命改変プログラム

ファーストなサイコロ

苺色の決意



 侵略間の中休み的な日。俺とアイリは久々に二人で狩りに来ていた。アルテミナスはまだ一回も守り切れて無いし、攻め込めても居ないから他の種族の格好の的に成ってるんだよな。
 おかげで回し回しで攻められる事なって大変だ。侵略は侵略らしく、こっちの都合なんて考えないシステムに成ってて、どこかの国から届く侵略宣言は強制で突き返す事が出来ない。
 それにエリアと時間は向こうの都合という守る側にとっては不利ずくめ。まあそれでも大量の人員を必要とする侵略だから、三日前の宣言が鉄則でその間に守り側は人集めをしなければ成らない。


 インターバルが一日空くことに成ってるが、それでも四日後にはまた別の国との防衛戦は流石にきつい。負け続けてるから徐々に人も集まらなく成ってきたしな。
 どっかの国と同盟でも結べばこうも攻められ続ける事も無いんだろうけどな。同盟を結んだ国は侵略中に援軍として参加出来るシステムも有るんだ。
 それに単純に敵国が一つ減るんだし、それだけでも大きい。だがエルフという種はそれをやろうとはしない。誇りとかが無駄にあるし、何よりも他の種族を下に見てる所が有るからな。


 別にレイアード程過激じゃなくても、今までは一番伝統も有り広大で、それに人数も多かったし一番の人気種でもあるって事でそういう目をしてる人は結構居るんだ。
 それに一応侵略を取り仕切ってるレイアードのリーダーがアイツだからな。グラウドは絶対に同盟とか、ましてや他の国の援軍なんて認める訳もない。
 未だにエルフだけでこの事態を何とか出来る……と言うか力押しできるとか考えてるんだからな。信じられんバカさ加減だ。
 本当に折角久しぶりに二人きりで、アルテミナスの数える程のフィールドの一つに出てきてるってのにさ。
 あの何も考えて無さそうなグラウドのせいで侵略の事ばかり考えてしまう。ガイエンの奴も丁度良く用事があるとかで来てないのにこれじゃ台無しだ。
 もっとちゃんと頭を切り替えないとな。そう俺には目的が有るんだ。


「ふふふ、何だか新鮮だね。二人でこうやってるのって」


 頭の中で悶々としてるとアイリの声が梅雨を晴らす新緑の風の様に吹き抜けた。そしてその笑顔も俺だけに向けられるのはえらく久しぶりな気がする。
 それだけで悶々と考えてたのはどうでもよくなる感じ。最近は全然気づけなかった自然の空気のおいしさとかが感じれる。最近は爆発と埃っぽさと誰かの悲鳴とか雄叫びばっかりだったからな。
 忘れてたよ、LROのこの自然な感じ。


「ちょっと前までは二人でこうやってるのが当たり前だったのにな……」


 いつの間にか周りが随分と騒がしく成ってしまった。こんな事望んで何か無かったはずなのに、どこで間違ったかな? 
 まあいつまでも二人で……なんておこがましい願いだったろうし、アイリなら遅かれ早かれ気の合う仲間をいずれは見つけてたと思う。
 でもそれは、きっと今のアイツ等じゃ無かったと思うんだ。
 幾つもの木々を横目に俺たちは山を進む。適度に日光が差し込むように計算された山は涼しくて暖かい。そして木漏れ日は光のカーテンの様で美しく見えている。


「そうだね。でも今もそれなりに楽しいよ。ガイエンとは仲良く成れた気がするし、三人なら二人じゃいけない所も行けるしね。
 それに賑やか。アギトは今はイヤなの?」
「別にイヤって訳でもないけどさ」


 やっかいでは有るんだよな。アイリの心配そうな眼差しが何だか痛い。心配してるのはこっちなのにな。


「アイリは……その……最近楽しんでるか?」
「え?」


 俺たちの間に足音だけが響いてる。「タッタッタッタ」そんな音が二つ重なって聞こえてる。だけど次第にずれていく。そしてか細く成った音は聞こえなくなった。
 俺は足を止めて振り返る。すると丁度木漏れ日を浴びたアイリが立ち止まってた。


「アイリ、どうした? ごめん、変な事聞いちゃったな」
「……ううん、そんなこと無いよ。そういえば最近、そういう事考えてやってなかったなって思っただけ。そしたらね。改めて最近を振り返って考えちゃったの」


 いつもの優しい笑顔を溢れさせるアイリ。白い頬を桜色に染めて指で照れくさそうに掻いている。最近ちゃんと楽しめる事が有ったんならいいけど――そう思いながら俺はその答えを促した。


「で? どうだったわけだよ」
「えっとね、楽しんでた……とは思う。でもやっぱり後味が悪いかな。侵略はずっと負け続けだし、そこは楽しいだけじゃないかな」
「まあ、だよな」


 アイリの言ってる事はわかる。アイリは最近誰よりも真剣に侵略の防衛戦に望んでると思う。だから以前では考えられない位グラウドとぶつかってる。
 それに作戦とか防衛方法とか考えてる時は楽しそうに見えるし……けれどそれが通ることは無く、結局は敗戦続きに成ってるんだから一概に楽しい何て思えないよな。


「でもね。だから今日は一杯楽しみたいな。大好きなLROをおもいっきり! アギトとならきっと出来るよね」


 アイリのストロベリーブロンドの髪が揺れている。緑の背景にそれは良く映えて、木漏れ日に煌めく淡いピンクと自分だけに向けられるその笑顔は眩しすぎて思わず手で覆ってしまうほどだった。
 何だか心臓の鼓動がヤバい位に速くなってる。今にも破裂するんじゃないかって位だ。あれ? 今まで二人でやってた時もこんな感じだったっけ?
 何だか少し前の事が思い出せないぞ。当たり前……だったからか? けれどいつまでも手で視線を覆って無言な訳にもいかない。アイリはきっと俺の言葉を待ってる。だからいかにも平然と言ってやろう。
 ただし視線は木々に覆われた空を見つめて。


「当たり前だろ。誰がその楽しさを教えたと思ってんだよ」
「ふふふ、そうだね。感謝してますとっても」
「おう、崇めてもいいぞ」


 何だか照れ隠しにおかしな事を言ってないか俺? だけどここはアイリなら乗りよく返してくれる筈!


「そこまではちょっと……」
「拒否られた!!」


 何か真剣に。思ってもない発言だったからつい声にも出てしまった。すっげー恥ずかしいじゃん今の俺。まさかここで否定とは、アイリも成長したな。


「あははは、アギトはやっぱり面白いですね。これで元気ポイント一貯まったよ」
「元気ポイント?」


 何だそれ? って視線でアイリを見る。


「元気ポイントはやさぐれた私の心を満たしてくれるアイテムです。些細な幸せで元気ポイントは貯まります。そしてその元気ポイントが貯まった分だけ今日の私はハッピーだったって事に成るのです」
「ふ~ん、ちなみに今何ポイント今日の分は貯まってるんだよ?」
「……二十三ポイントかな」
「明らかに適当だよなその数字」


 どう考えても今思いついた思いつきだろうそのポイント制。それに二十三ポイントって微妙すぎる。何か不自然に目が泳いでたしな。


「そ、そんな事無いもん! 私の採点はいつも正確無比ですぅ~。学校の先生からもあの子の採点はいつも正確で間違いが無いから頼りになるわ~ってよく言われます!」
「どんな学校だよそれ! 生徒にテストの採点でもやらせてるのか!? 大問題だそれは!!」


 アイリも何だかおかしいな。でも実はいつもこんな感じだったような気もしなくはない……様な感じもする? 調子が戻ってきたのかそうじゃないのかイマイチ判断できないな。


「と、とにかく! 今は二十三ポイントだから今日で百点目指してがんばります! そしたらきっと明日からも楽しい日々が送れる筈です」
「まあ、だといいけどな。取り合えず頑張れよ~」
「むむ~何だかやる気の無い応援だね。私の元気ポイント獲得の為にはアギトの頑張りが必要なんだからね!」


 何だかいきなり無茶ブリを要求された気がする俺。そのポイント制に加入した記憶はないんだけどな。


「何で俺が関係してんだよ?」
「当然だよ。一人より二人で一緒に楽しめば楽しさは二倍・三倍・四倍と膨れるんだから。そしたら百点なんてあっと言うまです」


 木漏れ日の中両手を大きく広げて、笑顔を咲き誇らせるアイリがとても眩しい。でも二人で四倍まで膨れるかは微妙だけどな。せめて二倍位じゃないか?
 こう言うのって人数とかに比例しそうじゃん。それか気持ちとか。意識してる相手とだと確かに四倍に位膨れ上がったっておかしくはない――ってもしかしてアイリは俺の事を意識してそういったのか? 
 楽しさ四倍の相手としての認識をしていいのだろうか? う~んだがアイリは結構分け隔てないかいからな、下手な期待は命取りな気もする。


(ん? 期待してるのか俺?)


 そう思ったとたん、アイリを見て顔が赤くなる感覚が襲う。いや……まさか、でも……そうなのか俺? ヤバい結局また直視できないぞ。


「どうかしましたかアギト?」


 俺の様子がおかしい事に気付いたアイリが木漏れ日から出てこちらに歩を進めてくる。このままじゃこの火照った顔晒す事に成ってしまう。それは何かイヤだ。


「と、取り合えずアイリの目的がソレなら、俺の目的にもちゃんと付き合って貰うからな。だからいつまでもこんな所で立ち止まってないで行くぞ!」


 そう言って俺は顔を隠しながら走り出す。そして常にアイリの前にいつづければその内この顔も収まるだろう。


「ちょっと待ってよアギト。元からそのために来たんだからちゃんと付き合うよ~」


 そんな声が後ろから聞こえるが俺は最初の目的の場所まで振り向くことはしなかった。てか出来なかった。そしてちょっと怒ったアイリがスピードを上げるから何か追いかけっこの感じで山を走ることになったんだ。
 おかげでかなり速く着いたが、何だかしょっぱなから異様に疲れた。






 俺とアイリはゼーハーゼーハー荒い息を繰り返しながら前を見据えた。そこには山の斜面がぽっかりと崩れたみたいになってる。そして壁面から顔を覗かせる星を内側に飲み込んだみたいな黒いキラキラした岩。
 あれがまずは俺が求める物。


「のぞき込むと宇宙みたいで綺麗だね」


 何だか早速岩に近づいてるアイリ。両手で輪を作っておもむろに中を覗いてる。好奇心旺盛な奴だ。
 最近の大型アップデートで実装されたのは何も『侵略』だけじゃない。大きな実装はもちろんそれだが他にも追加クエストやら細かな変更点何かもあった訳だ。
 そして今やってる事もその中の一つ。追加されたクエストだ。


「さあーて採取するか」
「削るの? こんなに綺麗なのに」


 不安気な顔を見せるアイリ。槍の代わりに採取アイテムであるピッケルを握る俺は相変わらず浸ってるアイリに言ってやった。


「あのなアイリ。削ったって別にそのデカいのが欠ける訳じゃないんだぞ。だからそこどけ」
「あ、そっか」


 こういう所はLROも普通のゲームと同じ。枯渇する事なんて無いし、沢山のプレイヤーが同じ場所で採掘したってその分穴が空くわけでも木が切り倒される訳でもない。
 プレイヤーの開発可能エリアは決まってるからな。オブジェクトに影響無くアイテムは手には入る。その位流石にわかっておけよな。
 俺はピッケルを何回か叩きつけて落ちてきた破片を拾う。よし、間違いないな。


「次行くぞ次!」
「ねえ、何が手にはいるの?」
「それは秘密だ。いいだろ別に、今日はLRO巡りを楽しめばアイリはいいよ」


 強力な敵なんて出ないからな。そこまで行く必要も無いし。でもやっぱりアイリは知らないらしい。それは好都合。結構侵略以外では話題になってるクエスト何だが、アイリはLROの情報を集めないからな。
 計算通りだ。


「うう……ちょっと納得出来ないけどアギトがこれを……その……デートだって認めてくれたらいいよ。それで」
「は!?」


 何? デートって……今更のような。だって前はいつも二人だったし、それなら前はいつもデート? とはやっぱりアイリの中でも違うんだろう。
 俺もデートって感じで意識してた事なんて無いし、粋なりそんな事言われたら動揺する。アイリも恥ずかしそうだし、そんな顔されたら益々意識するじゃん。
 でも、アイリもデートしたいって思ってるって事だよな? それも俺と……なのかな? 


(こここれは、これ以上の詮索を避けるための苦肉の策としてだな……一番最善と思われるから)


 自分の中で沢山言い訳を述べてから、動揺を隠して告げる。
「え~と、まあ……それじゃあ今日はデートって事で」
「うん!!」


 アイリの笑顔が花開いた。そしてその声は晴天の空に突き抜ける様に響いた気がした。






 それから俺たちは各地を廻って順調にアイテムを集めていく。本当に危険も無くて、長閑な旅をしてる感じだった。そして今いる丘は最後のアイテムの入手場所。
 目の前にある十字架は、この世界で作られた英雄の墓。そこに一滴のアイテムを垂らすとある花が一輪咲くんだ。そしてそれが最後のアイテム。


「よし。ミッションコンプリートだな」


 俺はそう言って花を摘んで立ち上がった。空は青から最後に暖かさを感じさせる様な橙に変わってた。太陽も名残惜しそうにしてる感じだな。
 一日で一番影が長く延びる時間。横側から差し込む黄金色の日差しは周りの景色を煌めかせる様に見える。草木の僅かな反射も眩しくて、黄昏という間がお互いの顔を隠してしまう。


「うん、おめでとうアギト」


 アイリの顔も見づらいな。笑顔だってのはわかるけど、光が眩しい。でも何だか今日一日ずっとデートって事を意識したせいでまともに向かい合え無かったから、丁度いいのかもしれない。
 今なら……この一日の中の僅かな黄昏時だけなら……俺達は向かい合っていられる。


「付き合ってくれてありがとうアイリ」
「まだ付き合ってはないよ私達!!」
「は?」


 何言ってんだアイリは? まだ付き合ってないって、それは……


「あわ……はわわ、今日付き合ってくれたって事か……何言っちゃてるの私……間違っちゃった」


 アイリはもの凄く焦って体を動かしてる。顔に両手を当てて、光のせいでの見間違いじゃなかったら頭から湯気が出てる。
 いや、それはこっちも恥ずかしいんだけどな。何か向かい合うのがまた精一杯になった。そして流れる長い沈黙。本当は十秒位だったかも知れないが、それが一時間位に感じる程だ。
 俺ってもしかしてアイリの事が……そう考え始めた矢先にアイリが声を出した。


「あ……ああああああの、どういたしまして!!」


 無かったことにしようとしてる! でもそれは曖昧な今の自分にも都合が良くて……モヤモヤはするけど、必死に頭を下げてるアイリを見てるとまだいっか――と思った。


「アイリ」
「えっとね。あれは、そのえ~と何て言うか……」


 テンパってるアイリは面白い。だけどこの恥ずかしさはお互いに結構良くない気がするから、俺はアイテム欄から飲み物を取り出してそれをアイリに投げた。
 瓶の容器に入ったそれは、放物線を描きながら黄昏色の光を反射してる。


「わっ! ちょっと危ないでしょアギト!」
「ちゃんと声掛けたじゃん」


 そう言って俺は何とか笑ってみせる。いつも通りに笑えてるかな? アイリの手にちゃんと収まった瓶。少しの間こっちを睨んでたアイリだったが、直ぐにその瓶に逃げ道を見つけたみたいだった。
 プシュッと音を立てて瓶の蓋を外す音が聞こえた。そしてコクコクとその細い喉を鳴らしてる。みるみる消えていく瓶の中身に正直驚いた。
 いつもは上品に飲むのに、それだけテンパってたんだろう。そして俺も同じアイテムを取り出して喉を潤す。飲み終わったときには、お互いの顔が既に確認できる様に成っていた。
 そして少し冷えた風が肌を抜けていく。黄昏色だった空は太陽から離れた所から藍色と紫が混じってた。


「たのし……かったねアギト。今日一日本当に……満点ポイントも百点越えしてるね」
 そんな言葉が風に乗って聞こえてきた。アイリは霞掛かった空を見つめてる。湯気も収まり、声にもいつもの冷静さが戻ってる。手か満点ポイントはちゃんと数得てたんだな。ネタだと思ってた。


「はは、満点ポイントな。百点越えしたのなら良かったよ。俺も楽しかった」


 同じように次第に暗く成っていく空を見つめてそう言う。実際満点ポイントの判断基準は分からないが、俺も久々に思いっきりLROを楽しんだ。確かに百点なんて簡単に越えた感じだ。これがLROって感じだったと思う。
 耳を澄ますと夜にいざなう様な風の音が聞こえる。適度に涼しい風が火照りだそうとする肌を冷ましてくれて、だから俺もいつもの様に喋れてる。


「ねえアギト。これからもLROは楽しい世界のままであれるかな?」
「何だよそれ? どう言うことだ?」


 アイリが言ったことの意味がイマイチわからなかった。これからもってLROはLROだろう。偶に大きなアップグレードがあったりして常に進化していく世界。
 だから必ずしも良いことばかりじゃないかもだが、基本楽しいって事に変わりはないと思うけどな。だけど俺のこんな考えとはアイリの言ったことの意味は違ってた。


「私はね……変わるだけじゃイヤだよ。守りたい物もある。終わらないで欲しいもの……それはアルテミナスだよ」
「それってアルテミナスが無くなったら楽しく無くなるって事?」


 アイリは藍に染まる空に頷いた。


「だって思い出いっぱいだよ。それに好きなんだ私。あの国が大好き。初めて降り立ったとき、こんな綺麗な国に来れて良かったって思った。
 エルフにして良かったなって思ったの。だから無くなっちゃうのは嫌だよ」


 アイリの声が空気に消えていく。光は萎んでいき、影は夜に飲まれていった。


「だからあんなに頑張ってたのか」
「うん……だけどどうしたって私の声はなかなかみんなに届かないね。みんなアルテミナスなんてどうなっても良いのかな?」


 大多数はきっとどうでもいいと思ってそう……と言うか最近の侵略事情で諦めてる奴ら急増って感じだな。だけどこんな事アイリに言えるわけがない。
 アイリは一人でもずっと頑張ってきたんだ。誰よりもアルテミナスを想って。それに郷土愛が無い訳じゃないと思うんだ。誰だって自分の生まれた場所が無くなるのは嫌だろう。
 それが例え仮想でもさ。でも仮想だからこそ誰もが諦め切れるのかも知れない。それにやっぱりプライドも邪魔してる。それに一番の問題はアイツだろう。
 グラウド……奴がもっとまともならここまでの事態には成らなかっただろうし、アイリの言葉を聞く奴ももっといたはずだ。
 慰めにも成らないかもだが、俺はたった一つ確かな事を言うことにした。


「俺は……少なくとも俺はアルテミナスが無くなっても良いなんて思ってない。たった一人じゃ気休めにも成らないかもだけどさ」


 俺の言葉を受けてアイリは首を振った。そしてようやくこっちを見て笑顔をくれる。


「そんなこと無い。誰よりも何よりも心強いよ。アギトがいてくれたら、私もっともっと頑張れる! 目指すんだ。またアルテミナスがあの一番星の様に輝ける日を!」


 アイリが指さした先には確かに何よりも早く輝きを放つ一つの星があった。その星は確かに輝いてたが、俺にはアイリの光の方が眩しく感じれた。
 諦めない……その強さの光がさ。そしてそんな光に照らされるアルテミナスが見える気がした。






 そして次の集会の時、アイリと俺とガイエンは集まってた。どうやらガイエンも仲間に加えたらしい。そしてそんなガイエンは言い放つ。


「それを実行する上で丁度良い作戦が近々始まる。王族に連なるクエストへの挑戦をグラウドは考えてる。それを達成するとあるアイテムが手に入ると言われてる物だ。
 アイツも箔を付けたいんだろうが、その達成条件は謎のまま。だがそれだけやる価値がある。アルテミナスを救う為にはな」


 その言葉にアイリは乗った。そして俺達は遂に進み出る。『カーテナ』という王家の宝剣を求めて。

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