美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 36

ラーゼによって戦場に私達のマナの竜巻が発生した。メチャクチャなラーゼがマナの塊を打ち込んだせいだ。これには別に攻撃性能があったわけじゃない。ただ純粋なマナの塊だ。これをもっと圧縮して圧縮して……としたら超高密度のマナレーザーへとなっただろう。

 けどそんなことはせずにただの超膨大なマナの塊としてだけ、投げつけてきた。そんなのに意味はあるのか? って思うかも知れないが、これは今の状況にはとても効果的だったと言わざるえない。だって私は手をあぐねてた。なにせアクゼンの奴に魔族たちを人質に取られて、私はフルボッコ状態だったからだ。別にそこまで攻撃が効いてたわけじゃない。

 けど、アクゼンの思い通りになってたのはその通り。その現状をラーゼのおかげで打破できそうではある。なにせここら一帯はアクゼンが擁立しようとしてた新たな世界樹の影響下にある。つまりは向こうの世界樹が放ってるマナが満ちてる、この星の中でも唯一と言っていいアクゼンのホームになってるというわけだ。世界に根付かせないと世界樹は成長することはない。

 そして既に世界樹が十分に成長してる世界で、もう一つの世界樹が上手く成長できるかっていえば、そんな訳はない。だって必要ないからだ。今の世界樹、クリスタルウッドによって、世界は滞りなく回ってる。何も問題なんて無い。そして世界樹の周期はとても長い、生命の生きる時間よりもそれこそずっとずっと……だ。

 単位でいうと億とかそういう単位になるだろう。だから今は新たな世界樹なんてのは世界が、星が……そして命が必要となんてしてない。そんな状況で、新たなマナが受け入れられるかって言えば、そんなわけない。当然だよ。

 でもアクゼンのやつは無理やりこの新たな世界樹を広めようとしてる。そのためにも、この新たな世界樹を完成させたいんだろう。誰にもメリットなんて無い。ただの自己満というか、自己中とも言える所業である。けどまあ気持ちは分からないでもない。だって、種族的には頂点に立ってるのがこのアクゼン……アクトパラスとゼンマイだ。それなのに奴らは他人が握ってる力の元に頼って、その力を行使してるとなると、不満にも……そして不安にもなるんだろう。

 なにせこの星では奴らが……眼の前の奴が最強の筈。それなのに、力の根本を別のやつに握られてるって状況はこいつにとっては許せないことなんだろう。

(まあそんなことは私にはどうでもいいことだけど……)

 私はそんな事を考えつつ、黒いマナを放つ。そしてそれを幾重にも伸ばして、この暴風の中私は魔族たちへとその黒いマナをつなげていく。まずはつなげるだけだ。もしも一人ひとり開放していくとなったら、きっと気づかれる。そしてそうなると、アクゼンはきっとまだ解放してないやつを一斉に殺すだろう。そうなると困る。だから私は一気に開放するためにまずは全ての魔族達に自身のマナを接続することにした。

 それはバレないのかって? たしかにそれは懸念するべきことだというのもわかってる。けど、大丈夫だ。なにせ今はやつはそんな場合ではないのだ。なぜかというと、奴……つまりアクゼンがこの星の大本というと、基本であるクリスタルウッドのマナを拒絶したってのが大きい。たしかに自分専用のマナってやつは使い勝手が良いし、世界樹を擁立すれば、自分の都合を押し付けることが出来るだろう。

 けど、それが最大限に生かせるのって、主流になったときだ。そして前提として、アクゼンの世界樹は主流ではない。マイナーである。なのにやつは、自身のマナをもちろんだけど、自分の世界樹のそれに置き換えてるわけだ。かと言っても、互換性はあるみたいだけど……それでも体のマナへの適応指数というかそいうのはどうしたって、自分の方に合わせに行ってるのはそのとおりだろう。

 だってそうしないと、せっかくの自分のためのマナ……自分だけのマナが意味をなさない。でもだからこそ、このマナの暴風はとてもアクゼンにとっては厄介なはずだ。ヤツの感知能力も、そして世界樹との繋がりもきっと今、滅茶苦茶になってるだろう。

 だから妨害が入ることはない。いや……

(なんかヤツの力が集まってる……)

 なにかしようとしてる。私が魔族たちを全員確保するのが先か、アクゼンが動き出すのが先か……そんな勝負みたいだ。

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