美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 53

「づっ!? ああああ!!」

 私はなんかわかんない内に殴られてた。けどそれでも殴り返す。女の子の顔を殴るとは……なんて奴。まあ私は魔王だし、今は戦闘中だ。実際女とか男とかない。戦場では全ては等しく一つの命。

 そもそもそんな性別を気にして戦場に出てるやつはいないだろう。だから別に文句があるわけじゃない。ただ亜子の記憶の影響が出ただけだ。

(でも今の……)

「これでも反撃してくるか」

 あれ? なんかヤケクソで反撃したが、なんか予想以上に効いてるぞ。それに今回のはヤケクソでヤツの肉を持ってるわけじゃなかった。それなのに……だ。なんか効いてる。どういう事? もしかしてカウンターなら、奴の時間操作をかいくぐれるってことだろうか?

 

(そっか……アクゼンが攻撃を当ててる瞬間だって、その結果を確定させてるわけだもんね。つまりはその時の時間は固定されてる)

 そこを動かしちゃうと、きっと攻撃が当たるか当たらないか……それがブレるんだと思う。だからインパクトの瞬間の時間の結果を固定してるから、こっちの攻撃も確実に当たる……ということだろう。

 これはある意味良い発見だ。けど……

(毎回殴られるなんてスマートじゃないけど!)

 私は更に拳を放つ。

「舐めるな!! 貴様はもう嵌ってるんだよ!!」

 再び私の拳が宙を切る。そして今度は背中を殴られた。けどこっちだって舐められていられないんだよ!! こっちにはアクゼンが出したただの感情もないコピー品とは違って、ちゃんと魂が宿ってる魔族たちが見てる。

 彼らが私にガックリするなんてことはない。するなんてことはないが、魔王らしくないところを見せる訳にはいかない。私はバキバキと無理矢理後ろを向いた。なんの音かって? 体の構造を無視した旋回だったからね。具体的には胸の中頃から体が引きちぎれた音である。

 流石のアクゼンもこれには「何!?」とか言ってた。けど上位種とかの戦いになると、こんなのは普通ではないだろうか? 有り余るマナで自身の修復なんて簡単なんだ。なら体に遠慮なんて必要だろうか? 相手を殺せるのなら、そんなのはどうでもいい!! だろう。

 何をされたのか……わかんないままだけど、私はアクゼンと殴り合いを続ける。

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