美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 9

「居場所でもわかった?」

「はい、捜索の末アクトパラスとゼンマイは世界樹の種子を我らがクリスタルウッドの間反対に植えたようです」

「まあ……それが一番だよね」

 あんまり近いと成長してるクリスタルウッドによって新たな世界樹の苗は成長することなく、枯れてしまうだろう。アクトパラスとゼンマイが新たな世界樹を擁立しようとしてる……その時点で私たちは世界樹という存在をあらためて調べようと思った。何せ世界樹はなかなかに謎に包まれている。

 役割とかはわかってるが、その成長の過程とか知らないし……私がこのクリスタルウッドは育てた訳だけど、そんな自覚はない。だって速攻だったからね。実際これだけの大きさの木が成長するのに一体どれだけの年月がかかるのか……そこらの木なんて目じゃないほどに大きいからね。

 それこそ何万年とかいう単位は必要ではないだろうか? 本当ならね。でもそれを力によって強引に早めたと思ってる。もちろんそれは私の力だけではない。この星の力……そしてその流れ、それらがうまく噛み合って、そして世界樹という役割が正常に稼働したことによりに、世界に組み込まれた……って感じだろう。

 けどそれができたのは偶然というか……タイミングというか……私ができたのなら、他のやつもできるのでは? って思うのは仕方ないことだ。

 そもそも私は美少女ではあるが、そんなに特別だったとは思ってない。むしろ私はこの世界に降り立つ時に、力なんてのはなかったからね。今思うと無謀にも程がある。

「それで、奴らはうまく世界樹を育てられるの?」

「難しいはずです。一番は既にこの世界には世界樹があるので」

「そうね、でもそれをわかってないはずはない。奴らはそれでも育てられるって思ってるんでしょ?」

「そのようですね」

 多分だけど、ちょっと前にオウラムがここに攻めてきた時に何かをクリスタルウッドへと仕込んでた。それが世界樹を枯らす何かだったはずだ。それかもう王の剣でぶった斬る……とかさ……考えてたのかもしれない。実際クリスタルウッドはその葉をちらし始めた。

 それに私が寝てる間はそれが止まることはなかったらしい。つまりは徐々にクリスタルウッドは弱ってたということだ。世界樹の巫女はもう一人、ミリアがいるじゃんって思うだろうが、私も思う。ミリアは一体何をやってたのか。

 私が目覚めたことで、クリスタルウッドは葉を落とすのをやめたらしい。やっぱりだけど、世界樹との繋がりは私の方が強いらしい。でもあのまま目を覚さなかったら、弱っていくクリスタルウッドに変わって、アクトパラスとゼンマイの世界樹の方に星の力が流れて、急成長したかもしれない。

 これだけみても、奴らは連携を取ってたとわかる。はっきり言って私たちは二つの勢力に狙われる不味い立場になってる。でもアクトパラスとゼンマイが世界樹の成長に手間取るなら……既に奴らの狙いは狂ってる。こっちの世界樹はピンピンしてるからね。

 そうなると次の行動をとってくるはず。狙いは私か世界樹かそれとも、ミリアか……一番手を出しやすいのはミリアだろう。なんたってやつは前線にいるからね。この情報をやったら、ミリアは魔族を率いて奴らのところに攻めに行くかもしれない。何せ魔族にとって魔王と共に世界樹も特別だ。

 それを勝手に作ろうとしてるアクトパラスとゼンマイは許せないはず。焚き付けてみてもいいかもね。万が一にでも奴らの世界樹がこの星の中に組み込まれても困るのはこっちも同じだし。

 アクトパラスとゼンマイは今の状況でも世界樹を育てられると踏んでるのなら、邪魔しないといけないからね。

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