命改変プログラム

ファーストなサイコロ

メイドスパン!

 
 ここLROはおかしくなってる。とある一人のプレイヤーはそう思い、必死にその場から逃げるために駆けていた。 辺りは闇に包まれた森の中。でもそこかしこから赤い瞳の煌めきが自分を追っていると確信していた。彼は必死に救援コールを辺りに巻きながら助けが来るのに淡い期待をしながらも自身で生きる努力もやっていた。


 救援コールと言うのは戦闘で自分が倒されそうに成った時や、自分より強力なモンスターにアクティブされた時なんかに近くのプレイヤーに助けを求めている事を知らせる行為だ。
 基本戦闘中のモンスターは自分自身かパーティーメンバー以外は攻撃出来なくなる。だけどこの救援コールを発したときはその場に居合わせた誰もが例外無くそのモンスターに攻撃出来る様になるんだ。
 勿論そうしたらその戦闘で得られてた筈のスキルの熟練度とかはリセットされる訳だけど戦闘不能時のデスリスクに比べれば一回の戦闘分を犠牲にする方がいいんだ。


 だけどいかんせん、その場には運悪く彼しか居なかったようで救援が来る気配はなかった。いや、元々が彼しか居なかった訳ではあるまい。この森は職人系のスキルを上げる人達が良く出入りしてたんだ。
 かく言う彼もそのスキルを上げる為にこの森に足を運んだ訳だった。近くの村からそう離れて無く、広大な森にモンスターの分布はまばらで、自然の恵み溢れたこの森はとても魅力的な素材調達の場と知られていた。
 それにここには最近見つかった泉に、それと連動してある噂が流れている。その泉の水を使えば『神酒ネクタル』というクエストアイテムが作れるという噂だ。
 だからここに一人なんてあり得ない。けど救援コールに反応する声は一つもなく、森を埋め尽くす程の赤い瞳は今も彼を追っている。


「何なんだよ一体……どうなっちゃったんだよLRO!」


 彼のそんな叫びは夜の森に空しく欠き消えていく。考えられることはあった。ここ数週間の間でLROに異変が起きてるのはBBSで散々言われてた事なんだ。
 出詰まってたクエストがいきなり大量に放出されたのもその異変の一部とも言われている。
 絶対に達成できないクエストや倒せない敵の出現の情報も見ていた。そしてここ最近で言われてたのはモンスターの異常発生の噂だった。
 通常、一つのフィールドに出現するモンスターはある程度決まっている。一度も目撃例も無いモンスターがたまに見つかったりもするけど、それはとてもレアなモンスターで今まで存在が知られなかっただけ。
 だけど今噂に成ってるのはそう言うレアじゃなくモブなんだ。噂ではそこらにいる普通のモンスター。特に『知能』を持つとされる獣人系のモンスターがそこかしこのフィールドに突如大量に流れ込んで来るというものだった。
 だけどそれを読んだときはそんなの噂だよとあしらった。そんなことが管理されたLROで起きる訳がない。起きたとしても何らかのイベントの一種で事前に告知される筈なんだ。
 だけど彼は今日その噂に遭遇した。LROに入る前にキチンとイベント情報は確認したけど、今日あるのはセンラルトの水かけ祭りだけだった。
 そのアイテムも噂通りなら興味あるけど、競争率の高さからイベント参加しないで今日は空いた狩り場でのスキル上げを選んだわけだ。
 そしてここでスキル上げをすること小一時間。夜の帳も深まり、順調にスキルを上げていたときの事だ。


「ウアァァァァ!」


 突如森の中に響いた悲鳴に彼は辺りを見回した。そして届いたのは今彼が絶賛発散中の緊急コールだった。彼は迷わず武器を手に取り走り出した。
 このLROだけのマナーじゃない。オンラインRPGの原則は助け合いだ。だから余程の冷たい奴でも無い限り、そのフィールドにいる誰もが緊急コールには応えてくれる。それが当然で、当たり前の行為なんだ。
 だから彼は走った。そして見た光景に戦慄した。
 草木を揺らすほどの激しい息の吐く音と唸りの不協和音がそこには木霊していた。森の深い闇に浮かぶ幾つのも赤は最早数え切れない程だった。
 よく見るとその中に一人のプレイヤーが沈んでいた。だけど彼は動く事が出来なかった。これだけ大量のモンスター相手に彼一人ではどうする事も出来ないと分かっているんだ。
 明らかにおかしな状況だった。そもそもこの森に獣人系のモンスターは居ない筈だ。それがどういう訳か大群でそこに存在している。まさに噂通りの事が起こっている。


「た……たすけ……て」


 不意に頭に響いた声に反応して前を見ると、その場に倒れていたプレイヤーが彼に気付いて腕を伸ばしていた。だけどその瞬間、一斉に赤い瞳が彼を捕らえた様に振り返った。
 恐怖と戦慄が彼の身と心に襲いかかった。そして逃げずには居られなかった。緊急コールに応じる事が出来るのは自分がやられない前提の元でもある。
 そこにリスクが大きくあれば逃げることだってやむなしだ。誰かを助けに入ってやられたんじゃ助けるべき相手にも無駄に気を掛けることになるし、それは誰もが承知してる事でもある。


 緊急コールに応えたプレイヤーはモンスターを倒した後は颯爽と何も語らず助けた相手が無事なのを確認して去っていくのが常なのだ。
 そしてその背中に助けられた相手は感謝の言葉と礼を一言いうくらいだ。それ以上はどっちも求めてなんかいない。


 だからそれは仕方ない……相手もこの状況なら一人ではどうする事も出来ないと分かってる筈なのに……後ろから聞こえる悲痛な叫びはいつまでも耳にへばりつくように聞こえていた。
 そして彼もこんな事は初めてじゃ無いはずなのに罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。それなりにスキルを身につけるまで誰かを助けるなんて行為はLROでは命取りだ。
 だからここまで自分を育てて普通に誰かを助ける事が出来る様になった彼には、久しく忘れていた感情が蘇った様な感覚だった。
 罪悪感……それは普通のゲームでは絶対に味わわない事なのにフルダイブと言うゲームはそれを簡単に伝えてくる。なぜなら目の前には生きたプレイヤーが居るからだ。 助けなかったとき、守れなかったとき、あまたの感情はフルダイブでダイレクトに伝わる。彼らプレイヤーはここで生きてるんだから。
 何かが大きく地面に叩かれる音と共に叫びは消えた。もう歯を食い締めて走るしかない。だけど直ぐに無数の足音が彼に迫っていた。




 森を出て草原を進み、目指すべき村はもう直ぐそこだった。逃げきれる……そう思い少し安堵の気持ちが上がってきた。何故なら幾ら多いモンスターの群でも村や町まで入る事は決して出来ない。プレイヤーにとっての絶対安全な場所でモンスターにとって不可侵な場所なんだ。
 ようやく見えた木で作られた外壁に更に彼は安堵した。恐怖は体の外に溶けていき、重かった足取りも軽く感じれた。そして彼はそのままの勢いで村に駆け込もうとした。
 だけどその時、本当の本当の本当に信じられない事が起こったんだ。幾多の叫びが村から聞こえてきた。そして村を囲むように作られていた木の外壁が壊され出てきたのはモンスターの群だった。
 外壁はそこかしこから崩壊して地面に土埃を巻き上げる。そして現れた村の光景は旅立つときのそれとは明らかに異なっていた。
 彼の思考は目まぐるしく回り、そして停止した。おかしな夢を見てる感じだった。迫り来るモンスター達もどこか遠くに感じれた。
 一体のモンスターがその巨大な口を開ける。そこには鋭い牙と汚らしく落ちていく涎が見えた。間違いなく彼は食べられようとしてる。
 だけどその牙が届く前に通った声がその動きを制した。モンスターの動きにどこか統制が見れる……そんな事あるわけがないのにそんな考えを否定するようにモンスター達は声の主に道を開ける。
 崩壊した村を優雅に歩くその姿が彼の目に映った。その瞬間これは夢だと確信した。だって目の前から歩いてくる女性は余りにも美しすぎる……あまたの美女がここLROには居るけどその女性は別格だった。
 その身に纏う気品や品格と言ったものが歩く所作だけで息が詰まりそうになるほど感じれた。まるで女神……彼はそう思った。
 彼は夢の中、幸せな気分に包まれて自身の体が消え去るのにも気付かなかった。彼のHPはいつの間にかゼロになっていたんだ。
 その姿をあざ笑うかの様に目の前の女神が口元に笑みを浮かべた。そして女神は彼に向かって言い放つ。


「伝えるがいい人間。この世界に、既に貴様等の安寧の地は無いと言うことを」


 幸せな気分のまま彼はその言葉に頷く。そして女神が満足気に浮かべた笑顔はとても神々しく、消え去るその瞬間まで彼はその女神に魅了されていた。




「しっつれいしっま~す! ここにアギト様はいらっしゃいますか?」


 突如宿屋に元気ハツラツな少女が入ってきた。メイド服姿でショートの髪にカチャーシェをつけた耳長の女の子。エルフ族だね。てか・・ああ、アギトね。忘れてた。


「そこで伸びてるのが様をつける程の奴かは疑問だけど、アギトなら君の足下だよ」
「ふにゃぁぁ!」


 僕の親切な言葉に奇声を上げてその子はアギトから飛び降りた。その瞬間「げう」と聞こえたけど彼女の元気過ぎる運動の不可抗力だろう。気にすることはない。


「なんておいたわしやアギト様~」


 そういってメイドの少女はアギトの顔を自身の控えめな胸元に持っていき抱きしめている。なんだか変な光景だな。僕たちが呆気に取られてると鋭い眼光が飛んできた。


「ふん! ヒューマにモブリにスレイプルですか。我らエルフにはにべも立たない弱小種族なんかといるから……」


 なんだか失礼な事言われてるけど、僕にはどういう事なのかいまいち分からない。するとテッケンさんが説明してくれた。


「LROには領土を巡る戦いがあるんだよ。種族間でね。そこで今一番広くこの世界を納めてるのがエルフなんだ。だから彼らの中には自分達が優秀な選ばれた種族なんだと思うのも少なからず居るわけだよ。
 幅を利かせてるって奴だね。そいつらはああやって他の種族をバカにする。意味も無いことだよ」
「何を! その小振りな肢体を切り刻んじゃうぞぉぉ!」


 メイドさんはテッケンさんの言葉にカチンと来たのかスカートの中に隠し持っていた暗器に手を伸ばす。めくれたスカートから見えたんだ。彼女の白い太股に巻かれた黒いベルトには銀色の掌に収まる位の武器が数本等感覚で刺してあったのが。
 あんな武器もあるのかと僕は思った。別に少女の長いスカートの中に隠された真っ白な太股に興味があったわけじゃないよ。断じて。だから後ろで殺気を放つセツリをどうにかしてくれ誰か。
 さっきまで涙まで流して感動してたのにその涙は今や怒りに変換されている。切り返しが早いよね女の子って。


「う……あ~、あれ? 決めポーズ談義はどうなったんだ?」


 その時今更になってそんな事を言うアホが目を覚ました。するとメイドの少女は途端に晴れやかな顔を作ってアギトを見つめる。


「ご無事で何よりですアギト様。さぁ、こんな弱小種族どもとは縁を切って我らがホームタウンに帰りましょう。ええ今直ぐに!」


 途中まで穏やかに喋っていたメイドの少女は途中から鬼の首でも取ったように激しくなりアギトの襟首掴んで扉の方に引きずり始めた。
 びっくりする行動力だねこの子。


「いてててて――ってなんでお前が居るんだよ『セラ』! 俺は自由になったんだ。誰が戻るかぁぁ!」


 なんだか目の前で無様な戦いが繰り広げられてる。セラと呼ばれたメイド服の少女はやっぱり知り合いなんだね。


「達観してないで助けろスオウ!」
「え~その子滅茶苦茶怖いんだけど」


 だってその言葉の直後に躊躇いもなく武器を抜いたよあの子。僕を射殺す気マンマンだよ!


「ふざけるな! 町中じゃどうせHPは減らないだろ! 早く動かないとお前の恥ずかしい過去をボリューム最大で叫ぶぞ!」
「僕の親友に何しやがんだぁぁぁ!」


 僕はシルフィングを手にとって走り出した。女の子に手を挙げるのは信念に反するけどこれも掛け替えの無い親友の為だ! それに運良く後ろの殺気からも逃げれた。


「ふふ、私達の間を邪魔するなら例えアギト様の親友でも、いいえ! 親友だからこそここで消えてもらいましょう!」


 なんて奴だ。自分とアギトを認める奴らだけで周りを埋める気だなこいつ! なんて策士なんだ。アギトが戦々恐々してるのが分かる! 


「そんなことさせるか! 親友の貞操は僕が守ってみせる!」


 僕達は互いに激しく攻防を繰り返した。無益な攻防だ。決着なんて付かないんだからね。だけど無益な割に損害は出た。
 何回目かのつばぜり合いの時だった。不意にシルフィングからイヤな音が聞こえたんだ。そしてセラが距離を取り、武器にエフェクトを纏わせて放った一撃で甲高い音を立ててシルフィングが根本から折れた。


「なっ!」


 僕は信じられなかった。いいや信じたくなかった。今まで数々の戦線を潜り抜けてきた頼もしい相棒がこんな所で居なくなる訳がない! だけど折れた刃は僕の頬を掠めてみんなが居るテーブルに突き刺さった。


「終わりじゃないですか? これで一つ席が空きます!」


 セラの攻撃が僕に迫る。僕にはもう、攻撃も防御も出来ない。その時、アギトの槍が横からセラの攻撃を叩き落とした。


「そこまでだセラ。これ以上は怒るぞ」
「うぅ……ごめんなさい」


 アギトに睨まれて小さくなるセラ。これで一応のケリは付いたけど僕は既にそんな事どうでもよかった。そしてそれはどうやら鍛冶屋も同じらしい。


「なななななシルフィングゥゥゥ!!!!」


 鍛冶屋はテーブルに突き刺さった刀身を震える手で抜いた。その動作は我が子を抱く母親の様だ。僕も自身の手に残った柄を見やった。


「シルフィング……どうして……」


 半身を失った様な気持ちだ。こんな事想像もしてなかった。と言うか今まで何とも無かったのに突然どうして?


「鞘だ。お前が鞘を無くしたせいだろ!」


 鍛冶屋の怒気は僕に向かった。鞘って……あれは入れ物じゃないのかよ。


「鞘は只の剣の収納物じゃない。特にシルフィングクラスの剣は鞘も入れて完成形なんだ。それが無くなったから耐久値がリセットされずに蓄積し続けてお前の無闇な扱いで折れたんだ!」


 なんてこった……全て僕の責任か。ごめん、シルフィング。今更言っても遅いけど、これしか言えないよ。


「どうにか出来ないのか? なぁ鍛冶屋。僕が言える事じゃないけど頼む!」


 僕は頭を下げる。礼の限りを込めて頭を下げ続ける。こうなったら良い返事が貰えるまで上げない。何か方法はないのか? 折れた剣を打ち直す事は出来ないのかよ!
 今、武器を失う訳には行かないんだ。これからだって戦いは続く。武器が……シルフィングが無くちゃ僕は何も出来ないんだ。
「鞘を戻すだけなら用意もしてきたし簡単だった。だけどな……折れた剣自体を打ち直すスキルはないんだよ」


「そんな……」


 それじゃあシルフィングとはここでお別れなのか? 普通に考えればこんな事当然なんだろうけど、僕にとってシルフィングは特別な相棒だったんだ。
 シルフィングを握る度に勇気が沸いて来た気さえした。それなのに……元々僕には早すぎた分不相応な剣だったのに……こいつはいつでも僕に応えてくれた。
 LROでも無いセツリの世界でも僕の思いに力を貸してくれたんだ。それなのに……まだまだ全然早すぎるよ。このままお別れじゃありがとうも言えないじゃないか。
 流石にこんな僕らを見て違う武器を使ってスキルを稼いで行くのがLROだよ、なんて無粋な事を言う奴はここにはいない……筈だった。


「そんなにその武器が良かったなら同じ武器買えばいいじゃん」


 それは初対面で僕の相棒をへし折った奴の言葉……許せない。僕のせいも大いにあるけど無駄にシルフィングを使わせたこいつにも多少は責任あると思うんだ。


「こいつは相棒だったんだよ。初めてLROで僕が手にした掛け替えのない武器なんだよ。同じ形してるからってな、それはこいつじゃないんだよ!」


 僕は声を荒げてセラを見た。メイド姿の少女は僕の言葉を聞いて「ふ~ん」とか呟いている。てっきり罵声でも返されるかと思ったけどそれは無いようだ。
 するとセラに捕まれたアギトが僕との間に入ってきてセラを覆い隠す。僕を落ち着かせる為の行為かはたまたセラを庇ったのか謎だ。


「酷な様だけどさスオウ。これから強く成って行くには他の武器を使わなきゃ行けないのは当然なんだ。LROの強さはスキルに依存してるんだからな。
 感情に流されて目的を見失うな。お前のやるべき事はなんなんだ!」


 アギトの言葉が僕の心に突き刺さる。確かにお前の言うことは正しいよ。僕はセツリを助けなくちゃいけない。それには強く成らなきゃいけない。
 それは沢山の武器のスキルを集めるのが一番なんだろう。それを考えると一つの武器に依存するのは愚かな事なのかも知れない。シルフィングのスキルは既に全部会得してるしそしたら武器を変えるのがLROで成長していくって事だ。
 アギトの後ろではセラがメイド服を揺らして


「きゃーアギト様カッコいい」


 とか言ってるのが無駄に聞こえてくる。僕は席に着いてるセツリを見た。するとセツリは僕に笑顔を向けて言ってくれた。


「スオウにはあの青い輝きが合ってると私は思うな」


 それは優しく心に響く。だけど


「セツリそうは言っても元に戻す方法は無いのですよ。諦める以外にありません」


 サクヤがそんな事を言う。妙に声を張り上げてバカにしてるのかあいつ。だけどその時、意外な声が希望を告げた。


「あっるよ~。実を言っちゃうとその武器を直す方法あっちゃうのだ!」


 その声はアギトの後ろ……見えたのは頭に着いたカチェーシェ。給仕なんて出来なさそうなメイド、それはセラだ。今なんて言った? 


「どういう事だよセラ」


 アギトが後ろのメイドに問いかける。


「アギト様は最近戻ってないから知らないでしょうけど最近ある森で『復活の泉』と呼ばれる物が発見されちゃいました。そこでなら――」
「シルフィングを元に戻せるって事か!?」


 僕はセラの言葉を強引に奪った。それに気を悪くしたのかセラは何も言わない。


「そう言うことなんだなセラ」


 だからアギトが引き継いだ。すると


「さっすがアギト様、天才!」


 超ノリノリで応えた。なんなのこの子。でも次の言葉はいつになく真剣な声でセラは言った。


「だけど問題があるんです。その森に一番近かった我らエルフ領の村『タゼホ』が今朝、襲撃されました」


 その言葉にその場のみんながセラを見た。


「襲撃って……どこの種族にだよ? いや、でもそんな動きどこも……」


 動揺するアギト。僕達も同じだけど続いた言葉は更に衝撃的だった。


「他種族ではないんです。『タゼホ』を襲ったのは……モンスターなんです」


 腰の前で両手を組み、初めてメイドとしての気品を見せたセラの言葉が嘘だとは思え無かった。


「ホームで緊急対策会議が行われます。そのためにアギト様を連れてこいとの事です。来てくれますよね? アギト様の親友を語るバカは行く来マンマンみたいですけど」


 バカって僕の事か。だけど聞き捨て成らない事だ。僕はアギトと目を合わせる。


「分かったよ。戻ろう、エルフの国『アルテミナス』へ」


 これで僕達の次の戦いの場が決まった。

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