美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 16

戦いは遠くで起こってる。事件の現場は遠い。まあ事件ではなく戦争だけどね。一回攻められた私たちは容赦なんてしないよ。どこかに慢心があったんだろう。クリスタルウッドという世界の力、そしてエデンという世界の技術……さらには魔族というか戦力。それにさまざまな種族を取り込んで、私たちはいろいろな魔法と特性を取り込んで融合させてる。

 それによって科学力は勢力随一だろう。そういう慢心をつかれた。だから今回はこっちから行く。そもそもがラジエル率いるオウラムは既に追い込まれてる。だから休ませる必要はない。まあ一週間は休ませたわけになるが……でもそれだけだ。それで情勢がどうなるかっていうね。奴らが拠点にしてた山の麓は溶岩で住めなくなったはず。きっとオウラムは移動してるだろう。

 けど私達ほどじゃないとしても、私たちに与することを拒んだ種はオウラムへとむかって、奴らもそこそこの数がいる。そしてオウラムを頼った奴らはそんなに強くない。いや強い奴らもいるが、あぶれた奴らが集まってるというかね。実際オウラムへと行った種はハズレが多いね。

 まあけど、それも仕方ない。なにせ奴らは待ってたからだ。私たちは動いた。その違い。動いたか、動かなかったか。きっとラジエルたちは私たちの方にたくさんの種が、それこそそこそこ名のある種たちが行くとは思ってなかったんだろう。

 私の魅力を知ってるのに、呑気なことであった。

「それでオウラムはどんな感じなの?」

「はっ、かなり悲惨なようです」

 私はハゲから状況を聞くよ。ハゲは軍の最高位ではないが、エデンの全てを回してるのはハゲである。だから軍の情報ももちろん、ハゲに入ってくる。ヘビが軍のトップだけど、この最後の戦いで、ヘビも出張ってるからね。なにせオウラム……あの国を率いるのはラジエルだ。

 ラジエルは獣人で、そしてヘビも獣人。というか私のところにはヘビの方についた獣人も結構な数がいる。同族として、けじめをつけようとしてるんだろうね。なにせヘビもわざわざ前に行こうとするようなやつじゃない。もちろん軍の最高トップのヘビは前線まではいかないだろう。

 でも自分の手で、別れた獣人たちに引導を渡そうとしてると思われる。

「オウラムは移動しています。目指してるのはどうやら、憂国の谷です」

「なんだっけそれ?」

「かつて栄えた種があったと言われてる大峡谷です」

「そこに逃げ込もうとしてる? いや、もしかしてそこもマナの−−」

「はい、そこはマナ溜まりのようです」

 なるほどね。確かに奴らにはもうそういうのに頼るしかないだろう。そもそもがあの活火山の麓に陣取ってたのもあの山がマナ溜まりだったからだ。星のいくつかの場所にはマナが溜まりやすい場所がある。噴き出す場所というか……そういうところはもちろんマナが豊富で濃くなる。人種以外はマナさえあれば生きていけるし、マナさえあれば、戦い続けることだってできる。

 

「そこに辿り着かれると面倒ね」

 いや、そもそも私はクリスタルウッドを抑えてるわけだし、その栓を塞いでしまえば……いやそもそもそれができるのなら、アクトパラスとゼンマイが陣取ってる所だってマナ溜まりだ。栓ができるのならやってるし、できるんだけど、やらないのには理由がある。

 それは私の影響下にあるマナを星に満たすことが大切だからだ。そもそもそ別の星のマナが流入してきたせいで、ちょっとバランス悪らいからね。大体追い払ってるが、星に満たすことで、星の隅々まで私の影響を及ぼすことができるようになる。ここで私がマナ溜まりに栓をすると、クリスタルウッドの影響が薄くなってしまう。そこをアクトパラスとゼンマイが作ろうとしてる世界樹のマナでわずかでも満たされたら? 厄介だ。

 別にそれだけで大勢に影響なんて出ないが、でもあまねくマナで星を満たすことは出来なくなる。それではダメだ。だから栓はできない。

「間に合うの?」

「もちろんです。オウラムは憂国の谷に辿り着くことはありません」

「それを聞いて安心したわ」

 私はそう言ってプリムローズに可愛い服を着せる遊びに戻るよ。うんうん、やっぱり可愛い子には可愛い服を着せるべきだね。

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