものの、その光に魅入られる様にゴースト共を見上げてる。
 迫り来るゴーストの一本道。だけど彼に届く前に僕はジャンプして彼の前に立ちはだかった。そして大量のゴースト共を打ち落とす気マンマンで、セラ・シルフィングを構えた。


「やらせるかあああああああ!!」


 一番先頭のゴーストに最初の一撃を叩き込む。叩き……込む? 


「あれ?」


 セラ・フィングは僅かな感触を僕に伝えてくれたけど、ただそれだけだった。だけど、これは考えれる事……奴らには実体と呼べる程の肉体が存在してない。
 つまりは、武器でこのゴーストどもを抑える事は出来ないんだ。勢いそのままに振り切られたセラ・シルフィングがその証。


 大量のゴースト共が僕の体を通り抜けてスズリさんへ落ちていく。彼はやっぱり動こうともせずに、その光景をただ眺めてるだけ。


「なんでも良いから避けろ!!」


 そんな言葉も空しく、ゴースト達は遂にスズリさんの元へと一気に重なるように落ちていく。僕は地面に着地してその光景を見やる事しか出来ない。


「どうなってるんだ? ただゴーストが折り重なってる様にしか見えないけど……」


 何か違う事が起きるのかと思ってたんだけど、僕の目の前には本当にただゴーストが重なって行ってるようにしか――その時、大量のゴーストの向こう側から何か聞こえた。


「ちょっとしっかりしなさいよ! てか、せめて自分の足で立って歩きなさい!」
「なんでそんな事……君は僕の事なんてどうでもいいんだろう?」


 それはセラとスズリさんの確かな声。どうやら、直前でセラが強引にスズリさんを移動させてたらしい。だからこのゴースト共は、ただ折り重なる様な団子状態に成ってるだけなのか。


「確かに私はあんたの事なんか、実際どうでも良いわよ。だけどそれはあんたがどうでもいい奴だから。でもこのままの態度を取るって言うのなら、格下げして気にもとめない奴にしてやるわよ。
 そしたらあのゴーストの群に放り投げてやるんだから。それが嫌ならさっさと立ちなさい」


 コエ~、コエ~よセラの奴。アイツ励ますって事を知らないのか。てか多少の責任も感じてないのか? 誰のせいであんな状態に成ってると思ってるんだよ。


「それも……」


 ぽつりとスズリさんが口を動かしたその時、折り重なってたゴースト共の目が一斉に輝きを増した。そっして再び一直線にスズリさんを目指して進み始めた。
 だけどそこで、奴等の進行方向に僕はセラ・シルフィングで雷撃を放つ。セラ達とゴーストの間に落ちる雷撃。するとそれを避けるようにゴーストは進んだ。


(やっぱり、武器での直接攻撃以外ならは効果があるのか)


 僕そう考察しながら、二人に声をかける。


「こっちだ二人とも!」


 セラはその言葉を受けて、強引にスズリさんを引っ張ってこっちへ来る。ゴースト共はたった一発の雷撃で、必要以上に大回りしてるから、それでも二人は追いつかれる事は無かった。
 二人と合流して、僕達は再び森を進む。だけどやる気の無いスズリさんのせいで、それはいつも以上に大変だ。


「本当に、もう置いていってもいいんじゃないのこいつ?」
「お前な……そもそも誰のせいだよ。傷つけたのはお前だろ」
「私が悪いっての」


 ジトリと僕を睨むセラ。いや、誰に聞いたってそうなるっつの。どう考えてもセラが悪い。だから彼を立ち直らせるのはお前の役目だ。
 このままじゃまともに逃げれないよ。僕達だけじゃ、多分あのゴーストは倒せない。直接攻撃が効かないって、おもいっきりソーサラーとかヒーラーの魔法が必要って事だ。


 僕の心許ない雷撃を幾ら浴びせたって、あの数は相手に出来ないよ。切れさえすれば、もっとデカいのを叩き込めるんだけど、それは無理なんだ。
 セラもさっき聖典使っちゃったし、それ以外の暗器はほとんど直接の物理攻撃タイプだろうから何も出来ない。今は本当に、ここにいる全員が役立たずと化している。


「いいんですよ……僕を置いて逃げれば良いじゃないですか。あれの目的は僕みたいだし、追いつかれたって別に何ともないかも知れません。
 これ以上、他人に付き合う事無いですよ」
「他人って……」


 自殺志願者の様な、精気の無い声でそういうスズリさん。これは相当堪えてるな。でも、僕はちゃんと違うことを言ってたぞ。他人じゃない。


「何もないかも知れないなんて曖昧な可能性なんて信じれ訳がない。それに僕はちゃんと仲間だって言ったはずですよ。だから他人じゃない」


 だけどそんな僕の言葉に、スズリさんはポツリと痛い事をコボした。


「だけど、君は隠し事をしてるじゃないか。それは仲間としてどうなんだろうか……」


 暗く沈んだ瞳で僕を見つめるスズリさん。だけど不意にその瞳に光が宿ったかと思うと、彼は横を走る僕へと掴み掛かってきた。


「なあ、嘘も隠し事もいけない事だと教わらなかったのかな? 仲間内でそんな悲しい事……ダメだと思わないのかい?」
「ちょっ……スズリさん?」


 変な寒気みたいな物が首筋を撫でた。これは前にも見たぞ。僕を刺そうとしたあの時の状態……それに似てる。元から情緒不安定なんじゃ無いの? と思う様な様だよ。


「君は何を隠してる? 仲間にも話せない事ってのは悲しいな。それを証明したいのなら、話しておくれよ。さあさあさあさあ!!」


 詰め寄る様に迫るスズリさん。僕達はいつの間にか足を止めていた。すると横から伸びてきた腕がパァアン! と小気味良い音を立てて、彼の頬を叩いた。


「いい加減にしなさい! 仲間だからって、全てを話さないといけないの? そんな訳無いでしょう。これからどれだけのパーティーを組むと思ってるのよアンタ。
 その度にプレイヤーのプライバシーを聞き出す気? そういう関係じゃないのよ、バトルのパーティーってのは!」


 するとそう叫んだセラの頬が、今度は逆に叩かれた。仕返しとばかりにだ。こっちはもっと重々しい音が響いたけど……


「っつ」
「うるさいですよ。赤の他人なら口を出さないでください。これは仲間内の問題なんです」
「あんた……」


 頬を押さえてそう呟いたセラから、何かが立ち上るのが見えるような気がする。プチンと何かが切れたかの様な寒気……これは殺気だろうか?
 けどそんな二人の空気の中で、更に周りから木々が擦る様な音が聞こえてきた。そうだよ、僕たちは追われてるんだ。それなのにこんな事やってて、追いつかれない訳がない。


 周りに視線を這わせると、こちらに向かってくるゴーストの線が三・四本見える。いくつかの雷撃のせいで奴らも数本にその流れを分けている。
 本当に問題が次々と起こりやがるな。切羽詰まるとはこのことか。僕は二人に向けて迫りくるゴーストの事を教える。


「おい、二人とも落ち着け! ゴーストが直ぐそこまで迫ってる。逃げる事を考えよう!」
「逃げる? こいつを殺してからでいいかしら?」


 超物騒な事をセラの奴は言い出した。そしてスズリさんも同じ様な厄介な事を言い出す。


「お二人とも逃げればいいですよ。偽りの仲間も赤の他人もこれ以上つき合う事ないですから」


 そう言ってスズリさんは、僕を突き飛ばすようにして距離を開けた。そして向かうのはゴーストの方。


(ああもう、なんでこいつらこんなに厄介なんだよ!)
「ちょっと待て!!」


 僕は背を向けたスズリさんの肩を掴む。ただ行かせれる訳ないだろ。


「何かな?」
「何じゃない! 僕は言ったよな? ちゃんと返してやるって、大丈夫だって。この冒険がいやな事だったなんて思わせない様に、僕はしたいんだよ!
 ぶっちゃけ仲間かどうかなんてどうでもいいさ。でもこれは責任だ。初心者を助ける、僕達先輩としての責任。そうだろセラ?」


 僕は最後に話をセラへふる。ほんと、いい加減にしてほしいからな。だけどセラは超面倒そうにこう言った。


「助け合いがLRO? それは態度によるけど」
「お前な!!」


 僕は迫るゴースト共に向かって雷撃を放つ。だけど直撃はしない。でもゴースト達が無闇に突っ込んで来るのは防げた。奴らは雷撃を恐れてか、僕達の周りを囲む様に周り出す。
 まあ完全に僕達は囲まれてしまった訳だけどさ。


「囲まれてしまったね。まあ奴らの狙いは僕だけみたいだし、君達はきっと大丈夫だよ。助け合いなんてそんな……LROなんて偽りの集まりだろう」
「偽り……あんた感動してたんじゃないの?」


 スズリさんの言葉に、セラはそう問いかける。偽りの集まりなんて、それはそいつの受け方次第だと僕は思うけどな。
 そして多分、LROを楽しんでる人たちは偽りだなんて思っちゃいないだろう。ここをもう一つの世界と思ってる。大事にしてるよ。


「感動はしてますよ。でも……同じ様な世界が二つと必要なのでしょうか? 逃げ込む先ですよここは。存在からして、僕達そのものが偽りじゃないか。
 名前も、姿形も見えるもので本物なんてここにはない。それなのに見えない物まで偽りなんて悲しいじゃないか。僕は感動と共に、絶望するね」


 見えない物ってのは仲間意識とかの事かな? スズリさんが求めてるのは、そう言う繋がりなのかも知れない。だからこそ、こんなにこだわってるんだろう。
 この世界の出来には感動するけど、やっぱりちゃんとした友情とかは芽生えないとか、仲間と思われて無かったことが彼の絶望。


 でもそれは、これからに期待してほしい事だよ。ちゃんと関わって、一緒に成長出来る友達とかを見つければ、彼が望む物は手に入る筈だ。
 僕達とのこの冒険はイレギュラーなんだよ。LROはレベル制じゃないから、別に僕達でもいいのかも知れないけど、けど僕達にあわせろってのは無理のあることだろう。


 スズリさんのちゃんとした冒険はさ、ここから出た後に始めれるんだ。でもこのままじゃ、彼はそれをするか疑問だ。
 するとセラが彼の言葉にこう答える。


「言っとくけど、私たちは逃げ込んでる訳じゃない。あんたの望むその見えない物は、もっとちゃんと関わった奴らと育んでいけば良い事よ。
 だから感動は勝手にしていいけど、絶望には早いのよ。なんにもわかってない初心者なんだから、勝手に絶望してるんじゃないわ! 
 私の様な奴ばかりじゃないんだからね」
「自分でそれを言うのか?」


 僕は呆れた声をだしてそう言った。だってねえ……まあセラの出来る限りの妥協の言葉だったのかも知れない。自分の考えは曲げないけど、そうじゃない可能性を認めてあげるみたいな。
 でも、同じ考えのところもあってよかったよ。まだセラにもまともな部分があってさ。


「確かにここには三百万のプレイヤーがいるらしいですね。だけど中心はあなた達でしょう? どうせゲームに関わるのなら、本編に絡んでいたいと思いませんか?
 折角僕の様な初心者がお二人に出会えた事ですし。だからちゃんとした仲間にして欲しかったんですよ。それに初めてのパーティーですからね」
「う……」


 スズリさんのそんな言葉に、ちょっと罪悪感でも芽生えたかも知れないセラ。まあ彼は初心者だからな。何にだって夢描いてた事があるはずだ。
 確かにLROは甘くは無いけどさ、それでも少しは導いてやるのが先駆者の努めだろ。それを無碍にしちゃうから、彼も絶望に打ちひしがれるんだよ。


 初めてのパーティーであんなきつい事を言われちゃ、これから出会う人達にも、恐怖心を持つかも知れない。ようやく自分の罪に気づいたか。
 まあ彼もちょっと勘違いしてるけどな。


「言っとくけどさ、僕達がLROの中心ってのは違うかもよ。僕は攻略目指してる訳じゃないし、どっちかっていうと、それは攻略組なんじゃない?」
「でも、アンフィリティクエストがこの世界にとって重要だと調べました。それを行ってるのがあなた達なら、中心じゃないですか」


 それはクエストの中心って事だと思うんだけど……


「やっぱり足手まといにしかならないですか? 僕には仲間になる資格がないんですか? 役立たずはいらないですか?」
「当然でしょ」
「お前――なっ!!」


 周りを囲んでるゴースト達が僅かにこちらに向かう素振りをする度に、雷撃で牽制をする。何とか保つこの状態だけど、一気にこられたら流石に僕だけじゃどうにも出来ない。逃げ場もないし……てか、セラの奴全然反省してないし。


 当然って、だからそれを言うなって言ってるのに……でもセラは、その後にこれまでとは違う言葉を続ける。


「だけど、それは今のままのあんたならって事よ。初心者のままでついてこれると思ってるわけ? そんなにこのクエストは甘くなんてないのよ。調べたのならその位知ってるでしょ?
 自分で足手まといってわかってるのなら、必死に追いついた時に、胸を張って来なさい。そうしたのなら、私だって認めてあげる」
「セラ……お前何様だよ」


 なんだかちょっと感動するように言ってるけどさ、まずセラはアンフィリティクエストに関わってないないじゃん。アルテミナス事変ではどっちかって言うと、エルフ側にいたわけだしな。
 でもまあ、このクエストは普通とは違う。それは僕が身を持って知ってる。だからこそ、初心者には関わらせたくないってのはある。


「けれど、そうだな。スズリさん、LROはもっとちゃんと普通に楽しんだ方がきっと良いですよ。僕達と同じ所にいたら、いくら命があっても足りないかも知れません。
 それでも僕達と仲間になりたいのなら、それこそやっぱりセラの言うとおりなのかも。だからそんな事は、今は置いときましょう。
 どうやったらこの窮地を乗り越えられるか、それを三人で考えるんです!」


 流石にそろそろゴースト共も業を煮やしだしてる。ジリジリと囲みを狭めて来てるし、一斉に飛び込んでくるのも時間の問題だ。ここまでなんとか乗り越えて来たけどさ……マジでこれは不味い。
 僕とセラは確かになんとも無いのかも知れないけど、スズリさんは確実に何かあるだろう。それじゃあダメなんだ。三人で僕達は戻る……そう決めてるんだ。


「確かに、僕も死にたい訳じゃないよ。怖いしね」
「私だって、目の前で死なれるのは目覚めが悪いわね」


 二人ともどっかで妥協点を見つけてくれたのか、僅かな沈黙の後に頭を下げた。


「すみません。あの頬を叩いたりして」
「こちらこそすみませんでした。言い過ぎました。LROは素敵な場所です。ここをどう楽しむかは自由です」


 よかったよかった。二人とも冷静に戻ってさ。スズリさんがプッツンすると妙に怖いしな。あのギャップに硬直しちゃうよ。
 さて二人は冷静に周りを検分してこういう。


「完全に囲まれてるわね。どうするのよ?」
「絶体絶命じゃないですか、僕が!」


 たく、二人とも今更過ぎるよ。それにさっきまでスズリさんは自分を犠牲にしようとしてたじゃん。何? やさぐれた中で言ってた事は忘れたのか?


「一点突破を狙ってみますか?」


 それしかない様な気がするな。雷撃を一点に向けて打てば、奴らは拡散するだろう。そこを一気に突破……てな感じで。


「それはどうなのよ。これだけいるんだからあんた一人の雷撃でそれほど時間も稼げないわよ。それに結構厚そうじゃない、このゴーストの壁。
 道が出来なきゃ、みすみす奴らに飛び込む事になりかねない」
「確かに、それもそうだけど……」


 じゃあどうしろっていうんだ。セラもスズリさんもゴーストに有効な技ないじゃん。


「ここであの穴が出てくれたらいいんですけどね・・そんな都合よくはいかないですよね?」


 空を見上げてスズリさんがそう言う。それは諦めにも似た言葉。だって流石にそれは……


(ん? そう言えば……)


 あのテトラはなんて言ってた? 確かここには留まる事の方が難しいとか言ってなかったっけ? 何かが頭に引っかかるぞ。


「セラ、あの情報! お前が見つけてきたあの数人分のブログを出してくれ!」
「何? この世界がそんな都合よくないってあんたが一番知ってるでしょ?」
「そうだけどそうじゃない! ヒントは多分、時間だ!」
「時間?」


 いぶかしむセラがウインドウから例の資料を取り出す。空中に映し出される数人分の簡易的な文章。日付と時間と文字だけの物が人物毎に縦で区切られてる。
 最初はこれの内容を気にしてたけど、そうじゃないんだ。見やすい様に並ばれてるじゃないか時間がさ。画面をスクロールしていって確信にそれはなる。


 一人目の奴が最初にこれに書き込んだのが十四時五分、そして出れた報告があったのが十五時七分。二人目が二十四時十一分から、一時十三分。三人目が十八時三十二分から十九時三十分。


「どういう事ですか?」


 スズリさんのそんな声に、僕は自信を持って答えるよ。


「セラは確か言ったよな。ここに閉じこめられた人はいないって」
「うん、そうだけど……」
「その答えはこれだ。強制的に飛ばされる場所……だけど強制的に帰される場所でもあるんじゃないのかここは。この資料の時間をみろよ。全部一時間位で外に出てる。
 これは偶然じゃないだろ。まあ一人だけ、地図ギルドの人のだけは違うんだけど、これも予想がつくよ」


 二人に資料を見せながら語る僕。なんだか結構気持ちいいな。まあヒントを貰った僕が気づかなくてどうするんだって事だけどさ。


「予想って何よ?」
「それは多分、敵を倒したか倒してないかだと思う。この人は事細かに書いてくれてるよ。一体につき大体十分は時間が延びる様だな。
 こっちの三人は不幸にも僕らと同じ状況に陥った人達……当然モンスターは倒せてない。つまり暗黒大陸は、一時間経つと強制排出される場所なんだ。
 それなら全てに説明が付くよ。僕達に厳しすぎる条件もないし、逆に攻略が難しいのも納得だろ」


 進むためには、敵を倒し続けないといけない……それもあの強さの敵をだ。これはかなりきつい条件。攻略されてないのも頷ける。


「確かにそれなら……って今どのくらいたったの?」


 気づいてみると、そこには例のカウントダウンが見える様になってた。それはどういう条件下で現れるのかわからないけど、僕達三人の間には赤い数字が一秒ずつ減っていってる。
 僕達は希望を見つけたんだ。だけどそれが最後の油断を生んだ。

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