美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 28

「なぜ、貴様が魔王なんだ……」

 そんな事をいう魔族の一人。そんな事を言われると、ふと気になることが出来る。アクゼンは過去を改変したのはわかる。こいつらの認識を変えたんだろう。でもどういうふうに変えられたのかなって……そこに興味がでるよね。

 だってもしも私が魔王じゃない……とか教わったのだとしても、今の時点で私の事を既にちゃんとした魔王だと認識してる筈だ。だって奴らが何を思うおうと魔族たちは私の一睨みでうごけなくなってる。それは認識では私を魔王と認めてないとしても、その心……いやこの場合は魂か? そっちはわたしをちゃんと魔王と分かってる……と言うことだ。

 そしてその時点で、今までの……というか私が知ってる魔族たちならいくら過去になにかしてあるといっても、私側につくはずである。だって魔族の頂点は魔王……それはどんなに納得できない魔王でもそれは絶対なんだから。

 なのに……だ。こいつらは魂で理解してるはずなのに、まだ私に膝を折ってないし、心で何故か反抗してる。それはもう……

(私が知ってる魔族たちじゃないんだけど……)

 そう思う。実際いきなり魔王になった時は、こんな奴らを取りまとめるなんて無理とか思ったし、こんな風に「貴様を魔王とは……」とかいう奴らが少しはいたよ。でもね、私がその魂に魔王という事をわからせると、すぐにちゃんと頭を垂れてた。

 それに私は魔族たちとは上下関係だけじゃない……そういう関係だからというだけじゃない、ちゃんとした「信頼」を築いてきた……と思ってたんだけどね。そういうの全部なかったことになったのだとしたら、結構ショックだよ。

「やはり魔王。マナが減る気配がないな……ならコイツラを使おう」

 そんな事を言って、アクゼンはなんか魔族たちから触手をはやした。その体内から生えてきたような触手は全員、アンテナのように頭に生えてる。

「ぐっ……何かが……入ってくる……」

 やっぱりだけど、そういう風に使ってきたか。いや分かってた。なにせ私はそんなに魔族たちを使い捨てのコマ……みたいに使ったことなんて無い。アクゼンはそんな魔族たちを自分側につかせて、それで終わり? そんなわけない。

 大体強い種ってのは長く生きてるはずで、そこそこ強いはずのアクトパラスとゼンマイだってそうだろう。となるとだ、魔族が魔王に逆らえないなんてことは知ってるはず。それだけなら、こいつらが私にとってなんの役にも立たないなんてわかりきってる筈だ。

 それなのにわざわざ過去改変をして私から離したのは、このため。別に戦わせる気なんてなくて、私に対しての肉の盾……その為に魔族たちを私から奪ったんだろう。

「はあ……なかなかに胸糞悪いわね」

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