命改変プログラム
辛辣冥土
「心配なんてするわけない! 勝手にどっかでのたれ死んでなさいよアンタなんか!!」
四方八方から迫る聖典に、今僕はまさに殺されそうなんだけど!!
「おいおい、ちょっとした冗談だって! 今直ぐ止めろこれ!」
「ふ、ふん。良い気味よ。……本当はどれだけ心配したか……」
「ああ!? なにか言ったか?」
何かポツリと聞こえた様な、そうでも無いような……聖典の攻撃が激しすぎて良く聞こえなかった。
「う、うるさあ~~~~~~~い!!」
聖典四機がセラの周りで回ってる。収束される桜色の光――ってあれは不味いだろ!?
「ちょっ!? それはダメだろ!!」
収束された光が僕の耳横を掠めて行く。暗い空に桜色の光が散っていく。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……ふん! 当てなかった訳じゃないから」
そう言ってセラは、展開してた聖典を回収する。ようやく僕の危機は去ったようだ。それにしても、なんて危ない奴。
直撃してたら首が飛んでそうなイメージだったぞさっきのは。聖典を回収したセラは、頬を膨らませて横を向く。するとそこで、ようやく存在感を見せる様に、スズリさんが言葉を発した。
「滅茶苦茶ですね。ちょっと彼が可愛そうですよ。それにもう少し素直に成らないと」
「な、何の事よ! アンタも喋るな!」
バシバシとセラに叩かれまくるスズリさん。たく、アイツ等元気だな。こっちは色々あって疲れたっての。僕は手の中の瓶を見やる。
黄金色の水が複雑にカットされた瓶の中で僅かに揺れている。『金魂水』……いつまでもこうやって持ってる訳にも行かないよな。
無くす訳にも行かないんだし。僕はウインドウを表示させてアイテム欄へ。そこへこれを納めればもう安心――てな所で、目敏くその珍しいアイテムにセラが気づいた。
「ちょっと、それ何?」
「綺麗ですね~」
二人はそう言ってこちらに近づいてくる。そしてセラに強引にそれを奪われた。おいおい、どこのガキ大将だよこいつは。
アイテムをタッチしてそこに情報を表示させるセラ。そしてその情報を見て、セラは目を剥いた。
「金魂水……って! 保持率たったの3じゃない。激レアアイテムよこれ! それにこれ保有数1って事は他に誰も持ってないって事よ」
「へぇ~そりゃ凄い」
詳しく見てなかったけど、確かにそれは凄いな。保持率はこの世界での出現数みたいな物で、その数字以上は手に出来ないって事だ。で、保有数は今現在そのアイテムがどれだけあるか。
三つしか出現しないアイテムでその最初の一って成ったら、それは確かに凄いものだ。アイテムを見つめてたセラは、ジロリとした目を向けてくる。
「どうしたのこれ? これが巨人から出てきたアイテムよね? でも……どうやって倒したの?」
「え~と、それは……」
なんと言えば良いのだろうか? 隠す気は別に無いけど、ここにはあんまり巻き込みたくない奴が居るからな。どうせならアルテミナスへ戻ってからの方が……何か別の話題は無いだろうか。
「そう言えば、おまえ等来るの遅くなかったか? そんなに飛ばされてた僕?」
なんだか結構テトラと喋ってた気もするから、それなりに時間も経ってた筈だ。それなのに今の今までセラ達がここまでこなかったって、不自然な気もする。
するとセラが何かを思い出すようにこう言った。
「別に、それほどじゃないと思うけど……そう言えばかなり走った気もするわね。あんまり疲れないってのも考え物かも。もしかして同じ場所を回ってたとか」
同じ場所を回ってた……いや、回されてた。テトラとか言う野郎、多分何かやってたんだろう。おかしな奴だったから、そのくらい出来てもおかしくない。
ってそうだ。
「なあお前さ、テトラって知ってるか?」
「ん? なによ藪から棒に。なんか話し変えようとしてない?」
「いやいや、そう言う訳じゃないっての。で、どうなんだよ? テトラって奴の事知ってるか?」
僕のそんな言葉に、セラは呆れた様なため息を吐き出した。え? 何かおかしい事を言ったかな? だってテトラの野郎が聞いてみろって言ってたもん。
「あんたがその名前を覚えてない事の方がビックリよ。まあ、全然ミッションやってないんじゃしょうがないのかも知れないけど……オープニングは見たはずでしょ?」
「オープニング?」
確かにそんなのもあった気がするな。世界に存在せずに、端からLROの歴史を見ていく感じのアレだろ。アレにも度肝を抜かれたな。
でもそこでテトラって名前出てきたっけ? するとそこでスズリさんが思い出すようにこういった。
「僕知ってますよ。そのオープニングの始め、世界の創世に二人の神が出てきました。その名前が確か黒夜の邪神『テトラ』と光后の女神『シスカ』だった筈です」
「二人の神?」
そう言えばそんな話しもあったかもな。セラの言葉から察するに、ミッションとかちゃんとやってれば、関わりが出てくるのかも知れない。
僕はミッションもクエストも殆どやってないからな。でもアイツが神? 神にしては荒っぽかったよな。まあ邪神って感じではあったけど。
悪魔みたいな契約させられたしな。セラはスズリさんの言葉に続く。
「そう二人の神様よ。ミッション……まあ重要な話には大抵絡んでくるわよ。進めていくと、世界の核心に近づいて行く感じだから、創世の神様二人は外せないんでしょうね」
「へ~」
そんな重要な奴だったのかのアイツ。あれ? でもそれならアイツがこのアイテムで助けたい奴ってもしかして。
「なあ、その二人の神はどうなったことに成ってんの? てか仲とかさ」
「仲ね。二人でこの世界を創造した事に成ってるけど、仲が良いとは言えないかも。モンスターを生み出したのはそのテトラって事に成ってるもの。
それが原因でシスカは亡くなったって言い伝えられてる」
成るほど、確かに仲は言いようにその話からは思えない。でも……他にアイツが救いたい奴が居るだろうか? 伝承ってのは得てして都合の悪い部分は無くす物だ。
ミッションは世界の核心に迫るって言ってた。真実ってのはどこかに隠されてるのかも。
「そうか……」
「ちょっと、何なのよさっきから。LROの攻略になんか興味無いアンタの口からテトラとか、出てくるのはおかしいわ。
なにがあったのか言いなさいよ」
そう言って僕の頬をがっしりと鷲掴みにするのはおかしいだろこいつ。言わせたいのか言わせたくないのか分からない。
「ふぐふががふが!」
「それじゃあ喋れないですよ」
「全く、不便な口してるわね」
ならどういう口の構造してればいいんだよ。口の形変えたら、それはもう化け物だろ。無茶ばっかり言ってるなよ。
セラは文句言いつつ僕から手を離す。
「お前な……」
「で、どうなのよ、何があった? 巨人を倒したの? これはその戦利品?」
セラは僕に見せつける様に金魂水を見せつける。僕はそれを見つめながら、その先に見えるセラに目を向ける。
「別にあれは倒したって訳じゃ……ちょっと耳貸せ」
「えっ? ちょっ――きゃ」
僕は結構強引にセラの顔へ自分の顔を近づける。耳元へ口を持っていき、囁くようにこう言った。
「巻き込みたくないだろ彼を。だからそれはアルテミナスに戻ってからって事で……」
打っ叩かれるかなって思ったけど、セラはやけに素直にブンブン首を縦に振ってくれた。まあよかったよ。
「もう良いでしょ、離れなさい!!」
「はいはい」
僕はさっさとセラから離れる。するとなんだかやけににやにやしたスズリさんがセラに向かって言葉を放つ。
「よかったですね」
「は? なんか言った?」
ギロリとスズリさんを睨むセラ。本気の睨みを効かせてやがる。何が「よかった」のかわからないけど、それはセラの逆鱗に触れる事だった様だ。
だけどスズリさんはめげずに言葉を発する。
「うう、そんなに睨まなくても……それより内緒話はもういいんですか?」
「内緒だから教えないわよ」
スズリさんの言葉を一蹴するセラ。まあ、教えちゃ耳打ちした意味無くなるし、助かるんだけど……なんかこう、胸のあたりがモヤモヤするな。
彼は初心者なんだから、もう少し優しくしてやれば良いものを。
「まあ内緒なのはわかってるんですけど、そう言われると気になってしまいますよ。僕たち今は一蓮托生なんですから」
ニコリと下がり気味の眉毛を垂らして微笑むスズリさん。まあ彼からしたらこんな心細い中で、一人のけ者にされるのはイヤだろう。
一蓮托生……まあ確かにそうなんだけど……どうしたものか。やっぱり言いたくない事はあるわけで、他の興味あることにすげ替えればいけるかな?
頼りなく精気が薄そうなその笑顔を見てると、悪い事をした気に成る。
「別にのけ者したわけじゃ無いですよ。ただほら、なんて言うか、スズリさんはまだ初心者で色々とわからない事も多くて……スキルもなさそうだし……え~と」
なんで僕がこんな必死に頭を回らせないといけないんだろうか。何を言いたいのか自分でもまとまってなくて、おかしく成ってる。
え~とえ~と。するとそこでセラが大々的に言ってくれた。
「つまり役立たずだから話せないのよ」
「ちょっとはオブラートに包めよお前!?」
どんだけ人の心をズタズタに切り裂く気だこいつ。確かに僕が色々言ってた事は、つまりはそれだったかも知れないけどさ。
直球は無いだろ、直球は! そんなきっぱり言われると誰だって傷つくよ。現にスズリさん固まってるよ。
「違うんですよ。なんて言うか場所が悪い。それに初心者だしスズリさん。仕方ないって思ってますよ!」
「役立たずがですか……」
更にズズ~ンと沈むスズリさん。どうしたものか、実際に役立たずは仕方ないからどうしようも無いんだけど。でも別に落ち込む事じゃ……本当にそれは仕方ない事だよ。
始めたばかりのプレイヤーがこんな所に飛ばされて何が出来るよ。まだ全然LROになれてなくて、右も左もわからない……それが初心者で、それで良いのが初心者なんだ。
「今はどうしたってしょうがない事ですよ。LROは一朝一夕にで強くなれないし、またいつかスズリさんがここに来たときに、その汚名は晴らしてください。
だから今は開き直って! ただでさえ暗い雰囲気の所なのに、誰かが落ち込んでたら気が滅入ります」
「まあ、役立たずならまだしも、足を引っ張るのは止めてほしいわね」
「ちょっとセラは黙ってろ!!」
まただよ。ぐさりって刺さる言葉を放ちやがった。足引っ張るとか、そんな解釈しなくていいんだ。
僕が何の為に必死に言葉を綴ってるんだか、わかってるよな? わかってて言ってんだろセラの奴。
「役立たずの上に、足だけは引っ張ってる自分って……」
「ああもう」
スズリさんが更に深い所へ落ちていったじゃないか。たく、もうこれどうするんだよ。
「ふん、落ち込んでる暇があるのなら、さっさとモンスターを倒せる様に成ることよ」
「二人だって勝ててない癖に……」
「ここのじゃなくて良いわよ。役立たずが勝てる程、甘くないしねここは。普通にそこら辺を歩いてるモンスターを倒せる様に成らなくちゃ、話しになんて成らないわ。
つまりアンタは、まだ始まってない所でウロウロしてるのよ。ここはアンタにとってはバグみたいな物よ。足を滑らせて落ちた先」
足を滑らせてって……最悪だなおい。どんなイレギュラーなんだよ。でもこれって、セラなりに元気づけようとしてるのかな?
でもあんまり元気が出る様な事は言ってない。
「ヒドいですねLROは……」
「まあ酷かもね。でも安心なさい。アンタは確かに運も実力もコピー用紙の様に薄っぺらいけど、まだ最低最悪って訳じゃないわ」
「後は萎れる位しかなさそうなんですけど……」
確かに……てかコピー用紙って、結構下じゃないかな? 薄っぺらいって言うか、ペラッペラだよ。コピー用紙の下って何なんだろう。やっぱりトイレットペーパーとか?
それじゃあ当たり前すぎるかな。
端から見てる限り、スズリさんの落ち込み度は増してきてる様に見える。う~ん、そろそろセラの奴を止めた方が良いのかも知れない。
このままじゃ彼は、役立たずのレッテルを背負って生きていきそうだ。セラは逆に生き生きしてるけど……アイツは他人の精気を吸えるのかな?
「萎れるくらいなによ。そうじゃなくて、スズリさんを最低最悪から繋ぎ止めてるのは、私たちだって事よ」
得意げに胸を張るセラ。それを見てスズリさんは、どんより曇った目でこう言った。
「じゃあ、早くここから助けてください」
その言葉に一秒・二秒・三秒と停止するセラ。そして
「………………ふん、主にメンタル面でだから!」
と言って僕の方へ視線を寄越す。それは暗にこう言ってる。
【ちょっと、アンタも手伝ってよ!】
僕も視線でこう返す。
【僕が必死に元気づけてる時に、役立たず言ったのセラじゃん】
【それは、だってほら面白いじゃない】
【お前だけな】
これはこういうスキルと思った方が良いのだろうか。実際有ってるかわからないけど、僕の中ではこういう感じに会話は成り立ってる。
するとそこでセラが諦める様な声を出す。
「ああ~面倒。なんで私が他人のご機嫌伺いしなきゃ成らないのよ」
大きく背を伸ばす様な動作をするセラ。あいつあれでメイド服着てるんだから世も末だよな。
「た、他人って僕達は仲間でも無いんですか?」
その時、その言葉に意外に食いついたのがスズリさん。さっきまで引きこもりになる寸前みたいだったのに、普通よりちょっと大きな声を出してたぞ。
意外な所に立ち直らせるきっかけが有ったのかも知れない。だけど思いばかるって事を放棄したセラは、そんなチャンスに気づきやしなかった。
「仲間って、私は私が認めた相手じゃないとそう思わない事にしてるの。だからスズリさんは知り合い程度よ。年賀状でその存在を思い出す程度かな」
「い、一緒に冒険してるじゃないですか。パーティーは仲間でしょう?」
なんだかやけに必死に食いつくスズリさん。まあセラの言葉はヒドいよ。年賀状で思い出すって、一年に一回じゃん。
そもそもその程度の関係じゃ、今の時代年賀状なんて出さないだろ。僕が考察してると、スズリさんが僕へ向かって同じ様な事を聞いてくる。
「スオウ君はどう思ってるんですか? 仲間ですよね僕達は?」
「まあ、僕はそう思ってるよ。一時的でも、その場限りでも、手を組んで何かに立ち向かうのなら、その集まりは仲間だろ」
そう言う風に、僕は考えてる。アルテミナスの時にそう思ったよ。僕のそんな言葉にスズリさんは満足そうに「ほら、どうだい」とセラに言ってる。
「それはスオウの考えでしょ。私は違うもの。仲間は安売りしてないの。一回程度の関係じゃ私の心は開かない。そこら辺のギャルと一緒にしないでよね。
私メイドだから」
ここでメイドって、やっぱりこいつの中のメイド像がどうなってるのかが気になるな。それに一回程度の関係って……なんか卑猥じゃないか?
それは単に僕がいやらしく考えてるだけ? でもこの言葉には僕もちょっと喰いかかる。
「おいちょっと待てよセラ。じゃあさ、初めて組んだ人達の中で、お前はどういう感じなんだ? 一緒に戦う仲間じゃないなら何だよそれ?
一緒に敵を倒す知り合いじゃ、なんだかしっくりこないぞ」
僕のそんな言葉に、セラは揺れる髪を耳に乗せる様にかきあげて言葉を紡ぐ。
「良いじゃないそれで。私はちゃんととけ込んでるわよ。敵を倒せばハイタッチもするし、ちゃんと勝利を分かち有ってる」
「ふ~ん、その心はどうなんだ?」
「あ~はいはい――って感じ」
ケロッてした顔でそう言ったセラ。女ってコエーって僕は思ったね。あれ? でもそれなら僕はどうなんだろうか? 既に仲間と思ってくれてるのか……怖いけどなんだか無性に気になる。
「あのさ、僕はどうなんだ? 仲間か?」
「アンタは……」
紡ごうとした言葉が詰まってるセラ。何この溜……心臓に悪いんだけど。いや、別に仲間じゃないっていわれても良いけど……でもやっぱりそれはイヤな様な……
「アンタは……」
もう一度同じ言葉を繰り返すセラ。僕は思わず喉を鳴らして唾を飲み込む。なんでこんなに緊張してるんだろう。凝視するのはセラの瑞々しい唇。
CMにだって使えそうな潤んだその唇が、僅かに開いて止まってる。そして僕の視覚がその僅かな揺れを見た瞬間、なま暖かい様な風が吹き抜けた。
いや違う? なんだかこの風、風にしてはやけにのっぷり? のっぺり? してるような。
「ちょ!? 何よこいつら?」
こいつ……等? そのおかしな言葉に僕は僕は周囲を見回した。するとそこら中に何かがいる。何かって言うのは実体があるかどうかわからないから。
何て言うのかな? 大きな半透明の風船に光目玉が二個あって、それが周囲を旋回してるんだ。それはまさに、世に言うお化け、幽霊、ゴーストって感じだ。
さっきから妙にのっぺりした風と思ってたのはこいつらか。でも、一体どこから現れたんだ? それにぶつかっても、ダメージないし。
モンスターなんだよなこいつ等?
「モンスターじゃ無かったら何なのよ一体!? それにしても何でこんなに集まってるのよ……」
確かにセラの言うとおり、ゴーストの数は有に数十を越えてまだまだ増えてる。ゴースト達は連動するようにこの場を回ってて、その中に僕とセラは巻き込まれてる形だ。
ダメージは無いけど、なんだか不快だよ。それにやっぱり多少存在が有るから、流れに巻き込まれそうでもあって一応踏ん張らないと危なそうなんだ。
「そう言えば、なんでこいつら回ってるんだ?」
何をしにきた――が、回りに来たって訳じゃ無いだろう。これだけの数が集まってるだ、何か理由がないとおかしい。回ってるって事は、大抵は中心に何かが有るものだよな。
こいつらが半透明でよかった。別段移動せずとも、中心を確認出来そう……って、アレは。
「仲間じゃない役立たずな僕仲間じゃない役立たずな僕仲間じゃない役立たずな僕仲間じゃない役立たずな僕――」
ぶつぶつぶつぶつとそんな言葉が微かだけど聞こえてる。まさかだけど、こいつらをこんなに呼んでるのはスズリさん?
「やっぱり足引っ張ってるじゃないあのバカ!」
「どう言うことだよ? スズリさんに引き寄せられてるのか?」
「多分そう。ゴーストの能力の方には明記されてないけど、情報の中にはこのタイプのモンスターは感情の落ちてる所に集まってくるって書いてあったわ」
なるほどな、確かにスズリさんは落ち込んでる。それに反応してるって事か。てかさ、それじゃこの責任はセラにもあるんじゃないか?
「何でよ?」
「お前が落ち込ませたんだよ! 心ない言葉であそこまで!」
自覚しろ。言葉は凶器だって。僕はスズリさんへ向かって叫ぶ。
「スズリさん、楽しいことを考えるんだ! なんでも良いから楽しい事を思い浮かべて!」
「楽しい……事? ああ、そういえばあの時はごめん。死ぬかどうか確かめる為に、剣で刺そうとして……本当にごめんよ」
「超許すから! もっと別の事をお願いします!」
別に苦しくも無いけど、このままじゃ有る意味、ゴーストの渦に溺れてしまう。その時、ゴースト達が一斉に上昇して一気にスズリさんへと落ちていく。それはまさにジェットコースターの様だ。
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