命改変プログラム

ファーストなサイコロ

継がる心

 残酷な天使が自身の羽を汚れた地上に向けていた。放たれる輝きの光は、きっと浄化作業でもあったのかも知れない。
 だけど……さ。勝手に無くされたくない物がそこにはあった。大層な存在の天使様にしてみれば、僕達人が這う地上なんて薄汚れた場所かも知れない。


 けれど、突如現れて大層な力でこの場を蹂躙しだした天使様にはわからない、知らない物がここにはあったんだ。LROはまだ一年とちょっとしか積み重ねた時間が無いけれど、それでも自分が最初に降り立った街ってのは特別な筈だ。


 それだけで、掛け替えの無い大切な思い出に成ったりする。こいつが踏みつぶしたこの地はさ、決して綺麗なだけじゃないかも知れない積み重ねって奴を、きっとこの世界で一・二を争う位につけてる場所だ。


 けれど今まさに、そんな汚れと言う誇りが、一つの理不尽によって消えようとしてる。本当ならこんな事あり得なかっただろう事。
 だけどシステムの向こう側から光臨した天使は、自分のルールで世界を見てる。彼女は究極的にはこう思ってるんだろう。


(人は入らない。世界はあの子の為だけに改変されればいい)


 それがアイツの目指す、幸せの形。システムによる、セツリの為だけの世界にLROをしたいらしい事を言ってた。そこには今の様な、様々なプレイヤーはいない。
 傷つけるかも知れなくて、上手くいかないかも知れない他人って存在は排除される。そして永遠も無い、関係性も当然入らない。


 こうやって考えるとその世界は、もしかして最初から全部を諦めた様な世界じゃないだろう? だからこそ全てのNPCがセツリを大切に、優しく、甘やかし、崇拝し、持ち上げて、寂しくない様にするんだな。
 歩くことを諦めさせて、甘く温い夢を与えようって事だ。天使様は随分とお優しい。反吐が出るくらいに。




 ……あらがうよ。ダメだとかそんな以前の問題でさ、
幸せに成りたいのはセツリだけじゃないんだから。この地にいたエルフの人達だって、夢見る幸せって奴を追い求めてた筈だよ。


 なんてたってここはLRO。誰もが夢を見に来てる筈の場所だから。確かにセツリにも権利はあるだろう。だけどこれはエゴだよ。
 夢の場所の蹂躙なんてさ。
 この場所があれだけ綺麗に見えたのはさ、頑張って来た人達の努力という汗とかがあったからだ。きっとそれは今ある全ての国に言えること。


 天使はわかってない。この世界そのものが、元々プレイヤーという存在を設定して作られたって事をさ。街が息づくのを感じるのも、それぞれの匂いが違うのも、そこに生きてるプレイヤーが居るからだ。


 僕は思ってた。このままでセツリが手に出来る物は一体どれほど何だろうって。アイツは結局、消去方を選んでるんじゃ無いかって。
 あれもこれもダメだから、コレがいい。コレしかないってさ。でも僕はそんな選択の仕方事態が間違ってると思うんだ。


 ガキだからかも知れないけどさ、自分が夢見る明日は、限りなく広がってて、どれを選ぶのかは自分次第なんじゃないかって。
 コレしかないじゃ無く、コレがいいと思える未来。それを選択して行くもんだろ。みんなそうしてる。あらがってる。あらがい続けてる。
 可能性は、限りなくゼロに近かった。だけど足掻き続けた僕達はそれをゼロには決してしない。
 天使の光は圧倒的。それこそ地上を余すことなく照らす様に思える。押しつけがましい事この上なく、地上で築き上げた物を塗りつぶす。


 だけど僕達は、見えなく成ってもそこで確かに輝いてたんだ。一人一人が小さくても強い光を影に成らず持ってた。
 地上から沸き出した光の粒は、そんな僕らの心に見下ろされた大地が協力してくれた物だったのかも。僕と同じく戦ってくれてる、王女様は言ってた。


 大切に思ってくれてる……だから応えようと。この地は応えてくれたんだよ。アルテミナスという大地は、僕達の側を支えてる。
 それはとてもとても心強くて、僅かに傾きを戻すきっかけに成れる事実。僕とルベルナへ避けることも、防ぐことも叶わない光が迫ったとき、そんないろんな事実が多分、この結果を出したんだ。


 圧倒的な力で蹂躙された筈だったけど、どうやらそれは心でも大地でも無く、ここで起こされた事象だけだったんだ。
 僕の前に迫った光は、強力な魔法障壁とそれを支えてくれたみんなのおかげで、夜空へと昇って行った。ルベルナの方は、主にエルフ組が頑張ってた様だ。


 一番前にはアギトが、その槍を光へとぶつけてた。そしてその周りから無数の剣が支える様に折り重なって、向こうは大量の気合いで、攻撃事態をかき消してた。


「みんな……」
「みなさん……」


 僕達のそんな言葉に、誰も振り返らない。よく見れば誰もが行き絶え絶えだ。街一つが消し飛ぶほどの攻撃を食らったんだ、生き残っただけで十分。
 今ここで立ち上がれた事は奇跡……いや、そうは呼びたくない。何故なら、これを望んだ奴がこの場には居るはずだから。


 シクラの攻撃は止まってた。そしてその羽も天使の輪も引っ込んでいく感じに元の状態へと戻ってく。


「ぞろぞろとまあ、死に掛けの連中が這い上がって来ちゃったよ☆ 加護は封じたのに、よくもまあこれだけの人数を守りきったものだよね。
 カーテナを少し侮ってたかも。ううん、この場合はそれを成し得た彼女をかな? なにせ、エルフ以外も立ち上がっちゃってる事にビックリだよ☆」


 通常状態に戻ったシクラが地上に降り立ってそう言った。だけどその言葉を聞いてる奴は、実際どれだけいただろうか? 僕達は既に立ってるのさえやっとで……右から入ってきた言葉が左側から出ていく程度に限界だった。


 だけどそれでも……立ってる。お互いが支えあって僕達は今、この地に立ってる。小さく細い互いの希望を、僕達は重ねあって今、大きくしだしてた。
 どれだけ満身創痍でも、今この場にこの状況を諦めてる奴なんていないんだ。そんな奴はきっと立ち上がれないだろうから。


「バカ……やろう」


 息絶え絶えの中、誰かがそんな声を出す。いや、誰かなんて直ぐにわかった。聞き覚えのある声だ。僕が聞き間違える筈のない声だ。
 灼炎の髪を夜闇に揺らすその声の主はアギト。アイツはまだあれだけの槍と盾を持ちながら、その場に悠然と立っていた。


 よく見れば「はぁはぁ」言ってるのがわかるけど、二本の足は力強く大地を踏みしめ、丸まることの無い背中は騎士の姿を強く表してる。
「バカ……やろう」か、それは一体誰に向けた言葉なのだろう。シクラか……それともアイリ? いや今の彼女はルベルナか。
 それは次のアギトの言葉でわかった。


「突然出てきて、勝手に居なくなろうとするなよ。感謝の気持ちくらい、伝えさせろ。お前のおかげで、今俺達は立ってられる。
 まだ、もう一度あらがえる。覚えたよ。忘れない。俺達エルフは、あの絵に騎士の姿を最初に見てる。その先頭に立ってた人が、認めてくれた今、恥じる戦いなんて出来ないさ。
 俺達はアルテミナスの誇り高き騎士だ! 胸に刻むさ。この戦いの協力者の、最初の王女様の事を」


 アギトの言葉で、その周りのエルフ達がルベルナへとその視線を移してる。アギトだけは真っ直ぐにシクラを見据えてるけど、それ以外は多分全員。
 溢れる程の大人数が胸に手を当ててアルテミナス流の敬礼をしてる。そんな中一人のメイドがルベルナの元へ近づいた。


「ルベルナ……王女」


 感極まってか、顔を覆い隠してるにも関わらず、その涙は見えていた。


「私……は、幸せ者です。こんな……にも……頼もしい子供達が……受け継いでくれてる。このアルテミナスを……好きでいて……くれてる」


 大地から湧き出てる光が、ルベルナへと集まってる気がした。そして僕達はその姿が変わっていく様に見える。映像を重ねてるみたいに、アイリの上にもう一人の女性の姿が映し出される。
 金髪金目をした、勇ましさと気高さ感じさせる姿だ。まあ涙流してる姿は、彼女のギャップ部分かも知れないにせよ、それでも王女の品格ってのは感じれる。
 エルフという種族を体言してるのかも知れない。そんな彼女に、セラは優しく伝える。


「好きですよ。大好きです。貴女が造った国を、私達は無くしたりしません。絶対に」
「私はシステムの一部でプログラム。こんな事を言うのはおかしいのかも知れないけど、ありがとう。どうやら私の役目はここまでの様……ですね」


 そう言うルベルナは涙を拭いて、今はその顔に優しさと少しの寂しさを抱いてた。


「折角出会えた子供達との別れ……ううん別れではないと祈りましょう。貴女達なら……そしてこの子ならきっとそれをやれると信じてますから。
 母はただ、子を信じる事だけに長けてる筈ですから。この子は強いと勝手に思い、この子ならと勝手に押しつけた。でもこの子は、私の想像よりも優しくて強い。
 今は更にそう思い、そう信じてます」


 胸に当てる自身の手。それはアイリの手でもある。勝手に選んだか……そう言えばなんで? な気はする。今思うなら、アギトでも無く、ガイエンでもないその選択は一番正しかったと思う。
 多分アイリじゃないと、今のアルテミナスには成ってない。多分アイリじゃないと、ここまで頑張ってはくれないのでは無いだろうか。


 勿論みんながみんなアイリの為に戦ってる訳じゃないだろう。そこにはアルテミナスの為とか、色々あるはずだ。でもその中に陰らないくらいには、その理由は存在し得ていると僕は思う。
 そしてそんな思いのメイドか一人、確固たる自信を持って言葉を向ける。


「間違ってなんかいませんよ。それが私達のお姫様です。彼女は誰よりも優しくて、誰よりもこの地と私達を思ってくれてます。
 そしてそんな責任感を力へと変えられる強さも、彼女は持っているんです。貴女の選んだ娘は、きっと誰よりもそう……正解だった筈です。
 あの光に照らされて、私達は今ここに居るんですからね。お母様――とでも呼んだ方がいいかしら? 全てのエルフの母君様。
 任せてください。私達のお姫様は、ちゃんと全てをやってくれるお方です。強く凛々しく可愛らしく、それがアイリ・アイルテミナスという、貴女の後継者ですよ」


 セラの言葉を、ルベルナはじっと聞いていた。そして言葉が終わると噛みしめる様に、どこかの部分を復唱してる様だった。
 流石にここからじゃそれは聞き取れないけど、きっと心に響く物があったんだろう。


「ふふふ、ではそろそろ時間です。この地の行く末は、担い手であるこの子達に託します。それが私達の本来の役目……そうでしょう? 分を弁えないそこの存在」


 ルベルナが見据える先にはシクラがいる。何を狙ってでもいなさそうなシクラに向けての言葉。皮肉なのかも。だけどそれを受けてシクラは別段気にせずにこう言った。


「分を弁えない? それはちょっと違うよ。私達は元々、この世界の住人じゃないもの。初めからこのLROに縛られてなんかいない。
 私達は初めから特別で、向上心って物を持ち合わせてる賢い存在なのよ。出来が違うって奴☆」
「だけど貴女も作られた存在よ」


 ルベルナの言葉に、ピクッと僅かながら反応するシクラ。作られたとかの言葉は嫌いな様だ。基本セツリ以外の人間をバカにしてる奴だし、その人間によって作られた存在って所は見たくない箇所なのかも知れない。
 であるからして、シクラはルベルナの言葉を否定する。


「作られたってのは心外かな? 私はもう、あの頃とは違うもの。人に作られた私は、今やもう私じゃない。次の段階って奴に飛んでるの☆」
「だけどやってることは同じでしょう? 貴女は人の命令に従ってるじゃない」


 確かにそうだ。シクラはセツリを助けようとしてる。シクラは何も変わっちゃいない。


「そう……かしら?」


 だけどそこで、シクラは意味深な顔を浮かべた。けれどそれも一瞬の事。気にしなければ、そんな顔実はしてなかったとさえ思える物だ。


「ねえ王女様。私があの子を助けたいと思うのは、命令でも目的でもないのよ。言う成ればそれは自分の存在の証明。
 あの子があそこに居てくれる事が、私達の存在意義なの☆ 命令ではなく神託と言ってもいいくらい。それに単純なのよ。理由なんて」


 そして一拍置いてシクラは答える。


「私はあの子が大好きだもの☆」


 だけどその後に「他の全ては大嫌いだけどね」と笑って言うシクラだった。けど何がこいつらをそこまでさせるのかは分からない。
 そもそもそう思うこと自体が、プログラミングされてる事じゃないのだろうか。光とともにルベルナの存在は薄まって行ってる。


 元々確固たる存在が証明されてる訳でもない彼女だ。「御利益があるといいな~」程度に参る向こう側の存在とでも言うのか、曖昧でしかない存在。その姿は、儚くも短い時間を終わらせようとしてる。
 そういえば言ってたよな最初から。担い手はつまり、僕らプレイヤーである筈だって。そしてそこが、この二人が相入れない存在である証だ。
 ルベルナは最後の言葉をこう締めくくる。


「好きだから、それはとても素敵な言葉ね。だけどそれがワガママを通す理由には成らないわ。そうワガママなのよ結局貴女がやってることは。
 そんな食い荒らされるだけの食卓からアルテミナスは抜けさせて貰うわ。必要に応じた、必要な分だけとってなさい。
 そうしないと太るわよ」


 宣戦布告なのかどうか分からない言葉を残して、ルベルナは消えていった。そしてフラツいたアイリをセラが支える。
 そしてその言葉を受けたシクラはというと、何だかプルプル震えてた。


「太るなんてバカな事を……見てみなさいってのよ、この完璧な体を!」


 どこかも分からない所へ向かって吠えてるシクラ。そして上を見たときに何かに気づいた様に、ルベルナの言葉のもっと重要な部分を言い返す。
 それこそどこへともなく、多分今も見えなくても聞いてるであろうその存在に向かって吐き捨てる。


「ワガママね。良いじゃないそれ。ワガママを通す事の何が悪いの? 犠牲や代償なんて、どうでも良いことなの。 寧ろ私はね、ワガママを思い切って通そうって気概さえあるくらい。迷惑なんて考えもしない。だってそうでしょう?
 私の道を塞いでる物が悪いんだもの☆」


 何という理屈をこねて来る奴だ。まあ、今更こいつが言葉程度でとまる訳がないけどさ。弱い側からの意志を汲み取る様な奴じゃない。
 絶対に認められないけど、こいつにだって目的があるんだ。それを正しいと信じる目的がだ。だから止まるわけはない。


 シクラはだけど動き出す気配はない。寧ろ何かを待ってるような……あいつなら、今の僕たちをどうにでも出来るだろうにだ。
 それほどに強い。何とか渡り合ってたルベルナは、願いをアイリへと託して消えたし、今は言うなれば、絶好のチャンスという感じ。なのにシクラは動かない。
 それが不審極まりない。


「思ったけど、テッケンさん達は大丈夫なの?」


 ここに来てようやく周りにいる仲間達へ僅かばかりいたわりを計っとく。だって気になるじゃん。一番はシクラの動向だけど、二番目くらいにはみんなの状態が気になる。
 だってアルテミナスって基本、その力はエルフ対象でしかない。別段それが特別って訳じゃなく、心が狭い訳でもない。


 それが普通で当たり前ってだけだ。人には人、モブリにはモブリの故郷の地があるんだから、そこでは同じようになるはずだ。
 だからこそ、エルフじゃないこっち側のみんなはちゃんと大丈夫なのか心配なだけ。だけどテッケンさんは、いつもの頼もしい声を聞かせてくれる。


「大丈夫だよ。彼女は僕たちも守ってくれたし、それにアルテミナスの光は、そんな彼女の意志に従ってくれたようだよ」


 そう言って彼は小さな体で、沸き出す光を掴む。すると光はモブリの彼の体にも入っていった。この光自体が治癒力を持ってるのは、ルベルナがその体で証明してたから、テッケンさん達もその対象にちゃんと入ってるって証なんだろう。


「じゃあ大丈夫って事だ」
「まあ、あれだけの攻撃だったからね。精神的にはかなり削られたよ。だけど……まだ倒れる訳にはいかないじゃないか。
 時代を超えてまで、王女様は僕たちを助けてくれたんだ。負けられないよ。こんな所でね」


 僕はアホな事を聞いてしまったらしい。今ここで立ち上がってくれたみんなのことを理解してない。そんな質問だった。
 でもやっぱり隕石と衝突したわけだから、体が治っても心まではそのダメージは癒せないらしい。元々LROは長時間のフルダイブを推奨したりはしてないからな。


 フルダイブだけあって、ここで感じる事や起こったことはダイレクトなんだ。ダイレクトに精神を色々削る。それがこういう戦いなら尚更。
 僕は隕石は食らってないけど、度重なる戦闘でギリギリな感じだ。まあ弱音は吐かないけどさ。それは周りの誰もが同じ筈だ。自分だけが特別じゃない。
 そして不意に、テッケンさんは僕に質問を返してくる。それはまるで何なの? と当然の様にだ。


「所でスオウ君。あれは一体何なんだい? あのドロドロした球体……いや、もう球体ですら無いけどさ」
「――っつ!!」


 僕はその言葉を受けて空を見上げた。そうだ、今一番の重要な問題はアレだったんだ。何かを待ってるだって? そんなの分かりきってる事じゃないか!!
 もう、半分以上その黒い球体は溶けていた。だけど中身は何も見えない……何も見えないんだ。真っ黒く、闇よりも暗く、その中は暗黒だった。


「あれは――」


 僕はアレが何なのか伝えようとした。異様に胆が喉に絡みつく様な気がしたけど、それでもこれは言わないと行けないことだ。
 みんな実は気づいてるかもしれない。そんな雰囲気さえあるけど、だけどこれを伝えるのは僕の役目だろう。僕が見てきた事なんだから。
 でも……それよりも早くこの場に響く声があった。


「ガイ……エン! ダメエエエエエエ!!」
「うわっ!? ちょっアイリ様!?」


 その声はつんざくように周囲に広がる。誰もが思わずその声の主へと、目を向けずにはいられない声。そしてそこには、抱いていたセラから身を乗り出すようにして、あの空の黒い月だった物へと手を伸ばすアイリの姿があった。


 それは今度こそ本当のアイリ。でもその光景は、何だか誰かと別れを終えたような……その手の向かう先が、僕は気になって仕方がない。
 その瞬間、三分の一を残して黒い月が弾け飛ぶ。ベチャベチャベチャと地面を汚す音に混じって、ドサッと言う音があった。
 そこには肌の色も髪の色も元に戻ってるガイエンが倒れてた。


「「「ガイエン!!」」」


 僕達は一斉にその場に駆け寄ろうとする。だけどそれを阻む黒い攻撃が大地を抉った。


「くはは――――ははっははははははっははははははは!!」


 そして唐突に響くそんな声。“何か”だった者が今ここに覚醒を果たしたらしい。吹きすさぶ異様な寒気を押しつけながら、闇から奴は姿を現す。それはいびつな形状の大鎌を携えた、黒い肌に白い髪、そして赤い瞳を持った人物だ。


「そんな入れ物より俺を見ろよお前等。じゃねーとぶっ殺すぞオラアアアアアア!!」


 そう言ってそいつは突然、大鎌を地面のガイエンへと向かって投げた。闇が溢れる大鎌は回転しながらガイエンへと落ちていく。
 僕とアギトは真っ先に動いた。けどそれよりも強大な力がガイエンを守る。カーテナという強大な力を、強い意志でアイリは振るったんだ。

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