美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 41

黒い光が空に走った。けど私はすぐにその場から離れる。なぜなら、その場から別の力が溢れ出してきたからだ。それは濃ゆい紫色をしてる。そして私の黒い力を巻き込んで吹き飛ばしていく。それだけで、なんか空間がピキピキと唸ってるよ。まさか魔王である私の力を上回る力を出してくるとは……いや、予想はしてた。だってアクゼンはこの星の頂点にいると言っても良い種だ。

(いや、事実その通りなんだけど……)

 なにせ様々な強敵を打倒してきたアクゼンだ。そして今や、私達以外には敵はいない。沢山の種のエネルギーだってその中には内包してるだろう。打ち破った種の力はそれを成した者に流れ込んだりするからね。

 なんか人種にはそんなことがないんだけど、けどそれはきっと人種がマナへの適応力が一番低いから……だと思われる。もしも強敵に万が一勝ったとして、そいつの力が流れ込んだりしたら、それで死ぬからね。適応力が高い他の種なら、その流れ込んでくる力によって進化したり……とかある。

 けど、人種にはそんな可能性ももとからないわけだ。酷すぎない? と思う。だってなにせ、他の種族にはどんな弱い種族にだって可能性って奴がある。下剋上の可能性が……だ。なにせ他の種族はその種族のマナを受け継ぐことが出来る。多く取り込めば、もしかしたら進化……いや種族の限界を超えることだってある。

 でも人種にはそもそもがそんな可能性すらもないのだ。ひどいことだ。魔王となって、どれだけ人種が脆弱なのか……それがよく分かる。まあだからこそ、人種は他の方法に可能性を見出したと言える。

 それこそ、アンティカとかそれら科学技術だ。でもその歩みはとても遅かった。今でも人種が残ってる事自体が奇跡。そして、こうやって最後の戦いの中に人種がいることも……つまりは何が言いたいかというと、やっぱり油断は大敵だということだ。

 ありえないことが起こる。私は魔王だが、アクゼンもナンバーワンである。やつの内包してるそのエネルギーは計り知れないと思ったほうがいい。たしかに単純に考えれば世界樹へと繋がってる私が有利だ。でも、それだけでは戦いは決まらない。

 そもそもがあの程度ではアクゼンのエネルギーが減ったようにも感じない。私的にはかなりのエネルギーを込めた攻撃だった。それに純粋なマナによる攻撃だ。単純だけど、単純なだけに純粋に強力だ。まああれだけの攻撃をマナだけで行える種ってのは多くないと思う。

 けど私は魔王だ。このくらいは簡単である。かなりの威力だったと思うが、向こうの攻撃もすごい。

「食らい付くしてやろう。全てをな」

 そう言って上を向いて、アクゼンは再び墨を吐く。あれにあたったらまずいわけだけど、でも今回の墨はそもそもが誰かに向けたものじゃない。だってなにせ上に向けて発射してる。わざわざ体を周回させて、墨を広範囲に広げるように巻いてる。何アイツ? 噴水にでもなったつもりなんだろうか?

 そんな事を思ってる場合でもないか。とりあえず隙だらけだし、その間に魔族たちが近づいて攻撃を仕掛けてる。だが、そこは流石はアクゼンなんだろう。受けたり避けたり変な動きをしながらも、魔族たちを退けてる。そして、ある一定量が空に溜まった。そう奴が吐き出してた墨は空にとどまってた。あれを一体どうする気?

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く