美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 64

「魔王、貴様の存在をよこせ」

 そう言って私の体が拘束される。触手とかではない。ただ単に動けない。これもアクゼンに時間を掌握されてる影響だろう。でも……

「そんな告白じゃ、私は手に入れられないわよ」

 私はそう言って笑ってやった。元々が私は兄様以外に興味なんてない。だからこんな奴に靡くなんてことは絶対にないんだけどね。

「俺は、貴様の存在を手に入れる。そしてゆくゆくはラーゼもだ。それによって完全に世界樹を置き換えることができるようになる」

 美女を二人も求める。こいつもなかなかに欲が大きい。実際は美女とかではなく、こいつが欲してるのは世界だろう。この世界の頂点。でもそれをやらせはしない。

「言ってなさい……」

 私は力を高める。

「無駄だ」

 そういうアクゼン。さっきもこれはやったからだろう。いくら攻撃をしようとしても、アクゼンには通用しない。それは私の時間がやつによって掌握されてるからだ。そんなのわかってる。だからって、黙って死ねと? そんなのは魔王として、いやミリアとしても、あり得ない。兄様たちだって頑張ってるだろう。

 なら妹の私だって頑張るのは当然。世界の真理と言える。すでに完璧に時間を支配した私なんて脅威ではない……ってことなんだろう。けどその慢心が命取りなのよ。

 私はあんたなんて見てない。私が見てるのはいつだって兄様だ。世界でもない。ただだだ、兄様が君臨して幸せな世界……そのためなら……私は何にでもなる。

「あああああああああああ!!」

 私は高めた力を外には出さない。内部で溜め込み続けて臨界点を超えさせるのだ。私の体はどんどんと赤くなっていく。そして溶け出して……でも最後にはやっぱり爆発した。そして私の魂は色々な情報の波にいた。

 高速で周囲が流れてる。この世界の情報、歴史……きっと世界樹に戻されてる。私は魔王。いくらでも世界樹からその体を持って復活できる。

 でも、何かがついてる。それは嫌な感じがする何か。それがアクゼンがつけた何かなんだろう。それこそパーフェクトタイムの残滓。でも生まれ変わる私にまではそれはついてこれない。気持ち悪い触手に見えるそれを振り払って、私は高速で流れる周囲から自分の意思で、扉を作る。

 魔族の位置と存在を把握して、そしてそれを媒介にする。そしてつながった世界樹から魔王たりえる情報をインストール。外ではどういうふうに見えてたのかわからないが……私は魔王として、戦場に復活した。

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