美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 55

先に動いたのはアクゼンの方だった。それは焦りなのか、それとも余裕か……最初は小さな違和感。なんか私が殴られてる回数が多くなってるような? そんな感じだった。実際、私は殴られたらその都度殴り返してる。つまりは殴ってる回数に違いがあるわけはない。ある訳はない……んだけど、なんか殴られてる回数が違う感じが……

(いや、間違いない……こいつ……)

 確実に私は多く殴られてる。そしてそれはどんどんと顕著になってる。でも実際、アクゼンは一回殴って、私も一回殴り返してることに変わりはない。その事実というか、現象はそのまんま。ならどうやってアクゼンは多く私に攻撃を加えてるのか。実はものすごい速さで殴ってる? けどどうやらわたしとアクゼンのスピードはそう変わらない。それに私は魔王だ。いくら速いスピードでも捉えられる自信はある。

 けどそういうことじゃない。そういう身体能力の面のことじゃない。これは……

(なにかの力を使ってる?)

 殴られながらもそんな事を考える。もう、なんかずっと殴り合いをそれこそ続けてる気になって、ダメージをうけたら殴るっていう体の動作が染み付いたのか、勝手に体が反応してる。

 実際、この殴り合いは数分も経ってない。それでもこのクラスの殴り合いなら、それこそ数秒で百回殴るなんてことも出来る。なので既に途方も無い攻防を繰り広げてる……といっていい。体が勝手に反応してもおかしくなんて無い。

 なら多く殴られる分にも反応しろよ……と言いたいが、そういうことじゃないみたいだ。多く殴られたら、そのぶん殴り返せばチャラになる……とかじゃない。アクゼンにはアクトパラスの無限に、ゼンマイの時間の特性があるが、更にはあいつは沢山の種を取り込んでその特性を持ってるみたいだし……それを与えてコピー品達を作ってる。となると、それを使えない道理はない。

 それの中のどれかで、この多重の攻撃をしてる? でもなんか違和感がある。私は殴られた瞬間に集中するよ。もちろん殴り返すことは怠らないけどね。けどお陰で違和感を感じる事ができた。

 私がカウンターでアクゼンに効果的な一撃を入れられてるのは、アクゼンが攻撃を当てる時に、その攻撃があたった事実事象を確定してるからだ。それがなかったら確率がブレる。それをなくすために確定してるわけだけだけど……こいつもしかしら……

「確定してる事実を増やしてる?」

「気づくか」

 私のボソッとしたつぶやきにアクゼンが乗ってきた。こいつ……別にバレても問題ないって思ってるんだろう。実際、それをどうすれば良いのか……それはわかんない。だって今までは一回殴られたら一回殴り返すことが出来てた。けど、こっちはその一回を複数に増やされてる。 

 つまりはダメージが増えてるわけだ。回復するためのマナは豊富にあるが、アクゼンは私に沢山のマナを使わせたいって思惑もある。そうなれば、こいつの世界樹のマナが広がれるからだ。

 それにこのままじゃ、反撃もそのうちままならなくなる。これってどうすればいい? 一回回避に……

「ぐはっ!?」

「確定してるぞ」

 そうだった。攻撃が当たるのは『確定』してる。避けることすら不可能だ。私の右半身が吹き飛んだ。

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