命改変プログラム

ファーストなサイコロ

希望の屍



 高く聳えてた炎の壁が夜空へと散っていく。虚しく感じる熱量と共に、私達の中の何かが黒い物で覆われそう。折角乗ってきた勢いとかが、プツンと切れそうなのが空気で分かる。


「ガイエン……」
「セラ、お前は付く側を間違えたな。もう少し、賢い女だと思ってたがそれは間違いか? 今ならお前の貴重なその能力を買って生かしてやる事も出来る。
 どうする?」


 ガイエンからの思わぬ言葉。そんな言葉のせいで私にまで視線が集まるじゃない。別に注目されるのは嫌いじゃないけど、こういう不安を乗せた様な視線は重いのよ。
 私の好み的には羨望ね――って、そんな事考えてる場合じゃない。意外だけど、ガイエンはどうやら私の事を買ってくれてたみたい。


 そして今、仲間に誘ってる。賢い女か……確かに私は自分で賢い女と思ってる。でもね、その賢さを人間関係でなんか使わないのが信条よ!


「お生憎様。私は確かに賢いけどね、付き合う人達はフィーリングで選ぶようにしてるの。だって計算で人付き合いなんて疲れるだけでしょ? そんなのリアルだけで十分なの。
 私はここで……今ここで出会った人達に満足してるわ。私のここでの優先度は楽しさが一番なんだから、それが感じれない貴方とは付き合えないわね。ごめんなさい」
「セラちゃん!」


 私の言葉を聞いて何故かシルク様が嬉しそうに抱きついてきた。う~ん、この人は何だか子犬みたいで可愛いな。まあ実際、ガイエンの手を払いのけた事で大ピンチな訳でそんな事考えてる場合でも無いんだけど……。


「ふ、お前はそう言うと思ってたよセラ。けどそれじゃ困るんだ。アギトも居なくなってお前も居なくなったらアイリが寂しがる。
 お前の事は嫌いだが、そこだけは頼りにしてる」
「アンタ……それが人に物を頼む態度なわけ? てか、私を欲しい理由全然違うじゃん!」


 最初は貴重な能力とか言ってなかったっけ? それって聖典の事じゃ無いの? だけどガイエンはその真っ黒な肌に真っ白に伸びた髪を翻して言ってのけた。


「何の事だ? お前の貴重な能力はアイリを楽しませる事だろう? 他に何がある? それとこれはお願いじゃない。
 お前が仕えるアルテミナスの新たな王からの命令だ」
「私は……エルフの国に仕えたのであって、化け物の国に仕えた覚えは無いわよ」


 今のガイエンをエルフとはだって言えないと思う。どう考えてもモンスターに近い姿してる。こいつを王にしてへりくだるなんて絶対に無理と断言出来るわ。
 それに元から私は一人だけと決めてるもの。私はアイリだから側に居てあげようと思った。それだけ。それだけで軍に居たの。


 まあアギト様の事もあったけど。それはもう昔の事。今は二人の幸せ願ってます。だからガイエンを王だなんて認められる訳がない。
 それに命令されるのとか嫌いだし。ガイエンは何だか自身の体を見直してる。そんな事をしながら口を開くんだ。


「化け物か……この姿の高尚さがわからんとはな。私はエルフより上の存在になったんだ。上の存在が下の存在を統べる事は当然の摂理。
 エルフが私に統べられるのは逃れられんぞ」
「それが高尚な姿ですって? ガイエン、アンタちゃんと鏡見た方が良いわよ」


 そんな私の言葉に後ろで抱きついてるシルク様も首を縦に振っている。すると今度は横から、声が聞こえてきた。


「無駄ですよガイエン様。こいつらには我々の姿を理解するなんて出来ませんよ。何故なら貴方は既に存在が違うのですから。
 きっとそれは神を見て我々が信じれないのと同じ事。存在の違いを下の物達は例えどこかで交わっても気づきもしない。
 そんな所でしょう」
「まあ、そうかも知れないな。ならやはりこうするしか無いか? 存在の違い……そして上下や優劣をてっとり早く示すにはな」


 ガイエンはそう言って左腕を斜め前へ振った。異様に細くて長い腕に見えたが、別にそれが飛んだ訳じゃない。だけどその瞬間、その腕が振られた方向に居た仲間が吹っ飛びました。
 そう、まるで見えない何かにぶつかった様に。


「みんな!! シルク様!」
「うん、ピク行くよ!」


 私は吹き飛んだ仲間の方を見て叫びます。そしてその意図に直ぐに気づいてくれたシルク様はピクを引き連れてそちらに。
 いつの間にか親衛隊はガイエンの側に集結してたから、後ろにはもういない。だから安心って訳でも無いけど、取り合えずシルク様を阻む敵は居ません。
 今の状況で誰か一人でも欠けたらアウトだと思う。だからこそ、シルク様とピクには頑張って貰わないといけない。


 だけど今の攻撃で他の当たらなかったみんなが明らかに真っ青な顔してる。実際私だって血の気が引きそうな位。けれどそれは許されない。
 自分を気丈に保って私は一人、ガイエン達に向かいます。


「カーテナ……存在が上に行った割には、私達と同じ次元の武器を使うんだ。未だに」


 それは精一杯の強がりでした。だってカーテナだよ。この国の力を無尽蔵に供給するバランス崩し。それに今じゃそのバランスが崩れまくってる様に見える。
 何であんな所にカーテナが? って感じだもん。奴の球状になった下半身のど真ん中にそれはある。
 もうカーテナを振ってもいない。持ってもいない。いろんなバランス崩れてる。しかも隙を付いてカーテナを手から放すなんて事もあれじゃ出来ない。


 だって体の一部に成ってるんだから。今のカーテナに弱点は無い……それはガイエンもそうだと言うこと。この国内でカーテナに持つ者に勝つなんて事は不可能だと言われてる。
 アギト様には簡単に投げれたんだけど、自分がいざその立場に成ってやらなきゃいけないと成ると、勝機が見えない。考えれば考えるほどに。


「強がってる割には顔色が良くないぞセラ。賢いお前なら分かってるだろう。私に勝つことは出来ないと。潔く降参してくれると助かるんだがな。
 国民はなるべく減らしたくはない。それが例え私を非難する者だとしてもな」


 そのガイエンの言葉はちょっと意外。だから私はそこを突いて会話を伸ばす。こんな一秒一秒を考えて話すの何て初めての事だ。
 言葉は慎重に選ばなきゃね。さっきの様に気紛れでカーテナを使われちゃ堪らない。だからってお世辞はNG。ガイエンは疑り深い性格してるから、あくまで自然な私でいないと直ぐに意図に気づかれちゃう可能性がある。


 このまま行くと最終的には戦闘は逃れられないだろうけど、せめて一秒でも長く生きる努力を。だってまだ全部が終わったなんて私には思えない。


「あらら、気遣い痛みいるわ。でもそれが邪魔者を片っ端から排除してきガイエンの言葉? 意外すぎて信じる気にも成れないわ。アイリの周りを全部自分の息の掛かった者で埋め尽くしてがんじがらめにしたくせに。
 今更どういう風の吹き回し?」
「どういう風と言われてもな。別にただ、あの頃とはもう状況が違う。私は既にこの国を統べる資格と力を手に入れてるんだからな。
 まあようは、お前達など潰す価値も無いと言うことだがな」
「確かにその通りですねガイエン様」


 そしてこの場に響く黒い奴らの高笑い。流石にこれには私がピクピクしてしまう。こめかみに血管でも浮き上がってそうだ。
 でも今飛び出してもガイエンの言うとおり、片手間であしらわれるだろう事は目に見えてる。だって私達はこの戦争の主役には成れない。


 多分……そうなんだと思う。私はアギト様に成れないし、アイリにも成れない。結局はただのメイドだもん。でもそれでも主人は自分で選びます。
 拒否だってさせて貰う。その為にもこの高笑いをぐっと堪えて我慢します。カーテナ……それに加護を受けた親衛隊共に一矢を食らわせられて、渡り合える何かを見つけるまでは。


「所で、さっきからアイリ様の事を随分気に掛けてる様だけど、その情けない腰を上げるには醜いと思うわよ。今の貴方の姿」


 私は実は知ってた。ガイエンのアイリへの想い。だってずっと側に居たもん。そして二人を見てた。それで気づかないのがおかしい。
 確かにガイエンはそう言う事を表に出しにくいタイプだけど、ずっと見てれば分かる変化ってのがある。それにその事を入れて考えれば、あの時の事も結構簡単かなって思うんだ。
 そして私の言葉でガイエンは歪んだ独占欲を示しだした。


「ふん、何の話だ? アレは私がカーテナを使うのに必要なだけだ。いわばただの物。だからこなくなって貰うのも困るから貴様が必要なだけだ。
 カーテナの源泉としてこの国に一生繋げて置く存在。それがアイリなのだよ。どこにも逃がしはしない。私の物に拒否権など与えない」


 何だか偉そうに言い切ったけど、つまりはアイリをどんな口実でも手に入れたいってだけにしか私には聞こえない。
 カーテナの源泉って事は王族で有ることに変わりはないんだろうし、そのアイリを所有するって、結婚でもする気何じゃないのかな?


 LROはそれが出来るから。そういうシステムがある。意中の相手同士なら、当人同士の合意の上で夫婦に成れる。
 普通は財産が同じに成ったりするだけだけど、アイリの場合は違いそう。だってアイリと結婚するって事は王族に入れるって事に成りそうだし……そこら辺もガイエンはきと考えてる。


「もしもそれが出来たとしても……アイリ様の心は手に入らないと思うわよ。そんな事しなくて、まずは真っ直ぐにぶつかりなさいよ!!」


 私はもっとここを掘り下げる事にした。だって実はずっとイライラしてたんだ。ガイエンの態度とかさ。アイリが気付かないのは実際仕方ないと思う。
 アギト様の事しか見てないし……それが極端だから周りに目を向けない。てか自分に好意を寄せてる人が居るなんて発想がない。


 アイリにとってアギト様以外はみんな『お友達』でしかなくてそれは揺るがないんだよ。だから実際ガイエンは可哀想でもあるけど……私が知る限りかなり前から三人は知り合いな訳だし、ガイエンが遅すぎる。
 何か訳が有ったのかそこまでは知らないけど、ここまでしなきゃいけない位に差は開いてた? 


「何訳の分からない事を言っている? アレは道具だ。それ以上でも以下でもなくな。私の為に成れる幸運な道具。それで手には入った事になる」
「アンタ、それで本当に満足なの? そんな事本当に思ってる? ヤケクソにでも成ってるだけじゃないの?」
「お前! ガイエン様になんて口の効き方だ!」


 周りの親衛隊の剣が一斉に私に向く。だけどここで止められない。


「いい加減にしなさいよ! アンタのその姿! 高尚なんて甚だしい。実は嫉妬に狂った哀れな心の姿じゃないの!? それを映してるのなら納得してやるわよ!」
「ふざけるなよ貴様! LROで色恋なんて……そんな感情は偽物だ! 作られた世界で偽りに覆われた中でのそんな思いに何の意味がある? 
 ガイエン様はそれを一番よくわかってらっしゃる!」


 そう言って親衛隊の奴らはガイエンに手を向ける。だけど何故か反応は無い。効いたかな? 少しくらい本音を抉れただろうか。
 実際そこまで的外れじゃなかったと思うんだけど。


「ああ……そ……りだ」
「え? ガイエン様? 何と?」
「ああ、その通りだ!」


 聞き取れない位の微かな声の後の大声量。どれだけ力入れて肯定してるのよ。それにその言葉だけじゃどっちを認めてるかイマイチ分からないし。
 だけど直ぐにそいつの言葉が続いてきた。


「その通り……この世界で感じる事など全て偽り。私が散々利用したアレに惚れた腫れたなどとよく言える。踏み台何だよ。
 アレは私に踏まれる為に有る物なんだ! それだけに決まってるだろう! それ以上その口でふざけた事を言うのなら、やはりお前も潰すことになるぞ。
 アギトと同じようにな」


 その言葉が出たとき、私はどう反応したのだろう。分からなかったけど多分、一瞬鼓動が大きく弾んだと思う。アギト……彼は本当に負けたの? 
 でもそれは、実はみたく無いことなのかも知れない。信じてると心で唱えながら、結果はもう目の前に有るんだもん。


 私達の前にガイエンが居る……それが顕然たる事実。でもそれでもを願わずには居られなかった。けどその姿を見ちゃったら……私達の戦いは終わりそうな気がする。
 辛うじて繋いでる糸が切れてしまいそうな気がする。それがとてつもなく怖い。だから今までなるべくガイエンの後ろは見ない様にしてた。
 だけどそれも限界なのかも知れません。私はゆっくりと口を開きました。


「そう……言えば聞いてなかったけど、アギト様は本当に」
「死んださ。私がここに居るんだ。それしかあり得ないだろう? それでも信じられないなら・・お前達にも絶望をと言うものを見せてやろう」


 そう言ってガイエンは親衛隊を退かして、そして自身も僅かに体を横にします。するとそこには今まで見えなかった二つの体が転がってます。
 一つは色が有ることが周りの火事の明かりで見える。でももう一つは……明らかに色が無くなってます。色褪せたその姿は見間違う筈もないあの人の確かな姿。
 それはもう、見たくなかった確かな絶望。


「あ……アギト様!」


 私は思わずそう叫びました。だけど反応が有るわけがない。私は展開してた聖典を全て自身の周りに集めました。それは勿論、目の前の敵を突破するためです。


「どうだ? これで理解しただろう。お前達の戦いは既に終わってると言うことを」


 その言葉、今の私達にはとても効くものだった。私はまだしも、周りのみんなにはとてもきつい。だってアギト様がガイエンを倒すことが勝利条件だったんだもん。
 そしてそれによって加護を失った親衛隊を倒せる。そう思ってた。けれどそれは今や潰えたんだ。今私達の目の前にはカーテナという絶対的な力が君臨してる。


 そしてその周りには加護を受けた親衛隊。希望も失ったこちら側に、それらを相手取るのはとても厳しい。私はみんなをどうやってもう一度奮い立たせればいいのか分からない。


「そんな……」「もうここまで……」


 そんな言葉がちらほら聞こえて、俯いてる人が多い。握った武器が垂れ下がるようで、そこに戦気は感じれない。私だって……もうだめかも知れない。そんな考えが頭を巡る。でもその時、後方から威勢の良い声が私達を貫きました。


「まだです!! まだ終わってなんか無い! 私達の希望はまだそこに有ります!! そうでしょセラちゃん!」
「シルク様……」


 後方から吹き飛ばされた数人を引き連れて横に並んだのはシルク様でした。そしてその瞳は私に何かを訴えてる。でも何言ってるの? もうアギト様は……


「目を伏せてる場合じゃないよ。よく考えて、そこにまだアギトは居るんだよ」


 その言葉で私は悟った。シルク様が何を言いたいのか。そしてアギト様がまだそこに居る意味。まだ僅かな希望がそこには繋がってる。
 私は真っ直ぐに前を見据えて言い切ります。


「そういう事ですかシルク様。確かにそうなんだって理解しました! まだ完全に私達は終わってなんか無い!!」
「そういう事です! みなさんももう一度協力してください! まだ諦めるには早すぎます!!」


 私達二人は意気揚々と声を張り上げました。それでも多少の強がりは有るけど、下がった気分が持ち上がったから振り幅の影響でこういう感じ。
 だけどそれでも周りのみんなの空気は余り変わりません。


「もう今更だよ……」「ここからどうしろっていうんだ」


 そんな言葉が聞こえてくる。確かにそう思うのも無理はない。私だって実は自信有りません。


「この雰囲気じゃあそこまでいくなんて出来るかどうか」
「だけど、時間がないよ。戦闘不能の蘇生限界時間まで後二分弱。それを過ぎたらアギト君はゲートクリスタルで蘇生されちゃいます。
 そうなったら、ここまで戻るので時間切れです」


 確かに、シルク様が言うとおり私達には時間が無い。シルク様が言ったことが私達の僅かな望みなんだから、後二分でアギト様の側までいかないと……本当の絶望が来ちゃいます。
 より正確にはヒーラーを一人でも向こう側に通さないと行けない。アギト様を蘇生させなきゃいけないからね。だけどそれが今の状況じゃとても厳しい事。


 カーテナと加護を受けた親衛隊を突破しなきゃ行けないんだから、それはとても一人じゃ無理です。シルク様は攻撃型じゃ無いし。
 だからみんなの協力は必要なのに……このままじゃダメです。無理矢理でも意味なんてないし……どうにかしてさっきまでの勢いに持っていかないと、あの壁を突破なんて出来そうも有りません。


「まだなんてもう無い。何が今のお前たちに出来る? もう諦めた方が身のためだ。何でここまでする必要がある? 無駄だ、何をしようとも」


 ガイエンの言葉が私のこめかみにチクチクきます。何でここまでって……それは――


「無駄なんて……それは私がここを、この場所を好きだら!! 無くしたくない、変わってほしくない場所なのよ!! それに私はここの全てを偽りだなんて思わない。
 偽りにしたいのはアンタの心でしょ!! ちゃんと向き合えば姿形も場所も関係無いわよ!! 通じ有って築いた関係は偽りじゃなく大切なんだからね!!」


 私はズバーンと言ってやります。そして同時に聖典を上空に一気に飛ばします。とにかく時間が無い。考えるより行動です。
 てかそれしか今の私には出来そうに有りません。


「セラちゃん。 私もやるよ!」
「ダメです! シルク様は下がっててください。シルク様には大切な役目が有るんですから!」


 そうアギト様を生き返らせるって言う大切な役目。ただでさえヒーラーは少ないんだから、前線に出せる訳がない。


「無謀だな。一人で来るか? まあそれもいいだろう。私の力を思い知らせてやろう。エルフを越えた私の力をな」


 そう言ってガイエンが前へ進み出てきます。余裕たっぷりなその表情を崩せるか試してみましょう。


「いい加減、その人を見下した様な態度は改めさせてあげる! 聖典!!」


 その叫びと共に、上空から無数の光がガイエンに降り注ぐ。こうなったらカーテナの特性を逆さに取るしかない。カーテナは視認出来ればどんなに離れてようとも攻撃できます。
 だけど逆に言えば見えなかったら攻撃は届かない。聖典を夜の闇に紛らせてしまえばこっちの物です。反撃できずにこのまま攻撃の隙を潰してやります。
 余裕なんて見せない。ガイエンのHPが無くなるその瞬間まで打ち続けてやる!




 爆発は徐々に大きく、激しくなってく。私が一方的に攻撃をしてる筈なのに……なんだろうこの不安。凄く嫌な空気がさっきから周りにある。
 それでも、そんな考えを振り払って攻撃を続けます。そんな時、ふと攻撃の中心で何かが動いた様な気がした。その瞬間です。
 私の体はとてつもない衝撃で地面に叩きつけられました。


「づああああ!?」
「セラちゃん!!」


 シルク様がすぐさま回復魔法の詠唱に入る。これは間違いなくカーテナの力。油断しないつもりだけどしてたみたい。戦闘開始直後から元の場所は移動するべきだった。
 そしてそうなってしまっては続けられない攻撃。煙の中から黒い悪魔が姿を現します。そしてどうやら、その体には傷一つ有りません。


「聖典か。確かに厄介な力だが、今の私には蚊ほどもきかんな。お前の自慢の力、今この場でたたき落としてやる」


 その瞬間奴の広がった闇から無数の陰が伸びていきます。そして夜空にいくつかの流星が地上に墜ちていく。

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