命改変プログラム

ファーストなサイコロ

無限の欲望



 槍に纏った白い炎が目の前で揺らめく。振り卸されていくガイエンの黒い両腕……だけど俺の槍じゃ両腕のどちらかしか防げない。
 でもどちらかじゃダメだ! カーテナの力はそれだけ強大。片手だけでも俺を潰すなんて訳がない。だからどっちも防がないと……けど、その手だてが……そう思ったときに、俺の目に僅かに光る物が写った。


 ガイエンの球状になった下半身。そこに埋め込まれたように成ってる僅か三十センチ位の小剣。それはカーテナ本体だ。


(ここしかない!!)


 そう思った。白い炎を纏った槍が真っ直ぐにカーテナを目指す。だけどカーテナを攻撃したからって何が起こるか何て本当は分からない。
 てか、何も起こらないかも知れない。そうなったら両腕から繰り出される力に、俺はペシャンコに潰されるだろう。やっぱり片腕だけでも……そんな考えが不安と共に押しあがる。


 だけどそうして浮かぶ答えは、「それでどうなる?」って事だ。どっちにしろ何も切り開け何かしない。ここで勝負しないとまた負ける!!
 可能性だってあるんだ。カーテナがガイエンの力と自信、そして夢のアイテムならそれをどうにか出来ればこいつは止まる。
 だから俺は信じて打ち込もう。カーテナに、俺の精一杯の力と思いを。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ガイエンの腕が俺の横を下ってく。これが振り切られたとき、俺には両腕分のカーテナの力が降り懸かるだろう。でもそれよりも速く届かせる!


「終わりだアギトオオオオ……」


 その瞬間、途切れたガイエンの叫びには理由があったはずだ。それはきっと、俺の槍がカーテナの感触を伝えてきたという事。
 そして俺は最大の力を持ってカーテナを突き抜く気でいる。だけど白い炎は四方へと拡散されていく。だが、この炎は特別製だ。


 消えることの無い白い炎。それは知るために純白で、染まる為に白い姿をしてるんだ。この炎は敵にあわせて炎の姿も形も色も変える。
 そして今まさに、炎は拡散しながらもぶつかったガイエンという敵を燃やすための色を生み出す筈だ。拡散してる炎はガイエンの至る所に張り付いて行く。
 すると次第に炎は色をつけていくみたいに先端に僅かな色が付いてきた。


(行け……頼む! 今の俺にはこの方法しかガイエンを倒す手段はもう無い!!)


 槍はカーテナにぶつかってから、幾ら押せどもビクともしない。だけどガイエンは何故か苦しそうだ。やっぱり力の根幹がカーテナだからだろうか。
 だけどその時、カーテナの周りの黒い部分がボコボコと沸き立つように蠢いた。そして不意にこんな言葉が聞こえる。




【まだなんだから、邪魔するなよ】




 するとその瞬間、沸き立った部分がカーテナに集まるようにして波を打ち、その刀身を光らせていく。


(ヤバイ)


 そう思った。だから俺はまだ半分位白い炎を、意識的に槍の先端に集中させた。そしてその瞬間、二つの力のぶつかりなのか、もしくはカーテナだけの力が原因かは分からないが大きな爆発がそこで起きた。


「っづあああああああああ!!」


 その衝撃で後方に吹き飛ぶ。だけどその事よりも、頭を占拠してたのはあの声だ。一体何の声だったんだ? 明らかにガイエンでは無かった。
 顔を上げてみても爆発が起きた地点はまだ奮迅に紛れてる。あの反撃はガイエンの意志じゃなかった……そう思えてならない。


「アギト!」
「アイリ……影からは解放されたんだな」
「はい、あの爆発と同時に。アギトは大丈夫? まさかガイエンがあそこまでやるなんて……どうしちゃったの?」


 奮迅を避けて走ってきたアイリが、その方向を見て不安な声を出す。でもその気持ちも分からなく無い。俺もまさかあんな事を言われるとは思わなかったし、そこまでやる奴とは考えなかった。
 だってガイエンは、いつだってリアルとLROを分けてた奴だ。それがリアルにまで影響するような攻撃を取るなんて……ただのハッタリだったのかも知れないが、あの瞬間そうは思えなかった。


「なあアイリ。本当にお前は、またアイツとも同じように居れるって思ってるのか? 俺はアイツを、全力で倒すぞ」


 するとそんな宣言を聞いたアイリは、こちらを向いて静かに口を開く。


「思ってます。でないと、意味なんて無いんだよアギト。私にとってはね。それに全力全快は当然です。今のガイエンにはそれでも足りないくらいだって分かってるでしょ。
 だからこそ私も居るんだよ。アギトは約束守って今度は来てくれた。だから次は、二人で友達を助けましょう!」
「たく……お前はほんと前から無茶しか言わないよな。だけど、どうしてもやりたくなる。そんな無茶ばっかりだ。だからやっぱり、お前と居ると飽きないよ。
 それにやっぱライバルはいないと燃えないしな。そして俺は思ってる、友と書いてルビはライバルだってな!」


 するとその瞬間、丁度白かった炎全体に色が付いた。あの爆発で地面とかにまで飛ばされてた炎達も一斉に七色の光を帯びて俺へと向かってくる。
 この七色の光が弾けたとき、ガイエンに対抗しうる色が現れる筈だ。


「このスキルって……私知らない」
「だろうな。誰にも見せてないし、それに手にしたのはアルテミナスから離れてからだからな。アイツもこれは知らないさ。
 でもだからこそ、届くかも知れない最後の武器だ。だからこそ、何も出来ないアイリは応援でもしてろよ。捕まるのは心臓に悪い。それに今のガイエンは、何をするか分からない。
 お前にだって次はあの力が向けられるかも知れない。あの異常な力が……」


 俺は奮迅の先を睨み据える。やっぱりどう考えたって、今のガイエンの状態はおかしい。それが例えカーテナだからとしてもだ。
 だってそもそも、ずっと使ってた筈のアイリであんな風に成ったことは一度もない。そしてどうしてあんな風に成ったのか……それを考えるとたどり着くのは奴だ。
 あの女……セツリを浚って、カーテナまで使えたあの裏側の存在。関わってない何て思えない。


「それは……だけどガイエンがガイエンであるのならそんな事あり得ないって私は信じてる! でも確かに、あの異常な状態がガイエンをおかしくさせて行ってる気はする。
 なんなのあれ? 親衛隊もそうだったけど、ガイエンはその比じゃない。だって……あんなの……」


 それから先は掠れる様な声で聞き取れなかった。でもだいたい分かる。だって今のガイエンを見たら、普通はその印象を持つからだ。
 きっと誰もがこう思う……『化け物』と。それか新種のモンスターだな。けれどアイリは自分の友達をそうは思いたく無いから、最後は掠れたんだろう。


 言うわけには行かなかったんだ。俺は前を見据えたまま、ガイエンの言ったことを思い出して言葉を紡ぐ。


「ガイエンが言うには、あの姿は進化系らしい。上位種なんだってよ。まあそんな訳ないだろうが、あれはカーテナが原因だと思うかアイリ?」
「そんなわけ無い! だって私があんな姿に成ったこと見たことある? あり得ないよ」


 アイリは激しく否定した後、もしかしたら……何て言う可能性を考えたのか、最後の声は萎んでた。まあまだ、カーテナの全部を知ってる訳でもないんだろう。
 だけど、やっぱり俺もアイリの意見に賛成だ。ずっと使ってたアイリに起きない事が、突然手にしたガイエンに起きる物か? 


 もしもそれが起きたのなら、もっと別の要因を考えるべきなんだ。今まではカーテナというブランドに目が眩んで納得してたが、それじゃあ説明出来ない事が起こてる。
 あの声とか……さっきの攻撃を無傷で耐えた事とか。幾ら白い炎がまだまっさらな状態としても、炎としての通常特性はあるし、何より槍の攻撃力は落ちるはずもない。
 あの状態のガイエンにでも傷一つ位はつけれた筈だ。


「そうだよな……幾ら何でもカーテナだけであんな風に成るなんて思えない。何か別の……ガイエンさえ何かに利用されてる……そんな気がしないか?」
 俺の言葉に、アイリは直ぐに呟いた。
「シクラ……」
「誰だそれ?」
「あれよあれ、女が居たじゃない。やけに美人で、小悪魔系な女。アルテミナスで私以外にカーテナを使った……」


 アイリの言葉に思い当たる奴は一人しかない。それは間違いない無く、あの女だろう。セツリを浚ったアイツだ。


「シクラ、それがアイツの名前か。って何でアイリが知ってんだ?」
「城に囚われてるとき、話しかけて来たの。あの人言ってたわ。
『私達はお互いに利用してるだけの間柄なの。だからどっちかが裏切ってもそれは油断した側が悪いのよ。ふふ、利用の度合いも比率何てとれてないかも知れないけどね。
 だって貴女のお友達は取りあえずまずここだけど、私達はいつだってLRO全体を見てるんだもの』
 って。ガイエンは自分が利用されてる事も分かってた。だけど彼の性格なら、それを打ち崩す自信もあったはず……だけど――」
「――向こうの方が一枚上手だったかも知れないって事か」


 俺の引継にアイリはコクリと頷く。確かにガイエンはそんな奴だ。だけど敵の大きさを見誤ったんじゃないか。きっとガイエンだって自分が利用してるつもり立ったんだろう……てか、今更だがガイエンが売ったのはセツリな訳か。
 それと交換に手にした物があの力?


「あの人……何なの? 何だか普通じゃないのは分かったけど、私は良く知らないから」


 そう言えば、アイリは向こうに囚われてたんだから情報は無いよな。


「まあ俺もシクラって奴に付いてはよく分からない事だらけだが、取りあえずアイツは確かにカーテナを使った。まあお前の体を媒介にしてだけど。
 それにスオウの奴が言うには、裏側の存在らしい。システムの裏側……だからその存在自体がバランス崩しと思っていい」


 バランス崩し、その言葉にアイリは僅かに反応する。ある意味、その怖さを一番知ってるのはアイリかも知れないからな。
「そうなんですね……そこまでの敵なんだ。なら……もしかしたら、変な物が組み込まれたとか……その位出来そうですね。


 カーテナに新たな機能を無理矢理入れた、あれはその結果とかかも……そして私にまとわりついてた黒い影もその影響だったのかも」
 アイリの考えはあながち不可能でも無いかも。カーテナ自身をいじくったって事か。確かに奴なら出来る事なのかも知れない。
 てかそう言えば――


「そうだよ、お前は大丈夫なのか? 確かガイエンがカーテナを使う度に、その黒い影に浸食されてただろう?」


 そう、そして今のガイエンとかと同じ様な肌に成りかけてた筈だ。でも今は全然そんな事は無さそうだが……


「私は大丈夫です。あの黒い影が私を苦しめる事はもう無いから……今の私は多分、あのクリスタル達に守られてる。
 それにアルテミナス自身の意志はこっち側だから……だから私の声に応えてくれたの」


 そう言ってセラ達の方へ目を向けるアイリ。そこでは激戦が今も繰り広げられてる。そして何かちっこいテツが一・二・三……四・五とまだまだ見える。
 あれなら数の差をどうにか出来そうだ。するとその時、奮迅が一気に払われた。そしてその場所に佇む異様な人影が姿を現した。


「アギト……お前は本当に……邪魔で邪魔で仕方がない! お前の役目は終わったんだ。さっさと消えろ!!」
「ガイエン……お前……」


 ガイエンは激しくいきりたってるが、俺たちは思うように言葉が返せない。何故なら、その姿が更に異常だからだ。
 何だか崩れてる。その体がだ。黒い影が砂の様に下に落ちて行ってる。だけどその中から現れてるのもまた黒い肌。まさかあの影が薄く体を包んでて、攻撃から身を守ってたのか?
 でも……あれって大丈夫なのか? 黒い影が体中から沸き立ってる。それは異様にまがまがしい。


「止めてガイエン! それ以上その力に溺れちゃだめ! その力がカーテナな訳ない! ガイエンはきっと何かに利用されてるよ!!」
「利用? それがどうした。それすらもならば私は飲み込んで使うまでだ!! カーテナではない? この力、それ以外に何がある!?
 私はカーテナの最も強い力をこの身に宿らせてるんだよアイリ! 自分ばかりを肯定するな、これがカーテナの正しき使い方だとは思わないか?」


 アイリの言葉もガイエンには枯れ葉の如く踏みつぶされる。利用とか、確かにガイエンは飲み込む気でいたんだろうし、そう出来ると思ったてるだろう。
 でもそれはどうだ? 俺にはお前が踊らされてる様にしか見えない。その黒い力は絶対に、ガイエンを蝕んでる。
するとアイリが、苦しそうに小さく呟いた。


「……そんな」
「そんな訳無いだろ! カーテナがどういう力か、お前だって知ってるだろうが! それが・・その狂気が国を治める者の物かよ!
 今のお前じゃ、滅ぼすことしか出来なさそうだぞ!」


 俺はアイリの言葉を強引に奪った。だって今のアイリじゃ強く否定出来ないかも知れない。アイリはカーテナの事を俺より知っていて、それがガイエンの可能性を否定出来なくしてるから。
 まだまだ謎が多い『バランス崩し』だ。中途半端に理解するのが限度で、だけどだからこそ何でも出来る様に思えてしまう。


 だから俺はもっと理解の浅い立場で完全否定してやった。あり得るか、あり得ないか……俺的には後者なんだよ。そして理解が浅いから、強気で言える。
 ヤケクソ気味で、これは押し問答でしか無いのかも知れないが、言葉にしないと否定は出来ない。俺達は認める訳には行かないんだよ。
 そのまがまがしい力がカーテナだって。


「くくく……アギト、お前にはわからんよ。国の大儀も、責任も背負えぬお前には何もわからん!! 力がいるんだよ。そしてそれを示すのは王の役目だ。
 そしてそうでなければ何も守れん! 何も手に出来ん!
 私はなアギト。搾取される側でのうのうと笑って居られん!! この世界で手に入れれる物は全て、我が手に入れてみせる!!」


 言葉と共に、前の影の鎧が全て砂と化していく。そして体中から沸き立つ黒い湯気みたいなのが更に大量に流れ出てた。
 それはまるでガイエンの欲望に反応してるようでもある。その無限の欲望に。その時、ガイエンの掲げた左手に何かが見えた。


(あれは……)


 銀装飾の台座にはめ込まれた不思議な色に光る石の結晶『リア・ファル』だ。ガイエンがあの状態に成ってから姿を消してたと思ってたアレは、どうやらあの黒い影で覆って見えなくしてただけらしい。
 だけどそれは同時に、リア・ファルがそれだけ重要な物だって事だ。カーテナを壊す事は出来ないし、さっきの攻撃でもカーテナ事態をどうにかするのは多分難しいと感じた。


 でも……あの比較的細い指にあるリア・ファルならどうだ? あれは王の選定石だとも言ってた。つまりは実質、ガイエンがカーテナの力を振るえてるのはリア・ファルのおかげ。
 その繋がりを断ち切ることが出来れば、ガイエンをあの異常な状態から解放出来るんじゃないだろうか。


「アイリ、あの指輪がお前が言ってたカーテナへの介入物かも知れない。王の選定石『リア・ファル』あれが変な声を出してから、カーテナはその力をガイエンにも与える様に成ったんだ」
「リア・ファル……アレがカーテナをおかしくしてる原因って事ね。きっとあの指輪が引き出す力は、ガイエンの欲望により強く反応してる部分だけなのかも……だからあんなに苦しくて黒いんだよ」


 アイリの言葉に、俺は「そうかもな」と返した。苦しくて黒いのは、その欲望だけじゃないかも知れないがな。そこにはきっと嫉妬とかもあると思う。
 アイリもガイエンも気づいてない様だけどさ。アイリは天然だとしても、ガイエンの奴はそれを欲望で見えなくしてるのかも知れない。


 俺は思う。アイツが手にしたいのは本当にアルテミナスなのかと。隣で伏し目がちにガイエンを見てるアイリを眺めてさ。本当は、俺達があの頃の様に成るためには、それを解決しなきゃいけないんじゃないだろうか。
 だけど、まずは正気、まとも……何でもいいがその野望を止めなきゃ何だろう。アイツを覆う無限の欲望……その中の真実をさらけ出させる為にはさ。


「わかったかアギト。私にはやるべき事がまだまだあるんだ。そんな道で、お前に戯れ言に付き合ってられる時間はもう無い!!
 案ずるなよアギト。利用されてる側なら直ぐにわかるさ。シクラを踏み砕き、アルテミナスを侵攻するモンスター共を全て葬むったときにな! 
 私はちゃんと勝ってやる。だからお前は安心して死ね!この世界に未練がないようにな!!」


 大きく両腕を広げたガイエン。するとリア・ファルから久々にあの深いな笑い声が聞こえてきた。そしてガイエンの体中……そして地面に広がった影からも、何か黒い物がわき出て来た。
 それらはガイエンの頭上で収束し始めてる。真っ黒な黒い球へと。その時、俺の手に暖かな温もりが重なってきた。


「アギト……大丈夫。今度は一人じゃない、私も居ますから」


 アイリのそんな言葉が耳から伝わり、体全体に巡ってく。一人じゃないか……それだけで変わるのは、心の支え位だ。
 アイリは戦えないしな。戦力になんて成らない……だけど不思議と、負ける気なんかしなくなる。アイリの戦いは例えなにも出来なくても逃げない事……なのだろうか?
 言葉はもう届かないし。目を逸らさずに、例えどんな事でも、見据える覚悟がアイリにはある。蚊帳の外じゃいたくないから……知らないと助けれないから……


「ああ、俺ももうこれ以上負けてやる気なんか無い! 今度こそ、アイツを止めてみせる。そうしないといけない。もう逃げたくなんか無いから!!」


 すると槍を覆ってる虹色の炎が一斉に弾けだした。ようやく、やっとで準備が整った様だ。槍を覆う炎は金色に近い赤を宿してる。そしてその炎は俺の体全体をも覆ってる。
 この状態で打てる渾身の一撃は一発だけ。狙いはやはりアレしかない。奴の左腕に光るリア・ファルだ。俺はアイリと繋いだ手を離す。
 するとその瞬間、後ろに居たアイリが何かに引っ張られる様に消えた。


「アギト!」
「アイリ!!」


 声のした方は前方だ。そこにはアイリの奴が再び影に絡め取られてた。


「これで心置きなくこの攻撃が撃てる!! 何をしてるか知らないが……お前程度の力では、これは防げはしない!!
 塵と化せアギトオオオ!!」


 ガイエンが叫んだ瞬間。頭上の球体は黒い光線を放出する。無限の欲望そのもの様な攻撃が、俺へと迫る。避ける事も許されない大きさ……そしてスピードだ。
 だけどガイエン……このスキルを甘みるなよ! 今の俺の状態はお前を倒す為だけの特別仕様だ!!


「ガイエン!! お前こそ、いい加減目を覚ませええええええ!!」


 俺は片腕を突き出して、そこに体中の炎を集める。赤と金色が混じりあった炎が、真っ黒に染まる力の渦を受け止めた。


「何!?」
「食らいつくえぇえぇえええええ!!」


 地面にめり込む足を踏ん張り、拳を握りしめる。その瞬間炎は大きく広がり、黒いその光線を覆いながら本体めがけて駆け抜ける。
 そして食らい尽くした炎はガイエンを大きく照らした。その間にも俺は奴の懐めがけて地面を蹴ってる。届かせなきゃいけないんだ! この一撃に全てを懸けて!!


「ガイエン!!」
「アギト!! だが私はまだ負けん!!」


 降り卸されるカーテナの力。それらは肩をかすり、足を持っていこうとする。でも俺は前を見る。そしてそのたった一点へ金色の炎を打ち込もう。

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