美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 29

「コイツラがどうなってもいいのか魔王? それが嫌なら大人しくしているんだな」

 頭に触手が生えてきた魔族たちはその自我を完全に支配されてるみたいだ。アクゼンは全ての魔族達の命をその手に握ってる……と思ってでも居るんだろう。まあそう思ってる分には全然構わない。

「貴様はどうやらこれまでの魔王よりも完璧だ。だが、それは力であって、心はどうやら人により過ぎてるようだな。貴様は歴代のどの魔王よりもその力は強いがまだ魔王として、完全に覚醒はしてない。その証拠に、貴様には聞こえてないだろう? 世界樹の声が」

 何を言ってるのか? けどなんかアクゼンはべらべらと喋ってるから、気持ちよく喋らせておこう。こいつは私が手を出せないと思って余裕ぶってるんだろう。その根拠は私が魔王として甘ちゃんだと思ってるからだ。

 実際、私は魔族を部下と思ってるが、駒とは思ってない。だってアクゼンの言う通りに私の心は人が強い。そんな残虐というか、心無い所業はできない。いや、人であっても心無いことをやるやつなんてのはいくらでも居るわけだけど……私は兄様にちゃんとしつけられたからね。人として……外れた事はできない。今は魔王だけど、それでも私は兄様の妹であることは変わってない。

 だからこそ、兄様が恥ずかしがるようなことは妹である私はできないのだ。それに亜子の影響も多大にある。あの子と一緒になる前はもっとドライだった。それこそ私は兄以外はどうでも良かったといっていい。

 だから本来の私はもっと冷たいし、それこそそのままの私なら魔族と魔王の関係はアクゼンがいうような、それこそ上下だけの関係だったかもしれない。こんなふうに信頼? ってやつで結ばれたものではなかったかも。まあそれもなんの意味もなかったわけだけどね。私の枷になってるし……

 亜子がやけに優しかったせいで……私までその影響を受けてる。

「世界樹の声?」

「聞いたことないとはな。やはり新しい世界樹が必要だ。本物の……そしてその声を聞けるのは貴様だけだ魔王。役目だけを模倣してるあれは世界樹ではない。貴様が魔王として真の覚醒をしてないのも明らかだろう。いや、それを阻害してるのはラーゼだ。貴様も分かってるだろう。

 あの異質な存在を」

 まあ確かに……とは思ってる。だがここは何も言わないでおこう。聞かれてたらあいつうるさいし。いや、別にあいつはうるさくはない。そんなにそこらの女子みたいにべらべらと喋るタイプでは無い。

 まあ常に自分が上みたいな態度はあるけど……ただ聞かれてたら、辺に突っかかってきそうだから、ここは黙っとく。そして私が黙ってるからか勝手に肯定とアクゼンは捉えたらしい。

「もとから巫女はいた。その存在は本来なら生贄だ。世界樹が育つまでに世界にそのマナをなじませるための器。そうやって徐々に巫女のあふれる新たな世界樹のマナで世界に準備させる。そして成長した世界樹に巫女は取り込まれてその生涯を終えるのだ」

 私はずっとだまってる。けど心の中では「へぇー巫女ってそうだったんだ」と思ってた。

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