美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 17

「くっ」

 私は嫌なニオイに顔をしかめる。星の反対側は様変わりしてる……なんて事はなく、ちゃんと私達の世界樹の力が満ちている。どうやらアクトパラスとゼンマイの世界樹の成長は上手く言ってないみたいだ。

(まあ当たり前だけど)

 なにせ星に世界樹は一つだけ。2つが共生することは絶対にない。一つが十全に育ってるのなら、新たな世界樹の苗に、マナが流れることはない。もしももう一つ世界樹が生まれるとしても、それは私達の世界樹が苗を作って、少しずつつ、それこそ何千年・何万年という時間を掛けて、その立場を入れ替えていくんだ。

 それが正しい代替わりだ。いきなり世界樹が変わるなんてことはない。そんな術はない。けど、それでもアクトパラスとゼンマイはそれをやろうとした。やろうとしたのなら、なにか手があるのか? と思ったわけだ。

 私たちは世界樹の守り手だ。魔族は世界樹が無いと、色々と都合が悪くなる。それこそ力はなくなるし、存在さえ……曖昧になる。魔族は世界樹とともにある存在だ。そして魔王は世界にバランスをもたらすもの。

 そんな私としては、もう一つ世界樹? そんなのが許されるわけもなし。世界に私達の世界樹のマナが満ちているから、どこもかしこも豊かな緑が広がってる。世界樹がないと、どうしても世界の営みには偏りが出てしまう。自然に任せると言うことは、そういうことだ。だが、世界樹があると違う。

 効率よく、そしてあまねく、意思によって世界の隅々まで力を行き渡らせるようになる。それによって、世界は安定するのだ。世界樹がないと、それこそマナの偏りが出てしまう。マナの泉によって星の反対側にさえマナが行き渡るが、偏りはできるよ。

 でも世界樹がないと、極端に濃い場所は更に濃く、薄い場所からはどんどんとマナの恩恵が薄くなる――みたいな事が起こる。それはすべて自然に任せるからだ。風の動き、空気の循環……すべてを自然に任せると、偏るのはしょうがないことだ。でも世界樹があれば、そういう事はない。皆へ、世界の隅々までマナの恩恵は届く。

「あれね」

 大きく地面に刺さる一本の杭。なんか化石化した触手みたいなのが大地に刺さってる。それからは特殊なマナを感じる。そのマナこそ、アクトパラスとゼンマイが育てようとしてる自分たちに都合がいいマナを生み出す世界樹なんだろう。

 あれのせいでこの周辺は既存のマナと、新たなマナが混ざり合って私達魔族には臭い……と思えるような状況になってる。でもそれも比率的にいえば9・1である。もちろん私達の世界樹が9で向こうが1 でもその状況でも臭いと感じるんだから、私達魔族はそれだけマナに敏感なんだろう。

 とりあえず挨拶に一発、入れて魔族たちを攻め込ませるか。

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