命改変プログラム

ファーストなサイコロ

思い出を未来へ



 僕の体からたった一つの命が流れ出した。それは取り戻す事が不可能な物で、セーブやロードやコンテニューは適応外。
 無力な僕は、自分ではそれを救いあげる事も出来なくて。糸が切れた操り人形の如く僕は水に沈んでいく。ここの水は、とても暗く冷たくて恐ろしい。
 せめて逝くなら……彼女がいるとても綺麗なあの場所で……僕がそんな事を考えて暗い底の底辺を見た時、僕の体が浮き上がった。
 振り返るとそこには僕を掴む腕が有る。白く輝く腕だ。暖かなその腕は力強く僕を引っ張った。引き戻される、あの場所へ。まだ……僕は生きられる。


「ふざけんなよスオウ! こんな所で……まだ何もやり遂げて無いのに退場なんてゆるさねぇ! 戻って来るまで殴り続けてやるよ!」


 気がついた僕の耳に届いたのはそんな物騒なアギトの声だった。


「止めたまえアギト! これ以上の暴力は認められん!」


 ボヤケた視界に浮かぶのはちっちゃな姿のテッケンさん。


「うえ~んうえ~ん……ヒック……あぁぁ~ん」


 彼のタマネギ頭に落ちているのはシルクちゃんの涙なんだろう。
 みんなが僕を引き戻してくれたんだ。僕はまだ上手く動かせない声帯を使って戻ってきた事を伝えよう。


「……あり……が……とう」


 その声にみんながこっちを見た。そして更に大きくなったシルクちゃんの泣き声。テッケンさんはヤレヤレみたいな感じで自分を抱く彼女を慰める。
 一方アギトはそんな僕に一発入れた。そして僕を台座に投げ飛ばし背を向けた。


「気が付いたんならさっさと起きろ! お前は昔からトロいだよ。心配ばっかかけんじゃねぇ!」


 そう言ったアギトの声はなんだか鼻声混じりだった。僕は台座に背中を預けて水に浸る。胸に傷は……無い。僕は背中を向けたアギトの腕を見つめる。
 リアルもゲームも変わらない。いつだってあの腕は僕を引き上げてくれた。あの時見た、白く輝く腕はこいつしか考えられない。


「ごめん……アギト。いつも迷惑掛けちゃってさ」


 するとアギトの周りの水が波紋を作っているのが分かった。泣いているのだろうか? 背中ごしだけど多分そうなんだろう。


「言っておくけど泣いて無いからな!」


 そんな言い訳は今更遅いよアギト。だけど僕は突っ込む気には成れなくて、二人分の波紋を見つめた。いろんな人に、僕はきっと恵まれている。
 だからこそ……やり遂げなくちゃいけないんだ。


「所で、実際どういう事なんだい?」


 その言葉で火蓋を切ったのは一番冷静なテッケンさんだ。今は台座の上にちょこんとたっている。僕とアギトはギクッとしてしまう。だけどそんな事情よりも僕の回復魔法を優先させてくれているシルクちゃんの顔にはハテナが浮かんでいる。


「どういう事って、どういう事なんですか?」
「さっき意識が無いときシルクの魔法を受け付けなかった理由とか、あの時の見えた気がする血とかだよ」


 その言葉で思い出したのかちょっとシルクちゃんの肩が反応する。やっぱりみんなにも見えてたんだ。じゃあ、あれはやっぱり幻じゃ無かったのかもしれない。


「あんなの気のせいですよ。LROでは血の表現はないんですから。ですよね?」


 シルクちゃんが僕らを見る。その目には自分の言葉を肯定して欲しいという願いが見えた。だけど僕達はなかなか切り出せない。だってこれは話して良いことか?
 二人にとってただのゲームで有るはずのLRO。それを受け止め方次第では壊すことになるかも知れない。知ったからって気にする事は無いし自分達がそうなる訳じゃない。
 だけど二人は良い人だから……だからこそ重く受け止めてしまいそうで不安だ。ゲームのままであれるのならその方が良いに決まってるんだから。
 だけどそんな僕達にテッケンさんは強い眼差しで言う。


「僕らは仲間だよ。だからこそ言いたく無いのならそれでもいいさ。だけどあんな事が今からも続くのなら僕達は君を守る為に付いていく。それは僕達の勝手だから」


 この小さい人はなんだかカッコ良すぎだよ。そんなことを言われたら何を隠せと? 僕は近くのアギトを見やる。


「こういう奴なんだよ」


 そんなことを言うアギトは半ば呆れてる感じ。だけどそこには誇らしさが有る感じ。こいつは自分の仲間を信じてるからな。
 僕はそれからシルクちゃんを見た。彼女の不安な顔は変わらない。


「大丈夫だよ。彼女は見かけよりしっかりしてるから」
「な、なんですかそれは! テッケンさんはいつも突っ走り過ぎなんですよ」


 おお、初めて言い返す所をみた。二人は親しげだ。そして僕の方をシルクちゃんは見る。


「もう、いいですよ。怖いけど……私だって古参プレイヤーで、仲間なんですからね」
 そう言うシルクちゃんの手はちょっとふるえている。やっぱり怖いんだ。あんなに飛び散る血しぶきなんてそうそうリアルでも見れないからな。
 それでも聞いてくれるのなら……話してみよう。


 僕とアギトは今の自分達の状況とアンフェリティクエストの事を話した。それを聞き終わると二人は同時に声をだした。


「「そんなことって……」」


 確かに簡単に信じられる事じゃない。二人は僕よりも一年は長くゲームをやっているんだから。僕よりもこのLROと言うゲームを知ってるはずだ。
 だけど僕にとってはこれがLROなんだ。今や命を懸けて臨む、本当の戦い。本当の冒険。そこには今の所後悔しかないけど、全部が終わった時にそれこそ後悔しない為に進み続けるしか出来ない。


「にわかには信じられないが、その話が本当ならスオウ君がああなった事も納得だ」
「痛かったんですか?」


 二人が言ってるのは胸を貫かれた時の事。あの時は衝撃的過ぎて痛みなんて分からなかった。でも言われて見れば胸の辺りが熱い様な気がする。けど……


「良く覚えてない」


 それが正直な所だった。あの時、僕のHPは尽きては無かった。だけど僕は確かに……多分死に掛けた。人にとっての急所の心臓を貫かれたからHPと関係無しに、その衝撃のフィードバックか何かだったのかも。
 でも、あの状態から戻って来れたのはきっとHPが残っていたから……そしてみんなが引っ張りあげてくれたから。そんな偶然の様な奇跡に僕は救われ続けてる気がする。


「スオウ君、君はどうしてそこまでする? 命を懸けた時点でこれはもうゲームじゃない。さっき本当に感じたんじゃないのか……自分の死を」
「そうですよ。こんなのゲームじゃない! 止めた方がいいですよ。今度あんな事があったらどうするんですか? 今度こそ……本当に死んじゃうかも知れない……」


 二人の言うことは尤もだ。だけどそれの答えは自分の中でもう出てるんだ。


「ありがとうございます。だけど、もう決めたんです。これは僕の責任で……僕の役目で……宝くじに当たったような巡り会わせなんだって思うことにしました。
 それに僕が止めたら彼女は救われない」


 僕のそんな言葉にシルクちゃんは食いかかる。水が少しだけ弾けた。


「それは! みんなに通知されたクエストじゃないですか! スオウさんが辞めても他の人がきっと……」
「ダメなんだ。みんなにこのクエストは通知されたけどクリア出来るのは僕だけらしい。その理由は分からないけど何故かそうなんだ。だから僕の役目だよ。それに今は、譲る気ないよ」


 僕は実は自分に言い聞かせてるのかも知れない。死に直面して実はちょっと弱気なんだ。僕は二人に話すことで自分の気持ちを再確認している。
 死を本当にみじかに感じた僕は決意の決意が必要なのかも知れない。


「でも……死んじゃうなんて……」


 そう言うシルクちゃんをテッケンさんが制す。


「もう分かったろシルク。これ以上の言葉に意味なんてないよ。彼は教えてくれたんだよ。全部を」


 そして台座の上で胸を張って彼は手を伸ばす。


「天晴れな心意気だ。僕も微力ながら出来る限り力になろう」


 僕はその小さな……でも頼りになる手を握った。


「ありがとうございます。僕はまだ弱いから……一人じゃ何も出来ないんです」


 するとそこからもう一つ手が伸びて来て重なった。その手はシルクちゃんだった。


「それはみんな同じですよ。助け合うのがこのゲームです。だから一杯助けます。スオウさんは心配ですもん。みんなより装備が薄いのに無茶し過ぎです。ヒーラーの私から見たらすっごい心配なんですからね」


 うう、怒られた。彼女の気持ちはとても暖かい。僕は涙が流れそうなのを必死に堪える。LROを初めてなんだか感受性が増した気がする。自分はこんなに涙を流す奴じゃなかった。
 密かにここ数年涙を流した事がないのを自慢にしてたのにその記録は見事に砕かれた。
 だけど昔に戻りたいとは思わない。ここでの出会いがどれも大切な物になってるからだ。そしてその最初の出会いが彼女なんだ。
 あれから僕のLROは始まった。


「さぁ~て、そろそろやろうぜ」


 アギトのその言葉で僕達は動き出す。まずはテッケンさんをシルクちゃんが抱き抱えて台座から離す。そして僕は台座の前に立ちウインドウから三つの思いでアイテムを取り出した。
 それぞれ『思いでの印』『思いでの欠片』『思いでの落日』――それを台座の同じ形をした所にはめ込む。すると台座には何本も光の線が走りそれは周りに駆け巡っていった。
 そして次第に光は円柱状の空間を満たしていく。それから何かが僕達には聞こえだした。


「ザザ……ザザザ……ツリ……セツリ待ってください!」


 僕は思わず振り返る。するとその時、真っ正面にはブラジャー片手にタオル一枚で走り回るセツリの姿があった。


「やだよー。サクヤの胸が私より大きいのがいけないぃぃ!」
「うわっ!?」


 僕は思わず目を閉じて身を固めた。避けられないし、目のやり場が! って思ったけど彼女は僕の体をすり抜けて行った。


「これって……」
「立体映像だな」


 スゴい……この空間全てを使って完全な状況を映し出しての立体映像。僕達は今まさに『思い出』の中にいる。
 少しだけ今より幼く見えるセツリ……その後ろには大きな胸を揺らして追いかける巫女さんの姿……ってこっちの方がやばいよ! あの人何にも隠してないよ!
 場所はどこかの脱衣所。いっぱいの籠があるし銭湯みたいだ。幼く見える彼女は少なくても三年前だから? だけどそれじゃあセツリはこの中でも成長してた事になる。
 そんな事ってあり得るだろうか?
 僕は幸せそうな彼女達を眺めた。するとその時、捕まった衝撃でセツリのタオルがハラリと落ちる。色々な所が丸見えだ。慌ててシルクちゃんが僕達三人を武器のスキルで打ったたいて僕達の記憶をぶっ飛ばす。
 やるときにはやる子だこの子。躊躇が無かった。気づいた時には入浴シーンは終わっていた。三人同時にため息を付くとカシャンと言うシルクちゃんの武器を構える音。
 思わず背筋が伸びちゃうよ。演技でもキリリとしとかないと。それもおかしいけど。


 それから続いたのは二人の幸せな生活だった。どこにも影なんて落ちない優しい毎日。そしてしばらくすると『思いでの印』の栞が光を失った。きっとこれに込められていた思い出を写し終わったって事だろう。それから僕達は目の前で繰り広げられる思い出に浸った。そして終わる頃には僕達は同じ考えを抱いていた。あの人を……巫女さんを……サクヤを……救ってあげよう。
 サクヤの矛盾した行動の意味、おかしくなった事情、その全てがこの中にはあった。僕は三つのアイテムをその手に握る。そして三人を見やり頷きあった。


 湖畔の光は今も続いていた。溢れる光の橋の端でサクヤはうずくまりその頭に元に戻ったフクロウが乗っている。僕達は先刻、サクヤが祈った橋の丸くなった部分に現れていた。そこにあの場所からの転送魔法が設置されてあったんだ。ただし人数は三人。抜けているのはテッケンさんだ。
 彼は今はきっと湖の底だろう。彼が戻るまではこの人数で持ちこたえ無くちゃいけない。
 僕達の存在に気づいたのかフクロウが飛び立ち、再び形を変えた。そしてサクヤもゆっくりと立ち上がる。まるで夢遊病患者みたいにフラフラしている。


「ねえ……私は……どうすればいいの……約束が……願いが……ああああああ」


 彼女は震えている。最初にこの様子を見たときは恐怖しかなかったけど今は悲しみが募る。あれからずっと彼女は囚われ続けている……彼女も同じこの世界に囚われた者。


「サクヤ……今日、その答えを出そう。僕達が協力するよ」


 その言葉を聞いた途端、フクロウは突進してきた。僕とアギトは同時に武器を構えてフクロウをはじき返す。
 サクヤは僕の言葉に震えている様だった。彼女はきっと全てを忘れていた。自分の意思か誰かの思惑かは分からないけどきっと今まではそうだった。
 だけどアンフェリティクエストの発生でその楔は次第に解れていった。彼女の本来の目的を思い出させる為に。
 僕は一気に距離を積める。同じ鉄は踏まないようにフクロウは完全にアギトが止める。かなり無茶して貰うけど必ずこのアイテムをサクヤに!
 僕は思いでの印を彼女の額の帯に当てた。すると帯の模様が光りアイテムを吸収した。


「あああああああああ!」


 それと同時にサクヤがほえる。思った通り。あの帯の模様は特殊な物だ。これはシルクちゃんの意見で解った事。
 アギトの声に振り返るとフクロウの攻撃が迫っていた。僕はとっさに横っ飛びで交わす。視認出来るのは直撃数メートルだけだけど僕達は度重なる見えない敵との戦闘でそれを学習してた。
 特にこの鳥の場合は風切り音もスゴいし直撃の瞬間には姿が見えるのが大きい。今の自分達なら余程の事が無い限り直撃はしない。


「私のセツリ……愛してた……あの子……は」


 サクヤは自分の思い出を四つのアイテムに分けられていた。思い出を記すそのアイテムは彼女の記憶。クエスト発生から少しづつ戻った記憶はそれでも彼女を壊す程じゃなかったけどその四つのアイテムは例外だ。
 思い出の印はその中でも一番優しい記憶。サクヤのセツリへの愛が溢れてる。


「セツリを閉じこめてるのはサクヤだろ。誰の指図だよ」
「私が……あの子を……そんな……でも……あの人が……」


 まだダメだ。やっぱり全部の記憶を戻してそれからなのか? いや……サクヤの本心は今じゃなきゃ聞けない。彼女の記憶が全部戻るって事はあの当時に戻るって事だ。あの当時にサクヤは既にAIの域を越えていた。だからこそ、こんなに苦しむんだ。
 僕は羽を飛ばす攻撃を交わしてアギトと入れ替わり再びサクヤに近づく。そして今度は思い出の欠片を額に押しつける。彼女の断末魔の叫びが再び湖畔に広がる。それに反応するようにフクロウは怒り出す。
 更に早く……更に鋭く空を切る。巻き起こる風の鎧は僕が乱舞を発動していた時に似ている。僕らはフクロウの風に寄って押し戻される。


「あの子は……私の言う事……聞いてくれないの。それに……私は気づきました……あの子の願い。愛しい愛しい……あの子の頼み」


 欠片はちゃんと入ったようだ。微かに聞こえる言葉には僕達が見た内容がある。欠片は悲しみの始まり。でもこれともう一つは完全な形じゃ無かったんだ。
 でも出来事は解った。サクヤはセツリの願いに気づく。それで二人はやってしまう。彼女は逆らえない、セツリの為の存在だから。


「サクヤは、どうしてあんな事……どう思ったんだあの時!」
「私は……嬉しかった……だけど……それが!」


 少しずつだけど会話になってきた。答えを出す為にも一杯今のうちに吐き出せ!
 僕とアギトは体に無数の傷を刻む。シルクちゃんが直してくれるけど追いつかない。フクロウは僕達がサクヤに近づかない様に風を起こし続けている。だけどただそれだけで無数の刃が僕達を襲うんだ。これじゃあいつまで経っても近づけない。
 手元にある最後のアイテムがサクヤに届かない。僕はアギトとシルクちゃんに目配せする。ここで乱舞を使うしかない。だけどそれをシルクちゃんは止める。


「乱舞じゃ確実じゃ無いですよ。同じ風だし。どうなるかわかりません。私に任せてください。最大の一撃を決めます。一分ください!」


 そういうと彼女は早速詠唱に入る。僕とアギトはシルクちゃんを守るようにカマイタチを打ち落とし続ける。強引に前に立ち避けることもせずに武器を振り続ける。風の勢いもシルクちゃんになるべく届かない様に……。
 長い長い一分だった。僕とアギトのHPは互いにレッドゾーンに入っていた。だけどその時シルクちゃんの声がする。


「サンシャイン!!」


 天井から降り注ぐ光の柱がフクロウを直撃した。その瞬間湖畔が爆発。そして風が止んで自由に動ける様になる。
 僕は走り出した。この瞬間を無駄には出来ない。だけど僕たちはほぼ城の所まで押されていた。サクヤまでまだ百メートルはある。
 その時不意にサクヤは立ち上がり反応した。フクロウを焼く柱に手を翳し何か凄い早さで口を動かした。そして次の瞬間、数枚のお札が飛来してフクロウの少し上にバリアを張って助け出した。
 自分の今の限界の魔法がこうも簡単に防がれるなんてって感じでシルクちゃんは愕然。だけど僕は走り続ける。よそ見してる暇はない。フクロウは解放されてしまったんだから。
 フクロウは一気に僕の横に居た。僕達は互いにお互いの目を見た。それは同じ感じがする瞳だった。だけど僕にぶつかる寸前にアギトがスキルをたたき込む。そして猛然とラッシュ。
 僕はこの間に更に加速した。肺から空気を絞り出して全身へ! その瞬間、サクヤは再び何かを口ずさむ。だけどそれは捉えられる早さの言葉じゃない! 
 そして発生する魔法スキル。これじゃあまるで高速詠唱だ。そんなスキルあるのか分からないけど目の前のはそうとしか思えない。
 発生した魔法は僕を越えてアギトに向かう。


「傷つけないで……クーは友達!」


 大量のお札がアギトを囲み炎が包む。


「アギト!」


 その光景に思わず足が止まる。その瞬間にフクロウが僕に来た。凄まじい衝撃……どうやらサクヤはこのフクロウをとても大切にしていてこいつを攻撃する奴を狙う様だ。だから今攻撃したら僕には二つの攻撃が来る。
 だけど僕は歯を食い締め二刀を振るう。後少しなのにこんな所で押し戻される訳には行かない!


「乱舞!」


 僕は高速の剣技でフクロウを押し戻す。その瞬間サクヤの攻撃対象は僕へ。高速詠唱で魔法が来る! だけどここだ。僕は一際強くフクロウを叩き少しの空間を開けた。そして僕を包む札の束……これはさっきアギトを焼いたのと同じ。
 僕はこの瞬間少ないスキルの一つを発動する。それは「残影」一分間に一度だけの絶対回避のスキルだ! 僕は影を残して燃え盛る魔法から抜け出した。そして一気に詰め寄り思い出の落日をサクヤに当てる。
 サクヤの叫び。これで後一つ! その時、フクロウが一際大きくなった。そして山をも揺らす叫び。それは「これ以上サクヤを傷つけるな!」と聞こえた気がした。 
 その時、反対側の湖から橋に何かが飛び出した。振り返るとそこに居たのはテッケンさん。彼は掌のアイテムを掲げて見せた。それは僕が落とした最後の思い出アイテム。『思い出の結晶』だ。

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