命改変プログラム

ファーストなサイコロ

さまよう意識



 再び彼らの中に燃え上がった炎は、私の唯一の成果と思っていいのだろうか。全てを出し切ってでも越えられなかったと思った壁は、でも実はまだ全部じゃなかった。
 私にはまだ……力を貸してくれる人達がこんなにも居る。


「遅いよ!」


 なんて野暮な事は言わないよ。もう一度、立ち向かってくれるだけでありがたい。希望を繋ぐ事を諦めないでくれて、みんなの力を宛に出来るのなら、私はまだまだ頑張るよ。
 だって私は、諦めが悪い女ですから。




 炎に包まれたタゼホの地で、今は正面からガイエン達と向かい合える。火の粉が夜空に舞い上がる様を視界に映しながらも、真っ直ぐに見据える先は奴らの向こう側。


「今更、腰抜け共が加わってどうにか成るとでも本気で思ってるのかセラ? 聖典に代われるほどの力がそいつ等にあるのか。
 よく考えろセラ」


 化け物じみてるガイエンのそんな言葉が投げかけられる。だけど私は無言で抱き抱えられてた状態から、地面に足を付いて立ちます。そして懐から出すのは、金色をした球体。
 それを握り締めると輝きを増し、私の手を離れて顔の前で形を変えていきます。まずは第一形態の剣の形へとその姿は固定されていく。


「セラちゃん……」
「セラ……」


 何も答えない私に不安でも感じたのか、シルク様達が私の名前を呼びます。でもそういう事じゃないの。私は手に取った金色の剣を組み替えていきながら、みんなには笑顔を返して前の奴らにはこれを送りましょう。


「一人の力と、みんなの力……それは比べる事なんか出来ないわ。それにアンタ達に費やす言葉の一秒がもったいない。
 だから全ては行動と結果で示してあげる!!」


 組み上がった武器は弓。私をその矢を言葉の終わりと共に解き放つ。


「結果か。見え透いたその結果さえ耄碌してるなセラ!!」


 振られる腕は私が放った矢を狙ってる。だけど当たりはしない。聖典程じゃないにしてもこの矢も自身である程度は操作できる。
 それにたったの一本。私にとっては息を吸って吐く程の操作だ。そしてガイエンは見謝ってる。この矢の狙いを。真っ直ぐに向かってた矢はガイエンの攻撃を避けるために大きく上昇、そして今度は一気に急降下。


 でも元々、たった一本の矢なんか驚異に感じてる訳もないガイエンは矢の軌道を見るのをやめてこちらを向く。とことん他人を見下す奴だ。
 手に入れた力の大きさと、絶対的な自信が生む隙。それが命取りだって教えてあげるわ。狙いを定める様に腕を伸ばして黒い腕を構えるガイエン。


「一撃、それで全てが終わる。天と地が入れ替わろうとも絶対……に」


 その瞬間奴の顔面スレスレを矢がすり抜ける。それは別に外した訳じゃない。


「天地が何だって?」


 そんな言葉の後、矢が突き刺さった地面が盛り上がる。そのせいで地面から少し浮いていたガイエンもバランスを崩した。そして一気に爆発。再び奴の周囲に土埃が蔓延する。


「ちっ!」


 だけど今回は流石に対応が早かった。そんな舌打ちと共に土埃を視覚指定したガイエンは腕を振り、カーテナの力で一気に土埃を払いのける。
 だけどそれも予想済みの事。土埃から出てきたガイエンの目の前には用意されてた複数の魔法がある。


「小癪な!」


 だけどその魔法も、もう片方の腕での攻撃で届く前に打ち払われた。けどまだまだです。みんなはもう、あの瞬間にそれぞれ動いてくれた。その時の私たちに言葉なんて不要だった。
 だから今も止まらずに私たちは走ります。両腕を振り切ったガイエン。その僅かな隙が狙い目。私は再び剣の形に組み替えてた武器を真っ直ぐに奴の喉元めがけて突き立てます。


「これでどうです!!」
「甘いわ!」


 その瞬間堅い音が周囲に鳴り響き、私の腕には痺れが走りました。防御なんて出来なかったはずのガイエン。けど私の前には黒い何かが足下から延びてます。


(これは……影?)


 そう言えばガイエンは自身の影も操れたんです。でもここまで影が硬質化するなんて予想外。そして私はピンチです。


「結局一人じゃないかセラ! どうにも成らなかったな」


 握りしめる拳が見える。拳と共に私にカーテナの力をぶつける気だ。握りしめる事であの力がどう変化するのかは知らないけど、単純に威力が上がりそうな気がする。
 それにこの距離……避けることも間に合わない。だけどその時、ガイエンの腕に炎の固まりが当たった。あれは……


「ナイスだよピク! 今のうちにお願い!」
「よし!」


 シルク様のかけ声で一気に数人がこちらに迫る。けどガイエンにはまだ片腕がある。そして案の定その片腕で走り出してた数人が潰された。
 でもその影から更に同じ人数が現れた。しかも既にスキルを纏ってる。どうやら、前に居た方は囮役だったみたいだ。これなら行ける。
 でも流石に上位種を気取るだけあって頑丈な体。ピクの炎が当たった腕は既に動き出してた。


「やらせない!!」


 私は体を回転させて影の盾を回避して剣を振るう。前方に気が散っていたガイエンは反応が遅れてる。影が来る気配もない。
 金色の剣は今度こそガイエンに届いた。握りしめた拳をスパっと寸断。その瞬間に、切り離された拳は影の様に消えていった。そしてカーテナの力も発動しなかった。


「――っつ! 親衛隊! 何をやってる。こいつらを通すな!!」


 その言葉でようやく親衛隊も動き出す。ここからが本番。数で勝られて、スペックでも上に行かれてる。この状況で私たちが狙うのはヒーラーを向こう側に通すこと。それだけだ。
 私は合流した仲間と共にガイエンが腕を振れないように攻撃を続ける。でもそれだけで四人も使ってる。これじゃ参戦しだした親衛隊の対処は出来ない。


 時間も無いし……一瞬だけでいい。道を造らないと! でも私達にはもう決め技がない。ガイエンを押さえるだけで精一杯だし、これもいつまで持つかわからない。
 影まで使われだしたら今の私達じゃ対処出来ないだろうし、どうするどうするどうする!?


「座標ロック。ハイ・バインドエンゲージ!!」


 その瞬間迫り来てた親衛隊の動きが止まった。奴らの足下には光輝く魔法陣。それが筒上に伸びて奴らの動きを止めている?
 そして後方か更なる声が届く。


「セラちゃん!」


 その声はシルク様……て、事はこの魔法も彼女の? 凄い、ここまで大量の同時バインドなんて初めて見た。でもそれだけに長くは持たない事を彼女は知ってる。
 ここが本当に最後の踏ん張り所なんだ!


「親衛隊は良いわ! 全員でガイエンを押さえる!!」
「「「うおおおおおお!!」」」


 親衛隊の対応に回ろうとしてた奴ら全員集めてガイエンを攻め続ける。反撃する隙を与えないくらいの攻め。けどそれでも当たってる気がしない。
 いや……届いてない? 切ってるのに切ってない様な、変な感覚が腕に残る。だけど止めるわけには行かない。


「シルク様は今のうちに! 今度こそ通してみせるから!」
「今度こそ行ける! だって俺達もいるんだからな!!」


 そう今度は一人じゃない。一人じゃないからきっとやれる筈。それぞれで支え合ってる今なら、カーテナの力にだてもっと強く立ち向かえます。


「はい! わかりました!」


 そんな声と共にシルク様は走り出す。目指すはアギト様の場所まで。それまで必ずガイエンを釘付けにしとかないと行けない。
 私達のスキルの光が絶え間無く瞬き続ける。ガイエンの体を裂き、腕を飛ばして確実に手数で私達は圧倒してる。でも異常に回復が速い。


 次見たときには既に傷らしい傷は一つもないんだ。切り落とした筈の腕だって一瞬で元通りになってる。だけどそれでもいいんです。
 私達はガイエンを倒したい訳じゃない。確かにそれが出来ればいいんだろうけど、私達じゃガイエンは倒せない……そんな気がする。


 けどだから、倒せる希望に託すんです。決着は彼らがつけ無くなくちゃ駄目だから……ここらでアルテミナスを巻き込んだ因縁にもケリをつけて貰いたい。
 何回も感じてるけど、私達は引き立て役ですよ。だからいつまでも寝てないで、とっと起きなさいアギト!




 繋がる光がチェーンとなってガイエンを多い尽くしていく。幾ら強大な攻撃でも放てないなら零と同じ。それを私達は絶妙なコンビネーションで実現してる。
 何も出来ない親衛隊はその光景を見て声を飛ばすだけ。流石にヤバそうに見えるみたい。実際、ここまで攻撃浴びせて倒せないなら、どうやってって事に成りかねない攻撃の嵐。


 でも何かがおかしいとはきっとみんな気付いてる。けどそんな何かは押し込んで、攻撃を続けるしか私達は出来ないんです。
 けど遂に、その何かを隠したガイエンは動き出す。


「いかせはしないさ。貴様等がどう足掻こうとアイツはもう死んでいるんだ!!」


 その瞬間、弾き掛けてたチェーンボーナスが砕け散った。そして私達の体が今度は止まる。それも痛みを伴って。気付くと地面から伸びた影が私達の体を貫いてます。


「そんな……あれだけの攻撃を受けて……」
「ふん、貴様等の攻撃など、受ける気にもなれん」


 え? それってどういう意味何だろう? そんな事を考えてる間に、ガイエンはクロスさせて顔の前で握った拳を勢い良く左右へ凪いだ。その瞬間、私達全員に襲いかかった衝撃は凄まじく、後ろを走ってたシルク様をも巻き込んで吹き飛びます。


「「ぐおおおおおおおおお!!」」
「「きゃあああああああああ!!」」


 そんな叫びが響いて消える頃には、私達全員タゼホの地に伏せていました。体が重い……さっきの一撃はかなり効きました。
 そしてここからじゃもう間に合わない。完全に私達の負けです。近づいてくる無数の足音。顔を上げると、バインドが切れた親衛隊が私達を取り囲んでます。そしてその囲いを割って進み出る人外。
 ガイエンの姿が憎たらしくこの目に映る。


「終わったな。貴様等は届かなかった。これが結果だセラ。お前達の力などその程度。これで諦めも付いただろう?」
「くっ……」


 私は何も言い返せません。だって本当にこれで終わりだから。それを思うと、こいつに向ける牙さえもう意味の無いものだと思える。
 でもその時でした。いつもいつも、この人は私の信頼を鷲掴みにします。


「本当に……終わったのでしょうか? それに結果なら、直ぐに出ます。まだ今は過程ですよ」
「何? 頭がおかしくなったのか? これが結果だ。貴様達は結局アギトにたどり着く事は出来なかったのだからな」


 まさしくその通りの筈です。ガイエンの言うとおり、私達は届かなかった。けど、そんなガイエンの言葉にシルク様はその後ろに視線を向けてこう言いました。


「だから……その結論がいささか早計だと言ってるんですよ」
「え?」


 その瞬間ガイエンから後ろ、私達にとっては前から微かな光が輝きます。諦めていたその光……それは暖かな回復系魔法の光です。
 シルク様が早計だと言った意味はこの事だったんです。


「何!?」


 ガイエンがそう叫ぶのも無理はない。それは私達にとっても予想外の事だもの。もう今この瞬間、この場に居る全員の瞳はその光景に釘付けです。
 本当に一体いつの間に、あの人はあそこまで行っていたんだろう。アギト様の体が柔らかな光に包まれて浮き上がる傍らで、その光景を作り出したあの人。
 それは確かにシルク様と共に、私達のバックを支えてくれてたあの子なんです。


「くっ、貴様!」


 ガイエンの視線がシルク様を貫きます。だけど彼女は余裕の笑みでこう言います。


「これだけの人数の回復を全て私一人で支えてるとでも思いましたか? 少し考えればわかる事だった筈ですよ。でも貴方の膨れ上がった自尊心がその目を曇らせました。
 まあその分私も、派手に動いた訳ですけどね。けどそのおかげで、完全に抜け落ちた彼女を通す事が出来た。
 無駄ですよガイエン。もう蘇生魔法は発動してます!」


 降りあげてた腕を振るえながら握りしめるガイエン。それでも彼女を倒す事は出来るだろうに、それをやらないのは諦めたから? けど本当に大金星。あの走り出したときから、シルク様は自身を囮にしてたって訳だ。


 実際完全に騙されました。私達味方までね。私は関心した目でシルク様を見つめます。すると申し訳なさそうに微笑んでくれました。
それにきっと


(ごめんなさい。何も伝えなくて)


 多分こんな感じの想いが入ってた筈です。けどそんなの全然問題なし。結果オーライだからね。敵を騙すにはまず味方から。
 まあ騙すって程でも無いけど、シルク様の作戦は見事にはまったわけです。私がシルク様の事を大声で呼んでたのもよかったのかな?


 あれでガイエン達と親衛隊には、アギト様を復活させる役割は必ずシルクだ! とか思わせられてたのかも。だから彼らはシルク様を通さない事だけを心がけてた? でもそれも勝手な思いこみ。
 私も後衛の誰かを……とか思ってた筈なのに、呼んでたのはいつもシルク様だったからね。ガイエン達にとっては居るはずのないヒーラーが出来上がってたって訳だ。
 全てが紙一重の綱渡り状態の様に思える事だけど、でも今この瞬間にその知らない賭に私達は救われた。必死にやって来た事が、あの頑張りが、無に帰せずに済んだんだ。




 アギト様を包む光が力強くその体に入ってく。あれが新たな命の火にきっとなってくれる。てかそういう魔法で、そういう演出だ。
 戦闘不能状態は体が全く動かない状態。力も込められなくて本当に、宙に浮いたらブーラブラしてる。けどそれももう終わるはず。


 あの光がHPをある程度回復して、感覚も全身に直ぐに行き渡る。だからもうきっと立てる筈。アギト様の体を、光がバランスを取って地面にゆっくりと足を付かせる。
 無くした色も取り戻し、完全に舞い戻ってきたはずのアギト様。だけど光が萎んでいくと、信じられない事が起こった。


「ふあああ、きゃ! って、えええええ!?」


 ちなみにこれは蘇生魔法を掛けてくれた仲間の声です。それだけ衝撃的な事がそこでは起こってました。そして流石にこの出来事まではシルク様も考えて無かった様子。


「そんな……どうして……」
「くくく、はーっははっははははははははは!! どうやら貴様達の希望は立ち上がる事さえ出来ないらしい。所詮奴などその程度よ。
 お前達が知恵を絞って得た結果がアレとはな。アレがどうやって私を倒す?」


 ガイエンの高笑いを私達は止められない。それだけ今、目の前で起こってる事が信じられなくて、頭が理解しようとしない。
 だって、私達はアギト様を復活させれればどうにか出来ると、本当にただ漠然と信じてたから……だから、これはようやくたどり着いた一生懸命の先にしては酷すぎる。
 私達の目のまで何が起こったか……それはアギト様が目覚めないって事。彼女の蘇生の光が、地面にその足を付けさせてもアギト様は自身の足で立つことは無かった。


 光が消え去った瞬間、再び彼は地面に崩れる様に倒れたんです。それが私達に信じれない。いや、あり得ない事でしょう。
 色も戻ってHPだってちゃんと黄色位まで回復してます。蘇生魔法が上手く行かなかった訳じゃない。でもだからこそ、理解できない。
 だってゲーム上は、アギト様は復活してるんです。けれど目覚めないのはどうしてでしょう。まるで心だけ、意識だけどこかに忘れてしまってる状態とでも言うのでしょうか?


「えっえ? 私何か間違った? 駄目だった? 何でこうなるの~」


 情けない声を上げて一番近くに居る彼女がアギト様の体をユサユサします。でも何も返らない反応。堅く閉じきった瞼はピクリとも動きません。


「無駄だ。起きないのはソイツが起きたがってないからじゃないか? お前達が思ってる程、ソイツは頼りになる奴じゃない。
 腰抜けで、他力本願で、期待に応えれない……そんな奴だ。結局お前達の望みも流すような奴。もういいだろう。起きないのなら、また眠らせてやろう」


 そう言うガイエンにはさっきまでとは違う余裕が見える。掲げてる腕には、既に無駄な力は入って無く、終わらせることにもう躊躇い何て無いみたい。
 ここからでも、ガイエンは終わらせる事が出来る。カーテナなら、このくらいの距離は難なく飛び越えられるからね。


 炎の熱と元の暑さをはらんだ風が頬を抜けていく。必死に目指した場所での、予想外の裏切り。起きたがってない? まさか本当にそうなのかな?
 アギト様なら……と思った。ガイエンを止めて、アルテミナスを救えるのはこの人だと……勝手に私が押しつけてた?
 私が勝手に延長戦を望んだだけで、アギト様は確かにそれを望んでないのかも。だってあの時、あの炎の壁の向こう側で、決着が付いたから彼は地に伏せてたんだ。


 一度負けたんだよ。それなのに私は、何を持って彼ならと思ってたんだろう。勝てなかった相手に勝つ事を期待するなんて、それは身勝手だよね。
 想いの押しつけなのか、私こそ他力本願なのかも知れない。生き返った筈なのに、立ち上がらないアギト様を遠くに見て、私はそう思う。
 でも……私はその時、勢い良くガイエンの腕に飛びつきます。


「そんな事……無い! アギト様は腰抜けでも弱虫でもないわよ! ただちょっと準備してるだけ。心がアンタと対峙する為に必要な物を探しに行ってるだけよ!」
「このっ! 見苦しいぞセラ! 奴は逃げたんだ! それを理解しろ!」


 そう言ってもう片方の腕をガイエンは振ろうとします。ヤバい……私は一本だけを押さえるので一杯一杯です。アギト様のHPは万全じゃない。
 だからこの一撃を打たせるわけにはいかない……のに!


「アギト君は確かに腰抜けではないと思うんですよ。私もね」
「シルク様!」


 もう片方の腕に飛びついたシルク様のおかげでカーテナの攻撃を防げた。だけど流石にこう言うのはウザいみたいなガイエンは私達二人を睨んで叫びます。


「貴様等、いい加減にしろおおおお!!」


 その瞬間足下から黒い影がせり上がってきました。そしてそれは私達を押し退ける質量を持ってます。まるでその黒い影が波のように私達を押し流します。


「「きゃあ!!」」


 悲鳴と共に、気付いた時には私達はガイエンの腕から放されてました。そして怒りを称えた様な表情で睨むはアギト。
 良く見ると、ガイエンの黒い腕にはさっき溢れ出てきた影が絡まってる様に見えます。


「アギト様をお願い!! 逃げて!!」


 私はとっさにそう叫びます。だって明らかにヤバいもの。今の私達じゃどうやったって守りきれない。けど、もしも本当にアギト様がガイエンの言うように目を開けたくないのだとしても、私達は信じるしかないんです。
 だから……お願い!!


「え? あ……そんな~」


 けれど情けない声を上げて涙目な彼女。確かに怖いのもわかるし、無謀かも知れない。けど今、アギト様を守れるのは彼女しかいない。
 前の方ではガイエンが腕を振り出してた。迷ってる時間なんて無い。


「お願い!!」


 私は短くそれだけ言います。すると彼女は「もう!!」と叫んでアギト様の襟部分を掴んで精一杯横に飛びました。
 その瞬間、ドパンと地面が弾け振動が伝わります。大丈夫だっのかかなり際どい……けど土埃の中から微かに見え出す二人の姿。


 私は少し安堵します。けどガイエンは潰すまで止めないみたい。既に次の攻撃に入ってる。けどその時、仲間達が動いてくれました。
 ここから私達の戦いは逃げと守りに変わります。

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