命改変プログラム

ファーストなサイコロ

囁かれた核心



 流石に無理かもと思った。振り卸される『カーテナ』と呼ばれたオモチャの様な剣……切っ先も無く短すぎる刀身で一体何が切れるのか? そう思うのは寸前の光景を見ていた私には出来ない事だった。
 だってあの剣はアギトを不可思議な力で滅多打ちにしていた。そして軍の人達をあんな状態にしたのも、きっとあの剣だ。
 HPを残して心を砕く……それはとても残虐な行い。一体どれだけの痛みを味わわせればそんなことが出来るのか私には想像も出来ない。
 だけど私はその時、気付いた。アギトとローブの奴の間に割って入ってそいつの歪んだ口元を見たときだ。誰か居る? 黒い墨の様に塗りつぶされて行ってるけどそれはアイリ!
 どうして……彼女がここに? そっか目の前のこいつがアイリを浚った。だからアギトは戦ってたんだ。でもアギトは負けちゃった。それに良く見ると、カーテナを握るのはアイリだ。
 奴の腕は黒い墨の様な物に飲み込まれたアイリの腕に添えられてるだけ・・それじゃあ、余りにも酷すぎる。アギトは大好きな人に、それにアイリも大好きな人を、傷つけた事になるよ。
 許せない……だけど悔しい事に私には何も出来ない。せめて盾に成ることしか……その時、見えたのは煌めく雫。まだ墨に飲み込まれてない片頬を流れるそれは涙。アイリは気絶してるけどわかってる。


(逃げない!)


 何も出来なくっても、一矢報いる事なんか出来なくても私は……貴方の大切な人を守ってみせる! どうせHPは減らないんだから、立ち続けてみせる!
 私は振り卸されるカーテナを真っ直ぐに見つめ、そんな覚悟を決めた。そしてその時、粋なり衝撃が体に襲い視界がブレた。だけど――――え? こんな物? 


「あぁ~セツリちゃん、かわいいぃぃぃぃ!!」


 耳をつつく様な声が私の耳に響きわたる。何が起きたか分からない……てか、何をされたか理解できない。でもなんだか頬が熱いような……って本当に熱いぃぃ!


「やぁーやぁーやぁー熱い! 焼けちゃう爛れちゃう!」


 そんな事ある分けないけど、私は首を横に振りまくった。どうやら私はもの凄い勢いで頬ずりされていたらしい。それが頬の熱さの原因。
 そしてさっきの衝撃は私にローブの人物が抱きついて来た衝撃だった。私の体はがっちりと捕まれているようだ。きっと胸に抱いたクーは苦しいよ。


「もう~セツリちゃんは恥~ず~か~し~が~り~屋~だね☆ そんな所もかわいいぞ☆」
「――――っひ!!」


 背筋に走った悪寒は私の貞操の危機を警告してるに違いない。だって危ないよこの人。唇が的確に私めがけて飛んでくる。私は必死に唇だけはと死守してる。それはきっと端からみたら変な光景だろう。少女を抱えるローブの人物に、その少女はクネクネと変な動きしてるんだからね。


「キャーキャーキャーキャー!」


 そんな私の悲鳴は光明の塔の崩壊した下方で響きわたる。ンチュー☆ ムチュー☆ と迫ってくる唇は恐怖の対象としか思えないよ!
 流石に耐えきれなくなった私は最後の手段に打って出る。両手も封じられてるからこれしかない!


「や・め・て・よ!」
「――――あがっ!!」


 重く重厚な音が辺りに響きわたった。それは私の中身がドッサリギッシリ詰まってる証だよ。簡単に言うと私は頭突きをかましたんだ。
 額が奴の鼻辺りにメキッとめり込む感触があった。カウンターだったからね。丁度キスを迫る瞬間を狙ったもん。威力は女子のそれとは思えないほどに向上していただろう。
 ご愁傷様、だけど貴方が悪い。同姓同士ならセクハラが許されるなんて事はない!


「はぁはぁはぁ」


 解放された私の息はあがっていた。精神的にも追いつめられてたから疲労感がハンパない。てか、なんなのこの人? なんで私の事を知ってるんだろう?
 それにどうしてアイリを浚ってアギトにこんな事を? 軍を吹き飛ばしてあんな風にしたの? 謎が頭の中に沸き上がる。答えてくれるのだろうか? だけど私には言葉しかない。


「なんなのアナタ? どうして私の事? それになんでこんな事するの!?」


 私は前方で鼻の辺りを押さえているフードの人物に目をやる。私を抱きしめる為かいつの間にかアイリを手放してた様だ。アイリは奴の足下の後ろに倒れている。


「ふふふ、それはね――――」


 私の質問に答えようとしてくれた声は、だけど不意に止まった。なんだろう・・不機嫌な雰囲気が突然奴の体を覆ってる感じがする。
 まるで最高の気分を邪魔された様に……今にも舌打ちしそうだ。


「――――ッチ」


 あ、しちゃった。吐き捨てる感じで不快感を伝えて来た。視線はこっちを見てる。だけどそれは私じゃない。そうだよね、奴は頭突きされても嬉しそうだったもん。
 ならこの視線はどこを向いてるの? 私は視線を追って振り返る。するとそこには彼が居た。遂先ほど、奴になぶられてボロボロにされたアギトが震えながら立ち上がってたんだ。


「アギト!?」
「セツ……リ? 引いてろ……奴は……俺が……倒す!」


 アギトは自分の武器である槍を支えに前に進もうとする。それは余りにも痛々しい光景だった。誰が見ても分かるよ。行かせちゃいけないって……今度同じ攻撃を受けたら、幾らHPが減らないからって死んじゃうよ!
 矛盾してるけどそう思う。


「ダメ! 行っちゃダメよアギト! 今の状態じゃ無理だよ!」
「それでも……俺は……お願いだセツリ……行かせてくれ。これが……償いになるのなら……」


 私は前へ進もうとするアギトを必死に押さえる。だけどアギトは何かに引っ張られる様に前へ進むんだ。それはあらがえない死に神の招きに誘われてる様に感じれて怖い。
 行っちゃいけないのに……アギトはそれを望んでる。


「コレがそんなに大切? 私はもういらな~いから返してあげよっか?」


 アギトの体を必死に受け止めてると後ろからそんな声が聞こえた。そして私の頭上からはガチガチと歯を鳴らす音。やばい……アギトの額に浮かぶ血管が切れそうな感じだ。
 首を少し傾けて目線を声の方に向けると、奴が放り投げてたアイリを掴みあげて無造作に地面を引き回す絵があった。それは確かに怒りがこみ上げてくる光景だ。
 でも――――


「待って! 駄目アギト! あれは誘いだよ!」
「ふぅーふぅーふぅー」


 ――――私は彼の胸ぐらを体で必死に押し止める。アギトは既に言葉を理解してない感じに荒い息を吐いていて危ない。HPが減ってる訳じゃないから疲労なんて実は無い体は私で押さえる事は難しい。
 アギトの理性が本気で飛んだら、私じゃ押さえられない事は明白だ。


「聞こえてないの? 言ったじゃないまだって……でも、その時が来たから返してあげるって言ってあげてんのが分からない? 
 捨てられた男が! 見苦しいのよ!」
「――――うがぁぁぁぁぁ!」


 奴の言葉はアギトの理性を吹き飛ばした。アギトは私を横に払い、獣の様に奴めがけて突っ走る。そして腕に握る槍を奴に向かって突き刺した。
 赤いエフェクトが立ち上り、何かのスキルが発動してる事が分かる。だけど奴は動じない。むしろ待ってましたと言わんばかりにアイリを抱き寄せ、カーテナを振るう。


「だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 私は体を起きあがらせて叫んだ。だけどどちらの動作も止まることはない。奴の口元はいびつに歪んで狂喜が垣間見えた。
 そして次の瞬間、私の前方にいたアギトが弾丸の様に弾かれて横を掠めて後ろに飛ばされる。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー」


 それが私にはアギトだと分かるまでに実は数瞬掛かった。何故なら見えなかったからだ。絶叫と共に私の視界の端を風が凪いだ・・それが実感だった。


「――――がっはぁぁ……」


 後ろで聞こえた何かがぶつかる様な音と亀裂が広がる音。そして絶叫は唐突に止んだんだ。私はその時ようやく、その姿を確認した。アギトは瓦礫の山を更に砕いてそこに突き刺さっていたんだ。
 そこが瓦解する音と共にアギトは地面に落ちる。ピクピクと弛緩する体の動きだけが見えていた。


「アギ……アギト!」


 頭が理解した瞬間に私は動き出す。認めたくないけど……目の前の事は事実で……涙が出そうになる瞳を必死に堪えた。ここで私が泣くのは駄目だと思ったんだ。


「きゃははははは! 良い気味だわ。私とセツリの間に無粋にも入ろうとするからそうなるのよ。私を楽しくさせるだけでよかったの~。きゃは☆」


 不愉快な笑いと言葉を発しながら奴はこちら側に歩を進めてくる。


(不味い、不味い、不味い、不味い、不味い、不味い)


 頭の中ではそんな言葉が反響し続けていた。もうアギトは動けないだろう……目の前で見たカーテナの威力は想像を絶してた。
 アギトを一撃で吹き飛すほど……軍を一挙に倒すだけの力……分かってたはずなのに、私は理解して想像してなかった。
 でも、今の一撃で私はあれを食らった自分をイメージしてしまった。きっとグシャッっていうよ。ザクロを地面に叩きつけた様な状態に成ることを用意に想像できた。
 今の私にさっきの決意を繰り返す事が出来る? 足が震えてアギトの前から立ち上がることが出来ないよ。でもそのとき、私の前のアギトが腕を地面に突き立てた。
 そして必死に体を起きあがらせようしてる。けれど体はやっぱり言うことを聞かないみたい……その間に奴は私たちの元へきていた。


「ククク、団子虫みたいな状態にどいつもこいつもなるわね。なんでそんなに頑張るの? 捨てられた癖に。これを返してほしいのなら――――」


 奴は私の方を見る。え? ……なに? そしてアギトを再び見た。


「――――取り引きしましょう☆ そうしましょう☆」


 風景にそぐわない明るくおどけた声が響きわたった。月明かりと、傾いた光明の塔から漏れる弱い光が私たちを照らしている。


「取引……だと?」
「そうそう、私も待ち人来たし。もうコレに用はないから返してあげるって言ってるの? 理解できた?」


 首を僅かに傾けてアギトは半分だけで奴と対峙する。今はそれでも限界くらいだ。私は震えて声もでない……昔の自分に戻ったみたいでイヤになる。
 奴の言葉に耳を傾けるけど意味不明。この状況で取引なんて……一方的に奪える筈じゃない。それを……自分も物を差し出す理由はなに? どう考えても不信だった。
 それをアギトも分かってる。動けなくても、頭はきっと大丈夫なんだろう。それを考えるとやっぱりカーテナのあの攻撃は質が悪い。


「お前は……なにを望んでる!?」
「それは勿論――――」


 奴はアギトの目線にさっきよりも近づいた。それは奴が私に抱きついて来てるからだ。そして言い放った。


「――――セツリよ。私はこの子意外興味なんてないわ。う~ん、ピカイチ可愛い!」


 最初とは違う悪寒が私の体に降っている。冷たい刃が心臓に突きつけられてる感じだ。いきなり、舞台の表側へ引っ張られて私は混乱してた。


「ふざ……けるな!」


 怒りをはらんだアギトの声が響いて。腕が動いた。だけどそれは何の変哲もないただの腕。奴は避けようともしなかった。
 下から上へ降りあげるだけの動作。それがきっと今のアギトには精一杯だったんだ。だけどその時、僅かに奴が顔を隠すフードに指が掛かった。
 そしてそのまま腕は上へ行き、フードが奴の頭頂部を越え後ろに落ちた。


「「……」」


 言葉を無くす私とアギト。ううん、きっと二人とも同じ言葉を頭で連想してた。だけど忘れたんだ……言葉に表現する事を。それか躊躇われた……もっと良い言葉があるんじゃないか……これで足りるのだろうか? と。
 それだけ露わになった奴は美しくて綺麗だった。芸術と呼べるのかも知れない。迷いなく、疑いようが無い黒のロングストレート。初雪でもかなわない程の白い肌。長いまつげの中に煌めくはサファイヤの様な瞳。
 全容が見えるだけで今までの行い全てをリセットしてしまいそうになるほどの完成形がそこにはあった。女神……まさにその単語しか出てこない。
 間近でその赤く透き通る瞳に見つめられて沸いてくるのは恐怖から羨望に変わっていた。


(綺麗……)


 本当にどこを見てもそう思ってしまう。ここまで来るともう麻薬レベルだよ。机上の方程式が崩れさるみたいに根底から美の価値観を変えそうだ。
 そこまでの人がいけるわけはないんだろうけど。


「貴様……まさか……タゼホを……襲った……」


 アギトの震える様な声が私の耳にも届いた。タゼホ? そう言えば「女神を見た」って言ってた人が居たはずだ。てか、もともと私達はそこを目的にしてたのに随分とおかしな方向に流れてる。


「タゼホって何の事か知らな~い。たまたま私達の行く道にあった村なら潰したけどね」
「「――――っつ!!」」


 私達は察した。それがタゼホだ。間違いない……目の前、私の場合は背後に居るのは倒すべき敵だ。でも、今ここでそれを成せる確率はほぼゼロパーセント。絶対的な力が奴にはある。
 『カーテナ』という絶対的な力が。


「それよりねえ、どうするの? 愛した女を捨てるの? 早く選ばないと、そろそろアレ、やばいわよ」


 奴の言葉に促されて私は再び奴が放ったアイリを見た。すると墨の様な闇が彼女の殆どを浸食していた。それに心なしかアイリは苦しんでる様に見える。最後に見えてる部分が顔の半分の部分だったからそれが分かる。
 今まで余り気にかけてなかったけど……アレはなに? カーテナからそれは出てる様に見える。


「あれはカーテナの浸食。これだけ桁外れな武器だよ~。君が知ってるだけが副作用の全容じゃ無いって事。コレはカーテナを使う物への呪いみたいなもの。
 この呪いに全身が包まれたら一体どうなるのかな? そればっかりは私も知らないのよね☆」
「アイッ……リ!」


 その言葉を聞いて、動かない体に鞭を打つアギト。カーテナの呪い……幾ら何でも私やスオウみたいなのじゃ無いと思うけど……余り楽観視出来ないおぞましさがそこにはある。
 だからだろう……アギトは体を引きずる様にしてまでアイリの場所を目指している。泥だらけになりながらも、少しずつ……少しずつ……だけどその時、私は解放された。
 そして足を地面に叩く音がその場に響く。その足は丁度アギトとアイリを隔てていた。


「アレを選んだって事? 明言してくれなきゃ分からないわよ。それじゃあセツリは私の物~☆」
「ダメだ! ダメ……ダ……メ」


 アギトの声が響いて次第に小さくなっていった。アギトは選べない……どっちかなんて無理なんだ。でも本心ではきっとアイリを助けたいと思ってる。きっと私以上に。
 だけど私を託したのはスオウだから……その葛藤の末にアギトは決められないんだ。
 でも……ダメだよアギト。大切な人……何でしょう。見捨てたりしちゃ駄目。もっと視野を広く持ってほしい。


「アギ……」


 私のそんな囁きをアギトはちゃんと気付いてくれた。


「セツリ……」
「クーちゃん頼むね。サクヤに返しといて」


 彼の目が見開くのが見えた。私はその顔にニッコリ笑顔を送ってあげる。大丈夫、今日一番の笑顔だよ。不安で一杯で恐怖もあるけど、涙は流さない。
 これが今、私に出来る最前の事。アイリを救い、アギトを助ける為の唯一の方法だ。だから顔を上げよう……立ち上がろう。ここがきっと今日、私が選んだ道の行き着く所だったんだ。


「私が……私が行く。だからアイリを返してあげて」
「!!……っ……」


 むき出しにされた地面を握りしめるアギト。悔しさが溢れだしてる。だけどアギトは何も言えない……こうするしかないって分かってるから。
 だって、アイリには時間的制限がある。多分、後五分も無いよ。でも私は違う。今までの奴の態度からして私は連れて行かれてもきっと酷いことされない。
 それならまだ希望は繋がるよ。アイリを助けて……後から私も助けて貰うの。きっと大丈夫。スオウが絶対に来てくれる。
 そう思えるから、私は行けるよ。怖くても前へ進める。信じてる。


「セツリ! うれしい! そう言ってくれると、思ってた☆」


 最後奴の声が舌なめずりするように頬を撫でた気がした。もしかして先導された? でも、それでもコレしかない。思惑通りでもこの一本道しか私には見えない。
 私はアギトの傍にクーを置く。


(何もしてあげられなくてごめんね)


 その言葉をかけて奴と向き合う。身長は向こうの方が高いから自然と見上げる形になる。奴は上機嫌でニコニコしてる。だけど時折それがニヤニヤという様な企みを含ませるんだ。
 やっぱり信用なんて出来ないし、表層のこの性格は造りとしか思えない。中身はもっと黒いんだきっと。それは私程だろうか……
 その時ニヤニヤが見えた。


「セツリは思ってるよね? ここで連れて行かれても必ず助けが来るって……だけど宣言しといてあげる☆ セツリはスオウとは居られないってね☆」


 衝撃が走った。なんでこいつがスオウの事知ってるの? いや、待って……この声、もしかして……私に聞こえた声? 私が追ってきた声の主は目の前のこいつなの? 調子やトーンが違うけど……そうかも知れないと思った。
 でも、取りあえず否定しておきたい所があった。


「私は、スオウを信じてる! いつだって一緒に居たいって願ってる。それを許してくれる! だから私達は一緒に居られるの!」
「それはどうかしら? 本当に彼は信じられるのかな? ねぇ~ア・ギ・ト君」


 含みを臭わせる奴の言い方。それになんでアギトに振るの? 直接私に言えばいいのに。それとも私に言えない何かをアギトは知ってるの?


「アギト?」
「……」


 彼は何も言ってくれない。いつもの様に軽口で否定でもしてくれればいいのに今はそんな元気もないだけ……だよね。


「あはは、君の口からは言えないか。セツリ、人を信用なんてしちゃ駄目なの。それはよ~く分かってるでしょ?
 同じなの……誰も例外なんてないわ。だから私と来るのは正解。だけど戻るのは間違いだからね☆」
「私は……信じるって決めた。スオウは信じれるもん!」


 私はきっとそれを自分に言い聞かせてた。聞きたくない言葉でも耳は勝手に聞いちゃうから。もっと素敵な事を自分で言って耳に聞かせるんだ。
 アギトが何も言わないのも気になる・・けど、信じるって言ったら信じる! 


「スオウは……スオウだけは違う・・私の傍に居てくれる。いつまでも……」
「本当に? スオウはセツリを選ぶかな? セツリが一番大切? ああ言うのは一杯抱えてる。大切な物を……セツリもその一個かも。
 ああ~一体何番目なんだろうね? スオウにとってのセツリの価値って?」


 何……言ってるのこいつ。私は何番目? 大切な者、確か幼なじみが居るって……スオウは私は選んでくれる? そんな確証なくて、自信もない。
 私は……スオウに取って何なのかな? スオウを信じれるよね私。
 言葉が脳内で巡り巡る。そして心を刺激する。私の意志はとっても弱い。すると目の前に手が差し出された。女神が差し出す手だ。


「聞いてみましょう。私が用意してあげる。セツリを助けに来てくれた時にスオウの全部吐き出させてあげる☆ そしてセツリが決めれば良いわ。
 どっちと居たいか、ね?」


 私は手を取る。信じてるからと言い聞かせ。遠くからは量産された足音が迫ってた。けれど私達は陽炎の様に消え去った。

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