美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 30

「もとから巫女はいた。その存在は本来なら生贄だ。世界樹が育つまでに世界にそのマナをなじませるための器。そうやって徐々に巫女のあふれる新たな世界樹のマナで世界に準備させる。そして成長した世界樹に巫女は取り込まれてその生涯を終えるのだ」

 アクゼンの奴がそんな事をドヤ顔……なのかはわかんないような顔で行ってくる。実際私は「そうだったんだ」とかおもってる。いや、そんな事を世界樹育てるための種は言ってたかもしれない。

「なのにどうだ? 奴は……巫女はまだいる。そして貴様の力を奪っている。そんなのは魔王としておかしいと思わないのか?」

「奪ってるって……」

 まあ目障りではあるけどね。なにせラーゼは兄様に認められてるし。兄様は既に結婚してるし子供も居る。そこにラーゼの奴が入るすきはない。ないけど……あんな奴が傍にいるっでだけでなかなかに夫婦としては恐ろしいよね。

 私は兄様を愛してるが、私は同時に兄様の幸せも願ってる。だから結婚だって認めた。実際この世界、別段兄妹がそういう関係になってはいけないって決まりがあるわけじゃない。倫理的というか、これまでの人種の歴史上、なんとなく血が強くなりすぎると呪われる……みたいな風潮があったから、兄妹でそういう関係になるのはやめたほうがいい……みたいな空気はあったが、この世界の田舎などでは、普通に起きてることでもある。

 まあ今なら、亜子の知識もあるからそれがなんで呪いなのか……ってのも私は分かってる。勿論、亜子の世界の知識がこの世界にそのまま適応されるわけではないんだろう。なにせ亜子の世界……その星には世界樹がなかったみたいだし……でも遺伝子というものが生命にはあって、血が濃くなると言うのは、それが近くなりすぎることらしい。

 兄妹は当然だけど、同じ両親の元にその遺伝子を受け継いで生まれてくる。だから私と兄様の遺伝子は似てることになる。それだけで興奮できるが……生命というのは進化していくものだ。そしてそのためには、別の遺伝子が必要らしい。

 同じ様な遺伝子だと、なにやら多様性がなくなるとかなんとかだ。例えば私が変な病気にかかって亡くなった。それは私特有の病気だった……そしたら、私の遺伝子を持つ子供もかかりやすくなるし、兄様と私の遺伝子は似てるわけで、兄様もそのリスクはある。その子供も当然そのリスクがある。

 けど、私が全く違う人の遺伝子を入れて子をなせばその謎の病気で死ぬリスクは大まかに言うと半分になる。私の遺伝子はその子には半分しかないからだ。そうやって人種というか、生命はリスクを分散していくものらしい。

 だからこそ、同じ遺伝子が濃くなりすぎると、奇形児と呼ばれる呪われたかのような、最初からなにやらおかしい子供がうまれやすくなる。なんか遺伝子がバグるのかな? なにが言いたいかというと、私はラーゼが兄様を誘惑してその幸せを壊さないなら別に……である。

 そもそもがラーゼが仕組んでキララと結婚させたのである。それならあいつがちゃんと幸せにする責任って奴があるよね。それをせずに兄様の幸せを奪うのなら、ためらいなく私はアイツを攻撃するだろう。

 それに……今は私はアイツが必要……だとも思ってる。だって……

(そう、私は魔王。魔王の存在は、リセットなんだ。私はそのうち……この世界を)

 その時の為に、ラーゼは必要だ。

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