美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 4

なんと言うことだろうか、メルが言うには私の中にあった様々な種族の力……それがどうやら壊されたらしい。許せないことだ。私が一体どれだけ苦労して、様々な力を集めてきたと思ってるのか……

(本当にどれだけ苦労して……苦労して……)

 まあ実はただ気持ちいいことをしてただけではある。あの能力が欲しいから抱かれようとかは実はそんなにない。私はそう言う実用的な力よりもちゃんと「好き」っていう感情を大切してるいい女なのだ。だからあの力たちは私への愛の証−−でもあったのに。
 私自身はそんなに戦いに出るわけじゃない。何せ私はトップだから。一番偉い奴は後方で踏ん反り返ってるのが仕事なのだ。でもまあこの前のこともある。暗殺部隊が敵地の奥に侵入して一番の重要人物を殺すっていうね。
 実際それをラジエルたちは狙ったのだ。失敗したが、でもあの時にラジエルたちを追い返すことができたのは私自身に力があったから……ってのはある。本当にただの無力な女の子なら、殺されてただろう。でもまあただの普通の女の子はこの過酷な世界で国のトップとかにはいけないと思うけどね。

「ラーゼ様の力が壊されている? それはラーゼ様自身は大丈夫なのですか?」

 そういってハゲが私の体の心配をしてくれる。いやハゲだけじゃないけど、ここで「力がなくなったラーゼなんて役立たずだからトップを交代しよう」とかならないのが私の人徳のなせるところだろう。
 すぐさま私の心配をしてくれるみんな。まあそれも当然ではある。大体はみんな私のことが好きだからね。いや大好きだからね。

『母はそれに対応するためにこれまで体が休息を必要としてたのです』
「では今は大丈夫だと言うことですね」
『大事に至ることはないでしょう……しかし』
「しかし?」
『いえ、目覚めてくれてよかったと言うことです』

 なんかメルが怖いことを言ってる。もしかしたらそれって目覚めなかった可能性があるってこと? そもそもメルってそうそう言い淀むとかないんんだが……そのメルが言い淀むって……一体何を考えてたのか……まあけど、あんまり考えても仕方ないことじゃないかな?
 だって私はこうやって目覚めたのだ。私は自分の体を確かめて、手をぐっぱとやる。何か違和感がある……なんてことはない。体の調子もいい。自分の中の力は壊されてるが実は別になくなったわけじゃないんだよね。

「ラーゼ様の中の力が壊されたと言うことは、一体何ができて何ができなくなったのか、確かめる必要がありそうですね」
「一応クリスタルウッドとのつながりは感じるし、ゼルとの繋がりもそのままだから、基本的には問題ないと思う。多分ラジエルも私の根本にはきっと手を出せてないなんだと思う。
 壊せたのは私が取り込んできた力だけだから」
「それならそうそう問題はなさそうですね」

 ヘビはそう言って安心する。確かに私はそんなにその力を使う立場でもないから、基本的に世界樹の巫女として、そしてこのエデンの盟主としての役割さえ出来れば最悪いいんだよね。
 だから私に特別強い力が必要かと言われればそうじゃない。あったら便利だからたくさんの種の力を持ってたけど、それを有効的に活用してたか……というのは、まあ一部だけだったよね。使ってたの。
 だからまあ、そんなに困ることでもない。そういう結論になると皆一気に安堵が押し寄せてるみたいだ。

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