命改変プログラム
引き上げるは心の糸
「ぐはっ!?」
そんな言葉と鈍い音が周囲に響き、ガイエンの体は横っ飛びして地面を転がる。そして同時に、手から放れてた長剣も、地面に虚しく落ちていた。
「ハァハァハァ……」
肩を揺らして息をするアギト。そんな大層な攻撃じゃない。たった一発の拳を打ち放っただけだ。だけど……それだけの葛藤や、覚悟がきっとその拳には乗っていた。
今のガイエンに攻撃するってのは、それだけで背負う物があるんだ。特にアギトなら尚更。でも……それが出来るのはアギトしか居なかったとも僕は思う。
「させ……ねえよ。お前はガイエンじゃない……ガイエンじゃないんだ!! 聞こえてるかおい!? 何やってんだお前!!
こんなクソ野郎にみすみす体使われやがって、さっさと戻らねーと今度は容赦しねーぞ!!」
アギトは倒れ伏したガイエンに怒鳴り散らす。それは本当にもう一度やりそうな気配がするほどの気迫だ。だけど口から血を流すガイエン(偽)はまだまだ諦めてはいないようだ。
腐った言葉をあいも変わらず吐きやがる。
【ははは!! 私を殴るかアギト、お前は! この血が見えないのか? 私はお前の何だ? 友達だろ? 仲間だろ?
それでも殺すのか? この私を!? お前は最低の人間だ!】
闇に溶ける様な笑い声が木霊する。分かってたけど、思わず斬り裂きたくなる奴だ。だけどアギトがそれを我慢してるのに、僕が横から入る訳にはいかない。
アギトはそんなガイエン(偽)の笑いが収まるのも待って、決意を秘めた言葉を紡ぐ。偽物の言葉になんか惑わされない……思いの丈を、決めた決意を。
「やって……やるよ。俺はアイリを守る! どんな敵からだってアイリを守る! そう誓った……そしてその役目をお前から預かったんだ!!
これ以上アイリを傷つけ様とするのなら……俺はお前だって倒して見せる!!」
アギトの目はマジで、だからその言葉もマジなんだろうと分かる。後方で障壁とぶつかりあう悪魔がうるさい。だけどそれ以上に、再びガイエン(偽)が高笑いをする。
「ガイエン……戻れよ!! お前こそ忘れんな! お前が居なくなっても、アイリは悲しむんだよ!! だから、戻ってこい!!」
だけどアギトは関係なしに言葉を紡ぐ。その笑いの中のずっと奥。本当のガイエンに届かせる言葉をだ。すると不意に言葉が途切れ途切れに成っていく。
【お笑いぐさだ。ははははははは……ははは……はは……はははははは……「うるせえよ」……何!? お前……「だけど、それでいい。そうでなくちゃ困るんだよアギト」お前なぜまだ抵抗を!?
お前のコードはほぼ私が!! 「まだ、私はここに居る……私はまだ! 逝く訳には行かない!」きっさまぁあぁあああああああ!!】
二つの声が入り乱れるガイエン。本物は、確かにまだそこにいる。ガイエンの体に浮かんでた幾何学模様が次第に形を潜めていく。
やっぱりまだ、覚醒には至らない……だからアギトの言葉が届いたんだろう。そして最後に、自分で自分を思いっきり殴る。
「お前は……ガイエンか?」
「はぁはぁ……私は、私以外の何者でもない。私は、私以外に成る気はない! アイリが悲しんでくれるのなら、ただ死ぬわけにもいかんしな」
そういうガイエンは、辛そうにだけど何とか体を起こす。でもやっぱり、幾何学模様は完全に消えた訳じゃないし、あの何かが居なくなった訳でもないんだ。
ガイエンの姿は相変わらず、黒い肌に白い髪、そして赤い瞳のまま何だから。何をキッカケにして再びあのクソ野郎が出てこないとも限らない。
そしてやっかいな奴が、それを望んでる訳だしな。
「ガイエン!」
そんな考えをしてる内に、シルクちゃんによって、掛けられてた拘束を説かれたアイリが、ガイエンを抱きしめる。
するとクールを気取ってたガイエンの顔がボンってな感じで弾ける様に見えた。リアルならそれでもクールを装うんだろうけど、LROの過剰表現の前ではそれは無理だった様だ。
「ああ、アイリ……私にこういう事は止めろ!」
「だって……だってだって、私のせいでまた無茶させた。私の為に、また頑張ってくれた。このくらいさせてよね。それに……その通りなんだから。
ガイエンが居なくなったら、私寂しいよ。悲しいよ」
華奢なその体に、大きな物を背負う彼女は泣いていた。頬を伝う涙は、ガイエンには見せない様にしてるけど、こちらからは丸見えだ。
そんなアイリの頭にガイエンは手をおいて、呆れた様な視線をアギトへ送る。そしてさらに上の、大きな夜空を仰いでこう言った。
「お前は……酷い女だよアイリ」
「分かってます。だけど……私達の為に、またガイエンが全部を無くすなんてイヤだから……だからごめんなさい」
震える様な声で涙を流し続けるアイリ。これもまた折り合いなのかな。ガイエンもどうやらアイリの事が好きだったぽいし。だけどアギトとアイリは両思い……そこにガイエンの入る隙なんてなくて……それがいろんなイザコザの原因だったって事か?
全部を知らない僕が、どうこう言える事でもやっぱり無いけど、酷い女って言うところはまあ分かる。折り合いをつけたって、辛い物は辛いよな。
だけどそれはどっちもなのか……だからアイリも涙を流してる。でもそれをされると、男は許すしかなくなる訳だけどな。
「ねえ、大丈夫なんでしょうね? アンタが心配じゃなく、アンタの中に居る奴が出てこないか言ってるから答えなさい」
空気をぶち壊す様にそう言ったのはセラだ。相変わらず口悪いなこのメイド。仮にも少し前まではさ、ガイエンって上司だったんじゃないの?
まあガイエンがクーデター起こした直後から既に、セラはこんな感じでガイエンの事を語ってた様な気もするけどね。
だけどアイリのその態度には、親衛隊が黙っちゃいない。
「お前! ガイエン様になんて口の利き……」
尻すぼみした原因は、セラの一睨みに気圧されたからだ。
「何? 言っとくけど、私はアンタ達がやったことを仲直り出来たから、はいそーですかって流さないわよ。それなりの立場に居たなら尚更、責任はちゃんと取るべき。
だからそれまでは……生きときなさいよ。アンタがアンタとして取るべき責任があるでしょう? まだね」
セラの言葉は重いけど、正論だった。責任か……確かにセラの言うことは最もかもしれない。僕もこの後にこいつ等がどうなるか……それは気になってた。
だってクーデターなんてリアルじゃ極刑だろ。でもここはLROで、ルールは彼女が決めるんだろう。それなら、酷いことにはなりはしない。だけどケジメは必要……か。
セラの言葉を受けたガイエンは、アイリを取り合えず引き剥がす。そしてセラへと視線を向ける。
「相変わらずだなお前は。だが、そういうお前だから誘った訳だよ私は。正直……いつまで持つかはわからん。私の中の奴は、動き出すのも気まぐれでな。
丁度あの女に似てる。思い出すだけで怒りがこみ上げるあの女にな」
それって絶対シクラだよな。ガイエンの奴、相当腸が煮えくり返ってるみたいだ。
「つまりはやっぱり、ガイエンを解放するにはあの人……シクラでしたっけから、その方法を聞き出すか直接それをさせるしかないって事ですね」
「ああ、確かにそれしかない……が」
アイリの言葉に歯切れ悪く答えるガイエン。自分の事なのに、余り乗り気じゃない様に見えるな。その時だ。何度目かの悪魔の突進。それで魔法障壁が破れられた。
魔法陣の光が消えていく。それと共に、夜の闇が再び周りを多い尽くしていく。
「っつ……下がれ! アイリもアギトもだ! お前達に何かあったら、自分がどうなるかわからん」
「下がれだと? これ以上下がってどうする!? 俺たちの後ろにはアルテミナスがあるんだ!! それにお前を助ける為には、ここで下がる訳にはいかない!」
ガイエンの言葉に食い下がるアギト。だけどどっちの言い分も同じくらい重要だ。ガイエンは確かに次はないかも知れない……二人のやられた姿なんて見たら、それはもうシクラが言う覚醒とかが起きてもおかしくない。
だけどアギトやアイリ達はガイエンを解放したいんだ。それにアルテミナスだって守らなきゃいけない。それにはこれ以上は引けないし、前にシクラが出てる今はある意味チャンス。
てか大量のオーク共が流れてきたら、それ所じゃなくなるかも知れない。再び炎の固まりを収束しだす悪魔。まともに貰えば、ここら辺に集ってるプレイヤーは根こそぎ全滅の恐れがあるほどの攻撃だ。
揉めてる場合じゃない。
「おい! 取り合えずアギト達は下がってろ。僕達で何とかするから!」
「そうね、それがいいです。アイリ様達はお下がりを」
僕とセラは強引に三人の前に立つ。どちらの言い分も正しくて危ないのなら・・僕達が出るしかないじゃないか。それにもう一度足を切り落とせば、どうにかなるんじゃね? とかも思ってた。
でもその時……悪魔は信じれない事をやりやがった。奴の背中にあったコウモリの翼。それを羽ばたかせて地面から浮き上がる。
「なっ!?」
せいぜい四・五メートル位しか浮いてないけど、それでもあの巨体が浮いてる事にビックリだよ。てか四・五メートルでも剣は届かないぞ。
「あれって飾りじゃ無かったの?」
「セラ! 聖典で僕を運べないか?」
「無理よ。だって聖典は今日はもう打ち止めなの。全部使って、全部壊れたわ。一日経たないと、次の使用は出来ないのよ!」
何てこった……いや、それだけの戦いをセラ達だってしてる……その覚悟はあった。僕らの読みが、完全に甘かったんだ。
空中で集う炎の玉は、何だかさっきよりも格段に大きく成ってる気がする。あの悪魔、溜を長くして威力を大幅にあげてる様だ。
くっそ、このままじゃ為す術がない。流石のシルクちゃんでもあの人数は守りきれないし、あの魔法障壁は連続で使えないみたい。強力な魔法はそれだけ詠唱も長い。
散会する時間も無い……だけどその時、セラが閃いた。
「そうだノウイ! ミラージュコロイドをあの悪魔の鼻っ柱に伸ばして!!」
「は、はいっす!!」
成る程。そうか、余りに存在感が薄くて忘れてたけど、ノウイがいた。戦闘能力は皆無な奴だけど、その実貴重なスキルを持ってる奴。空にだって、確かにこれならいける!!
だけどその時、アギトに待ったを掛けられた。
「ちょっと待てスオウ! お前だってガイエンと同じ条件なんだぞ!? 真っ先に行こうとするな!!」
だけど僕はもう走り出してる。流石にこの勢いを止める気はない。てか、ここで止まったら間に合わなくなる。だから僕は言ってやるよ。
「僕にとってはそんなの、今更だろ!!」
セラ・シルフィングを抜き去り、僕は鏡へと突っ込んだ。次の瞬間目に入ったのは大きな炎の固まり。そしてその熱量が襲ってくる。
熱い……まるで太陽に身を投じてる様だ。だけど、僕の後ろには大勢のプレイヤーがいるんだ! この戦いに勝つためには、今ここで余計な犠牲を出すわけにはいかない。
「うらあ!!」
僕はセラ・シルフィングをその炎の固まりに突き刺した。風の唸りと雷撃を中で発生させ、そしてーー
「やらせるかあぁあああああああ!!」
――上下に斬り裂いた。球に成っていた炎が崩れて、その先に悪魔の顔が見えた。だけどそれも一瞬。溜の最中にいきなり崩された均衡は、崩壊へと続く。
切り裂かれた炎の固まりは、目の前で広範囲の炎へとなる。これはやばい……僕だけでも黒こげに成りそうだ。
悪魔の野郎もその炎が自身を焼いてるようだ。野太い叫びが炎の向こう側から聞こえてた。
「くっ……」
「スオウ君、こっちっす!」
届いた声の方を向くと、そこには鏡から半身を乗り出して手を伸ばすノウイがいる。ナイスタイミングだ。そういえばどうやって着地するか何て考えて無かった。
いつもの事だけどさ。それを見越してノウイは来てくれたんだろう。炎に飲まれる寸前で、僕はノウイの手を取る。そしてそのまま鏡の中へ。
地面に足が着き上を見上げると、そこには悪魔が炎に焼かれて落ちてくる所だった。一歩間違えば、僕も同じ様になってたかと思うと、気が気じゃないな。
だけどああならなかった自分がここにいる。それが僕とあの悪魔との違いだな。僕には助けに来てくれる仲間が居る。けれど悪魔にはそんな奴、居るわけがない。
シクラ達はさ、ペットとも思ってないんだ。それこそ、あの悪魔もただの駒。やるせないな、何かさ。
赤く燃え上がる悪魔が地面に落ちる。それは痛々しい音を響かせてこちらに伝わる。決めの一撃が返ってきた様なものだからな……悪魔にとっては予想外の災難だろう。でもこれで、何とか攻撃は回避出来た訳だ。
「やったっすね」
「ああ、助かったよノウイ」
この程度で、あの悪魔が死ぬとは思えないけど、取り合えずダメージは残せるだろう。
「スオウ、お前は……無茶しすぎだ」
そう言って頭を抱えてるのはアギト。
「全く、とんでもないバカだな。類は友を呼ぶって奴か?」
「……おい、それはどういう意味だガイエン?」
「言葉のままの意味だよ」
「「なんだとテメー!!」」
ガイエンのクソ野郎に、僕達二人で怒鳴りかかった。だってほら、バカって酷い。
「「それはこいつだけだ!」」
二人一緒に、互いを指さして更に叫ぶ。だけどそこに、セラが冷たい視線を送って前に出ていく。
「どっちでもいいじゃないそんな事。私から見れば、十分二人ともバカって感じですよ。まあ少なからず、そっちの命知らずの方が大バカって感じだけど」
「なっ……」
なんだか楽しそうに言いやがってセラの野郎。アイツは口を開く度に、僕を罵らないといけない呪いでも受けてるのか?
けれどそこで的外れな言い分が聞こえてきたよ。
「そ、そんな事ありませんよセラ。アギトだって十分に大バカなんだから。私はそう思うな~」
「何言ってんだアイリ!?」
アギトにしてみれば、全くいらないフォロー。て言うか、フォローにすら成ってない。ある意味傷つけてるんじゃなかな?
好きな子に大バカなんて言われたら、そりゃあショックだよ。でも言った方のアイリはなんだか恥ずかしげにしてるような……自慢できる事でも無いと思うけど。
「そうでしたか? すみませんアイリ様。きっと貴女の前では大バカに成るんでしょうね。覚えておきます」
「ちょ! セラまで変な解釈するな!!」
敵じゃなく、味方のはずの女子二人に追いつめられるアギト。何やってんだかな? つうか、僕が大バカなのは決まりな訳? 全然誰も全く気にしてないから、自分でも納得仕掛けたわ。
だってアギト達の会話って、僕が大バカなの前提じゃん。そこに並んでるか並んでないかだよね? 周りはそんなやりとりを見て微笑ましいだろうけど、悪口だけ言われて置き去りにされた僕は、一体どうすればいいんだろうか。
何か、否定するタイミングも逃しちゃったよな。だけどここで、セラは不意に話題を変える。
「まあまあアギト様。バカとかは一端ここではおいときましょう」
「お前が言うかそれを」
不満気なアギト。けれどセラはもがく悪魔の方を向いて口を開く。
「臭い……と思いませんか? あの悪魔、結構燃えてるんじゃないでしょうか? 今なら、私達が束に成って掛かればやれるかも知れません。
面倒な女が出てこない前に、少しでも戦力を削るのはいかがです?」
セラの提案にみんながあの悪魔を見る。確かにまだ燃えてるし、シクラ達も悪魔が倒れてから見ていない。これだけいれば、悪魔は確かに倒せるかも。
ここで悪魔を倒せるとしたら、それは価値がありそうな気はする。シクラ達がいたら、無闇に動けなく成るからな。
「確かにここであの悪魔を倒せるのなら、倒すべき何でしょうけど……」
不安そうなアイリの言葉。心配毎は常に尽きない物だ。でもチャンスは掴まないと流れてく……そうなったら意味はない。それを彼女だって知ってる筈だ。
何てたって、この国を導いて来たんだから。
「いや、セラの言うとおりだ。あの悪魔を倒すのに、これ以上のチャンスは無い。お前は姫で王なんだ。取るべき物が何なのか位、分かるだろう」
「私は! 両方大事なの! あの時、この国を守りたいと思ったのはみんなが居たからです。そしてみんなが居てくれるこの国を……守りたいとも思った!
どっちか何てダメなの。どっちも大切でどっちも守りたい。だから迷うのよ……」
アイリの言葉がこの場に響く。どっちも……大切な物すべてを守る。それは……それが出来たらどんなに素晴らしいだろうと思う。僕はいつだってそれを目指してる。
だから僕なら、簡単にアイリに賛同出来るんだけど、アイリがそれを望ませたい相手は僕じゃない。だけど僕の印象的に、ガイエンって綺麗事とか抜かしそうだよな。
けれど、ガイエンが次に出した言葉は、僕のイメージとは違う言葉だった。
「なら……そのままの言葉を口にしろアイリ。幾ら綺麗事だろうと、夢見がちな理想論だろうと、お前が私達の王なんだ。
私達はその言葉に全力で応えようとしてみせる。私もやられず、アルテミナスも守られる……それは夢だと私は思う。
だけどここは……そんな夢をねがえる場所だ。悪くない」
「ガイエン……」
意外な言葉。そう思ったのはどうやら、僕だけじゃ無かったようだ。アイリもアギトも……セラや、親衛隊まで意外そうだったけど、同時になんだか嬉しそうだった。
いや、親衛隊はちょっと戸惑ってる様だったけど、それでもアイツ等が信じたのはガイエンだから、文句は言わないんだろう。
それからガイエンは自身の腰にあるものを取り出した。それは小さな剣……だけどとても大きな価値のある剣だ。最初にアイリが手にして、ガイエンがその野望の為に奪い去った物。
けれどそれが、再びあるべき者の所に戻ろうとしてた。
「やっぱり、これはお前の物だ。カーテナは、お前にこそふさわしい」
「ガイエン、ありがとう」
アイリの手に再び包まれるカーテナ。すると一瞬だけど、その刀身に光が走ったように見えた。いや……それは見間違いなんかじゃない。
アイリの手に戻ったカーテナは、輝く光を放ってる。それはまるで、カーテナが主の元に戻った喜びを表してるかの様だ。
「な、何?」
狼狽えるアイリに、ガイエンが悟った様な言葉を掛ける。
「その輝きこそが、カーテナが生み出す光……何だろう? 私が幾ら求めても応えてくれなかった光だ。それを掲げて示してくれれば、我らはその道を開いてみせる。
王よ。その言葉を我らに」
膝を付くガイエン。それはまさに、王と従者の姿だ。すると一斉に、周りのアルテミナス軍も同じ様な態勢へとなる。彼らが待つのはそう……王の言葉だ。優しい王の、優しい言葉。
だからこれだけの人達が、慕い集い、そして必死になれる物がある。アイリの顔が毅然とする。涙が溜まってる様にも見えるけど、それでも必死に凛とした表情を崩さない。
空に掲げるカーテナ。するとアイリを包む光が夜空へと伸びる。すると後ろから更に大きな光の柱があがった。一体何が……そう思って振り返るのは僕とテッケンさん達。
その光はアルテミナスから伸びていた。二つの光は呼応して、その欠片はエルフの人達に降り注ぐ。ああそうか、これが本当のカーテナの加護なんだ。
そしてアイリは紡いだ。
「お願いします。私は何も失いたくない! みんなの力を私に貸して!!」
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