命改変プログラム

ファーストなサイコロ

繋がりという出会い



「よっと!」


 そんなかけ声と共に、僕は黒い岩をセラ・シルフィングの鞘で打ち抜いた。するとピキパキと亀裂が入り、元々脆かったのか、黒い岩は砕け散る。


「げほっ、ごほっ……やっとで楽になれた」
「はは、すみませんね。なんか待たせちゃって」


 フラフラしながら体を起こすその人に、僕は頭を下げる。助けた方が頭を下げるってのもなんだか変だけどさ、元の原因はこっちだから仕方ない。
 それに随分待たせたしね。期待させておいて、ここまで引っ張ったんだ。謝罪くらいしなとね。


「いや、いいよ。助けて貰えたんだし、ありがとう。聞こえるだけだったけど、仲良いんだね君達は」
「「どこら辺が!?」」


 僕とセラの声が見事に重なった。ああそっか、見えては居なかったらしいから、あの惨劇を知らないんだなこの人。言っとくけどさ、喧嘩なんてレベルじゃなかったぞ。
 アレを見て、仲が良いとか言う奴は、すぐさま眼科に行くことを勧めるね。でも、その人は僕達の見事な突っ込みを見て更にその思いを深めたらしい。


「ほら、息ぴったしじゃないか」
「「たまたまですよ! 誰がこんな奴なんかと!」」


 おいおい、また重なったじゃないか。誰がこんな奴だ。指さしてるなよ。するとそんな僕達を見て、快活にその人は笑ってた。
 透き通る青空に響き渡る、気持ちの良い笑い声だった。




「いや、お恥ずかしい。何せまだLROに成れて無くてね」
「そうなんですか? まあ僕もまだ初めて一ヶ月も経って無いですけど……でもいいですよねここ」


 大変だけれども――は暗に隠して置いた。始めたばかりの人に、そんな事を言うのは野暮ってもんだろ。感動しちゃって、どこまでも歩きたくなるのがLROってもんなんだ。個人の見解だけどね。


「ああ、もう一つの世界……そう呼ばれるだけの事はあるよ。どこまで行ってもワクワクが止まらないと言うか、そんな感じだね」
「うんうん、そうなんですよね!」


 おお、わかってるじゃないかこの人。純粋にLROを楽しめてるんだな。それはよかった。だけどそんな感じを共感しあう僕らに冷や水をぶっかける奴が一人。


「ワクワクが止まらないのは良いですけど、突っ走り過ぎですよ。あんな岩に挟まれる位に鈍くさいのに、よくここまでこれましたね?」
「お前、なんて事言ってんだ! 初心者だっていってんじゃん。しょうがないだろそれは!」


 いきなり毒をぶち込んで来やがって……この人がそれでLROを嫌いになったらどうする気だ。他人には基本、猫を被るんじゃないのかこいつ?
 既に見られた……いや、聞かれたから諦めてるのか? でもそんな事を言われても、その人は笑ってくれてた。


「いや、全くもってその通りだよ。僕は鈍くさくてね。未だにモンスターを見ると足が竦んでしまう。ボタンをただ押すだけじゃない戦闘というのは難しい物だね。
 ここまで来れたのは、僕が臆病だったからかな。きっと運も良かったんだ。まあ結局、岩に挟まれたけどね。はははは」


 大人だ。年とか聞いてないけど、そう思った。なんだか大人な余裕を感じるじゃん。いや、全く持って素晴らしいね。どっかの万年毒吐き女とは大層な違いだ。
 それに最初は誰だってモンスターが怖いもんだ。足が竦むのは寧ろ普通。僕達は画面の外じゃなく、中に居るんだからね。


 3D映像とかの比じゃないよ。そこに居て、存在してるんだ。獰猛な目も、鋭い牙が生えてる口もそこにある。息づかいまで聞こえてきて、それは本当に恐怖を掻き立てる。
 初心者の最初の課題は、そんな恐怖に打ち勝ってモンスターを倒す事だろう。だからこの人は、これからな訳で恥じることなんかじゃないんだ。


「モンスターなんて、一度倒せればどうにでもなりますよ! 大丈夫、それはみんなが通ってきた道です。臆病とかじゃなく、普通ですよ」
「そ、そうなのかい? 誰もが普通にモンスターに挑んでるから、私はてっきり臆病なのかと思ってたけど、みんな最初はそうだったのかい?」
「そうですよ。なあセラ」


 僕はその人を安心させる為に、気軽にセラに話を振った。だけどそれは間違いだったと直ぐに気づく事になる。


「私はそんな事無かったけど。てか、最初に倒す事になるモンスターって大抵街の外の奴らでしょ? そんなグロい訳でも無いじゃない。足下サイズだし。
 こっちは武器まで持ってるのに、怖がる訳無いでしょ? 理解できないわね」


 やれやれと首を横に振るセラ。何言っちゃってんだこいつ? いやいやいや、怖いだろ。怖がるもんだろ普通。それが女なら尚更!
 最初の剣だけしかない状態で、さらには扱い方もほとんどわからないのに、それを心強いなんて思えるか? 幾ら足下サイズでも、見たこともない生物が迫り来たら怖いんだ。それが普通。


 でもそういえば普通じゃないかもなこいつ。だけど案外、涙脆かったし本当かな? って僕は疑うね。セラってかなり負けず嫌いじゃん。
 それが当たり前だとしても、僕には絶対にそれを言わないと思うんだ。


「そうですね……確かに足下位のモンスターに怯えるのはおかしいですよね? ははは」


 おいおい、セラのせいで落ち込んじゃったじゃないか。
僕はそっと近づいて、その人の耳元でこうささやく。


「違いますよきっと。アイツだって最初は怖がってたんだと思います。予想ですけどね。でも意地っ張りで負けず嫌いで、嫌いな僕がいるから、そう言ってるだけですよ」
「そうなのかい?」


 確認を求めるその人に、僕は頷く。まあ確証は何にも無いけどね。


「ちょっと、なに二人でこそこそやってるのよ?」
「別になにも」


 鋭い眼光がセラから飛んできたので僕はその人から離れた。いらぬ事を言われてた事を察知でもしたか……女は妙に勘が鋭いよな。


「そうそう、何でもないですよ。彼のアドバイスのおかげで、ちょっと勇気が出てきた所です」


 ニコニコとそう言ってくれたその人は、セラの眼光を苦もなく受け流してる。流石大人……でもこれを受け流せるのに、モンスターは怖いのか。
 大人は自分の常識の範囲内でしか対処は出来ないからかな。まあそれも馴れなんだろうけど。軽くかわされたセラは不満気に、そっぽを向いて僕の服を掴んで引っ張る。


「あらそうですか、ならお気をつけて。こんな奴に貰えた勇気が何の役に立つか見物ですけど、残念ながら私達急いでるんです。失礼します」
「こんな奴って僕の事か!?」
「なんか文句でも?」


 ギロリと睨まれた。なんでこんなに機嫌悪いんだよ。心なしか、さっきの戦闘中くらいまで機嫌悪くなってないか?
 しかもそれを腹の中でため込んでるせいなのか、苛つき具合がハンパない。下手したら、また戦闘に発展しそうだ。


「いえ、別に……」


 だから僕はこう言うしかない。余りにも口惜しいけど、仕方ない。あの惨劇は繰り返してはならないだろう。


「そうですか。折角知り合いに成れると思ったのですが、急ぎでは仕方ないですね」
「そうそう、仕方ないの。せいぜい死なないように頑張って~」


 なんて軽く言いやがるんだ。こいつ最低だな。この人の実力じゃ、ここから街まで行くのも大変だってわかってる癖に!
 鬼か、いや悪魔だったな。僕は走りだそうとするセラに抵抗するよ。


「お前な、LROは助け合いだろ。玄人は素人に無償で優しくするもんだろ!」
「それは余裕がある時よ。今はこの近くにたくさんプレイヤーがいるんだし、それをやるのは私達じゃなくてもいい」


 セラは僕の言葉に耳を貸す気がないな。まあ確かにそうなのかも知れないけど……別に一緒にアルテミナスへ連れてく位いいいと思うけど。
 だけど更にセラは、僕の胸倉を掴んで引き寄せ、耳元でこう言った。


「それによ、私達に関わらせていいの? あの初心者を」
「う……それは……」


 成る程、セラが邪険にしてるのはその為でもあるのか。確かに僕達と居るのは何かと不味いかも知れないな。危険も段違いだし。
 何かが起こるかも知れない時のリスクを考えると、僕達にはその資格が無いのかも。


「はあ、さてどうしましょうか迷ったものです。ちなみに近くに街はありますか?」
「まあ、ここならもうアルテミナスが一番近いけど……」


 明らかにそれは言いたくなかったって顔するセラ。この先の流れがわかってるんだろうな。


「アルテミナスですか……そうですか」


 そういってその人は、地図を開く。場所を確かめてでも居るようだ。


「成る程成る程、ちなみにお二人はどこを目指しておいでで?」
「う、あ~え~っと、ダンジョンよ! 高難易度ダンジョンに今から挑む予定なの!」
「おおそれはスゴい!」


 マジで事実だったら、僕もびっくりだけどな。流石にアルテミナスに戻る途中とは言わないか。それを言うと、流れが決まりそうだからな。
 セラはなんとしても、この人と別れたいらしい。確かに僕達と居るのは危険かも知れないけど、アルテミナスに案内するくらい良いじゃんと僕は思えてきてるんだけどね。


 その短い期間なら、別に何もないだろう。だけど純粋のなのか、その人はセラの言うことを全て信じるんだ。


「そうですか、まだまだ自分には体験しえない事ですね。それはお邪魔してしまって申し訳ありません。僕はアルテミナスを目指そうと思います」
「ええ、それがいいわ。初心者はコツコツと、街の周りの雑魚を狩って経験を積むのが先決よ。背伸びし過ぎたって良いことないんだから」
「はい」


 なんて良い人。ある意味良い人過ぎて、逆に心配だよ。LROには怖い人間だって居るんだよ。悪党どもはどんな世界にだってはびこっているんだ。
 そんな奴らのカモにされそうだよこの人。だけど僕が色々と考えてる間に、セラは既に別れの挨拶をしてた。


「じゃあ頑張って、健闘を祈ってるわ」
「僕の方こそ、ダンジョン攻略頑張ってください!」


 そう言って彼は駆けだしていく……アルテミナスとは逆の方向へ。


「ってちょっと待って! 逆だよ逆! アルテミナスはこっちだよ!」


 僕はその人の背中に慌てて声をかけた。するとセラが「ちっ」って舌打ちしたのが聞こえたような……流石にそれはないよな。気のせいだと信じよう。
 反対だけど、まいっか――とか思ってたりしなかった事を信じたい。そこまでじゃきっとないよ。


「あはっはは、いやー失敗失敗」


 和やかに笑うその人。なんか大丈夫かなこの人? てか、こんなんでよく無事にここまで来れたよな。そもそもここがどこかわかってないんじゃ?
 よくよく考えたら、テンションあがって突っ走っただけで、人の国からここまで来れるかな? 境界線は街からかなり遠いだろうから、モンスターだって必然的に強い筈。
 逃げ足に自信があるのだろうか? 僕はセラに近づいて耳打ちする。


「おいおい、やっぱり一緒に行った方が良いんじゃねえの? この人危なっかしいよ」
「危なっかしいなら尚更関わりたくないわね。もう既に危なっかしい厄介者をこっちは抱えてるんだから」


 何それ? 超酷くない。それって僕の事か? 厄介者って……


「何よその顔。アンタ厄介な事を引き寄せる体質でしょ?」
「う……」


 引き寄せてたかな? そう言われればそうだったような気もしないでもない。でも言っちゃうとたまたまなんだよ。
 僕の行くところで厄介事が起こってるだけだ。そして何故か、僕が飛び込む羽目になるだけだ。なんだか何も言えなくなってしまったな。


 こうなれば無事を祈るしかない。アルテミナス方向へ走り去る彼を見送りながら僕はその背中に謝る。やっぱりさ、用があるとはいえど素人っぽいあの人を一人で行かせることには心が痛む。
 なにせ同じ所に向かうんだからな。でも……セラの言うこともわかるんだよね。僕達にはあんまり関わらない方が良い。それは尤もだ。


 特にあの人の様なビギナーはさ。一寸先は闇……そんな言葉の意味をLROでは考える。特にここ最近。僅かな期間でも何が起こるかわからない……まあそれを言ってたら、何もできなくなりそうだけどさ。


 僕達の周りで起こる事ってかなり衝撃的だから、初心者にはきつすぎるよ。特に街の周りの雑魚も倒せないんじゃ、ショック死しかねないレベル。
 ここは心の中で「すみません」言っとくしかない……


「これでいいのよ、二度と会うことも無いだろうし、気にすること無いわ。もっと良い出会と、普通のLRO。それが幸せでしょ?
 だって誰も、命を懸けにここには来てないもん。楽しく遊ぶためにここに来てるんだから」


 なんだか、そのセラの言葉は哀愁って物を感じた気がした。だからだろうか、僕は何気にこう言う。


「お前は……後悔してるのか? 楽しくないか?」


 するとセラは隣から、一・二歩進み出る。流れる髪、ふわりと揺れるスカート、岩を叩く足音がコツコツと響いてた。そんなセラの後ろ姿を見つめる。


「バッカみたい。私はここで、かけがえなの無い時間を過ごして、かけがえの無い出会いをしたわ。それをどうやって後悔するのよ。
 それに今だって、十分楽しいわ。私の大切なもの、滅茶苦茶にしてくれたお礼をしなきゃだし」


 おいおい、最後の発言はかなり物騒だぞ。まあでも、楽しそうではあるよなコイツは。ハチャメチャだし。付き合わされてる僕からしたら、迷惑極まりないけどな。
「バッカみたい」か、気持ちの良い奴だよ本当に。確かにバカな事を聞いたのかも知れない。僕なんかよりも、ずっと長く居るんだよな。


 この間の事だけじゃない……辛い事とか、他にもあっただろう。てか、ずっとアイリの傍に居たわけだし、その間にアイリだけが辛かった訳じゃないだろう。
 セラだって、ずっと悶々としてたんじゃないだろうか。でも居続けた。かけがえのない出会いと時間だったから。
僕はその背中に再び並ぶ。


「お礼。ま、やることはやらないとだしな」


 僕がそんな事を言うと、セラは少し顔を背けてボソボソと何か言った。


「やる事って……あの子を助ける……とか?」
「あの子? セツリだろ? まあそんなとこだな」
「私には理解出来ないわ。死にたい奴には死なせとけばいいのよ。私は自殺志願者を止める程、暇じゃないもの」


 セラの言葉はいつだってきついけど、これはただのトゲだろ。言われた瞬間にその人たちが「死のう」とか決意しそうじゃないか。
 言葉を選べよな。まあらしいっちゃ、らしいけども。


「別にあいつは、死にたい訳じゃないと思うんだけどな」


 僕は空を見上げてそう言った。この空の向こうに、あの楽園はあったのかなっとか思ってさ。


「あっそ、まあ用はストーカーよね。体よく言ってるけど」


 ズゴッて体が傾く。何言いやがるんだコイツ。僕が格好良く決めてたのに、台無しじゃないか。


「一歩間違えば、だろ! 人聞きの悪い事を言うな!!」
「自覚無いの? 嫌がる女の子を追いかける行為。それをストーカーと一般社会では定義してあるのよ! つまりアンタは紛れもないストーカーよ。
 拒絶されてたじゃん。死んでって言われてたじゃん」
「……うぐ」


 セラの言葉は的確だ。確かにそんな事も言われたな。それに自覚だって無い訳じゃない。ストーカーとしての自覚よりも、助けるって覚悟をしただけだ。
 僕は開き直ってこう言ってやったよ。


「それが何だよ。言っとくけどな、僕をそこら辺のストーカーと一緒にするなよ」
「彼は気付いていない、その発言が自分の変態度が増す発言だということに」
「なにモノローグっぽく語ってんだよ!」


 なんだか一歩引かれた感じで余計に傷ついたよ! くっそ、どんどん僕を傷つけるバリエーションに富んで来てないか? 


「ふん、あんな子、さっさと忘れた方が楽に成れるわよ。わ、私がなんなら協力してあげても良いんだけど~」


 なんだセラの奴? 急にシドロモドロになりやがって。歯切れが悪い。てか最後の伸ばす所とか、妙にうざったく感じる。
 バカな女子高生みたいな感じが苛つくよな。無理してるとかじゃなく、その言い方が問題なんだよね。まあこれは自分の好みの問題だけどさ。


 そこを指摘したら「アンタの好みとか私に何の関係が?」とか言われそうだから、別になにも言わないけど。なんだかセラは僕から顔を逸らす様にしてる。心なしか顔も赤いような。そう言えば流石にちょっと暑くなってきたな。
 まあこの暑さは走っただけでも、日が高くなっただけでもないだろうけど。無駄に体力使ったせいだよ。僕は顔を逸らすセラから目を離し、この赤茶けた大地に目をやった。


「セラのその言葉はありがたいけどさ、やっぱり忘れるなんて無理だよ。僕の冒険はアイツと出会って始まったんだ。
 ここに居る限り、それを忘れる事はきっとない。忘れたりしたら、それこそぽっかり穴が開くと思う。幾らおかしいと言われても、ここでアイツを見捨てたら後悔しか残らないよ」


 風が頬をなでる。やっぱりなんか乾いた様な風だ。緑が無く、壊された様なこの場所。


「今のセツリの心は、こんな感じなんだと思う。いや、どこまで行ったってこんな感じだと、アイツは諦めてるよもう。
 僕は思うんだ。アイツが願う幸せな世界……アイツが作ろうとしてるそんな世界……それを諦めてるの本当はアイツで、それをしてしまったのは僕だよ。
 届いてたのに、繋がってたのに、僕がアイツの勇気を切った。なら、僕がもう一度やるべき事だろ? 望まれなくたって、僕は知ってる。アイツが生きようとしてた事を」
「なによそれ……たまたまじゃない。別に自分じゃ無くても良いって思わないわけ? お人好し過ぎよアンタ。絶対に早死にするわ」


 はは、言ってくれる。まあ明日どうなるかわからない状態なのは本当なんだけど。だけどこれだけは言わないとだろう。これは僕の中の決意だよ。


「死なないよ。絶対に僕は死んだりしない。それじゃあ意味なんて無いんだよ」


 赤茶けた岩を踏みしみて僕はそう伝える。少しの間セラと見つめあう様な状態だった。だけど、不意にガバッて感じでセラは頭を背けた。
 何だ一体? てか僕も実は恥ずかしく成ってきた。セラの頭からは僅かに白い湯気が見える様な気もする。そんなに恥ずかしかったんだろうか。


 相乗効果で僕も湯気を出しそうだよ。だけどそんな事を考えてると、ぽつりとセラが熱を冷ます様な事を言う。


「今、死亡フラグがアンタには立ったわ」
「人の決意にケチつけるなよ!」


 確かにああ言うことをいったら伏線? とか思うだろうけど、死なないから。そんなフラグ、自分で折ってやる。




「てかどうするんだよ。このままのルートじゃあの人と鉢合わせだぞ?」
「大丈夫よ。見えない所を走り抜ければいいのよ。別に道に沿う必要なんて無いんだから」


 僕たちはさっきの人に会わないように、アルテミナスへ向かう事になった。てか、それなりに時間を食ったし、急がねばだよ。
 セラの言うとおり、道から外れて走れば見つからずに抜けるだろう。てな訳でしゅっぱ~つ……と思った時、どこかからか、大量の地鳴りが聞こえてきた。


「何これ? イヤな予感しかしないんだけど」


 そんな事を言うセラの予感当たったようだ。前方から立ち上る大量の土埃。そしてそこから聞き覚えのある声が聞こえる。


「~~すけて。助けてくださああああい!!!」


 それは今しがた分かれた筈のあの人でした。後ろには大量のモンスターを引き連れてる。俗に言う、『トレイン』という迷惑行為だな。
 そして彼は、真っ直ぐに僕達へと向かってきてた。絶対に何かを求められてるよ!

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