美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H659

「我はそんな面倒なことはしないぞ」

 ゼンマイのやつが自身の過去の素体を作ると言い出したが、アクトパラスはそんな些事には興味ないらしい。まあここはアクトパラスだけで満足しておくか。実際戦う担当はアクトパラスだろうし、こいつの力を解き明かすのに因子は重要だ。

 最悪ゼンマイのことは過去でその力を解剖すればいい。だからここはアクトパラスだけで……

「そこは私がしよう。心配する必要はない」

「いやいや、そんな所までやってもらうのは悪いかなーって」

「いや、アクトパラスの事も貴様よりも私の方がわかってるからな。そっちの方か都合がいいだろう?」

 ぬぬぬ……ゼンマイのやつ、アクトパラスの因子も私に渡したくないらしい。やっぱりコイツラは私の事仲間なんて思ってない。勿論私も思ってないけどね。でも最近はなんか警戒を強めてるみたいな? そんな気がする。ちょっと前まではそれこそ気にも掛けてない存在だったのにね。多分だけどズラララバライトが私に肩入れ仕出してからだと思う。宇宙見学に行った後くらいからだろうか? 聖杯の事を提案して、それで警戒心を持たれたのだろう。

 だって私だけでは絶対にそんな提案できない。コイツラは裏で私が何を考えてるのか、狙ってるのか、それを知りたいと思ってるんだろう。

「まあ、やってくれるのなら、それでいいけどね」

「過去に行くのを止めはしない。だが、その分こちら側は進む事を忘れるな」

 なにそれ……牽制か何か? 過去にこだわってもしょうがないって事? そんな事をやってる間にも自分たちは先に行く。それで追いつけるのか? って挑戦か? そんな心配しなくても過去はこの宇宙の聖杯が稼働する前に終わらせる気だ。

 そして私は取り戻した過去とともに……まあそれ以上は良いでしょう。全てをいう必要なんてない。

「忘れなんてしないよ。でも大切なものは置いてはおけないでしょ。たった一人で……アンタ達は二人だけど、それだけじゃ寂しいでしょ?」

「そんなことは思ったことも無い」

「ああ、煩わしい存在なんていらないな」

 ゼンマイとアクトパラスは同じような事をいうよ。アンタ達はそうでしょうね。でもそれは最初から強者だったから言えることでしょ。それにコイツラは知らない。沢山の人達に囲まれる優越感って言うの? 全てが私を愛してくれる圧倒的肯定感。やっぱり私はああいうのが好きだし、私は基本ダラダラしたい。

 一人じゃできないじゃん。ズラララバライトは協力はしてくれるが、私のためになんでもやってくれる存在じゃない。ドラクはそういう存在だが、一人じゃ寂しいのだ。だから取り返す。置いてきた物全て。

 そのために私は過去に行く。いや、厳密には私は過去には行けないけどね。私も自身をもとに過去の自分を再現して送り込むことになる。そして介入できることは制限される。そこはアーミュラが監視してるから、どうにもできないだろう。出来る限りの準備をして、アーミュラの検査をくぐり抜ける仕掛けをしないといけない。

 

「とりあえず二人の素体が出来たら届けてね」

 

 それだけ言って、私はこの空間を後にした。二人の素体を作らなくて良くなった分、過去への仕込みを沢山しないといけなくなったよ。

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