美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H607

私はブラックホールへと入った。ブラックホールってどうなってるのか、色々と意見はあったと思う。私の薄い前世の知識ではね。そしてその答え的には、なんかネットリしてるって感じだ。いや、適切な表現なのかって言われるとなかなかに疑問符つくけどね。

 なにせとても不思議な感覚だからだ。ブラックホールへと入った瞬間、上下左右、すべての感覚がおかしくなった。ブラックホールの中には上も下もなくて、そして後ろと前もない。でもそこにとどまってるようでいて、でもそうでもないっていうか……なんか引っ張られてる感覚はあるんだよね。

 そして更に中へといざなわれると、自分がたくさん見える。正確には……というか正確なのかそれが分かんないが、なんかブラックホールのなかは時間と次元が重なったりずれたりしてるのか、そのズレに対して、たくさんの自分という存在がその時の次元軸に分断されるみたいだ。

「「「「これは」」」」

 めっちゃ私の思考が重なってなんか脳がおかしくなりそう。いや、重なってる分にはいい。だっていくら重なっても、同じことを考えてる分には混乱することなんてないからね。けど……次第に全部の自分が違うことを考え出す。すると頭に同時に違う思考が生まれる。たくさんの自分が見えるてるわけだけど、それは全部自分なのだ。別に分裂してるというか……そうじゃないらしい。だから頭的にはひとつなのだ。ただ次元が違ってるだけでね。

 だから頭がおかくしくなりそう。

「右の渡しやめてよ!」「左こそ!!」「いやいやちょっと前に重なってる私でしょ!?」「後ろの私だよ!!」

 うん、こうやって見ると単純なことしか考えてないが、これが無限に増えてると思ってもらえるといい。さらにさらに、なんか次元が不安定だからか、なんか一瞬戻ったりもする。それが更に体と心、そしてマナに混乱をきたすような……次第に私は私という一人の人間ではなくて、なんか一つの塊のようになっていた。

 マナの一つ……たった1つのマナへと成り下がってるといっていい。

「これやばくない?」

 なんかドラゴンのところに辿り着く前に私自身という存在がこのブラックホールという場所に飲みこれてしまいそうだ。こんな事ならズラララバライトになにか対策を聞いておくんだった。てかあいつも何か注意しておいてよ。

 もしかしたらブラックホールがこんな場所というのは常識だったのかもしれない。だからズラララバライトも何も言わなかったのかも……いや、それとも――

「「「あいつ、私がどうするか観てるんじゃない!?」」」

 ――絶対に面白がってる。と思った瞬間、全ての次元のわたしは重なって一瞬もとの姿に戻れた。

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