美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 57

「づっ!?」

 やっぱりだけど、アクゼンの攻撃は確実に私に当たった。それはいい。覚悟してたから。でも……覚悟してたけど耐えられるかというと……いや耐えられると思ってた。まだ負けてないが……耐えてみせるって思ってた。でもこれは……想像以上のものをどうやらアクゼンは用意してたらしい。

「もう準備は整ってたんだよ」

 そんな声が聞こえてくる。たしかにどうやらアクゼンは準備万端だったらしい。その場その場で臨機応変って言えば聞こえは良いが、実際の所、行き当たりばったりと言われてしまえばそのとおりな私の行動とは違うらしい。

「貴様はもうハマっている。我のパーフェクトタイムにな」

 ダサい……とか思ってる場合ではない。今の状態を簡単に伝えるとするのなら……まさにパーフェクト……なのかもしれない。なにせ私の動きが全て把握されてる。いや支配されてるといってもいい。

 私が正面から突っ込んだ攻撃はなんか手のひらで受け止められた。べつにそれはいい。だってそもそもがどうにかされる前提の攻撃だった。その後に私は狙ってる事があったからだ。いや今も狙ってるけど……でもめっちゃ難易度が上がってるのは確かだ。

 なにがおきてるのか……多分だが、今私は……というか私の時間が奴に……アクゼンに……支配されてると言って良い。何をしても……そして何をされても全てが裏目に出るって感じだ。それに……

「力が……」

「言ったはずだ。パーフェクトタイムだとな」

 そう言って突きつけられる奴のウネウネとした触手。触手なくせに私の手足をスパスパと切り裂いていった。魔王の体はそんな簡単にキレるような代物ではないはずだが……アクゼンならそのくらいは簡単にできるらしい。

 それでも普段なら腕を生やすとか足を生やすなんてなんてのは朝飯前である。けど……それができない。私はだるま状態になってアクゼンの触手に絡めとられた。

「おわりだ魔王。貴様の特性を取り込んで、我はこの星の勝者となろう」

 そんな事を言って触手の力を強めるアクゼン。私の体がバキグチャと潰されているのがわかる。でも私は余裕があるように見せながらこう言ってやるよ。

「それは無理よ。だって魔王は勝者になれないから」

「負け惜しみを」

 そういうことじゃない。そういうことじゃないんだよアクゼン。アンタは私の力……魔王の力を欲してるようだが、それをしたら負けが確定するだろう。だって魔王は……厳密には種とかではない。魔王は世界が作りしバランスを保つ存在だ。仕組みと言って良い。

 だから魔王が最終的に頂点に立つのなら、世界はもう一度、同じことを繰り返すことになるだろう。そこに勝者はない。

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