命改変プログラム
泡沫話
「セツリィィ!」
僕は誰も居ない町中を走っていた。それはセツリを探すのは勿論だけどそれよりも今は奴らから逃げるのが先決だ。
セツリと分かれてしばらくしてからだった。奴らは一際強く陰が落ちている場所から出てきたんだ。それは僕がこれまでに戦って来たモンスターの形をしていた。だけど色は無く黒く塗りつぶされた輪郭に赤い目が光るだけ。
今見えるのは普通にフィールドにいる奴らだけだけど、もしかしたあの悪魔とかも出てくるのかもしれない。
今でさえ武器がないから何も出来ないのに、あんなボス級の奴が出てきたら万事休すだ。でもなんでいきなりこんな……やっぱりセツリの心は乱れているって事なのか?
僕は影の眼を盗んでセツリの家を探す。よくよく考えたらセツリの家ってなんだ? セツリにはリアルでも家があるのかな? セツリはいつからベットの上で過ごしてるんだろう。それかそこから出たことはあるんだろうか。
それならセツリにとっての家って一体……何かがおかしい。ここはセツリの思いの世界だと思ったけど、それじゅあやっぱり矛盾する。
僕はこの世界に疑問を抱く。そうだ、ここはセツリの願いを叶えてるようで叶えてない。それっておかしい事じゃないか! 何が……一体何が彼女の願いを邪魔してるんだ? それを知らなくちゃいけない。
一際大きな光が空から落ちてきた。それと同時に響いた轟音が空気を弾き飛ばすように僕の耳に響いてくる。そして僕は何かを感じた。頭に変な映像が一瞬流れた様な・・それは僕とセツリがリンクしてるから起きた現象かも知れない。
見えたのはきっとセツリのここでの家。そして彼女の視点からの映像には知らない人物の姿。この世界で僕とセツリ以外の人物なんて怪しすぎる。
それに確かに感じたあの人物の空気は敵と呼べる物だったと思う。LROでの経験で僕はそういうのに敏感になっているみたいだ。
「くっそ」
急がなきゃいけない。イヤな予感がする。幸いさっきの映像には俯瞰からの映像もあったから場所も大体分かる。ここからそう遠くはない! 僕は地面を蹴る足に力を込めた。
たどり着いた家は駄菓子屋とお餅屋とケーキ屋が近くにある一軒家だった。ここにはセツリの願いが顕著にでてる感じだな。二階建ての木造の家。僕はドアに飛びついたけど開かない。周りを見回して庭の方へ駆ける。
その時だった。
「いや……いやっ……助けて! スオウォォ!」
セツリの声。いや悲鳴に僕の鼓動は嫌でも早くなる。そして見た窓硝子の向こうにはセツリに迫る謎の男の姿。僕はとっさに洗濯物を掛ける物干し竿を掴み取り投げつけた。
透明な窓硝子が砕け散り物干し竿はセツリに詰め寄っていた人物に当たって遠ざける事に成功する。
「誰だアンタ? セツリに何してんだ!」
「……スオウ!」
セツリは硝子の破片が飛び散った床を関係無しに窓を開けて僕に飛びついてきた。まあスリッパ履いてるから大丈夫だろう。それも片方脱げちゃったけど、セツリは気にすることなく僕の首にその腕を絡めて震えている。
「スオウ……スオウ……スオウ……スオウ」
何度も僕の名前を呼ぶセツリ。
「大丈夫だよセツリ。僕はここにいる。それより怪我してないか?」
僕の質問にセツリは小さく「大丈夫」と答えた。僕はセツリを後ろに回して前に立った。手にはもう一本あった物干し竿を握る。
「アイツ誰だ? 知り合いか?」
「え? 誰ってあれはお兄ちゃんだよ・・・」
後ろに居るセツリの言葉に衝撃を感じた。僕は思わず前の立ち上がり掛けている人物を見つめた。あれがセツリのお兄さん……つまり当夜さん?
くたびれたシャツに破れ掛けたズボンという格好は確かに夢であった当夜さんに重なる……だけどあれは、目の前の人物は当夜さんじゃない!
僕は前を見据えたままセツリに呟く。
「違う……あれは違うよセツリ」
「違うって……何が?」
セツリは僕の服を強く握りしめている。そこから不安が伝わってくる様だ。だけど言わなきゃいけない。
「あれは君のお兄さんじゃ……当夜さんじゃ無いよ」
僕の言葉でセツリは家の中に視線を向けた。何度も何度も確認するように眼を瞬かせている。
「嘘……あれはお兄ちゃんだよ!」
「違う! 僕は何度もリアルで当夜さんを見たよ。あれは違うんだ!」
僕の言葉に動揺するセツリ。顔を両手で押さえて震えている。
「え……あれ? じゃあ……え? 解んない……あれはお兄ちゃんじゃないの……そんな嘘よ……だって」
「よく思い出せ! 当夜さんはお前にあんな事するのか? セツリが嫌がる事をするのかよ!」
僕はセツリの肩を掴んで訴える。セツリの知ってるお兄ちゃんはそんな奴かよ?
「違う……お兄ちゃんはそんなことしない! お兄ちゃんはいつだって私に優しかった」
セツリの震える唇がその言葉を紡ぎ出す。セツリの感情にリンクする空模様は心の揺れ動きと共に風が台風の如く唸って来ていた。
「ヒドいよセツリ。僕にこんな物刺した奴の言うことを信じるのかい。僕は君のお兄ちゃんだよ」
ドアの方で立ち上がった奴が物差し竿を持ってそんなことを言う。部屋には電気も付いてなくて暗いから不気味さが演出されている。
「おにい……ちゃ」
「ふざけるな! お前は当夜さんじゃ無い! だまされるなセツリ!」
心が揺らぐセツリ。その証拠に空は何度も放電していた。落ちることはない雷が落ちたときセツリはどっちを選ぶんだ。それが怖い。
「うるさないね。家族の話に入ってこないでくれよ。本当に君は目障りだ。何も出来ない癖に」
奴の言葉が心に刺さる。確かに僕は何も出来ないかも知れない。だけど目障りでも何でもお前にセツリは渡せない! 僕は一際強く物干し竿を握りしめる。殴ろうと思ったんだ。それしかないと……だけど、僕がそうする前に後ろのセツリから声が聞こえた。
「何も……何も出来無くなんかない! スオウは私を助けてくれる。いつだって私の声に答えてくれるの!」
僕はその瞬間セツリの手を取って走り出した。これ以上セツリの心に負担を掛けたくなかったし、アイツとこれ以上話したくなかった。
だけど道路に飛び出すと、黒いモンスターとはち合わせた。なんて最悪なタイミングだ。
「え? わっ、何か変なの居るよスオウ!」
「解ってる!」
僕はそれだけ返すと目の前の甲羅をしょったみたいな亀の二足歩行してるモンスターに物干し竿を振りかぶった。
だけど影の体に当たった瞬間、物干し竿は無惨にも砕け散る。やっぱり物干し竿は武器になんてならないか。
その時、影の腕が僕を捕らえた。大きな拳が僕に入り僕は垣根に突っ込んだ。
「スオウ!」
セツリの声に答える為に垣根から身をだす。
「大……丈夫」
その声に少し安心した様に息を付くセツリ。だけど実際はかなり痛かった。ここはLROと違い、直に痛みがあるみたいだ。もしも垣根じゃなく塀にでもぶつかってたらやばかった。
僕は再びセツリの手を取って走り出す。わき腹の痛みも気合いで堪える。幸い飛ばされた時に影と距離が出来たのが良かった。セツリは直ぐに駆けてきたしね。
僕は喉から血が逆流してくる感じを必死に堪えた。
走っているときに何度も影のモンスターに遭遇した。でもその全てを全力で逃げに徹した。今の僕じゃ倒せない。武器も無い状態では無力な一人の人間なんだ。スキルも無いし一体どうすれば……この痛みからしてもしかしたらリアルの体は大変な事になっているのかも知れない。
まさに絶対絶命だった。
僕たちは見つけたコンビニに入った。イレブンローソンというあり得ない組み合わせだ。ようやく腰を下ろして息を整えたときセツリが僕の顔を見て慌てて言った。
「スオウ、口から血が出てるよ!」
僕は驚いて口元を拭ってみると確かにそこには血が付いた。まさか血まで出てるなんていよいよ浸透率がヤバイ感じになってきたのかと思った。二人ともここから出られるのか不安が募る。
だけどそれは一瞬で吹き飛んだ。いつの間に調達して来たのか包帯やテーピングを持ったセツリが僕の隣で真剣な眼をしてこっちを見てたからだ。思考がなんだか真面目な事を考えられなくなる。何なの一体?
「スオウ……脱いで!」
「は?」
僕は呆けた。この状況で何を……って包帯やテーピングだ。勿論手当だよね。僕はわき腹を押さえてる訳だし。ましてや服の上から巻くわけない。
でもちょっと顔を赤く染めてそんな事を言われたら勘違いするものだ。
「ほら、早く。大丈夫。私だって包帯巻く位出来るよ」
そう言って僕の服を強引に捲りにかかるセツリを止めて僕は上着を脱ぐ。
「うわ……赤くなってるよ」
確かに僕のわき腹は異様に赤くなってた。てか青紫がかって内出血とかしてそうだ。セツリの柔らかい筈の手がそっと触れても痛かった。もしかして骨とか折れてたりするのかも知れない。
僕はそれからセツリに包帯を巻かれた。やり方が分からないからグルグル巻きで大量に使った。それでもなんだか僕は嬉しかった訳だけど。いいよね、女の子に手当してもらうなんてシチュエーション。
僕達はそれから乾いた喉を潤わせつつ裏の従業員スペースで休んでいた。ここなら防犯カメラもあっていい。バレたときは裏口からも逃げられし、裏なら姿を見られて見つかることもない。
チューチューとストローでジュースを吸っているとセツリがポツリと呟いた。
「ねえ、スオウ。あれって本当にお兄ちゃんじゃ無いの?」
やっぱりまだ信じられなかったんだ。ここに来るまでずっと空には放電する光があったからそれは分かっていた。
「あれは違うよ。間違いない。セツリのお兄さんじゃない」
「……そうなんだ。スオウがそう言うなら信じるよ私」
ここは空だけは見えないから本当に気持ちに区切りをつけたのかは僕には分からなかった。だけど信じると言ってくれたその事だけで僕は良いと思えた。
「そっか、ありがとう」
僕は一気に残っていたジュースを吸い尽くした。いつまでもここで隠れてるわけにもいかないし、脱出の術を考えなくちゃいけない。
でも武器も無いし、一体何をどうすればいいのかも分からない。お先真っ暗とはこの事だ。
コンビニに包丁あったかな? とか考えてると後ろのセツリの視線に気付いた。
「何?」
するとセツリは顔を勢いよく反らして首を振る。
「ううん、何でもないの。気にしないで」
少し染まった頬が可愛らしいセツリを今度は僕が見ながら考えた。どうしてセツリはアイツを兄と思っていたんだろう? 記憶を変えられてるとか? いや、それよりもアレが何者なのかが重要か。
「あのさセツリ。あの当夜さんを名乗ってた奴の事、聞かせて欲しい。セツリはアイツがお兄さんであるって疑った事とか無いのか?」
僕の質問にセツリは顔を曇らせて答えてくれた。
「お兄ちゃん……じゃないんだよね。あの人の事・・正直分からない。お兄ちゃんとして私の中にはあるの。あの人の姿が。これが違うって事は私記憶をどうにかされちゃったのかな……」
結局はセツリもその考えに至ってしまう。あれは何なんだろう。本物の当夜さんで無いことは間違いない。だけど目的が見えないよ。
セツリと一緒にこの世界にいたいのなら、全部をセツリの理想の世界にすれば良かったんだ。だけどそれをしなかったアイツの目的はなんだろう? 今の僕に出せる答えはない。
「分からない。分からないけど……その可能性は高いよ。僕の知ってる当夜さんの顔とは全然違うんだ」
するとセツリは僕の顔を覗いて「どんな?」と問う。
「えっとね。一言でいうならもっとかっこ良かったよ。ビジュアルで」
「アハハ、そうなんだ。それはちょっと嬉しいな」
そう言って笑うセツリの笑顔にいやされる。
「性格の事は良く知らないけど、パソコンを四六時中いじってそうなイメージはあるよ」
すると地面を見つめて
「そこは一緒だったかも」
とセツリは言った。
アイツがここにセツリを誘ったのだろうか? お兄ちゃんのフリをして。
「そう言えば……」
ん? なんだろう。セツリは何かを思い出したみたいだ。
「システムを急いで作らなきゃって言ってた」
システム? システムってなんだ?
「そこまでは分からないよ。とにかくおにい……あの人はそう言って四六時中部屋に引きこもってたの」
気になる。一体どんなシステムなんだろう。そう思ったとき店の防犯カメラにアイツの姿が映った。
僕とセツリは二人して息を止め通り過ぎます様にと祈った。だけど次の瞬間戦慄した。奴はカメラ越しに僕を睨んできた。間違いなく眼があった。
「セツリ逃げよう!」
僕達は裏口から外に駆けだした。空は相変わらず曇っていたけどもう雷光は見えない。ちゃんと信じてくれたってことだろう。
だけど直ぐにモンスターの一団にでくわした。本当に今日は付いてない日だ。複数のモンスターの叫び。なんだこれ? まるで……
「仲間を呼んでるみたい」
まさにそう感じていた。そして案の定、モンスターが次々と集まってくる。逃げ場なんてどこにも無かった。
僕はコンビニで手に入れておいたカッターナイフを取り出す。武器に出来そうな物はこれくらいだったんだ。だけどそんな物を向けたからって怯む奴らじゃない。
奴らは威嚇しながら僕達を囲んでいく。
「どうしようスオウ」
そんな不安がるセツリの声。どうしようか。さすがに完全に囲まれたら逃げきれない。その時モンスターの向こうに奴の姿が見えた。ヤバイ……そう思いつつも僕達はもうどこにも動けない。
そして奴はモンスターをかき分けて姿を現した。
「やっと見つけたよ。さあ、もう帰ろうセツリ」
「いや、貴方はお兄ちゃんじゃないんでしょう。なら私は帰らない」
きっぱりとセツリは言ってのけた。だけど僕の服を握る腕は震えている。
「だからそれはそいつの嘘だよ。僕は君のお兄ちゃんだ」
「違う! スオウは嘘なんか付かない。スオウは私、信じれる」
僕とセツリはじわじわ迫ってくる奴に向き合って後退していく。だけどそれも長くは持たない。だって後ろにもモンスターはいる。近づき過ぎるとモンスターどもはあの大きな口でセツリを食べてしまいそうだ。
だからどうにかしないと・・・取り合えず今は口を動かす事しか出来ない。
「ふれられたんだからもう止めろよ。それよりお前は何者だ?」
その瞬間僕のカッターナイフは手から飛んでいった。どうやら見えないスピードで腕を弾かれたようだ。
「何者かだと……図々しいことを言うなカスが。何も知らずにセツリを僕の元から離そうとする鬼畜め。お前は知らないんだ。僕の傍がセツリにとって一番安全だと言うことを」
「なんだそれ?」
訳が分からないことだ。それにどうして奴は今の一撃で僕を殺さなかったんだ? 出来た筈だ。セツリを連れ出した僕が憎いんじゃ無いのか?
そしてその疑問はそのままセツリも感じてたようでまさに僕が言いたいことを彼女は言った。
「どう言うこと? 教えて!」
セツリの言葉で奴は背筋が伸びる。ここはセツリの空間だから一応一番偉いのはセツリって事なのだろうか? そして奴の口から漏れた言葉はなんだか信じられない物だった。
「これをセツリが知りたいと言うのであれば聞かせてくれ。お前は表層に戻りたいのか?」
その言葉に僕達は眼と眼を合わせる。表層……それはつまりLROってことか?
「私は……」
だけど何故かセツリの口はなかなか動かない。それにちらちら僕の方を見てる。なんだ、僕に何か期待してるのだろうか?
「セツリはLROに戻りたくないの?」
僕は思わず聞いてしまう。だって今更そんなこと……。
「あそこに私の何があるのか分からないよ。私はだってみんなと違うもん!」
セツリの悲痛な叫び。そうだ、セツリはみんなと共に冒険したいはずなんだ。あの物語の様に。だけど今はアンフェリティクエストのその対象で戦う事なんて出来ない存在だ。
「私が戻ってもあそこのみんなに迷惑掛けるだけよ。私はだってリアルになんて戻りたくない。だけどあのクエストのせいで一杯の人が迷惑するんでしょう。
私は望んでも居ないことで、これ以上誰かに迷惑掛けたくない」
それはきっとずっと誰かに迷惑を掛け続けてきたセツリの精一杯の罪滅ぼしなのかも知れない。だけど……それは違うよセツリ。
「あるよ……LROにはセツリが夢見る物が全部ある。だって当夜さんはセツリの夢を叶える為にLROを作ったんだ。だからセツリがそこで楽しんでくれないときっとLROは完成しない。
確かに今は一緒に戦うことが出来ないけど。僕が必ずクエスト達成するよ。そしたら今度は一緒にLROを楽しもう。今はそんな余裕無いけど……いつか絶対、そうなれる」
セツリの瞳に涙が浮かぶ。雲の切れ間から光りが覗く。
「でも……それじゃあ、スオウに一杯迷惑……それに私一人の為にLRO全体が滅茶苦茶になってるんだよ」
確かにそうかも知れない。今のLROはおかしくなってる。けどそれを今までセツリのせいとして責めた奴なんて一人も居ない。だから
「大丈夫……みんな笑って許してくれる。迷惑だなんて思って無くて楽しんでる人たちも一杯だし。それには勿論僕も入ってるよ」
大きな涙が遂にコボレた。セツリの栗色の髪が揺れている。
「嘘……だよ。スオウ、私のせいで・・・ゲーム楽しめてないよ」
僕はセツリの頭に手をおいた。
「楽しいよ。僕はある意味LROを一番楽しめてるんじゃないかな? 幸運だと思ったてるよ。最初にセツリに出会えたこと。だから一緒に帰ろう。仲間がいっぱい出来たんだ。セツリのおかげでな。みんなが待ってる……もうあそこじゃ一人じゃ居られないよ」
次々と涙が地面に落ちていく。俯いて泣いているセツリの頭を撫でる。
「私……一人じゃない?」
「ああ、一人じゃない」
「スオウは居る?」
「勿論、一番傍に居る」
「じゃあ……帰りたい。LROの暖かい場所に戻りたい」
その言葉を聞いて謎の人物は納得したように頷いた。
「では話そう。僕はここの管理者だ。兄を演じてたのはそれが最も確実にみじかに居られる方法だったから。この世界のバクとも呼べる存在からセツリを守る為だ」
「バグ?」
「セツリがここで目覚めたときに発生したシステム変更で生み出された存在だ。もしかしたらそう言う事を強く望んだ結果かも知れないが・・・僕は取り合えずシステムを直そうと必死だったがそれはセツリの意志によって阻まれていた」
そう言ってセツリを見る管理者。
「私のせいなんだ……また。そのバグってなに? 私はどうすればいいの?」
その言葉に管理者は何かを実態化させた。それは魔法のステッキの様なアイテムだ。そしてそれをみて何故かセツリは震えている。
「これって……まさか……」
「セツリは本当にあのアニメが好きなんだね。ほら来るよ」
日が落ちた空にはフードを被った人物の姿。それを見た瞬間、セツリは涙を拭きステッキを掲げて何かを叫んだ。
神聖な光がセツリを包む。そして目の前に現れた人物の背中を僕は見る。そして紡がれる台詞。
「愛と勇気を力に変えて、魔法少女『プリティックアロマ』見参!!」
僕の目の前に魔法少女が現れた。
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