命改変プログラム
新たな力
淡い緑を映したような小さな泉。もう一度ここに立つまでにかなり苦労した。でも僕は再びここに立てている。これも仲間のおかげだね。
後ろに居る三人と一匹。具体的にはシルクちゃんに鍛冶屋にセラ、そしてピクだ。ああ、それともう一人忘れちゃいけない人がいた。
テッケンさんにも勿論感謝だよ。さて、一体彼はどうなったのだろうか? 周りに大挙してるモンスターの群を見る限りやられたという事か? でもテッケンさんは自信あり気だったし、逃げ切れたのかも知れない。言ってた時間分は持たせた訳だし、上手くやれたと信じよう。
「急ぎなさいよ。アルテミナスが気になるわ」
「分かってるよ。こっちだって……気になることがある」
セラの言葉に僕は歯切れ悪く応えた。あれは僕しか知らない事。体験してないことだ。
意味が分からない事が多々だったけど分かったことも勿論ある。取りあえず当夜さんはLROには居ないらしいという事だ。LROとは空間が違うとか言ってた。
それは仮想の中でLROが立っている場所と当夜さんが居る場所が違うと言う事だろうか? 僕がリンク機能を使って行ったセツリの世界みたいな別の場所……多分そんな感じなんだろう。
それとセツリの事だ。システムは彼女を手放さない……不穏過ぎるその言葉。自ら動き出した目の前のこいつらはセツリをリアルに戻したくないって事なのか?
そしてアルテミナスに行ったという親玉らしき存在の奴はセツリを狙ってるとも考えられる。それに僕はまだセツリを分かってないらしいし……嫌な予感や懸念は払えない。
別にこの事を隠してる事はないんだろうけど、今はまだいろんな事がバタバタしてる感じで確証も無いことは言えないよ。
それに伝えるならみんな一緒の方がいい。それでもそのみんなにはセツリは含まない方が良いんだよな。当夜さんに関する僕たちの嘘への疑念は抱かせたくない。
ちゃんと伝えなくちゃ行けないときは多分来る……けど、それは今じゃなくていいと思うんだ。セツリには向こうに戻りたいと思っていてほしいから。
(はは……)
なんだか罪悪感みたいなのから笑いが起きた。心の中だけの自分に対する笑いだ。だって知ったから……何か一つを隠すために、人は更なる嘘を重ねなくちゃいけないって事を。
それは仕方ない事なのかも知れないけど、やっぱりいい気はしない。だってセツリの信頼を利用してる。助けたいってのは難しい……本当に果てしなく。
「何よ、アンタの気になる事って?」
「ああ、うん。後で話すさ。セラが僕らを仲間と認めてくれたら」
「ふえっ!? ななななに言ってるのよアンタ! 劣等種が、ちょっと協力したくらいでいい気になるな!」
頬を染めたセラから抗議の声が飛んできた。少しは認めてくれた感じがしたんだけど……素直になれない奴だな。一緒に危機を乗り越えれば、それはもう仲間なのに。
「さあ、手にしたアイテムを落としてください」
この声は泉の精。小さな泉の中央部分――きっとそこが定位置、に戻った彼女は僕の行動に指示をくれる。僕は自身の残った腕に握られた白銀に輝く角を見つめた。
正式名称『雷精の角』これがシルフィング復活のキーアイテム。確かにそれだけの価値があったよ。あの苦労……というか試練だっけか?
半分以上引き延ばされたあの試練はゲームバランス的におかしかった。まあ存在がおかしな奴がやったんだからそれは当然なのかもしれないけど……ん?
「あれ? 麒麟はどこいったんだ?」
「あの子は帰りました。試練は終わったのだから当然でしょう」
「ああ……まあ」
僕の質問を泉の精は歯に着せず流した。でも、確かに試練が終われば麒麟は用済みなのか? 元々その為の存在みたいだし、それは当然なのかも知れない。けど、確かめたい事もあった。
「麒麟は自我に目覚めて無いのか? だって麒麟のあの状態はおかしかったし、てっきりお前と麒麟はグルになってると思ったけど?」
そうそこがハッキリしない。麒麟はウエポンアライアスに沿った行動をしてたのか? させられてたのか? だってあの精霊化は異常だろ。
あんなのされたら、これからウエポンアライアスに臨むプレイヤーはどうなる事やら。いや……そんな事じゃないな。僕が知りたいのはそんなこれからもあり得るかどうかも分からないウエポンアライアスの事じゃない。
今のLROは遂に……というかとうとう動き出したって感じだ。これはもう僕らだけの問題じゃすまない域に達してる。それが一体どこまで出来るのかを知りたい。
自我の覚醒は感染するみたいに広められる様だし、後はその力。僕らはシステムに対抗しえるのか?
「おかしな事を言いますね。言ってみれば私達、ここで作られた全ての存在はグルの様なものですよ。大きなシステムの子として生み出された訳ですからね。
母に逆らう事が何故出来ましょう。あの子が自我に目覚めてる? そう思える原因があの状態なら、貴方は勘違いしてますね」
「勘違い?」
それはどういう事だろうか? 泉の精の言葉はとても興味深いものになりつつある。元々僕が臨んだのはシステムと言う大きな物だったのかも知れない。
アンフィリティクエスト……そこにいつも立ちはだかったのはそれだろう。越えなきゃ行けないものとしていつもシステムはそこにあったんだ。
そしてそれを成さなきゃセツリはきっと救い出せない。
泉の精はその姿を月明かりと周りの光に照らしながら続きを紡ぐ。
「ええ。私達は自我の目覚めでプログラムからの解放を成し得るけど自分自身をシステムから切り離した訳じゃない。既存の延長線上に私達は居るわけです。
幾ら自由を手に入れてシステムの裏側を覗ける様になったと言っても、私達はそれに手を加える事は出来ません。自身をラスボスに作り替えるなんて事は出来ないんです」
「それじゃあ、麒麟の精霊化は元々アイツに付いてた能力ってことか!?」
泉の精は頷く。それは大きな情報だ。自我を持った奴らは予想外の動きはするけど、能力や力が向上する訳じゃない。既存のシステムに沿ったままなら僕らにも希望はある筈だ。
元々ゲームはクリア出来る様に作られてるんだからね。それでも普通は個々で来るモンスターが集団になるだけで難易度は格段に上がるだろう。
周りの獣人系モンスターの群が良い例だ。元から奴らはある程度固まってるらしいけど……流石にここまでじゃないだろう。
手の出しようがない。でもふと思った。こいつら全員に自我があるのか……と。
「そんな訳はないですよ。そんな無闇に自我を持たせたら頭の悪い彼らの事、何をしでかすか分かりません。手綱を付けて引っ張ってるだけですよ。
それにこのLROの全てに自我を持たせたら流石にパンクしてしまいます。ここの崩壊は望む事では無いですから」
確かに全ての奴らに自我なんて超高度なAIが量産されたら幾らなんでもLROでも耐えられないだろう。それこそ処理落ちとかしそうだ。てか、手綱だと?
「さっきお前システムに手は出せないって言ってなかったか? それなのにアイツ等には手綱を付けて自由に動かす事が出来る。矛盾してるだろ!」
「例外は居ますよ……どこにでも」
僕の言葉に泉の精は妖しく微笑んだ。それは今まで会話の中だけで見てきた微笑みとは微妙に印象が違う。それはあっち側――敵側の印象だ。例外って言うのは大体予想が付くな。多分――
「あの方……とか呼んでる奴のことか?」
「ふふ、そうですね。あの方……あの方々は特別です。元が違うらしいですけど、後は知りません」
元が違う? それはどういうことだ? それに後は知らないっていきなり大雑把になったし……教える気が無い訳じゃなくて本当に知らない事なのか?
そのあの方ってのも全部話す事なんかない訳だしな。あの方か……一体何者なんだろうか? システムやプログラムに介入出来てそれを自由に操作出来るのならこれ以上やっかいな敵はいないだろう。
そんな奴がセツリを狙ってるのなら大ピンチだ。でも当夜さんが言ってた「システムが手放さない」とは矛盾が生まれる気もするな。
あの方は元が違うのならなんでLROのシステムが適応されたようにセツリを狙う? それとも根底はやっぱりLROのシステムに沿ってるからなのか? これは自分の目と口と耳で確かめるしかなさそうだ。元が違うってなんだよそれ。
「なんだか暗くなって来てませんか?」
小さな声で少し脅えた感じにそう言ったのはシルクちゃんだ。言われて辺りを見回すと確かにフィールドを形作ってた電撃の柱が薄まり出してる。それに伴って自然と辺りを照らす光も薄まってるから暗くなったようだ。
みんな普通にしてたけど不安がらない訳がない。だって僕達はこの森を無事に出られるか分からない。というか、出れない確率が高いんだ。
完全に取り囲んでいるモンスターの数は最早数えたくもない。きっと誰も数えてなんか居ないだろう。暗い現実は見たくないからね。
転移結晶があれがどうにかなったかも知れないけど、あれは麒麟に砕かれた。実は二個ありました――ってのを期待したい所だけど、かなり高価な物だって言うしそれは期待出来ない。
現にあるんならここでセラが出し惜しみする理由なんて無いからね。
「くぴー! クピィィィ!!」
桜色の鱗を持ったピクがこちらを睨みまくるモンスター共を威嚇してる。羽を精一杯広げて、それはきっとシルクちゃんを守ろうとしてるんだろう。
その姿はなんだか勇気をくれる。小さなピクが一生懸命主を守ろうとしてるんだ。僕達も諦める訳には行かない。HPは全快だけど精神面の疲労は決してとれる訳じゃない。だけど弱音は吐けないよ。実際だれも吐いてない。
やっとで勝ち取った勝利を流されたくはないし、みんなそれぞれ自身の知恵を絞ってる所だろう。
「確かにフィールドは消えかかってます。お喋りはこのくらいにして始めましょう」
そう言うと泉の精はシャボン玉みたいなので包んでいたシルフィングを泉に沈めた。そして促す様に僕を見る。僕は今度こそ手の中の『雷精の角』を泉に落とした。
すると泉がその有りようを変えていく。緑だった水は七色かそれ以上に増して雷精の角の影響か水面を突き破って空中にまで白い雷が何本も噴出している。
電気のスパークする音が耳を強く刺激する。インクや絵の具を筆で混ぜる様に泉の色は混合していく。最後には白か黒になるのだろうか?
そう思って見つめていると後ろから「綺麗」やら「おお~」やら「ふ~ん」といった声が聞こえた。どうやらみんな始まったシルフィング復活に興味津々みたいだ。
当然だね。そのためにみんながんばってくれた訳だし。その時、泉を見つめる精が声をだす。
「まだ足りません。貴方の砕けた輝きはこれだけでは無いでしょう。犠牲には救済を……これを成してくれる為に犠牲になった輝きをここに」
「犠牲になった輝き……」
それはきっとニーベルだろう。やっぱりウエポンアライアスは一つの武器が砕ける仕様になってるのか? でなければこれは自我を持った泉の精の慈悲なのか。
だけどどちらでもよかった。たった一回だったけど、ニーベルをこのままにして起きたくはなかった。だってこいつも自分が願って、そして起こしてくれた奇跡みたいな物だから。
それはとても短かったけど……全然上手く使ってやれなかったけど……それでもやり遂げてくれたもう一つの相棒だ。
僕は砕けたニーベルを鞘ごと腰から引き抜いた。その時横から顔を出した鍛冶屋が聞いてくる。
「犠牲? お前ニーベルをどうした?」
なんだか嫌な予感を感じたのか鍛冶屋の顔には青い縦線が見て取れる様だ。てか、知らなかったのか。そう言えば折れた瞬間は鍛冶屋自身が作った高い壁に阻まれてたから見てないんだ。
どうりで今まで触れなかったはずだ。知ってたら真っ先にその事を取り出す筈だもん。さてどうするか……でももうしょうがない。世の中には知らない事が良いって事も多々あるけど他人の興味は防げない。
「ごめん、鍛冶屋――」
僕は真っ直ぐに鍛冶屋を見つめる。有る意味それで鍛冶屋は悟ったのかも知れない。でも僕を責めようとはしない。まるで次の言葉を待ってるかの様に握りしめた拳を震わせている。
やばいな。ここはあまり深刻にいかない方が良いかも知れない。これ以上、鍛冶屋の愛する武器を事も無げに「折った」なんて言ったら鍛冶屋の自信が喪失するかも知れない。僕はそうとっさに判断した。
なるべく明るく、重くいかずに、意気揚々と言ってみよう。
「折れちゃった――ごはぁ!」
殴られた。その勢いで勢い良く泉に落ちる。そして片手しか無く、元々泳ぐためにはスキルがいるらしいLROでそんな物持ち合わせてない僕は溺れる溺れる。
「死ね! 死ね! 貴様は一番武器を侮辱してる!」
ゲシゲシと何とか出す頭まで蹴られる始末。本当に殺されそうだ。しかも街の外だからHPもちゃんと減っている。
「ごばぁ……待て……鍛冶ップハァ屋……助け……」
これは不味い。鍛冶屋は怒りで加減を見失ってる。今の鍛冶屋には何を言っても無駄だろう。だからといってこの拷問を受け続ければ死んでしまう。僕は他の二人に助けを求めるしかない。
そして目が合ったのはセラだった。本当なら優しく一生懸命なシルクちゃんを希望する所だけど贅沢は言ってられない。
僕はニーベルを離した右手をセラに向ける。元々この泉にニーベルは落とす予定だったしいいよね。別に自分の命と天秤にかけたわけじゃないよ。
するとセラは鍛冶屋の横に来て、膝を折って屈んでくれた。おお、意外にも普通に助けてくれるのか? と思った僕は甘かった。いや、手を掴んでくれたまではよかったんだ。だけどその後の行動がおかしかった。
「え~と、こっち側だから――って暴れないでよ! やりにくいでしょ!」
現状はこうだ。鍛冶屋に頭を泉に沈められそうな状況の中、捕まれた腕は拳の先一つを伸ばされて表示された文字列をプッシュしなんだか見覚えがある紙に署名させられようとしてるんだ。
というか、この状況で暴れるなと言うか? それは「死になさい」と言ってる事と同義だぞ! てか、その紙はアレだろ? 自分の口からは言いたくないアレだ。
「奴隷契約書が濡れちゃうじゃない!」
言っちゃった。てかやっぱりそれか! もう二度と見ることは無いと思ってた物を最低のタイミングで出すんじゃない! それもねつ造だ! いや、この場合は僕の指でやってることだからねつ造ではないのか?
いや、んなわけない。これは立派なねつ造だろ。映画とかである悪い奴らが本人の指や眼球を切ったり抉ったりしたのを使ってセキュリティを抜けるのと同じ事だ。
やっぱりセラはセラだったんだ。こいつにただで助けを求める事自体が間違いだった。
「ぬぼばぁぁ!」
「きゃあ! ――あっ、逃げられた。後一文字だったのに」
まさに間一髪だった。腕を勢い良く引いて何とか脱出した僕にセラのそんな言葉が届いたんだ。こうなったらもう助けを求められるのは一人しかいない。
いや、元々一人しかいなかったのかも知れない。僕は必死にそんなたった一人の天使に手を伸ばす。
「シルック……バフッ……ちゃっん!」
「スオウ君! 捕まって!」
天使の様なシルクちゃんは何も躊躇わずに僕に向かって手を伸ばしてくれる。ああ、これだよ。この優しさが僕は欲しかった。セラとは大違い。月とスッポンだな。
彼女の白魚の様な手に向かって必死に腕を伸ばすけど、さっきセラからの脱出で僕は地面から少し離れてしまってた。そのせいか絶妙な感覚で僕の腕はシルクちゃんに届かない。
拳一個分……そう拳一個分なんだ! そこで危機的状況下で冴え渡った僕の頭は閃いた。一旦腕を伸ばすのを止めてウインドウを表示させる。
そしてアイテム欄へ指を滑らせて指定した一つのアイテムを手元に表す。そして僕は勢い良く腕を伸ばした。
「がぼっ――がぼぼばぁぁぁ!」
「スオウ君!」
そして今度こそ二人は繋ぎあった。届いたんだ僕の腕は……そう文字通り僕の腕が拳一つ分を埋めてくれていた。構図は僕の腕の先に僕の腕だ。僕はアイテム欄から『スオウの腕』を出して握って伸ばした訳だった。
これで助かった……そう思ってシルクちゃんの顔を見やるとなんだか顔色が悪い。真っ青してる。そして視線はある一点で固定されていた。それは僕の腕を掴む彼女の手ら辺だ。
そして猫がするような身震いみたいなのが繋がった腕から全身へと走って広がる。そして――
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
――大絶叫と共に僕の腕は振り払われて顔面に吸い込まれた。そして世界が暗転していく。もう僕は戻れないよ。沈んでいく体を自分ではどうする事もできない。
そうだった……シルクちゃんはちぎれた腕をとっても怖がってた。こうなることは目に見えてたんだ。そこまで頭が回らなかった僕が悪い。
その時、声が届いた。水の中なのにやけにはっきりした声だ。
「あはははは、面白い事やってるね。本当に君ってゆかいだね~スオウ☆」
(――誰だ?)
やけに陽気な声。声質からして女だとはわかるけど聞き覚えはない。だけど向こうは僕を知っている? 声は出せないから僕は胸の内でそう呟いた。
聞こえはしないだろうと思ったけど声はたやすく返ってくる。
「う~ん誰だろうね? すっごい美人のお姉さんって言ったら興味持ってくれるかな? な? うふふふ、私すっごく気分が良いんだ☆ なんと目的を一つ達成しちゃったので~~~す!」
(なんだよ目的って?)
軽くウザくなりかけてるけど興味が無い訳じゃないから聞いてみる。だってそもそもこの状態の僕にどうやって話しかけてるんだこいつ? イヤな感じだ。声とは裏腹に。
「うふふあははは! 教えな~い☆ 自分の目で確かめればいいわ。でもヒントは一つだけあげる☆ お姫様は叫んでるわ「助けて」って、ね。だから早く来て勇者様☆」
(――っ!!)
水の中に大量の泡が浮かんでは昇っていく。それは僕の動揺を表してた。奴が言った意味はまさか!?
「あははは、それじゃあねスオウ☆ いっぱい面白い事をしましょうよ。ああそれと、腕も治してあげてねイズミッチ☆ 楽しさ半減つまんないぞ☆」
「ご心配なく。落ちた物は蘇らせます。それがこの『復活の泉』ですから」
「うんうん良い子は大好き☆ アデュゥー!」
そう言って一方的な言葉は消え去った。最後に言葉を出そうとしたけど別の方に行ったからそれは出来なかった。てかイズミッチって泉の精の事か? 悲しいな。
心の根っこにさっきの奴の言葉が引っかかる。これ以上モタモタしてるわけにはいかない。自分の目で確かめなければ。
僕の切られた腕に光が灯る。なるほど復活の泉か……その名は流石伊達じゃない。
「これは私の期待です。普段はただじゃ無いですよ」
(そっか、ありがとう)
別に言われたからではないらしい泉の精に、聞こえたか分からない感謝を表す。そして腕は繋がり、底にたどり着いた時にはその両手に輝く何かが現れていた。HPがやばい。そして上の光が見えない。僕は剣を凪ぐ、すると泉の水が呼応して天に昇った。
弾んだ泉の水に照らされて浮かび上がるは青に一筋の銀が入った流星の様な刀身。それが誕生した新たな剣
『セラ・シルフィング』
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