命改変プログラム

ファーストなサイコロ

何故か!? の決戦

 救援を求める声を聞いて、探し出した人物はどっかのギャグ漫画の如く岩に押しつぶされてた。僕らの方から見ると、まるで足が喋ってる様。


「ちょっと、アンタのせいでしょアレ」
「はあ? それを言うなら、ちゃんと必要な事を教えなかったお前も悪い。元々、あのモンスターにぶつかりさえしなければ、こんな哀れな被害者が出ることも無かったんだからな」


 全ての責任を僕に押しつけようとするセラに、僕は食いつくよ。あんな不格好な形でフィールドに晒されたあの人の気持ちが分かってないよな。
 赤茶けた岩が大量に地面に広がる中、一際目立つ黒い岩に押しつぶされてるなんて生き恥だ。


「何よそれ? 男の癖にどうでも良いことをネチネチと。こんな責任くらい、受け止める度量は無いわけ?」


 セラのこんな言動に、僕はムカっと来たね。てか、誰でもそう成るよ。僕はセラの方を向いて抗議の言葉を掛ける。


「お前な、どうでも良いんならそもそも僕だけのせいにすること無いだろ。男の癖になんて都合良くばっか使いやがって、それを言ったらか弱い女の子とでも見て貰えると思ってるのか?
 本性割れてるんだ。メイド服着てるんなら、少しはメイドらしく淑やかに振る舞えよ。台無しなんだよその服が!」
「なっなんですって!」


 僕の言葉に、セラもカッチ~ンと来たようだ。おお、ようやくセラのプライドの部分を見つけれたかも知れないな。やられっぱなしなんて、僕は嫌なんだ。
 こうなったら日頃の恨みをここで晴らす――その覚悟だ。


「ふん、淑やかなメイドなんて今時絶滅危惧種なのよ。そんな希少種を、自分の周りで求めないでくれる。どうせ男子の浅はかな妄想のメイドがよかったんでしょうけど……言っておいてあげるわ。
 アンタをご主人様って呼ぶメイドはこの世にいない!!
 リアルにも、来世にもよ!!」


 ズガ――――ン!! ってな衝撃が僕に走った。


「そ……そんなバカな事を言うな!! 居るよ! リアルならメイド喫茶とかあるもん!! お前なんかとは違う、甲斐甲斐しい子が今世でも来世でも待ってる筈だ!!」


 僕の主張に、セラは頬に手を当てて薄く笑う。


「メイド喫茶で満足なんだ? お金で買う甲斐甲斐しさにどれだけの価値があるって言うのよ!? 結局男って奴は、女がでしゃばるのが嫌ってだけでしょ? 
 甲斐甲斐しいが鼻で笑えちゃうわね。そんな奴に、今時のどの女子が、尽くしたいって思うのかしら?」
「くっ……」


 なんだか押されてきた気がするぞ。メイド喫茶は確かに浅はかだったか。でもここで、僕は思い出す。居るじゃないか、僕に甲斐甲斐しくしてくれる女子が!
 僕は余裕を見せて、「ふふふ」と笑う。その様子にセラは僅かに警戒心を見せた。


(何この余裕?)


 そんな心の声が聞こえて来そうじゃないか。決まったとか思ってたんだろうが、甘いんだよ。世の中には良くわからない奴らが一杯なんだよ。


「居るぜ。僕に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる女の子ならな!! もう十年以上の付き合いだぜ。どうだ? 自分のガサツさを見直す気になったんじゃねーの?
 んな毒ばっかり吐いてたら、メイド服につられる男共も、居なくなるんだよ! ある意味詐欺なんだお前は!」


 勝った……まさにそう思える。反撃の言葉も返ってこないし、これは僕の大勝利だな。ああ、今日の風は埃っぽいとか思ってたけど、この瞬間フローラルな香りを運んでる気がするよ。
 空も果てしなく広くどこまでだって青いだろう。


「ふっふ~ん、どうしたセラ? 何も言えないなら、僕の勝ちで…………え?」


 良い気分でセラに視線を移す。するとさ、そこには信じられない光景が広がってた。いや、見たくなかった光景と言うか……そんな気は全然無かったというか……てか何でそうなってるのか、僕にはセラのその衝動が分からない。


 瞳から溢れる透明な滴。逆に冷めた様な頬を伝い、止めどなく流れるそれを、セラは拭いもしないでこちらを見てた。
 いや、まあ様は、セラは泣いてた。嘘泣きなんて疑いが出てこない程に、無表情で涙が流れてる。僕の高ぶってた感情もその涙に冷やされるが如く急降下。


「お……おいセラ……何で泣いてんだ? おかしいだろそれ? お前のキャラじゃないし……」


 やばい……目の前で女の子が泣いてると、どうしていいか分からない。それも自分が原因でしかなかったら、なんて言葉を掛ければ良いんだろう。
 いや、その前になんでセラは泣いてるんだ? 何か不味いことを言ったんだろうけど、セラが泣く程って心当たりがない。


 でもだけど、実際に彼女は涙を流してる訳で、こうやって見てたら、ただの普通の女の子で……いたたまれない。僕が勝手に酷い奴って思ってただけで、それは勝手な評価でしか無かったのかも。
 僕の頭はどうやったらセラの涙を止めれるか必死に考えた。


(どうする? どうすれば? どうしたら良いんだ実際!?)


 全然分からない。謝る……か。それしかないよなうん。何に対してか、よく分からないけど、謝る以外に僕には何にも出来そうもない。


「ごめん! 調子に乗りすぎました!! だから泣き止んでください!! 何回だって謝るから!!」


 僕はもう土下座してた。だって最大級の謝罪の形は、やっぱり土下座だろ。僕はもう、頭を地面の岩に擦りつけるくらいにしてた。


「あ……」


 そしてようやく、漏れて来た声に僕はビクッと体を震わせる。何を言われるだろう? やっぱり罵倒かな。それならそれで仕方ないと、僕は覚悟を決める。
 だけど次に続いた言葉は、予想外なものだった。


「え? ――私、泣いてる? なんで……」


 ズゴオオオオと岩場から滑り落ちそうになる僕。今何て言ったセラの奴? 


「泣いてるだろどう見ても! 気づいて無かったってなんだよそれ。本気で言ってんのかお前!」
「な……何よ! 私だって涙が出るなんて思ってなかったわよ! でも……溢れちゃった物はしょうがないでしょ。アンタがあんまりにも予想外な事言うから……」
「うん? 予想外なのはその涙だろ」


 スッゲー動転したっての。なんだか心なしか頬を赤らめて、涙を拭い出すセラは、本当に涙が溢れた事を信じれないと言った様子だ。
 何だったんだ一体? 


「う、うるさい!! 女の子を泣かすなんて最低の行為よ。何で私が許す前に土下座を解いてるのよ! ちょっともう一度やりなさいよ!」


 そう言って、僕を指さすセラ。むむむ……既に見上げる形なのにもう一度土下座を要求するとは、この女は鬼か。いや、悪魔だったか。
 くそ、悪魔でも女の子。涙見せられちゃ男は弱く成るもんだ。僕はスゴスゴと三本の指を地面につける様にして、頭を下げる。


「…………」
「…………」


 流れる無言の時間。あれ? これっていつまで頭を下げてれば良いんだろうか? なんだか滅茶苦茶屈辱的なんだけど……僕は探り探り、頭を持ち上げていく。


「最低男」


 そんな言葉に僕は心が折れました。いや、ここまで言われる筋合い無いけども! でも……涙は見たくない。セラの足下しか見えない。
 なんだかさっきからクネクネ動いてるけど、何か言うのなら早くしてほしい。誰かが通りかかったらどうするんだ。


「あのさ……」
「うん?」
「……うん?」


 セラの後から続いた「うん?」には暗に「何その対等の応答の仕方は?」って感じが含まれてた。


「あ、いえ……何でしょう?」


 直ぐに言い直す僕。なんだかセラの微妙な機微が分かるように成ってきてないか僕。奴隷根性が叩き込まれつつあるのかも知れない。やばいな。
 僕は決してMじゃないのに。そして歯切れの悪い言葉の続きがセラの口から届く。


「どういう事なの? その……アンタに尽くす甲斐甲斐しい女の子って? まあどうせその場しのぎの嘘でしょうけど」


 何だ……セラの聞きたい事ってそれのことかよ。じゃあ泣いたのもそれのせい? でも何で? セラと僕って決して仲良しとかじゃないと思うんだよね。
 まず見た目通りの関係……とは言いたくないけど、ほぼこんなんだし。ああそっか、これが逆に成るのが嫌だったんだな。


 僕がセラに土下座をする事を屈辱的に感じる様に、セラもそうなんだ。ようは僕に負けたくなかったんだな。何て負けず嫌いな。
 つまりこの質問は、僕の発言を嘘と見越して自分の勝利を手繰り寄せる為の手段だな。でもその見解は大きな間違いだ。


 なぜなら、僕の発言は真実だから。まあ、確かに僕に甲斐甲斐しく尽くす女の子が居るはず無いってのは、ある意味同感だけど(オイ!)でも事実は仮想よりも奇なのだよセラ君。
 僕は土下座の態勢のまま、セラから見えない事を良いことに、口の端をつり上げた。


「嘘じゃありません。幼なじみなんですよそいつとは。どんなに煩わしがっても、いつもご飯と掃除や、僕の世話を焼きに来る、そんな奴です」
「へ、へえ~幼なじみね……寝言は寝て言いなさいよ」


 ガスっと頭を踏まれた。グリグリと地面に擦りつけられる僕。いやいやいやいや、酷すぎだろこれ。悪魔じゃない、魔王様かよお前は!
 でも、後半の冷めた声が怖すぎた。全然信じてない。


「なぜ?」
「何故って……そんなアニメに出てくる様な幼なじみが居る分けないでしょう! それでも言い張るのなら教えてあげる!
 その子こそ幻想よ。アンタが頭で作り上げてる理想の女の子! いい、その子はこの世に存在しない!! まずはそれを認めなさい! そうじゃないと痛すぎるわ!」
「酷すぎだろ!!」


 思わずガバッと頭を起こす。セラの足ごと起こしたから、彼女は態勢を大きく崩して後ろに倒れる。「きゃあ!」とか言う叫びと共に、僕にはある物が見えていた。
 なんだかここ数日、コレに縁がある。いや、別に見たかった訳じゃないよ。でも偶には思ってもいたわけで……ほら、メイド服ってロングスカートだからさ。


 鉄壁な防御な訳だよ。だけどこの瞬間。セラは大きく片足をあげた格好で倒れていく訳だから……その中身がモロ見えだ。
 足の付け根までクッキリです。僕の動態視力なら、その一瞬を逃す訳がない。意外な事に純白の白。レースが入った可愛らしい紐パンでした。


「見た?」


 スカートを自分の元に手繰るようにして、その中に足をすっぽりを隠すセラ。「見た?」とは言いながらも、その確信があるのか、顔は既に真っ赤で涙も既にたまってた。
 まさかまた泣くのか? もしかして意外とセラって純情なのか? イメージとかけ離れてるけど。


「何を?」


 僕は取り合えず誤魔化す様に聞いてみる。別に恥ずかしいのなら、ここでその事に触れなければこの話題は終わるんだ。
 素直に言うのも何だしさ、僕はその判断をセラに委ねてあげた訳だ。評価を改めて貰いたい位の優しさだな。


「そ……そそそれは……」


 プシューと顔を真っ赤にして湯気を上げるセラ。これは過剰表現じゃなく、実際目の前でそうなってます。LROは限界を超えた事には過剰表現で応えてくれるんだ。
 なんだか可愛らしいセラを少し微笑ましく見てると、一際大きな湯気がボンっと立ち上った――その瞬間だ。セラが一瞬消えた。
 そして次の瞬間、頬にぶつかる激しい衝撃。


「女の子に、何言わせんのよおおおおおお!!」
「ぶっ!!!?」


 そんな叫びと共に、僕に懇親の蹴りが炸裂した。僕は回転しながら、堅く荒い岩々を突き抜ける。流石にHPが減らなくても死ぬかと思った。
 ボタボタと、鼻血まで流れ出てるし……するとそれを見て、セラはスカートを押さえてこう叫んだ。


「ちょ!! 何を想像してるのよこの変態!! あれじゃ足りなかったって事!?」
「うおおい! ちょっと待て! 何武器まで抜こうとしてんのお前!? これはお前の蹴りが原因だろうが! お前の純白のパンツのせいじゃないっての!」


 あれ? 何か僕は墓穴を掘ったかも知れない。だってなんだか、セラの体から闘気の様な物が見える。ワナワナと震えてるし、絶対にバックにゴゴゴゴって効果音が入ってるよ今。


「純白……そうね。私の今日のパンツは純白って知ってるんだ……」


 バッっと僕は自分の口を隠した。なるほど、墓穴はそれか。やばい、セラが死刑執行人に見える。ガチャガチャと金色の武器を鎌の形態に組み上げていってる様が特に怖い。


「はあ、殺したくはなかったんだけど、事故って事にすればどうにか成るわよね? いえ、どうせPT組んでる今なら、幾ら攻撃しても死なないか」
「うおおおおおおい!? なに恐ろしい事言ってんだ? 事故で済む分けないだろ! 落ち着けよセラ。別に見たかった訳でもないし、直ぐに忘れるからさ」


 恐ろしい事を口にするセラを落ち着かせようと、必死に説得を試みる僕。だけど何かが気に入らなかったのか、大量のオーラを纏い、天使の様な微笑みを向けたセラが一瞬で目の前に迫った。


(うお!? こいつ速!!)
「何が見たかったわけでも無く、直ぐに忘れるよ……それはムカつく!!」


 金色の鎌が大きく振られて、僕がさっきまで立ってた場所の岩が削れる。てか、ムカつくって何だよ!? どうすれば良いわけ?


「ええ~とじゃあ、毎晩寝る前に思い出すから!!」
「ふざけるなこの変態!!」


 後方に飛んでた僕を追って来たセラが、今度は横から鎌を凪ぐ。たまらず僕はセラ・シルフィングを抜いてそれを受け止める。
 だけど……止めきれずに、力で押し返された。地面に叩き付けられる。


「がはっ……っづ……じゃあどうすれば良いん――だ!?」


 ズガ――――――ン!! と起きあがった瞬間に、脳天を掠める様に鎌が通り過ぎて、地面を砕いた。その衝撃で更に僕はゴロゴロと転がる。


「ちっ」


 そんな舌打ちが僕には確かに聞こえた気がする。いやいいやいや、「ちっ」って何だよ。後数ミリずれてたら、洒落に成ってないからね。
 前に僕は、HPが残ってる時に心臓を貫かれて死に欠けたんだぞ。頭砕かれたら、それこそどうなるか分からない。
 だけどセラの怒りか何かは収まる気配がない。更に追い打ちをかけるために向かってきてる。


「アンタを死ぬくらい打った切って、その幻想から覚ましてあげるから感謝して受け入れないさいよ!」
「幻想って、幼なじみの事かよ!? だからそれは本当だって! アギトに聞いて貰えば分かるっての。てか何でそんな事を気にするんだよ。
 パンツの事を怒ってたんじゃないのか!?」


 僕の不用意な発言に、多分更にボルテージがセラはあがった。どこからか取り出した、十センチ大の黒光りする針を投げつけてくる。
 でもそれは僕じゃなく、僕の影へと突き刺さった。外した? とも思ったけどそうじゃない。


「う、動けない!?」
「スキル『影縫い』ちょこまかと逃げてんじゃないわよ。その腐った根性から叩きなおしてやるんだから。パ、パンツの事も幻想も……まとめてね」


 黄金の鎌が光を浴びてる。ヤバすぎる……避けることも防御も不可。寸止め――するわけないよな。実際既に振り抜いてるし。
 ああ、もう! なんで僕がこんなに目に遭わなきゃいけないんだよ!? イライラしてきたぞ。僕はセラ・シルフィングを握る腕に力を込めて、あの言葉を呟いた。


「イクシード!」


 その瞬間、風と雷撃が拘束を無理矢理解いた。そしてセラの鎌を片手で防ぎ、もう片方を攻撃に回す。だけどその瞬間、セラは鎌を分解して二本のナイフに分けた。そしてそれで僕の攻撃を防ぐ。
 だけど流石に、小さなナイフじゃ勢いを受けきれる訳もない。セラは勢いを殺す様に、自分から後ろへと吹き飛んだ。そしてトンっと尖った岩の上に着地する。


「ふ~んそれがイクシード。あくまでも妄想を続けるって訳ね?」
「だから日鞠の事は妄想でもなんでもねーよ! 現実……現実だよ! お前が完全に否定するから、混乱するじゃねーか! 
 少しは僕の言葉を信じろよ!」


 なんだか余りのセラの言い切り様に、不安になる僕。日鞠って実在してるよな? いや、妄想なわけないし。日鞠がいなかったら、多分僕死んでるもん。
 僕がまだ生きてる事こそが、日鞠の存在の証明だな。迷うことなんかない。そもそも迷う事がおかしい。僕の周りにから風と雷撃が周囲に広がる。
 だけどセラは動じない。


「信じ……られるわけないじゃない! そんな女子はいないのよ! アンタのは女性幻想じゃなきゃおかしいの! 女はね、男が思うよりも綺麗じゃないんだから!
 だからそんな理想はあり得ない! そんな子いたら……どうにも出来ないじゃない!」
「どうにも出来ない?」


 じゃあどうしたいんだよ? だけどそれはいえなかった。何故なら、セラはロングスカートをめくりあげているからだ。
 何やってんのあいつ? エロ過ぎだろ。白い太股が眩しいぞ。だけど次の瞬間、そのドキドキがトキメキから過呼吸に変わる。


「聖典八機、リリース!!」


 太股の所から取り出したのは鏃の様な物。それを空に投げて、セラはそう叫んだ。すると見る見る形を変える鏃。機械っぽくなって、空に浮くフォルムが八機。


 おいおい、アイツマジだぜ。まあ全機じゃない分マシなのかな? ――って悠長な事は考えてられない。空中から光線を放ち襲いかかる八機の聖典。
 これは……想像以上に厄介だ。


「女の子だってね、臭いし汚い時だってあるのよ!」
「そんな事よく言えるな!?」


 聖典との攻防を送ってる時に何言ってんだアイツ。


「女の子だってね、実は結構エロい事考えてるんだから!」
「だからよく言えるな! 何のカミングアウトだよ!?」


 僕の気を逸らして、攻撃を当てるつもりか?


「実はクラスの女子はね、男子の評価とかランキングにしてたりするんだから!」
「それは初耳だなおい!?」


 なんだその恐ろしいランキングは? 絶対に見たくない。あたりはイクシードと聖典のぶつかり合いで地形が壊れつつある。なんだか合わない会話を繰り広げてるな。


「バレンタインの義理チョコなんて、犬にだってあげるんだから!!」
「悲しすぎる真実だよそれは!!」


 世に何万といる、義理チョコで喜んでる男子諸君に謝れよテメー等! 怖いよ女子。僕は勢い込んでセラへと向かう。
 聖典に攻撃が当たる気がしないから、狙うは本体だろう。だけどその攻撃も、聖典が組むシールドに阻まれた。そしてその先では、四機の聖典と光が輝き出す。アレは……


「女はね。裏では蹴落としあいよ。人の悪口で盛り上がるし、計算しない女なんていない! だからアンタのそれは妄想でしかない!」
「言い切り過ぎだろ!? それに……もしもそうだとしても、別に僕はアイツを嫌いになったりしない!」


 回転する聖典の勢いが強まる。光の先で、セラが再び涙を流してた。だから何の涙だよ。


「だからそんな子は居ないのよ! 女は小学生で夢を見終わるの! それ以上の女に、乙女なんて一人もいないんだからあああ!」


 その瞬間、収束しきった光が放たれる。なんて言葉と共に強力な一撃を放つんだ。気持ちが乗ってるからか重い。だけど僕は………………それに耐えきった。白い煙が上がる中、僕は言う。


「うるせえよ。似てる癖に何言ってんだ! 女ってマジ滅茶苦茶だな! 日鞠の事もお前の事も、別に乙女なんて思っちゃいない! てか思えるか!」


 僕の女性幻想はもっと美しいわ。


「似……てる? 私が……」


 そんな言葉と共にセラが固まる。


「あの~そろそろ助けて頂けますか!」


 フィールドに響いた声は、まだ岩の下から聞こえてた。やっべ……忘れてた。僕達は互いに武器を納めたよ。

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